彼女からの記憶喪失

要 九十九

記憶喪失(脚本)

彼女からの記憶喪失

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〇病室
???「・・・うん?」
???「あれ・・・? ここは、どこだ?」
  辺りを見回す。
  周りにはテレビや簡素なパイプ椅子が置いてある。
  自分の頭に巻かれている包帯らしき物を触って、ここが何処か、やっと気付く。
  どうやら、ここは病室らしい。
  だが、問題は・・・。
???「俺は・・・誰だ・・・?」
  そう呟いた瞬間。
  病室の扉が開き、誰かが入ってきた。
  悲しそうな顔で病室に入ってきたのは、とても綺麗な女性だった。
???「たーくん! 目が覚めたのね! 良かった!!」
  そう言いながら、俺を見て笑顔になる女性。
  だが、自分が誰かも分からない俺には、その女性にも見覚えはなかった。
???「あの、すみません。 あなたは誰ですか?」
???「たーくん、もしかして記憶が? わたしの事も分からない?」
???「はい。すみません。 自分の名前すら・・・。 あなたは誰なんですか?」
夏海「わたしの名前は日向夏海。 あなたは佐藤拓哉っていって、事故に遭って、ずっと意識不明で・・・」
拓哉「佐藤、拓哉・・・?」
  自分の名前の筈だか、やはりしっくりと来ない。
夏海「起きたばっかりで、分からない事も沢山あるかも知れないけど・・・。 目覚めてくれて本当に良かった!!」
  そう言って、心底嬉しそうな顔をする彼女を見て、不安でいっぱいだった俺は、少し安堵した。
夏海「このまま、ずっと目覚めなかったらどうしようって本当に心配してたんだよ? とりあえず、直ぐに先生呼んでくるから、待ってて!」
  そう言った彼女は、勢い良く病室を出ていく。
  少しして彼女が戻ってきた時には、白衣を着た男性が一緒だった。
???「良かった。佐藤さん目覚めたんですね」
  病室に入ってきた男性は、俺の正面に立った。
鈴木「私はあなたの担当医師で、名前は鈴木といいます。これから、よろしくお願いします」
拓哉「鈴木さん・・・。 よろしくお願いします」
鈴木「君は一月前ぐらいにひき逃げに遭って、この病院に運び込まれて来たんだ。怪我自体はそこまで大きくはなかったんだが・・・」
鈴木「そこから、ずっと意識がないまま、今まで目覚めなかった」
鈴木「意識が戻って、本当に良かったよ。 でも・・・」
鈴木「彼女から聞いたんだが、記憶がないんだって?」
拓哉「はい。何も覚えていなくて・・・」
鈴木「なら、今から軽い検査をしようか」
拓哉「はい。お願いします」
  それから、鈴木さんに幾つかの質問をされた俺は、覚えていることを1つ1つ丁寧に答えていった・・・
鈴木「うーん。なるほど」
鈴木「本格的な検査の必要はありますが、恐らくエピソード記憶・・・」
鈴木「自分が体験した記憶を、思い出せなくなっている可能性がありますね」
拓哉「そう・・・ですか・・・」
鈴木「まぁ、検査の結果がどうあれ、これから大変な事があるとは思いますが、こんなに素敵な彼女がいるんだ」
鈴木「君も頑張らないとね」
夏海「か、彼女・・・」
鈴木「だって、そうでしょう? 彼女は一月前に君が事故にあった日から今日まで、毎日君のお見舞いに来てたんだよ」
鈴木「そんな素敵な彼女。今時、中々いないぞ?」
鈴木「じゃあ、また何かあったら呼んで下さい。これから一緒に頑張って行きましょう」
拓哉「はい! ありがとうございました!」
夏海「たーくん、わたしも一緒に頑張るからね?」
  それから、俺は寝たきりだった体の調子を戻す為に、リハビリを頑張った。
  その間も彼女は毎日、甲斐甲斐しくお見舞いに来てくれて、2人の思い出話を沢山聞かせてくれた。
  俺と彼女は何年も付き合っているカップルで、今は同棲してる事。
  色んな所にデートに行った話など、俺はどれも思い出せなかったが、その話を毎回楽しそうにする彼女を見ていると俺も嬉しくなった
  そして、俺が目覚めてから数ヶ月が経ち、やっと病室から解放される事になった

〇綺麗な一人部屋
夏海「ただいま~」
拓哉「ただいま・・・」
夏海「たーくん、緊張し過ぎだよ~ ここはわたしたちの家なんだから」
拓哉「いや、そうは言ってもさぁ・・・」
  退院した俺は、夏海の案内で2人で同棲していた部屋に戻ってきていた。
  当たり前だが、この部屋も記憶にはない。
夏海「じゃあ、わたし飲み物でもとってくるから、適当にくつろいどいて」
拓哉「ありがとう」
  俺は夏海がいなくなった部屋をじっくりと見回す。
拓哉「ここに俺たち2人で住んでたのか。 凄く綺麗な部屋だなぁ」
拓哉「あれ?」
  部屋を見て、何か違和感に気付くが、それが何なのか分からない。
夏海「ただいま~ はい、たーくんの好きなジュースだよ」
拓哉「おかえり~ ありがとう」
拓哉「げっ! 甘過ぎぃ! 俺こんなの好きだったの?」
  これと一緒に食べれば、どんな苦いものでも甘くなりそうなそのジュースに驚く。
夏海「ねぇ、たーくん。 私の秘密教えようか?」
拓哉「秘密? 何?」
夏海「わたしね」
夏海「君の彼女じゃないんだよ?」
拓哉「は? なに・・・を・・・あれ?」
  体の自由が突然きかなくなる。遠のく意識の中、部屋の違和感の正体に気付く。
  2人で住んでいるのに、男物の荷物がないのだ。
夏海「わたしね、ずっと君を見てたんだ」
夏海「ずっと君と一緒にいたいな~って」
夏海「だから、君に車でぶつかったの」
夏海「わたしは寝たきりでも良かったんだけど」
夏海「目覚めた君が、記憶を失ってたのは運命感じちゃった!」
  女が何かを言っているが、もう俺の意識は殆どなかった。
夏海「これで」
夏海「君と」
夏海「これから、ずっと一緒だね」
  その言葉を最後に、俺の意識は途切れた・・・。

コメント

  • 新手の当て逃げないストーカー詐欺師ですね。最後に彼女が白状した瞬間、なんだか身の毛がよだった感覚です。ひとつ同じ女性として腹立たしいのが、そんなに好きでしかたない人なら精神的なダメージを与えてほしくない!ということです。

  • とんでもないストーカーに好かれてしまいましたね。しかも、車で跳ねるなんて「好き」を通り越して「サイコ」です。彼女から早く逃げましょう。

  • 怖い〜。独占欲強いというかなんとしてでも手に入れるためなら方法はいとわないというか、女の子が尽くすタイプの女の子だったので純愛ものと見せかけてのこの展開、背筋がゾゾーと涼しくなりました。

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