藤宮アカネの告白

白川嘘一郎

藤宮アカネの告白(脚本)

藤宮アカネの告白

白川嘘一郎

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〇ポップ2
  わたし──
  藤宮アカネには、秘密の能力がある

〇大きな木のある校舎
エミ「あっ、アカネっち おはよ~♪」
エミ(本音)(はぁ・・・だる~・・・ 頭いたーい・・・)
エミ(本音)(でも、空気悪くしたくないし 気分アゲてかなきゃ・・・!)
  そう、わたしには──
  他人の本音や本心が、
  文字通り『目に見えて』しまうのだ

〇学校の下駄箱
田中「よっ、藤宮」
  「おはよう、田中くん」
田中(本音)(藤宮ってやっぱカワイイよなぁ 脚も細くてスタイルいいし・・・)
  ・・・・・・・・・
  こんな心の声にも、もう慣れっこだ
  ──仕方ないよね
  相手は、心の中がわたしに筒抜けだなんて
  思ってもいないんだから
  ・・・『思ってもいない』ってことさえ
  わたしには分かってしまう

〇学校の廊下
  「三城先生、おはようございます」
三城先生「はい、おはよう」
三城先生(本音)(お肌ピッチピッチで うらやましいわね・・・)
三城先生(本音)「でも、私だって まだまだ負けないんだからっ!!」
  ──三城先生、
  心はまだJKなんだ・・・
  挨拶してるだけなのに
  なんだか朝から疲れちゃうなぁ・・・
  ──あっ
  「お、おはよう
   黒木くん」
黒木ケイ「おはよう 藤宮さん」
  なぜかはわからないけど・・・
  彼──黒木ケイくんだけは、
  『本音』が見えたことがない
黒木ケイ「・・・藤宮さん」
  「えっ、な、なに?」
黒木ケイ「元気がなさそうだけど、大丈夫? それに、顔も少し赤い」
  「だ、大丈夫だよ
   ありがとう」
三城先生「ほら、授業が始まるわよ 早く教室に入りなさい」

〇教室
  教室に入っても、
  授業が始まっても──
  ついつい黒木くんのことを
  目で追ってしまうわたしがいる
  ──お昼休み──
エミ(本音)「超うまい!! ママの卵焼きサイコー!! 素材の味が口いっぱいに──」
  TVの食リポかな・・・
  友達とお昼もいいけど、たまには
  静かに落ち着いて食べたい気も・・・
  「げ、元気になってよかったね、エミ」
エミ「うんっ! おべんと食べてたら調子出てきた♪」
エミ(本音)「・・・あれ? 体調悪かったこと、 アカネっちに話したっけ?」
エミ(本音)「・・・ま、いっか♪」
  ・・・黒木くん、昼休みはいつも
  一人でどこかに行っちゃうよね
アカネ(本音)(黒木くん・・・)
  ──!?
アカネ(本音)(黒木くん、 いつもどこでお昼食べてるのかな・・・)
  ──『黒木くんのことを
  目で追っているわたしがいる』
  あれは、わたしの『本音』・・・!?
  今まで、自分の姿が見えたことなんて
  なかったのに・・・
  教室から出ていっちゃった!?
  ちょ、ちょっと待ってよ
エミ「あれ、アカネっち お昼もういいの~?」
  「う、うん
   ちょっと用事思い出して」

〇階段の踊り場
黒木ケイ「・・・」
アカネ(本音)(黒木くんを見ていると、 気持ちが落ち着く)
アカネ(本音)(黒木くんと喋っているときだけは 疲れないですむ)
  わたしの『本音』──
  わたしの心なのに、勝手に動いて・・・

〇学校の屋上
アカネ(本音)(黒木くん・・・)
  見つけた!
  わたしの『本音』と・・・黒木くん
黒木ケイ「──藤宮さん・・・?」
アカネ(本音)(黒木くん、お昼はいつも 屋上で食べてるのかな)
  「あ、えっと・・・
   黒木くん、いつも屋上でお昼食べるの?」
黒木ケイ「うん、静かで落ち着くからね」
アカネ(本音)(わたしと一緒だ・・・ 気が合うかも・・・!?)
  「そんな単純な話じゃ──」
黒木ケイ「・・・え?」
  「あ、ううん、
   なんでもないっ」
  もう・・・
  つい、自分の『本音』に返事しちゃった
アカネ(本音)(は、恥ずかしい・・・)
  あなたのせいでしょっ!
  こっちのセリフだよっ!
  ・・・やっぱり、わたしの『本音』も
  わたしにしか見えてないみたい
  それは良かったんだけど・・・
アカネ(本音)(黒木くんといっしょにお昼食べたい もっとたくさん話したい)
アカネ(本音)「あーもう! 好き好き好き好き好き好き好き好き好き 好き好き好き好き好き好き好き好き好き」
  「うるさいっ、
   ちょっと静かにして・・・!」
黒木ケイ「え? 何か聞こえる?」
  「ご、ごめんなさい
   なんだか急に耳鳴りが・・・」
  でも・・・これが、わたしの
  ホントの気持ちってコト・・・?
アカネ(本音?)(それでいいのかしら?)
  ──!?
  もうひとり増えた──!?
アカネ(本音?)「わかってるんでしょ? 彼の『本音』が見えないのは・・・」
  そう、黒木くんの『本音』が
  見えないのは・・・
  黒木くんにはきっと、
  裏表というものが全くなくて、
  いつも本心だけで喋ってくれているから
アカネ(本音)「だから黒木くんは信頼できて、 彼といると心が安らぐ・・・」
アカネ(本音?)「──そうね」
アカネ(本音?)「でも、あなたは・・・ わたしたちはどうなの?」
アカネ(本音)「わたしたち・・・?」
アカネ(本音?)「それから、あなたも」
  わたし・・・?
アカネ(本音?)「わたしたちも、こんなふうに── 本心を隠してうわべだけを取り繕ってる」
  ・・・あ・・・
アカネ(本音?)「まわりの人たちと何も変わらない・・・ しかも、自分でそれを意識さえ していなかった」
  ・・・・・・
アカネ(本音?)「そんなウソつきで身勝手な女の子なんて、 彼にとっても目障りなだけでしょう?」
アカネ(本音)「そ、そんなことないもん!」
アカネ(本音)「この気持ちはホンモノ── だからわたしは、ここにいるんだから!」
アカネ(本音)「ねぇ、そうでしょ・・・わたし」
アカネ(本音?)「どうせ、いつもと同じよ わたしたちのコトも、見ないフリして やりすごすだけ」
  わたし・・・は・・・
  ・・・・・・
黒木ケイ「藤宮さん、どうかした? 急に黙っちゃって」
  黒木くんはいつだって、
  まっすぐに本気でわたしを見てくれる
  ・・・わたしも、
  ウソや隠し事なしで、それに応えたい
  今日はじめて、自分の中の気持ちと
  ハッキリ向き合うことができたから──

〇空
  「黒木くん、わたしね──」
  E N D

コメント

  • 黒木くんは裏表がなくて誠実な人なんだなぁと。
    主人公も悩んではいましたが、自分自身の裏表にも気づくことのできる、いい子だなぁと思いました。
    幸せになれるといいな!

  • 時々どの自分がほんとの自分かわからなくなる時、ありますよね(笑)興味深いお話しでした、本人との対談!?テンポがよくて最後まで一気に読ませて頂きました。

  • なぜ黒木君だけは心の声が聞こえないのでしょうか?
    告白の結末よりそっちが気になってしまいました。
    主人公アカネの告白に至るまでの心の動き方にときめきました。

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