クロと私の日常(脚本)
〇古いアパートの一室
私「クロちゃーん、どこー」
私には、大切な家族がいる
私「もー、また変な場所に隠れちゃったの」
声は聴こえるのに、姿は見えない
私「クロちゃん?」
クロはかくれんぼが大好きで、目を離すとすぐにどこかへ隠れてしまう
私「机の下? タンスの裏? 布団の中?」
私「むぅ、返事だけはするんだから」
私「残るは──ここか!」
思い切って、カーテンをめくってみると
私「やっと見つけた~」
嬉しくて、思い切り抱きしめてしまう
クロ「にゃっ!?」
私「クロちゃんは本当に隠れるのが上手だねぇ」
クロ「にゃー」
この子以外、私に家族はいない
数年前、子猫の引き取り先を探している知り合いに頼まれてやってきた、恋人のように親密な存在
私「お腹空いたの?」
クロ「にゃ」
私「それじゃあ、少し早いけどご飯にしようか」
クロ「にゃー」
言葉は通じなくても、私たちは以心伝心
お互いの考えていることは、簡単に理解できる
私「私も一緒に食べようかな、少しだけ待てる?」
クロ「にゃん」
私「よしよし、いい子だね」
えーと、自分のご飯は簡単でいいかな
お腹が空いているというよりも
クロと一緒に食べたい、それだけだから
〇古いアパートの一室
私「ありゃ、もうこんな時間か」
要領が悪いのに、ついつい調理に熱が入っちゃって
クロ、待たせちゃったな──
私「わっ、クロちゃん!?」
クロ「にゃー」
いつの間にか、足元に
私「ごめんごめん、待ちきれなくなっちゃったんだよね」
クロ「んにゃ」
ご機嫌斜め、というほどじゃないかな
私「すぐにクロちゃんのご飯、用意するからね」
クロ「んにゃん」
私「よーし、クロちゃんのご飯の缶詰を──」
私「わっと」
クロ「ふにゃ~、にゃ~」
嬉しそうに、私の足元にすり寄ってくるクロ
私「ほらほら、すぐにあげるから落ち着いて、ね」
クロ「んにゃんにゃん」
食いしん坊のクロちゃんは、ご飯になると凄く興奮しちゃう子
そこが可愛くて、たまらないんだよね
私「ハイ、ご飯だよー」
一心不乱にご飯を食べ始めるクロ
私「落ち着いて食べなよ──と言ってもこうなったら聴かないからなー」
私もご飯食べよ
私「私がいただきますをする前に、クロちゃんはごちそうさまになっちゃうもんね」
クロ「にゃー」
ありゃ、と思ったらもう食べ終わってるよ
私「おかわり、食べる?」
クロ「にゃ!!」
今日一番のお返事しちゃって、もう
私「可愛いなー、クロは」
クロ「んにゃん」
〇古いアパートの一室
私「ふわぁ」
今日もいつもどおり、クロとの時間を楽しんで
気づいたら、ずいぶんと遅い時間になっちゃったな
私「そろそろ、寝ようかな」
静かなことから考えると、クロもどこかで眠りについたみたいだから
私「クロ、おやすみ」
布団に入って、目を閉じる
そうすると、すぐに眠気が──
「わっ」
聴こえる鳴き声、布団の上に温かい感覚
私「寂しくなっちゃった?」
クロ「にゃん」
私「じゃあ、一緒寝ようか」
「にゃー」
布団の上、程よい重みと温かさを持ったクロ
「おやすみ、クロちゃん」
「にゃあ」
お互いの温かさを感じながら、私たちは仲良く眠りについた
実際に犬猫と暮らしてお世話をしていると、飼い主の方が動物の人生(?)の脇役になったような気がするほど動物中心の生活になりますね。それでもかけがえのない時間をたくさんくれる存在ですね。
動物って癒されますよね。
言葉や会話がなくとも通ずる部分はありますし、言葉がないからこそ一緒にいて億劫になりませんよね。
今は何も飼っていませんが、猫、いいなぁ。
私はかなりな歳になって猫と触れる機会があり、今では猫が大好きな人間ですが、自分で飼った経験がないので、一つ一つの描写から想像しながら読ませてもらいました。