いれかわり

さむさん

いれかわり(脚本)

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〇大きな木のある校舎
  ねぇ、ちょっと良いかしら。
彼「なに?」
  突然で悪いんだけれど、ちょっと良いかしら。
彼「うん、少しなら、ね」
  あら、用事があるなら別に今じゃなくて良いんだけれど。
彼「待ち合わせなんだ。それまでで良いなら」
  ありがとう、それなら私も丁度良かったわ。
  そんなに時間を取らせる事じゃないから。
彼「いいよ。君の方から僕に話しかけてくれるなんて珍しい事だし」
  そうだったかしら。
彼「そうだよ。それで、用って?」
  人と人が入れ替わったら、どうなると思う?
彼「また突然だね」
  突飛な事なんだから、別にいきなり言おうが準備して言おうが、
  突然だねって言うと思うんだけれど。
彼「うん、それはそうなんだけれど」
  まぁ、ライトノベルみたいな会話は良いのよ。
  もともと突飛な話なんだし。
彼「で、その突飛で突然な話題はなんなの?」
  昨日ね、私誰かと入れ替わったのよ。
彼「うん」
  うんって。
彼「ちょっとまって、整理してた」
  思考しようが何しようが、単純な事だからそれ以上は無いわよ。
彼「なんで?」
  質問に対する軸がズレてるわよ。わかってる?
彼「それはわかるけれど、わかんないよ」
  うん、やっぱりかー。
  私もね、わからないのよ。体験しておいてアレなんだけれど。
彼「入れ替わりって、誰か知ってる人と入れ替わったの?」
  多分知ってる人っぽいのよね、誰かまではわかんないんだけれど。
彼「異性だった?」
  同性よ。何?下世話な話になるわけ?
彼「違うよ。入れ替わりっていったら異性が定番だしさ。 その後の行動も定番だけど」
  入れ替わりって言っても、中身そっくり入れ替わった訳じゃないみたいなのよ。
彼「どういう事?」
  なんていうのかしら、意思は私なんだけれど、身体が違う訳じゃない?
  なんだか自分じゃないのよね。
彼「そりゃあ、君じゃないからね」
  多分私と入れ替わっちゃったわからない子も同じ事考えたんじゃないかしら。
彼「例えばなにかある?」
  そうね、私って歩く時にすねの筋肉を使うのよ。
  意識して、こうグイっとつま先を上に上げる感じね。
彼「へぇ、珍しいね」
  誰も意識せずにつま先を上げているから、私の歩き方自体が珍しい事ではないとは思うけどね。
  ただ、意識する事自体は確かに珍しいと思うし、それは自覚してるわ。
彼「それで?なにか違ったの?」
  その子はね、すねじゃなくて膝で歩くのよ。
彼「へぇ、歩き方って種類があるんだ」
  歩き方も色々あるわよ。踵を先に地面につけるかどうかとかね。
  そういうのは、見た目に影響する歩き方だから違いはわかるけれど、
  それ以外の部分はわかり辛いんじゃないかしら。
  私やその子の様にね。
  とにかく、私の意志や記憶が身体を動かしているんじゃなくて、
  身体も記憶を保有しているっていうのが理解できたかしら。
彼「うん、面白いね」
彼「臓器移植した人がドナーの癖や食べ物の好みを受け継ぐっていうのは聞いた事ある。君の言っている事もわかるよ」
彼「それで?」
  それで、って?
彼「いや、大変だったのは解ったんだけど。 なんで入れ替わったのかとか、その後どうなったのかとか」
  良く解らないのよ。私の日常じゃない日常を体験した感じかしら。
  どうなったかって聞かれると、一日すごして寝て起きたら戻っていて今、っていう感じかしらね。
彼「なんていうか、落ち的な部分があるのかなと思って」
  今は無いけれど、ちゃんとあるから心配しなくて良いわ。
彼「それなら安心したよ。君の話だ。落ちが無い訳が無いしね」
  あなた私をどんな目で見ていたの?
彼「頭の良い雰囲気のあるの美少女。みたいな」
  私は漫画か小説のキャラクタだと思われてたのかしら。
彼「だって、君みたいな娘は早々いないよ。 その喋り方だってそうだし、歩き方もそうだね」
  私の事は別に良いのよ。
  私はあなたに私の事を聞いてる訳じゃないわ。
彼「どう思うかって事でしょ?」
  そう、私が訳の解らない出来事に巻き込まれた訳。
彼「それは僕にも解らないよ。最初に言ったけれど突飛すぎる。 君じゃない娘に言われたら、無視してるか流して終わらせてるよ」
  そう、ありがとう。
彼「なんで?」
  褒めてくれてるだもの。異性にそう言われて何も思わない子が居るのかしら。
彼「本当に君は面白いね。漫画やライトノベルのキャラクタみたいだよ」
  無駄な会話ね。
彼「そう思う」
  いいわ、話を戻すわよ。
  要するにね、私はその子に会いたいのよ。
彼「入れ替わった娘に?」
  そう、その子に会って。顔を見てみたいのよね。
彼「入れ替わった事を確かめたいの?」
  それは一つだけれど、一番の理由じゃないわ。
彼「一番の理由は?」
  その子の顔が見たいだけよ、さっき言ったわ。
彼「へぇ、やっぱり面白いね」
  おかしな事を言ってるのかしら。
彼「普通は、情報交換したり、原因をお互いで追究する物なんじゃないのかな」
  確かに一理有るわね。間違ってないと思う。
彼「そうだなぁ、漫画とかだとそこからロマンスが始まったりするんだろうけれど」
彼「君の場合は異性じゃなくて同性だからそういうのは無いのかな」
  無いわ。残念かもしれないけれど、私は同性にそういった意味での好意を持った事が無いから。
彼「残念って、別に僕はそういう目で君を見た事は無いし、 通常の性癖で良かったと思ってるよ」
  それって、私に気が有るっていう意味なのかしら。
彼「そりゃあ、珍しい男じゃない限り、君に気の無い人間なんて居ないんじゃない?」
  ありがたいのかどうなのか、微妙な所ね。
  それで、待ち合わせって言っていたけれど、まだ時間は良いのかしら。
彼「ああ、申し訳ないけれど、もう時間だよ」
彼「ちょっと遅れてるのかな、大体は待ち合わせの5分前には合流するんだけれど」
  そう、なら丁度良いわ。
彼「僕はあんまり丁度良くないかな」
  それを聞いて余計安心したわ。だって貴方あんまり異性と一緒に居るの見た事ないんだもの。
彼「まぁ、同じ学校の娘だし。恥ずかしいじゃない」
  そういうものかしらね。
彼「そうだよ」
  まぁいいわ。目的は果たせそうよ。
彼「どういう事?」
  だって、私昨日貴方とセックスしたんだもの。

コメント

  • 会話のみで展開する二人芝居を見たようなじんわりとした余韻が残るストーリーでした。この後、「彼」がどんな顔でどんな反応をしたのか、現れた「彼女」と三人で何を話すのか、読み手の想像力を掻き立てるラストもいいですね。

  • 最後はどんでん返し感があってとても面白かったです!
    中身が入れ替わるのは定番って言えば定番ですが、ここまで入れ替わりについて考える作品も無いと思います!笑

  • 最後の一言、勝手に効果音が入りました。淡々と話つつも、きちんと男を術中にはめこんだ清々しく素晴らしい展開が最高に心地よかったです。

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