読切(脚本)
〇教室
友人A「ルミ、ルミってば」
咲本ルミ「・・・・・・」
友人A「あールミったらまた入っちゃってるよ」
友人B「次移動教室だから急がないといけないのにね」
友人A「しかも次美術の山本でしょ あいつ少し遅れただけでもうるさいんだよね」
キーンコーンカーンコーン
友人A「ヤバ、もうチャイム鳴っちゃった」
友人B「どうする?」
友人A「どうするって・・・・・・」
友人A「・・・・・・ごめんルミ、後でなんか奢るから」
友人B「私も奢るから許してね あいつに怒られたくないし」
バタバタバタ
〇学校の廊下
友人A「でもさールミって本当変わってるよね」
友人B「授業中でもお構いなしに入っちゃうもんね あの集中モード」
友人A「確か波の音が聴こえるんだっけ?」
友人B「そうそう 突然聞こえてくるらしいよ それでその音に聞き覚えがあるから必死に思い出そうとして・・・・・・」
友人A「あんな感じになると」
友人B「そう」
友人A「ルミ可愛いから普通にしてれば絶対モテるのにね」
友人B「ね~もったいないよね」
友人B「性格もほぼ男だし」
黒木トオル「・・・・・・」
〇教室
咲本ルミ「ん?」
咲本ルミ「あれ?誰もいない ・・・・・・まさか」
咲本ルミ「はーまたやっちゃったか」
咲本ルミ「よりにもよって何で次が移動教室の時に起こるかねー」
咲本ルミ「次誰の授業だっけ ・・・・・・げっ山本だ」
咲本ルミ「あのおっさん遅刻にうるさいからなー」
咲本ルミ「仕方ない 保健室で仮病だな」
咲本ルミ「まああのタイプのおっさんは女の子の日で体調悪くてーとか言っとけばなんとかなるでしょ」
黒木トオル「お前噂通りめちゃくちゃなやつだな」
咲本ルミ「え?」
咲本ルミ「なに?あんた」
黒木トオル「4組の黒木トオル」
黒木トオル「ルミってお前のことか?」
咲本ルミ「あんたに下の名前呼び捨てにされる覚えないんだけど」
黒木トオル「さっき廊下でお前の話してる女子がそう呼んでただけだ」
咲本ルミ「あっそ それで?そんな名前も知らない私に何か用?」
黒木トオル「波の音が聴こえるっていうのは本当か?」
咲本ルミ「・・・・・・本当だけど、それが何よ?」
咲本ルミ「変なやつとか言いに来たわけ? あんたに関係無いんだからほっといて・・・・・・」
黒木トオル「俺も聴こえる」
咲本ルミ「え?」
黒木トオル「俺にも波の音が聴こえるんだ」
〇ファミリーレストランの店内
咲本ルミ「それで?あんたもその波の音に聞き覚えがあるの?」
黒木トオル「ああ、まあそうなんだけど・・・・・・ その前に」
黒木トオル「何でファミレス? まだ授業中だぞ」
咲本ルミ「だって話長くなりそうだったし 先生に見つかったら怒られるじゃん」
黒木トオル「放課後でいいだろ」
咲本ルミ「あんただって授業中によそのクラスに来たくらいだし、はやく聞きたかったんじゃないの?」
黒木トオル「それは、まあ・・・・・・」
咲本ルミ「ならいいじゃん それより本題ね あんたに聴こえる波の音ってどんなやつ?」
黒木トオル「どんなって 別に普通の波の音だけど ただ・・・・・・」
咲本ルミ「ただ?」
黒木トオル「何か、すごい懐かしい気持ちになるっていうか」
咲本ルミ「一緒だ」
咲本ルミ「私もそうなんだ 普通の波の音なのに何か妙に懐かしい気がする」
咲本ルミ「ねえ何で?」
黒木トオル「それが分かってたらわざわざお前なんか頼らないだろ」
咲本ルミ「はあー じゃあ結局何も分からないじゃん」
黒木トオル「そもそも手がかりが少なすぎる 波の音が聴こえるだけなんだからな もしかしたら本当にただの幻聴なだけかも」
咲本ルミ「それはない 絶対ない だって私この音絶対どこかで聞いたことあるもん」
咲本ルミ「だから、こうなんかフラッシュバック的なやつだって 昔の大切な思い出がさ」
黒木トオル「・・・・・・」
咲本ルミ「ちょっと聞いてんの?」
黒木トオル「お前この音が聞こえるようになったのいつだ?」
咲本ルミ「いつって 子供の頃からだけど・・・・・・」
黒木トオル「もっと具体的に」
咲本ルミ「具体的にって言われても」
黒木トオル「10歳の頃じゃないか?」
咲本ルミ「10歳?」
黒木トオル「いなせ島って分かるか?お前」
咲本ルミ「・・・・・・あ」
〇海辺
咲本ルミ「いやー意外と近いよね びっくり」
黒木トオル「お前の行動力にびっくりだよ まさかすぐに行こうとするとはな」
咲本ルミ「ノコノコついてきたくせに」
黒木トオル「まあ、確かに」
咲本ルミ「で、どこだっけ?」
黒木トオル「確かこっちの道に行って・・・・・・」
〇古びた神社
咲本ルミ「おおーここだー」
黒木トオル「懐かしいな」
咲本ルミ「トオルが同じ学校に通ってたのもビックリしたけど」
咲本ルミ「でもまさか二人して名字が変わってるとはね」
黒木トオル「気づかないわけだな」
咲本ルミ「まあ気づかなかったのはそれだけが理由じゃないと思うけどね」
咲本ルミ「昔はあんなに可愛げのある子だったのに こんなにひねくれちゃって」
黒木トオル「同じ言葉返したいんだけど」
咲本ルミ「ハハっ」
咲本ルミ「そういえばよくこの神社に約束したよね 大人になっても毎年お参りに来るからねって」
咲本ルミ「でも結局島から引っ越して一度も来てないんだよね」
咲本ルミ「それでここの神様が波の音で私達に思い出させようとしたのかな」
黒木トオル「・・・・・・かもな」
咲本ルミ「何? どうしたの?」
黒木トオル「いや別に」
黒木トオル「それより謎も解けたしそろそろ戻らないとまずいだろ」
咲本ルミ「あっ、そっか 私達学校抜けてきてたんだった」
黒木トオル「ああだから早く帰らないと・・・・・・」
咲本ルミ「あっ待ってトオル」
黒木トオル「ん?」
咲本ルミ「連絡先教えてよ」
咲本ルミ「また昔みたいに遊ぼう」
黒木トオル「あ、ああ そうだな」
咲本ルミ「・・・・・・よしこれでOK」
咲本ルミ「じゃあまた明日からよろしく」
黒木トオル「・・・・・・お祈りしてみるもんだな」
咲本ルミ「なんか言った?」
黒木トオル「いや、何も」
〇黒
〇古びた神社
白石トオル「神様、明日ルミちゃんが引っ越しちゃうんだ」
白石トオル「僕ルミちゃんのことが好きなんだけど引っ越したらもう会えなくなっちゃう」
白石トオル「だからお願いまたいつか僕とルミちゃんが会えるようにして」
白石トオル「・・・・・・ってこんなお願いしても無駄だよね 帰ろ」
・・・・・・
承った
お主らの絆が本物ならば、いなせ島のさざなみがまた二人を結びつけようぞ
二人に過去の記憶を思い出させるためのアイテムが波の音だなんて、神様もなかなかのロマンチストですね。これからはサバサバ行動派のルミにトオルが振り回される愉快でお似合いのカップルになるんだろうな。
神様が叶えてくれたのですね!
とても素敵でした!😆
さざ波に引き寄せられた2人、最高に素敵なストーリーでした! お参りしながら、神様の存在を信じたくなりますね。大人になって結ばれなくても2人の心に永遠に残る記憶でしょうね。