手紙と配達員と山賊と(脚本)
〇幻想2
私、レッタ!
極西地方に配属になった、新米配達員です!
手紙を皆さんにお届けするのが私の任務
人と人とを繋ぐ、心温まるお仕事です!
〇森の中
レッタ「──のはずだったのに」
レッタ「何でこうなるのー!」
10分前
〇外国の田舎町
レッタ「お届けです!」
村民「おぉ、新人か」
レッタ「よろしくお願いします!」
レッタ「次はウッドさんか」
村民「その山ん中だ」
村民「犬っコロ出るから気ィつけや」
村民「最近は山賊も出るちゅう話やし」
レッタ「犬── 山賊──」
レッタ「へ、平気です!」
レッタ「皆さんの大事な手紙をお届けするためなら!」
〇森の中
レッタ「犬コロって──」
レッタ「完全に狼ー!」
レッタ「増えたー!」
レッタ「モウダメダー!」
ノラ「何やってんだ?お前」
レッタ「──」
レッタ「さ、山賊ー!」
ノラ「さっさと追っ払えよあんぐらい」
レッタ「無理ですよ!狼ですよ!?」
ノラ「極西地方の山に入るなら、剣技くらい覚えて来いよ」
レッタ「そんなの聞いてないですよ~!」
ノラ(配達員か)
ノラ(シゴトに色々便利そうだな)
ノラ「私が護衛してやろっか」
レッタ「い、いいんですか」
レッタ「助かります~!」
ノラ(チョロ!)
〇森の中の小屋
ノラ「着いたぞ」
レッタ「ウッドさん郵便です!」
レッタ「はいっ」
ウッド「ご苦労様」
〇林道
レッタ「配達終了!」
ノラ「明日もここで待ってるぞ」
レッタ「いいんですか」
レッタ「山賊さん、やっぱり優しい人だったんですね」
レッタ「内心、いつ身ぐるみ剥がされるかと疑っててごめんなさい~!」
ノラ(ホントチョロいな)
〇林道
〇外国の田舎町
〇草原の一軒家
〇外国の田舎町
〇林道
ノラ「だいぶ板についてきたじゃないか」
レッタ「山賊さんのお陰です!」
レッタ「いつもありがとうございます!」
ノラ(そんな顔されると、利用してる罪悪感が)
ノラ(だがそれはそれ、シゴトはシゴトだ)
〇ファンタジーの学園
レッタ「わ!田舎なのにすごいお屋敷!」
ノラ「辺境伯ってのは目立たないが」
ノラ「案外、豪の者や知恵者が多い」
ノラ「国境付近は色々蠢いてるからな」
ノラ「それくらいじゃないと務まらんのさ」
ノラ(ま、ここのは曲者って感じだが)
門番「止まれ」
レッタ「配達です」
門番「通れ」
ノラ(潜入成功!)
ノラ(シゴトシゴト)
執事「何か」
レッタ「辺境伯様に郵便です」
執事「確かに」
レッタ「は~緊張した」
レッタ「あれ、ノラさん?」
ノラ「済んだか?」
レッタ「も~」
レッタ「黙ってどこか行かないでくださいよ」
レッタ「ノラさんが居ないと、落ち着かない身体になっちゃいましたよ」
ノラ「な、何言ってんだオメー」
ノラ「気軽にそゆこと言うんじゃねーよ・・・」
辺境伯「──」
〇外国の田舎町
村民「最近物々しいな」
村民「中央では急速に軍備を──」
レッタ「何のお話です?」
村民「い、いや」
村民「手紙かね?」
レッタ「はいっ!」
〇森の中の小屋
レッタ「配達です!」
ウッド「ご苦労様」
レッタ「あれ?この葉書赤い──珍しいですね」
ウッド「ついに来たか──」
〇外国の田舎町
農民「国王陛下は王女殿下が城を出られてから、いよいよおかしく──」
村民「シッ!滅多な事言うな」
レッタ「何か最近、皆さん元気ないですねぇ?」
ノラ「王国は最近隣の東国と揉め事が多くて」
ノラ「何かとキナ臭いからな」
〇森の中の小屋
レッタ「ウッドさん、郵便です」
レッタ「あれ?息子さんは?」
ウッド夫人「息子は──」
ウッド夫人「中央に兵隊にとられて──」
レッタ「えっ」
レッタ「じゃあ」
レッタ「もしかして先日私が届けた手紙って──」
〇森の中
レッタ「私が──私があの手紙を届けなければ」
ノラ「お前に責任はない」
ノラ「それに届けなければ、余計まずい事になる」
レッタ「でも」
レッタ「でも──」
ノラ「なぁ」
ノラ「お前、何で配達員になったんだ?」
レッタ「え」
レッタ「私、小さい頃は母様と離れて暮らしてて」
レッタ「週に一度の手紙だけが母様との繋がりで」
レッタ「いつも待ち遠しくて」
レッタ「だから私も皆の大事な手紙を運びたいって──」
ノラ「なら運んでやれ」
ノラ「今が悪くても、進めば変わる」
ノラ「お前が一通届けるたび、一歩前に進むさ」
レッタ「──」
レッタ「──はい」
レッタ「やっぱノラさんは凄いなぁ」
レッタ「ノラさんはどうして山賊になったんです?」
ノラ「私の親父は騙されすぎて人を信じなくなった」
ノラ「意見する私も家からおん出しやがった」
ノラ「本当は信じたいくせに」
ノラ「だから私が目を覚ましてやる」
レッタ(山賊になって目を──?)
レッタ(よくわからないけど)
レッタ(ノラさんが言うなら、きっと正しい)
〇林道
レッタ「あれ」
レッタ「ノラさんに手紙ですよ」
ノラ「──」
ノラ「クソっ」
ノラ「いよいよか」
ノラ「今夜にでも決行しないと」
ノラ「だが一人では──」
ノラ「レッタ、頼みがある」
ノラ「今夜、村の出口で待っててくれないか」
ノラ「私が手紙を渡すから、王都まで届けて欲しい」
レッタ「中央まで!?」
ノラ「しかも夜明けまでにだ」
ノラ「日の出と共に王の軍勢が東国へ出陣する」
ノラ「そうなれば東国と全面戦争が始まる」
レッタ「せ、戦争──」
ノラ「脚が自慢の配達員でもかなりの無茶だ」
ノラ「──やってくれるか?」
レッタ「手紙を届ければ」
レッタ「戦争を止められるんですか?」
ノラ「保証はない」
レッタ「やります」
レッタ「無茶でも──ノラさんの頼みなら」
ノラ「すまん」
ノラ「だが、お前にしかできない」
ノラ「頼む」
レッタ「はいっ」
〇ファンタジーの学園
〇洋館の廊下
〇上官の部屋
ノラ(やはり──)
ノラ(王国と東国のいざこざは)
ノラ(辺境伯が西国と密通して仕組んだ離間工作)
ノラ(証拠を掴んだぞ!)
〇城の廊下
「侵入者だ」
ノラ「チッ」
〇ファンタジーの学園
〇外国の田舎町
ノラ「レッタ!」
ノラ「急げ」
レッタ「は、はいっ」
「待てっ」
辺境伯「捕えろ」
辺境伯「王宮剣術!?」
辺境伯「──色眼鏡と日焼けで気付かなかったが」
辺境伯「こんな所でお目にかかるとは」
辺境伯「エレノーア王女殿下」
ノラ「お前ら」
ノラ「国家反逆罪で縛り首か」
ノラ「この場で私に切り捨てられるか」
ノラ「選べ」
辺境伯「──なら迷う余地はありませんな」
ノラ「うわ~」
ノラ「何人いんだよ」
ノラ「まとめて相手してやるよ」
〇けもの道
〇山中の川
〇森の中の沼
〇岩山
レッタ「うぅ」
レッタ「あ、脚が」
レッタ「もう──」
〇黒
レッタへ
いい子にしていれば
母様から毎週手紙が届きますよ
だから
今はお休み
レッタ「──違う」
〇岩山
レッタ「今は」
レッタ「今は私が届けなきゃ」
レッタ「届かない──!」
〇中世の街並み
〇巨大な城門
レッタ「陛下!」
騎士「止まれ」
レッタ「これを──」
騎士「王女殿下の封蝋!?」
国王「見せろ」
父上
西の辺境伯と西国の離間工作の証拠をお送りする
──私を信じろとは申しません
ただ、命を賭し百里を駆け
貴方に手紙を届けた者の顔をよくご覧になってください
平和を祈る民草の顔を──
国王(年端もいかぬ娘)
国王(──エレノーア)
国王「止めだ」
騎士「は?」
国王「出陣は取り止めだ」
国王「東国へ使者を出せ」
「ハッ」
〇森の中の小屋
レッタ「郵便でーす」
ウッド夫人「息子から──!」
ウッド夫人「もうすぐ帰って来るって──」
〇外国の田舎町
レッタ「最近村が明るいな」
レッタ「でも」
レッタ「王女殿下はもうここには──」
〇林道
レッタ「さて次は」
レッタ「私宛て!?」
〇西洋の城
レッタへ
城はもう飽き飽きだ
もうすぐそっち戻るから待っとけ
追伸
一言でも王女殿下とか言いやがったら張り倒す!
山賊のノラより
〇林道
レッタ「はい──」
レッタ「はいっ、ノラさん!」
〇外国の田舎町
レッタ「お届けですっ!」
まさか山賊と呼んでいたノラが王女だったなんて!!全然想像もしていなくて、とても嬉しい驚きでした!!
狼たちも退散しただけっていうのもいいですね!!
みんなハッピーエンドで良かったです!!
素敵な作品ありがとうございました!!
レッタの頑張りやノラとの関係性が、すごく素敵でした!
戦時中、赤紙の配達していた配達員さんたちには、つらくなる人もいたんだろうなあと思ってしまいました。
あと、狼たちが無事でよかったです(^^)
ほのぼのお仕事ストーリーと思いきや、2000文字とは思えない感動巨編でした。
レッタの表情差分を活かした演出の数々。これまでのTapNovel作品の中で、一番キャラクターに引き込まれた気がします!
ボイスがつくと、レッタの可愛さがさらにアップしそうで、今から楽しみにしています^^