魔王ちゃんちょっと素直になる(脚本)
〇教室
善子「あっ、魔王ちゃんおはよ〜」
魔王ちゃん「うむ、善子か。おはようなのじゃ!」
魔王ちゃん「朝から妾の機嫌を伺いに来るとは、良い心がけじゃな! 褒めてつかわすぞ!」
善子「もー、またそういう誤解を招く言い方して〜」
善子「素直に「朝から会えて嬉しい」って言えばいいのに〜!」
魔王ちゃん「ふっ、ふぇっ!? ううう嬉しいっ!?」
魔王ちゃん「そそそ、そんなことは言っておらんぞ? ま、まあその、善子に会えて嬉しくないわけがないというか、その・・・」
善子「んー、なになに? よく聞こえないよ〜、魔王ちゃん?」
魔王ちゃん「ふぇっ!? 善子、今絶対聞こえてたじゃろ!?」
キーン、コーン、カーン、コーン
魔王ちゃん「ほ、ほらもう授業が始まってしまうぞ! 早く席に戻らねば!」
善子「えー、残念。 もっと魔王ちゃんと話してたいのに〜」
善子「じゃっ、また後で来るね、魔王ちゃん!」
魔王ちゃん「う、うむ!」
魔王ちゃん「・・・待ってる、ね?」
善子(・・・!!)
善子「やばい!! この子かわいすぎるやろー!!」
〇家庭科室
善子「次の授業は、待ちに待った調理実習! 楽しみだね、魔王ちゃん!」
魔王ちゃん「・・・ちょーりじっしゅう? なんじゃ、それは?」
善子(あっ、そっか! 魔王ちゃん、まだこの世界に来たばかりだから知らないんだ!)
善子「えーっとね、みんなで一緒にご飯を作って食べるの! 楽しいよ!」
魔王ちゃん「おお、料理を作るのか! 食べるのは好きじゃが、作るのははじめてじゃのう!」
魔王ちゃん「それはとっても楽しみじゃ!!」
しかし、2人は知らなかった。
これが悲劇の始まりだったことを・・・
魔王ちゃん「あ、あれ? このスープ、やけに甘いのう?」
善子「魔王ちゃん、それ塩と間違えて砂糖入れてるよ!?」
魔王ちゃん「な、なんか肉焼いてたら変な臭いがしてきたんじゃが・・・」
善子「わーっ、焦げてる焦げてる!! はやく火止めてー!!」
数々のトラブルを経て、なんとか料理は終わった
魔王ちゃん(黒焦げだったり味間違えてたり・・・ 全部まずそう・・・)
魔王ちゃん「・・・善子、みんな ごめんなのじゃ、妾のせいで・・・」
善子「ううん、しょうがないよ 初めてだもん、失敗はつきもの!」
善子「そんなことより、作った料理食べようよ ほら、おいしそうだよ?」
魔王ちゃん(善子、無理に励まそうとしてくれてるのじゃ・・・ おいしそうなんて、そんなわけないのに・・・)
魔王ちゃん「ごめん、本当にごめんなのじゃー!!」
善子「えっ、魔王ちゃん!? ちょっと、どこいくのー!?」
〇田舎の公園
魔王ちゃん(思わず学校から逃げ出しちゃった・・・ 善子たち、怒ってるじゃろうな・・・)
善子「あーっ、いたいた魔王ちゃん! やーっと見つけた!」
魔王ちゃん「よっ、善子!? どうしてここに!?」
善子「だって魔王ちゃん、いきなりどっか行っちゃうんだもん ずっと心配して、あちこち探し回ってたんだよ?」
善子「でも良かった〜、無事に見つかって 大丈夫? どこか具合悪い?」
魔王ちゃん「・・・なんで、なのじゃ」
善子「・・・えっ? なんでって、なにが?」
魔王ちゃん「どうして善子は怒らないのじゃ どうして妾に、そんなに優しくしてくれるのじゃ」
魔王ちゃん「元の世界では魔王でも、この世界の妾はただの役立たずじゃ 今日だって失敗ばかりで、善子たちにも迷惑かけて・・・」
魔王ちゃん「こんな妾に、善子に優しくしてもらえる価値はないのじゃ・・・ 妾なんて、もういない方が・・・」
善子「・・・そんなことないっ!!」
魔王ちゃん「よ、善子・・・?」
善子「いない方がいいなんて、そんなこと絶対ない!!」
善子「慣れないこの世界で、 魔王ちゃんが誰よりも一生懸命なのを私は知ってる」
善子「本当はみんなと仲良くなりたくて、頑張ってるのも知ってる」
善子「そんな魔王ちゃんを応援したいって もっと、もーっと仲良くなりたいって 私は、心からそう思ってるんだよ?」
魔王ちゃん「善子・・・」
善子「なのに・・・」
善子「なのに・・・!! いない方がいいなんて、そんな悲しいこと言わないでよ・・・!!」
魔王ちゃん(・・・!!)
魔王ちゃん「ごめん、ごめんね善子・・・!!」
善子「・・・ううん」
善子「・・・一緒に帰ろう、魔王ちゃん!!」
魔王ちゃん「・・・うん♪」
〇教室
翌朝
善子「おはよう魔王ちゃん!」
魔王ちゃん「う、うむ! いや、ではなく・・・」
魔王ちゃん「おはよう、善子 今日も会えて嬉しい♪」
善子(・・・!!)
善子「素直な魔王ちゃん、可愛すぎるやろー!!」
「魔王」という怖い響きの言葉に「ちゃん」をつけただけで途端に可愛くなるのはなんでだろ。それにしても魔王ちゃんは、今の可愛い言動からは想像できないけど、この世界に来るまでは魔王としての力を発動して敵を倒してたりしてたんだろうか。
ツンデレ魔王ちゃんも、素直な魔王ちゃんもどっちも可愛すぎる…。どっちも可愛いということは真に魔王ちゃんは可愛いということ…羨ましい…。