裏切り者の親友

鍵谷端哉

読切(脚本)

裏切り者の親友

鍵谷端哉

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〇教室
一樹(真と一花は、いわゆる幼馴染の関係だ。何となく気が合って、遊ぶときは3人で、どこに行くにも一緒だった)
一樹(それは高校に入ってからも、変わることはなかった・・・)

〇開けた交差点
一真「一樹は行きたいところは、あるのか?」
一樹「うーん。海・・・とか?」
一真「ベタだな」
一樹「うるせーな。一真はどうなんだよ?」
一真「んー。山でキャンプ、とか?」
一樹「お前もベタじゃねーかよ」
一花「おっはよー!」
「痛っ!」
一花「あははは。隙だらけなのがいかんのだよ」
一樹「朝から、テンションたけーよ」
一花「にゃはは!元気が、一花ちゃんの取り柄なのだー!」
一真「疲れる・・・」
一樹「ああ、そうだ。一花は夏休み、行きたいところあるか?」
一花「ん?んー。ニューヨーク、とか?」
一樹「すまん。普通に行けるところで、行きたいところだ」
一花「じゃあ、市民プール」
一樹「・・・ そこまで日常的じゃなくていい」
一花「ん?」
一真「まあ、一花はどこに行っても、楽しめそうだから、俺たちで決めちまおう」
一樹「そうだな」
一花「でもさ、でもさ!なんで、急に旅行の計画なんて立てるの?」
一樹「あー、そういえば、なんでだっけ?」
一真「まー、いいじゃねーか。高校最後の思い出ってことで」
一樹「いや、俺たち、まだ2年だから。高校最後は早すぎるだろ」
一真「いやいや。一年なんて、過ぎるの早いぞ。それに、来年になったら、受験とかあるから、あんま遊べないだろ」
一樹「うっ!考えたくない現実を突きつけやがって・・・」
一花「にゃはははー。受験かー。2人とも頑張ってねー」
一樹「なんだ、そりゃ?お前、大学いかないつもりか?」
一花「ううん。にゃにゃんと!一花ちゃんは、既に推薦を貰えることが決まっているのだー!」
一真「学年一位は伊達じゃないってか」
一樹「こんなのが、学校内で一番頭がいいって、なにか間違ってる・・・」
一真「とにかく、俺たち2人は、来年、地獄なんだから、今年の夏は全力で遊ぶぞ!」
一花「おー!」
一樹「地獄って言うな・・・」

〇映画館の入場口
一樹(一真の言う通り、時間なんてすぐに過ぎ去っていく)

〇池のほとり
一樹(楽しい時間なら、尚更だ。気付けば、夏休みも最後の日になっていた)

〇開けた交差点
一真「いやー、充実した夏休みだったな。今までで最高の夏休みだったよ」
一樹「・・・ その分のツケも膨大だけどな。あーあ、半年先まで小遣い前借りしちまったからなー。しばらく、贅沢はできねーな」
一真「小遣いのことを気にするのもいいけど、宿題、やってるのか?」
一樹「あああー!やべえ!全然、やってねえー」
一真「はははは。だと思った」
一樹「お前は、どうなんだよ?」
一真「やってねーよ」
一樹「なんで、そんなに余裕なんだ?」
一真「・・・ そういえば、今日、流星が見れるみたいだな」
一樹「なんだよ、急に?」
一真「いや、夏休みの最後を締めくくるに相応しいな、って思って」
一樹「うーん。ここまで来たら、もう宿題は諦めて、怒られることにするか・・・」
一真「いつものことだな」
一樹「うるせーな。じゃあ、一花も呼んで、3人で流星、見に行くか」
一真「・・・ なあ、樹」
一樹「なんだよ、急に真面目な声出して」
一真「俺たち、親友だよな?」
一樹「な、なんだよ!金ならねーって言ったばかりだろ」
一真「いや、そうじゃなくてさ。この先、何があっても、裏切ったりしないよな?」
一樹「当たり前だろ。っていうか、その言い方だと、フラグにしか聞こえねーぞ。なんか、企んでるのか?」
一真「まあ、な」
一樹「おい!」
一真「お前さ、一花のこと、どう思ってる?」
一樹「は?さっきから、なんなんだよ!お前、最近、ちょっと変だぞ?」
一真「いいから、答えてくれよ」
一樹「・・・ 幼馴染」
一真「建前じゃなくて、本当の気持ちを知りたいんだ」
一樹「・・・ ・・・」
一真「教えてくれよ。俺たち、親友だろ?」
一樹「俺さ・・・。3人でいるのが、すげー楽しいんだ。この先も、ずっと、このままでいたいなって思ってる」
一真「そんなことは・・・」
一樹「ああ。無理だ。けどさ、せめて、高校の間だけは、この関係でいたいんだ」
一真「・・・ そうか」
一樹「一真の、一花への気持ちはわかってる」
一樹「だけど、ごめん。あと1年だけ、待ってくれよ。卒業までは3人でいたいんだ」
一真「・・・ わかった」
一樹「すまん」
一真「ま、とにかく、今日は夏休みの最後の日だ。思い切って、楽しもうぜ」
一樹「じゃあ、一回、家に帰ってから18時に集合しようぜ」
一真「ああ、わかった。一花には俺が連絡入れとく」
一樹「おう、頼んだ」
一真「一樹、ありがとな」
一樹「・・・ なにが?」
一真「今回の夏休み、すげー楽しかったよ」
一樹「あ、ああ・・・」

〇本棚のある部屋
一樹「えーっと、虫よけとか持ってった方がよさそうだよな?」
一樹「ん?一真からメール?・・・なっ!」

〇山道
一樹「くそ、あいつ!何考えてるんだ!」

〇黒
  一真からのメール。
一真「すまん、一樹。やっぱり、俺、一花への思いを抑えきれなかった」
一真「それで、一花を呼び出して、告白した。俺たち、付き合うことになったから、今日は、お前は来ないでくれ」

〇山道
一樹「くそ!くそ!くそ!裏切らないって言ったばかりだろ!一真― !」

〇山の展望台(鍵無し)
一樹「一花!」
一花「・・・ いっちー?」
一樹「俺も、俺・・・ 。お前のことが好きだ!ずっと、ずっと好きだった!」
一花「・・・ え?」
一樹「あ・・・。ご、ごめん。いきなり、こんなこと言われても困るよな・・・」
一花「う、うう・・・ 。ふえー」
一樹「な、なんで、泣くんだよ!」
一花「だって、嬉しくて― 。一花ちゃんも、いっちーのこと、大好きでー」
一樹「ちょ、ちょっと待て!なら、どうして一真の告白を受けたんだよ?」
一花「ふえ?かずくん?なんの話?」
一樹「え?一真に告白されたんじゃ・・・?」
一花「ううん。かずくんには、ここでいっちーが来るのを待ってろって」
一樹「あいつ、何考えてるんだよ!」
  スマホで電話を掛けるが出ない。
一樹「なんなんだよ、あいつ・・・」

〇開けた交差点
一樹(一真は、夏休みが終わったら、親の転勤で引っ越すことをずっと黙っていた)
一樹(つまり、一真にとって、今年が3人で過ごす最後の夏休みだったんだ)
一樹(3人で、思い出を作って、最後に俺と一花を付き合うように仕向けた)
一樹(ホント、あいつはとんだ裏切り者で・・・最高の親友だ)
  終わり。

コメント

  • 本当の友達、親友であり、とんだ策士ですね。
    こんなカタチでさようならになるのは辛すぎる気もしますが、高校を卒業して、再会できるといいなぁ。

  • 友達とか親友とか、一緒にすごした時間や共通の好みを通して生まれたりすると思いますが、彼らのような関係を築くにはお互いの深い思いやりが必須ですね。とても心に残るお話でした。

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