待ち人来らず(脚本)
〇おしゃれなリビングダイニング
柊由真「いや、だから晴れ着は着ないよ?」
渚寧々「そんなこと言わずに着てほしいなぁ・・・」
柊由真「私が着ても誰も喜ばないと思うんだけど」
今日はアルカイドの店員で、予定が合った人たちだけで集まって初詣に行く予定だ。
或果と寧々はこの日のために由真の分も晴れ着を用意していたのだが、本人は着ることを渋っていた。
月島或果「いや、喜ぶ人の方が多いよ?」
渚寧々「そうそう。理世子とか「楽しみだなぁ」とか言ってたし」
柊由真「理世子が? ・・・だったら着てもいいけど」
渚寧々「由真って、理世子には弱いわよね・・・」
月島或果「ちょっと悔しいけど・・・」
柊由真「いや・・・せっかく外に出られるようになったんだし、その気分を台無しにはできないなって・・・」
渚寧々「理由はどうでもいいのよ。もう時間ないから早く着付けするわよ」
〇神社の出店
そういうわけで、神社には由真、寧々、或果、そして理世子の四人が集まった。
渚寧々「星音たちとも予定が合えばよかったんだけどね」
月島或果「三人とも写真送ってって言ってたよ、由真の」
柊由真「いや、何で私なの・・・」
渚寧々「自覚ないのが怖いわ・・・」
渚寧々「何なら由真の写真売ったら儲けられるかもしれないって思うわよ」
鵜飼理世子「あ、みんな! あけましておめでとう!」
柊由真「あけましておめでとう ここまで大丈夫だった?」
鵜飼理世子「うん、大丈夫。お守りちゃんと効いてるみたい」
柊由真「よかった・・・」
鵜飼理世子「それにしても、由真が本当に晴れ着着てくれるなんて嬉しいなぁ」
柊由真「・・・理世子が楽しみにしてるって聞いたから」
渚寧々「じゃあ全員揃ったことだし、お参りしましょうか」
〇神社の本殿
鵜飼理世子「由真は何をお願いしたの?」
柊由真「・・・二礼、二拍手、一礼に夢中になって、完全に無だった」
鵜飼理世子「ふふ、慣れてないとそういうことあるわよね」
鵜飼理世子「ちなみに出雲大社では、二礼、四拍手、一礼よ」
月島或果「それは私でも忘れそうな気がするわ・・・」
鵜飼理世子「大丈夫よ、出雲大社にはちゃんとその看板が立ってるもの それに多少間違っていても、怒られたりはしないわよ」
渚寧々「詳しいのね、理世子」
鵜飼理世子「家に引きこもっている間、暇だからたくさん本を読んだのよ。 あと、お守りをもらうために色々調べたから、それもあって」
渚寧々「なるほどね じゃあお参りも済ませたことだし、おみくじでも引こうか」
四人はおみくじを引きに行った。
ちなみにこの神社のおみくじは当たる上に厳しいことが書いてあると有名になっている。
渚寧々「或果はどうだった?」
月島或果「中吉だって。 でも金運が微妙・・・まあ、家とか全部なくなっちゃったしね」
渚寧々「私は大吉ね。 でも事業が「慎重に進めよ」なのよ・・・」
渚寧々「ちょっと店の売上が心配ね」
月島或果「急に2号店作るとかしなければ大丈夫じゃない?」
渚寧々「それもそうね。由真は?」
柊由真「私は或果と同じで中吉。でも・・・」
渚寧々「待ち人来たらず、ね」
柊由真「・・・まあ、来ないのはわかってるんだけど」
柊由真「ところで理世子はどうだったの?」
鵜飼理世子「私、おみくじは大抵めちゃくちゃ悪いのよ・・・」
渚寧々「み、見たことないくらい悪いおみくじね・・・」
鵜飼理世子「悪い結果には慣れているんだけど・・・健康運が悪いのが心配ね・・・」
鵜飼理世子「今年、変な幽霊とかに遭わなきゃいいんだけど・・・」
柊由真「大丈夫。もし悪いものが来ても、私がやっつけるから」
鵜飼理世子「ありがとう。由真がそう言ってくれると安心ね」
柊由真「それに、今は理世子も十分強くなった。 だから大丈夫」
渚寧々「そうね。こうやってたまには外にも出られるようになったし」
鵜飼理世子「行けるところはまだ限られているけど・・・でも、前のことを考えるとすごく進歩した気がするわ」
渚寧々「それじゃ、おみくじ結んで帰りましょうか」
鵜飼理世子「寧々は大吉だからいいんじゃない?」
渚寧々「大吉だったけど、ちょっと事業のところがね・・・」
鵜飼理世子「アルカイドが傾いたら困るものね。 結んだら、屋台を回ってもいい?」
鵜飼理世子「こういう屋台、実は憧れていて」
渚寧々「いいわね。それじゃあ行きましょうか」
〇カフェのレジ
鵜飼理世子「この店、ずっと来てみたかったのよ」
初詣の2日後、由真と理世子はあるパティスリーに来ていた。
鵜飼理世子「由真たちには感謝しかないわね。 たくさん夢を叶えてもらってる」
柊由真「私は何もしてないよ」
鵜飼理世子「そんなことないわよ」
鵜飼理世子「今日、由真を誘ったのはね・・・二人だけで話したいことがあって」
柊由真「何?」
鵜飼理世子「・・・由真の中にずっといる、彼のことについて聞かせてほしいなって」
柊由真「いつから気付いてたの?」
鵜飼理世子「最初から。 でも・・・初めて会ったときは、今よりもずっとぼやけて見えてたけど」
柊由真「・・・そっか。理世子には見えるんだもんね」
鵜飼理世子「守護霊みたいなものも見えるんだけど、普段はそれをその人に教えたりはしないことにしてるの」
鵜飼理世子「でも・・・星音ちゃんには、何か話したんでしょう?」
柊由真「星音が言ったの?」
鵜飼理世子「あの子は何も。でもあの子、思ってることが全部顔に出るじゃない」
柊由真「確かに」
柊由真「あ、今全然わかってないだろうな、みたいなのもわかるからね」
鵜飼理世子「私としては、美味しいものを食べたときのあの子の顔がすごく好きなんだけど」
鵜飼理世子「それは置いといて・・・もし、私に何かできることがあるなら力になりたい」
鵜飼理世子「今まで、由真にはたくさん力になってもらったから」
柊由真「ありがとう。 でも、これは私の問題だから」
柊由真「あと、できれば、このことは他の人には黙っててほしい」
鵜飼理世子「わかってる。 ・・・その人は、由真にとってとても大切な人なんでしょ?」
柊由真「・・・うん、そうだね」
鵜飼理世子「「待ち人来たらず」──でも、おみくじは外れることもあるから」
柊由真「そう・・・だね」
鵜飼理世子「私のもできれば外れてほしいし」
柊由真「そうだね。体には気をつけないと」
鵜飼理世子「由真もね」
鵜飼理世子「それはそうと、結構イケメンだよね、彼」
柊由真「・・・そうか、そこまでわかるんだね」
鵜飼理世子「まあ由真が男装したときの方がかっこいいけど」
柊由真「・・・「イケメンって初めて言われた」って」
鵜飼理世子「ふふ。私の好みじゃないけど」
柊由真「ちょっと傷ついてるみたいだけど?」
鵜飼理世子「いいのよ。私から見ればライバルみたいなものだし」
柊由真「どういうこと?」
鵜飼理世子「わからないならいいのよ。 混んできたし、そろそろ出ましょうか」
理世子はずっと気付いていて、それでも黙っていてくれたことに由真は安堵していた。
おそらく理世子ならわかっているだろう。
このままの状態が続けばどうなるか。
けれど、未来に暗闇が見えていたとしても、奇跡が起こることをどこかで望んでしまっている。
おみくじは所詮おみくじだ。
でも、外れてほしいと心から願っていた。
理世子ちゃん鋭い…!
鋭いけど由真ちゃんのこと考えてるんだなぁっていう優しさがあるし、イケメンな彼を上げて落とすところで笑ってしまいました笑
ちょっと鈍感な由真ちゃんがかわいい…😇理世子ちゃんには甘い由真ちゃんもかわいい…😇