読切(脚本)
〇川に架かる橋の下
小林 誠「話題に窮したときに、自分の友人の秘密を暴露しない者はきわめて稀である ──ニーチェ──」
小林 誠「これって相手に弱みを握らせることの危険性を説いている言葉なのだろうか?」
小林 誠「それとも、友人までも裏切ってしまう自分への戒めとしての言葉なのだろうか?」
謎の人物「独り言を言いながら目の前の画面に描写されているクエスト内容を確認しながらゲームを進めているこの少年・・・・・・」
謎の人物「塾に行くと言ってコッソリ、ゲーム機をカバンに入れていたようだ」
謎の人物「全く私に気づかないし 私の姿や声などは届いていないようだ・・・」
謎の人物「はやく立ち直って、学校に行けー!」
謎の人物「っと言いたいとこだが 届かない言葉を叫んでもしょうがないか・・・」
謎の人物「おっと、橋の上から元気な女の子が来たねぇ~ こんな男見ていても面白くないからあっちの方でもみよ」
「あ~~あ、どうしよう 誰にも言わずに部活サボっちゃったよ・・・」
「とりあえず、このコーラでも飲んで落ち着こう・・・」
何度かアルミのはじくような音が鳴り響く
「あっ!!」
赤い物体が高い所から落ちてくる
小林 誠「あと、もうちょいでクリアだな 終わったら、塾にい・・・・・・」
終わりを告げるゲームクリア画面と共にそれをたたえるかのように上から甘いシャンパンシャワーが降り注ぐ
小林 誠「あ・・・・・・・・・」
小林 誠「これはきっと塾に行くなという神様から教えかもしれん」
謎の人物「自分の都合のいいように解釈しやがったぞ、この少年!」
謎の人物「うーん、これを利用して悪いことを企んでいないといいが・・・」
「ごめんなさい! 手が滑ってしまって!」
佐々木 由季「本当にごめんなさい ケガはありませんでしたか?」
小林 誠「あー大丈夫、大丈夫です」
二人の視線があう
佐々木 由季「あれ? 誠じゃん!」
小林 誠「あ~ 佐々木か」
小林 誠「久しぶりに クラスメイトにあった気がする」
佐々木 由季「こんなところで何してるの? 制服じゃないし、どこか遊びに?」
小林 誠「いや、これから塾に行く前にここでてスイッチを切り替えるために来ていただけだよ」
佐々木 由季「つまり、サボっていたってこと?」
小林 誠「どうしてそう思ったんだ?」
小林 誠「もしかして、2時間ぐらいゲームしてたのばれてた?」
佐々木 由季「いや、別に~ ちょっと聞いてみただけだよ~」
佐々木 由季「先生に チクっちゃおうかな~」
小林 誠「そもそも、隠す気がなかったから別に言ってもいいけど・・・」
佐々木 由季「ふーん 意外と悪いことしてても平気なタイプなんだね」
小林 誠「僕は別に普通のことだと思っているから 隠していてもしょうがないという考え」
小林 誠「例えば、誰かに手助けして欲しい時には誰かに相談することが普通でしょ?」
小林 誠「そういうこと」
佐々木 由季「確かにそうかも・・・・・・・・・」
佐々木 由季「じゃ、ちょっと相談するけど」
小林 誠「お、おう」
佐々木 由季「これ、誰にも言っていないんだけど 実は秘密をばらして怒らしてしまった友達がいて」
佐々木 由季「しばらく話したくないっていう人と話すにはどうしたらいいと思う?」
小林 誠「友達ってよく一緒にいた阿部?」
佐々木 由季「そうそう、阿部ちゃん」
小林 誠「そうだな~」
小林 誠「まず、ちゃんと謝ったの?」
佐々木 由季「向こうはめっちゃ怒ってしまいまして・・・ ぜんぜん聞いてくれない状態に・・・」
小林 誠「そういうことか あ~、ライン超えてキレると話通じないからね~」
謎の人物「誠君も人間関係がらみで不登校になってしまっているからね どう答えるのか・・・」
小林 誠「・・・・・・・・・」
小林 誠「よし、まず阿部に──────」
小林 誠「あっ、塾講師から電話だ もしもし~ はい・・・・・・」
小林 誠「えっ、5分以内に来ないと反省文1万文字?! すぐ行くんでそれだけは!!」
電話を切った
小林 誠「あ~、ごめん もう、行かないと じゃね!」
佐々木 由季「えっ、ちょっと!」
謎の人物「いい所で終わってしまったの~ 非常に残念じゃ 最後、なんて言おうとしたんじゃろ?」
〇川に架かる橋の下
──塾から帰宅中──
小林 誠「あっ、阿部だ・・・・・・」
阿部 香織「あの日、以来ね・・・・・・ 体調、悪いって先生が言っていたけど大丈夫なの?」
小林 誠「あ~、最近はだいぶ良くなってきたよ」
阿部 香織「なら、よかった。 また、学校で会いましょう」
彼女はそのまま誠の横を通りすぎた
小林 誠「ちょっと待って!」
小林 誠「そういえば、お昼にこの道を通った時 謝りたいって呟きながら歩いている人がいたよ」
謎の人物「今まで向き合うことができなかったことが 理想は違えど、ちょっとは前進する」
謎の人物「話題があるときは自分の秘密を暴露し、人を成長させる ──ニーチェ──」
謎の人物「これも付け足しておきましょう」
END
読んでいくうちに、主人公が少しずつ成長してるのがわかって、人に優しくできるようになってきたのが、素敵だと思いました。
読んでると、こちらまで優しい気持ちになれます。
なんだか考えさせられるストーリーでした。
人それぞれ感じ方は違って、同じことでもすごくしんどく感じる人もいればなんとも思わない人もいて。でも、お互いに少しずつ助け合えると、みんなが暮らしやすい世の中になるんじゃないかなと思いました。
優しい気持ちになれた物語でした。今思い返せば、学校に毎日通うというのもしんどいことでした。でも何がしんどいかは人それぞれで、クラスメイトには思いやりを持って接する主人公が本当に素敵だと思いました。学校や学歴は人生の中でそんなに重要じゃないです。他人の気持ちを思いやれる人が本当に素晴らしい人なのだと思いました。