踊り念仏からのアンパンマンマーチ

笑門亭来福

あの人(脚本)

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〇裁きの門
  『和尚さん 和尚さん あの人どうしているでしょうね。』
  『せっかくのチャンスを棒にふった あの人ですよ。』
  『ほら、蜘蛛の糸っていうお話しの あの人ですよ。』
  『蜘蛛の命を助けたあの人を、天女様が、ごほうびだって、天から蜘蛛の糸を地獄にたらして助けようとしたんだけど』
  『必死に登ったあの人が、あとちょっとで天に届くっていうところで、』
  『下から他の亡者が糸に群がって、細い糸が切れるのを心配したあの人は、』
  『これはおれの糸だぁって、欲を出したとたん、糸が切れて、もとの地獄に落ちたあの人ですよ。』
  『天女様も容赦がないっていうか、気が変わりやすいっていうか、』
  『あの人、蜘蛛を2匹助けてたら、ワンチャン、その後もう一回、天から糸は、たれてきたのかなぁ』

〇カラフルな宇宙空間
  『こんな夢を見た』
  『山門に 夏の日差しの 影濃ゆし』
  『山門をくぐると登り階段。暑い。次の一歩が出ない。階段沿いの手すりには、摩尼車が連なっている。』
  『風が吹いて、おいでおいでと誘われた。』
  『階段を過ぎると、88体の地蔵。八十八ケ所巡りができ、テンションがあがる。』
  『いよいよ本堂に手を合わせる。蝉の声しか聞こえない。木の匂いがした。良きかな。』
  『本堂の端に「修験道」の看板。』
  『階段を降りると、また看板。「これより修験道。暗きのち、やがて明るくなります」とある。』
  『くぐり戸を入る。結界をぬける感覚。』
  『全くの暗黒。壁づたいにすり足。』
  『灯りがぼんやり見えてきた。』
  『壁画的な絵が続き、簡単な説明書きがある。』
  『六道世界とは、天界、人間界、修羅界、畜生界、餓鬼界、地獄のこと・・・』
  『各界の様子がよく描かれている。』
  『絵とはいえ、地獄の様子は、やはり気味が悪い。』
  『下へ下へと、吸い込まれるように、道は続く。』
  『いかめしい建物が見えてきた。』

〇裁きの門
  『ワシが閻魔大王である!』
  『どうやら、ここは地獄らしい。』
  『ワシの目、体、心は鏡である。お前の罪はなんだ。』
  『・・・わたしの罪はなんでしょう。』
  『酒や癖が抑えられないことはあるか』
  『・・・数えきれないほどです』
  『犯したことがあるか』
  『・・・妄想が止まらないことがあります』
  『盗んだことがあるか』
  『・・・わたしだけを見てほしくて、心を少し』
  『嘘をついたことがあるか』
  『・・・物語のつもりでした』
  『殺めたことがあるか』
  『・・・たくさんの命を食べてきました』
  『ワシが閻魔大王てある。地獄も色々じゃ。
  そこに3つの扉がある。自分で選び進め。
  地獄か、餓鬼道か、畜生道か・・・』
  「扉には、それぞれこのように刻まれていた。」
  一 泣かぬなら なかずともよい ホトトギス、ニ 泣かぬなら 共に歩もう ホトトギス、三 泣かぬなら 潔きこと ホトトギス
  『どの道にも苦楽あり。直感で行こう。』
  『ニの扉を押し開いた。』
  『釜茹でや、針の山も、痛くて苦しいが、心を蝕むのも、また苦しい。無限行列地獄じゃ。』

〇スカイフィッシュの群れ
  『この行列は、どこまで続き、いつまで続き、何のために続くのか。』
  『行列に並ぶことは、考えず、創造せず、目指さず、向き合わず、変わらず、目的や理由が分からなくなり、そして繰り返す。』
  『精神は苦しいが、慣れるとやめられない。楽だからだ。ある意味効率的だ。』
  『おや、向こうに人だかりが見える。踊り念仏らしい。踊りが始まる前の講釈が聞こえてくる。』
  『大鳥居が今のように落ち着くまでには何度も海に流された。』
  『それでも収まらんので、海の神様の怒りを鎮めるため、一人の少女が人柱になった。』
  『踊り念仏でその子の成仏を祈るらしい。
  南無阿弥陀仏の声が響く。』
  『潮が満ちてきて、海の中の柱にくくりつけられたその子の首近くまでになった。』
  『後先なく、わたしは海に飛び込んだ。』
  『気づくと、魚になっていた。何千何万の魚とともに、その子を背に乗せた。』
  『魚の群れは鳥居を抜け、細長い直線となって、三角の山をグルグルと回って這い上り、まだ白い満月に向かって見えなくなった。』
  『その間、踊り念仏は激しくなり、念仏はアンパンマンマーチとなった。』

〇高層ビル群
  『そんな夢だった。』
  『スマホに娘からメッセージが届く。』
  『成人式のお祝いのお礼だった。』
  『不登校や反抗期もあったけど、なんとか成人を迎えることができました。有難うございました。』
  『死ななくてよかった。今幸せ。』
  『何のために生まれて、何をして生きるのか。』
  『答えの一つは、わかった。』
  『もう一つは、こんな物語を書き続けてみようと思う。感謝。』

コメント

  • こんばんは🌟
    地獄かぁ人間はほとんどが何かしら罪をやらかしてそうですよね👍
    蜘蛛の糸、子供の時すごく怖くてトラウマでした😂

  • 文章がとても文学的で引き込まれました。芥川龍之介の蜘蛛の糸からはじまって、漱石の夢十夜的な世界へと迷い込んだようでした。行列地獄は何かを暗示しているのでしょうか…

  • まさに夢の世界の展開の早さと、突如現れる生き死にのスリルといった感じで、起きていることもメッセージ性も印象的でした。どうしたらこんなお話を思い付くのでしょう。小説を書かれる方の想像力は本当にすごいなと思いました。あの歌詞のベースは戦争体験だそうですね。三界のどこに鳴り響いていても確かにおかしくないなと感じました。

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