悪の秘密結社の幹部だが、ヒーロー募集の求人に応募した|

大江戸ウメコ

悪の秘密結社の幹部だが、ヒーロー募集の求人に応募した|(脚本)

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〇謎の施設の中枢
  私は地球の侵略をもくろむ、秘密結社の幹部だ
サムス「む、なんだこれは」
サムス「ヒーロー急募?」
サムス「まさか、アイツらの求人か?」
サムス(あいつら、こんな広告でメンバーを募集してるのか?)
サムス「よし、偵察してみるか」
「ふっ!」
サムス「ふむ、これで人間に見えるだろう」
  広告に書かれていた番号に電話をし、私は現地へと向かうことにした

〇遊園地の広場
サムス「ふむ、ここだな」
サムス(やつら、妙な場所に基地を構えているのだな)

〇小さい会議室
サムス「面接会場とやらはここでいいのか?」
みなこ「あ~、きたきた! キミが電話をくれたサムくんね?」
みなこ「サム・・・あれ、日本人?」
サムス「貴様はだれだ?」
みなこ「ああ、私はここでヒーローやってる、みなこっていうの。よろしくね」
サムス「ヒーロー、だと?」
サムス(女性のヒーロー? ピンクかイエローか。 こんな普通の女が正体とはな)
みなこ「サムくん、バク転はできる?」
サムス「は?」
みなこ「バク転だよ、バク転。 空中でくるっと回るやつ」
サムス(運動能力の調査か?)
サムス「当然だ。そのくらい容易いものよ」
みなこ「おお! その芝居がかった喋りもいいね」
みなこ「経験はあるの?」
サムス「経験?」
サムス(ヒーローの経験があるヤツなどいのか?)
サムス「いや、経験はない。 だが、戦闘力に自身はある」
みなこ「戦闘力・・・? 運動神経がいいってことだね!」
みなこ「そういう人は歓迎だよ! さっそくで悪いんだけど、今日から入って欲しいんだ」
サムス「今日から?」
みなこ「今、人が不足してて 大丈夫、台詞の無い役だから」
サムス「おい、待て、どういうことだ?」

〇劇場の舞台
みなこ「きゃー! マグモンくんがピンチだよ! みんなでヒーローを呼んで!」
マグモン「助けてマグ~~!」
みなこ「せーの!」
みなこ「助けてヒーロー!!」
サムス「な、なんだこれは」
サムス(ヒーローの訓練? いや、明らかに違う)
みなこ「ほーら! サムさん、出番ですよ」
サムス「出番?」
みなこ「サムさんは敵の配下の役です。 これを着て、ヒーローにやられてください」
サムス「なんだ、この衣装は」
サムス「くだらん。やってられるか」
みなこ「え、サムさん?」
みなこ「どこ行くんですか、サムさーん!」

〇遊園地の広場
サムス(まったく、とんだ無駄足だった)
サムス(ヒーローの秘密など、そう簡単につかめるわけがなかったのだ)
みなこ「サムさん、待って下さい!」
みなこ「いきなりどうしちゃったんです? やっぱり、悪役は嫌でした?」
サムス「あんなくだらん茶番、つきあってられん」
みなこ「くだらなくなんて無いです! 悪役だって大事な仕事です」
サムス「ん?」
サムス(べつに悪役が嫌で帰ったわけではないのだが)
みなこ「悪役がいるからこそ、話が盛り上がるんです。悪役はもうひとつの主人公なんですよ」
サムス「悪役が大事、か・・・・・・」
サムス「下らんな。 異星人が地球の侵略を企んでいるこの時勢にそんなことを言うか」
みなこ「それは・・・」
サムス「貴様は侵略者を見ても、悪は大事とでもいうつもりか?」
みなこ「地球を侵略する彼等を大事とはいえません」
サムス「だろうな」
みなこ「でも、彼らにだって何か事情があると思うんです。 地球を侵略しなければならない事情が」
サムス「・・・・・・!」
「怪人だー! 怪人が出たぞー!!」
みなこ「たいへん!」
サムス(この時間、侵略計画はなかったはず。 研究所から逃げ出したか?)
怪人「グルルルル」
サムス「おい、女。とっと逃げろ」
みなこ「いえ、サムさんこそ逃げて下さい」
サムス「なに?」
みなこ「はああああああ!」
イエロー「とう!」
サムス「あれは・・・・・・ヒーローイエロー?」
怪人「ガルルルル!」
イエロー「やあ!」
怪人「ギャッ!」
サムス(みなこがヒーローだったのか)
サムス(無駄足だと思ったが、良い情報を掴んだ)
怪人「ガルルルル!」
イエロー「きゃあ!」
サムス「危ない!」
イエロー「サムさん!?」
サムス(私はなぜコイツを庇って・・・)
怪人「ガルルルルル!」
サムス「ちっ!」
サムス(こんなザコ、変装を解けば一瞬で倒せるが みなこの前で正体を現すのは・・・)
イエロー「サムさん、下がって!」
サムス「黙っていろ」
サムス「はあああっ!」
サムス「はああっ!」
怪人「ギャアアアア!」
イエロー「えっ!?」
イエロー「サムさん・・・・・・いや、サムス!?」
サムス「ふん、命拾いしたな。イエロー」
イエロー「どうして、私を助けて・・・?」
サムス(どうして私はコイツを助けたのか。 敵であるはずの、イエローを)
サムス「悪役にも事情がある。 そうなのだろう?」
イエロー「!?」
サムス「次に会ったときは容赦しない」
イエロー「まって、サムさん!」
イエロー「助けてくれて、ありがとう」

〇謎の施設の中枢
博士「サムスよ。お前、怪人を一匹潰しただろう」
サムス「ふん。偶然見つけて邪魔だったからな」
サムス「脱走した怪人だろう? 貴様こそ、きちんと管理をしろ」
博士「ヒーローの調査をしていたそうじゃないか。 なにか分かったことはあったか?」
サムス「・・・いや、残念ながらなにも」
博士「・・・・・・」
サムス「話はそれだけか? ではな」
博士「・・・・・・」
博士「残念だよ、サムス」

〇マンション前の大通り
  雨の中、俺は逃げていた。
  イエローを助け怪人を潰した俺は、裏切り者の烙印を押され、組織を追われた。
組織の人間「どこへ逃げた!」
サムス「ちっ、まだ追ってくるか」
サムス(逃げたところで、怪人の私に行く場所などない)
サムス(ここまでか)
みなこ「サムス?」
組織の人間「何処に行った!」
みなこ「追われているの?」
サムス「・・・・・・」
みなこ「こっち、来て」
サムス「!?」

〇ファンシーな部屋
みなこ「ここなら大丈夫」
サムス「なぜ私を助けた」
みなこ「サムスも私を助けてくれたから。 これで、あいこだね」
サムス「・・・・・・」
みなこ「どうして逃げていたの?」
サムス「裏切り者として、組織を追われた」
みなこ「!?」
みなこ「もしかして、私を助けたから?」
サムス「私が勝手にしたことだ」
みなこ「いくところはある?」
みなこ「無いなら、ここにおいでよ」
サムス「!?」
サムス「ヒーローの側につけと?」
みなこ「怪人とか人間とか関係ないよ。 事情があるんでしょう?」
サムス「関係がないか・・・」
サムス「すまない、世話になる」

〇劇場の舞台
みなこ「出たな、怪人!」
サムス「ガオー」
  あれから俺は、正体を隠して地球で暮らしている。
  我々も人間も変わらない。
  そう教えてくれたのは彼女だ。
  秘密を抱いての生活は大変だが、それなりに充実した毎日をおくっている。
  きっと、組織にいたときよりも。

コメント

  • 面白かったです。これから始まるヒーローもののはじまりみたいな感じですね!善と悪のはざまで揺れ動く心を持った新しいヒーロー、サムズ…

  • これは今の差別社会に物申す的なとてもいいお話ですね。違う人種が分かり合っていく過程が描かれていて、それがどれだけ素晴らしい事が明確で!

  • 人外が人と関わってほだされるのいいよね

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