読切(脚本)
〇川沿いの公園
彼「最近アプリでいい子がいてさ」
日曜日の朝、大学時代の友人とランニングしながら、たわいもない会話をする。
〇グラウンドのトラック
お互い愛知県の大学に通い、陸上競技部で4年間ともに戦った。
〇グラウンドのトラック
卒業後、愛知県の大学院に進んだ彼。
私は地元で就職したのち、転職を機に上京した。
後を追うように、彼は東京の会社に就職した。
〇川沿いの公園
東京に友達がほとんどいない私たちは、月に一度、皇居ランをするようになっていた。
〇川沿いの公園
彼「今度、アプリのその子に告白しようと思って」
私「何回デートしたの?」
彼「今度4回目。タイミングが分からなくてさ。どういうタイミングで告白するもんなの?」
私「やっぱ別れ際じゃない?序盤で告白すると気まずいやん」
〇川沿いの公園
もともと愛知県に彼女がいた彼だったが、東京に来て遠距離となり、彼女と別れた。
私も地元に彼氏がいたが、上京とともに別れた。
お互いの恋愛事情も隠すことなく話していたし、お互いにアドバイスもし合った、信頼できる友達。
〇川沿いの公園
彼「そっちはどう?彼氏できた?」
私「私も最近アプリの人とデートしたけどさ、あんまり好きになれそうにないや」
お互い別れてから、彼氏彼女がおらず、マッチングアプリをしていた。
〇SNSの画面
数あるマッチングアプリの中で登録すると、たまたま彼が出てきて、思わずプロフィールを読んでから非表示にした。
こんな写真じゃ、こんな文章じゃ、女の子は寄ってこないよ。
君のもっとかっこいい写真も、もっと良いところも、沢山知ってるのに。
そんな気持ちが湧いてきた。
〇グラウンドのトラック
大学時代、私は同じ陸上部の男の子と付き合っていた。
ちゃんと好きだった。
好きで付き合ってたはずだけど、心の奥では、おもしろくて、ちゃらんぽらんな彼のことがずっと好きだった。
何度か彼氏からは、「アイツのこと好きでしょ」と疑われては、はぐらかした。
〇駅の出入口
彼「今度さ、一緒にピクニックしようよ」
皇居ランを終えて、解散する前に誘われた。
走る以外にも彼とは、ご飯に行ったり、山登りに行ったり、サイクリングしたりする。
資格試験の合格祝いも一緒にしたし、クリスマスだって一緒に過ごした。
「男女の友情は存在するんだ」そう強く感じさせられた。
〇空
男女の友情が成立する関係で、私の本当の気持ちなんて伝えられなかった。
「大学の時から好きだったよ」この言葉を伝えたら、今遊んでる関係が終わってしまいそうで。
きっと、今でも好きなのだと思う。その気持ちはもう、愛情なのか、信頼なのか、恋なのかわからないけれど、それでも好きだ。
ずっと言いたくて言えない、私の秘密。
切ないような、甘酸っぱいような…気づいて欲しいけど、気づかれたら終わってしまうかもしれない。
そんな思いを感じました。
この二人が通じ合えるといいなぁって思いました。
甘酸っぱい物語でした。好きだけどそれを伝えちゃうと友達でもいられなくなっちゃう気がして。いつか終わりを迎えるかも知れない恋愛とずっと一緒にいられる友達だったら後者がいいなと考えちゃうところに共感です。
切ない心がとてもよく描写されている作品だと感じました。会話の進み具合もよくて、二人の色々な感情がじんわり伝わってくる作品でした、楽しかったです。