かぜの ようせい ウィンちゃん【もくひょう】(脚本)
〇荒地
あるきながら 4つの 役パワーを
ようやく おぼえかけた ころ・・・
ぼくは ずいぶん
つかれて いた みたい。
てごろな いわに こしかけて
めを とじて きゅうけいを とった。
〇黒背景
・・・。
ひゅうひゅうと、
かぜが だいちを はしる
おと だけが きこえる。
まちの おと、
ことりの さえずり、
むしの なきごえ・・・
みんな そこに あるのが
あたりまえだと おもってた。
いろいろな ひとが いて、
いろいろな いきものが いて。
そのなかに ぼくも いるんだね。
いまは ただ かぜ だけが、
ぼくを つつんで、 ぼくの くびを
・・・えっ?
〇荒地
めを あけると、
せなかの ほうから、
ようせいさんの かわいい うでが
ぼくの くびに しがみついて いた。
ウィンディア「やっほー ゆうしゃさま! あのね、ウィン、まちきれなくて、 ウィンの ほうから きちゃったよ!」
ウィンディア「めがみさまは 『まって いなさい』 って いってたけど・・・」
ウィンディア「ウィン はやく ゆうしゃさまに あいたかったんだもん!」
ウィンディア「ねえねえ はやく ウィンと あそぼー!」
こんなに ちいさな こが
ようせいさん?
この こ なふだを さげてる。
えーっと。
「かぜぐみ ウィンディア」
そっか、それで
「ウィン」 なんだね。
あはは。フレムさんと おなじで
きみも げんき いっぱい だね。
よろしくね ウィンちゃん。
ウィンディア「うん! あのね、めがみさまがね、 ウィンの ところに きてね、」
ウィンディア「『マージャンの せかいに あたらしい かぜを まきおこす ゆうしゃさまが いらっしゃるから」
ウィンディア「なふだを つけて、 おぎょうぎ よく まって らっしゃい』」
ウィンディア「って いってたの!」
ウィンディア「どうしてか よわく なっちゃった ウィンの かぜ、 ゆうしゃさまが なおして くれるって ことだよね!?」
ウィンディア「ウィンの かぜ、 また もとどおりに なるよね!? なるんだよね!? やったー!!」
・・・
ウィンちゃんは さっきから
「ゆうしゃさま」 って いうけど
それ ひょっとして
ぼくの ことなの?
ウィンディア「えへへー おしえないもーん! だって、めがみさま、」
ウィンディア「『ゆうしゃさまが いらっしゃっても けっして ゆうしゃさまと よんでは いけませんよ。』」
ウィンディア「って いってたもーん! だから ゆうしゃさまには おしえて あーげない!!」
・・・
ゆうしゃさまって いうのは
やっぱり ぼくの こと みたいだ。
でも そんな・・・
なんの とりえも ない ぼくが、
ゆうしゃの わけ ないじゃない。
ウィンディア「えーっ ウィン そうは おもわないよー?」
じゃあ・・・ おしえて ほしいな。
こんな ぼくの どこに
ゆうしゃと よべる ところが あるか。
ウィンディア「いいよ~ おしえて あげる!! その まえに ウィンと あそんで あそんで~☆ミ」
よーし! なにして あそぼうか!
ウィンディア「ウィンね、 「おえかき」 って いうの やって みたいの!」
おえかき だね いいよ!
かみや えんぴつは あるかな?
ウィンディア「かみ? えんぴつ? なあに それ??」
あらら・・・ どうしよう。
いしで じめんに かこうか?
ウィンディア「えーっと じゃあさ、 ゆうしゃさま その・・・ なんだっけ? どうぐの なまえ」
かみ とか えんぴつの こと?
ウィンディア「そうそう! それをね、 あたまの なかで おもいうかべて みて くれるー?」
かみや えんぴつを・・・?
とりあえず やってみよう。
ぼくは かみや えんぴつ などの
ぶんぼうぐを あたまの なかに
おもいうかべて みた。
ウィンディア「よーし! いっくよー! ГДФЮЧ ЮФЩ ЖИФЁЯ !!」
ウィンディア「はいっ!! じゃんじゃじゃーん!!!!」
ウィンちゃんが なにかを つぶやくと、
めの まえに おもいうかべて いた
ぶんぼうぐが あらわれたんだ。
ウィンディア「あれっ なんだか いっぱい あるね、 かみと えんぴつ って どれかな~?」
あらあらあら。
よけいな ものも そうぞう
しちゃった みたい。
かみと えんぴつの ほかにも・・・
スケッチブック いろえんぴつ、
ものさし えのぐ セロテープ、
ぶんどき コンパス・・・
なんか がっこうで つかう もの
ぜんぶ でて きちゃった。
ぼくは その なかから
いろえんぴつと スケッチブックを
ひろいあげた。
これが かみ と えんぴつ だよ。
ほら こうやって かくんだよ?
ウィンディア「こう? わっ! わっ! すごーい!」
こうして、いろえんぴつを たおして
ぬるように すれば・・・。
ウィンディア「キャ~!! いろが ひろがってく! おもしろーい!!!」
ぼくも なにか かこうかな。
ねえ ウィンちゃん、ぼくに
かいて ほしい もの ある?
ウィンディア「えっ! かいて くれるの!? そしたらねー、えーっと、えーっと」
ウィンディア「にんげんが マージャンを してる ところ かいて ほしいなー!!」
しまった・・・ ぼく えは そんなに
じょうずじゃ ないのに・・・
やすうけあい しちゃったな・・・
でも これも けいけん。
がんばって かいて みよう!
よーし かいて みようか。
みててね、こうやって かくんだよ?
ウィンディア「うーん、 なにが でて くるか まだ わかんない」
ウィンディア「うーん・・・。 ・・・ ・・・ ・・・ ・・・!!!」
ウィンディア「あっ! わかった~☆ミ まんなかの これは マージャンの たく でしょ?」
ウィンディア「その まわりに にんげんが よにん!! キャ~! すっごーい!!」
ぼくの いもうとと しんせきが
マージャンで たいきょく している
ところを かいて みたけど
そんな ほめられる ものでも・・・
まあ ウィンちゃんが よろこんで
いるから それで いいか。
ウィンディア「あれっ。 たくの うえに パイは かかないの?」
うん、じつは じっさい
どういう ふうに なるか
まだ よく わからなくて・・・
ウィンディア「あっ!じゃあ、パイは ウィンが かいて みるね~!!」
ウィンディア「サラサラサラ。 キャハハハハ~、こんな かんじかなー」
ウィンちゃんが たくの うえに
たくさんの パイを かいて・・・
いちまいの えが できあがった。
おー。こんな ふうに なるんだね。
ウィンちゃんの おえかきも
すごく じょうず だよ!
ウィンディア「キャハハハ~!! ゆうしゃさまに ほめられたー! うれしいなー!!!」
ウィンディア「でも ゆうしゃさま、 よく わかったね」
よく わかった?
・・・ なにが?
ウィンディア「これね、めがみさまが めざして いる せかい そのもの なんだよ!」
えっ これが?
とくべつな ことは なにも
ない ように みえるけど?
ウィンディア「あっ そうか、 ゆうしゃさま まだ しらないんだね」
ウィンディア「しらないのに えを かけるなんて すごい すごーい!!」
うーん・・・。これが めがみさまの
めざしてる せかい・・・?
まだ よく わからないけど・・・。
あれっ。 この えの まんなかの、
しかくいのは なに?
とん なん しゃー ぺー
って かいてある しかくい これ。
パイじゃ ないよね?
ウィンディア「あっ!きづいた~? ウィンね、それを ゆうしゃさまに おしえる かかり なんだ~!!」
ウィンディア「よーし こんどは ウィンの ばん! マージャンの こと おしえちゃうよ~☆ミ」
・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
ウィンちゃんが おしえて くれたのは
「かぜ」 そして 「フリテン」
について。
マージャン には、
じぶんに みかた してくれる
かぜが いるんだって。
フリテンは ロンと いえなく なる
のろい なんだって。
のろいと きくと こわいけど・・・
じぶんの みを まもるのに
なくては ならない もの なんだって。
なるほど、おやには ひがしの かぜ。
そこから とけいまわりと はんたいに
みんなに かぜが ふいて・・・
じぶんに ちからを かして
くれるんだね。
この しかくに かいて ある かぜが
じぶんに みかた して くれてる
かぜって ことかな。
ウィンディア「えへへー わかった? そんなに むずかしく ないでしょ~?」
うん。わかった。
ありがとう、ウィンちゃん。
ところで・・・。
ウィンディア「ああー!!!!」
わっ!
ど、どうしたの!
ウィンちゃん!!
ウィンディア「ウィンが おえかき した かみ、 やぶけちゃったー! うえーん!!」
ああ、むりに ひっぱったね。
そういえば セロテープが あったな。
なおして あげよう。
ほらほら、しんぱい いらないよ。
これをね、こうして・・・。
ウィンディア「あっ! くっついた!? すごーい! よかったー! ゆうしゃさま ありがとう!」
どうって こと ないよ。
それよりさ、ウィンちゃん、
ぼくの ゆうしゃ らしい ところ
どんな ところ なのか
おしえて ほしいな。
ウィンディア「あっ! そうだったね~。 ゆうしゃさま あし つかれて ない?」
え? あし?
・・・けっこう つかれてる。
それで きゅうけい してたんだっけ。
ウィンディア「えへへー、ゆうしゃさま、 かなりの きょりを あるいて きてる からねー」
ウィンディア「それで どうして、 そんなに つかれても あるきつづけて いられたの~?」
それは もちろん、
みんなに マージャンを おそわって
めがみさまや この せかいを
たすけようって おもった からだよ?
ウィンディア「キャ~☆ミ それ! それだよ~!」
ウィンディア「それって にんげんの せかいでは たしか 「もくひょう」 って いうんだよね? そうだよね?」
もくひょう・・・。
そう いわれれば そうだね。
ウィンディア「じつはね、その もくひょうって すごーーーーく たいせつな もの なんだよ~」
ウィンディア「もくひょうが あるか どうか・・・ それだけで じんせいの たのしさが かわるよ!」
ウィンディア「ぎゃくに いうとね、 もくひょうが ないと じんせい まったく つまらなく なるよ!」
ウィンディア「もくひょうは 「ゆめ」 って いいかえる ことも できるよ!」
ウィンディア「いきてる うちに かなえたい ゆめ。 その ゆめに むかって すすむ ための ちからは」
ウィンディア「とんでもなく つよいよ!!」
ウィンディア「ゆうしゃさまが ここまで あるきつづけて これたのは もくひょうが あったから!」
ウィンディア「もくひょうも なしに こんなに あるけ なんて いわれたら きっと あるけないんじゃ ないかな~」
なるほど・・・ いわれて みれば
そうかも しれない。
めがみさまを たすけたい。
それだけの ことで ぼくは
もう どれだけ あるいただろう。
がっこうの えんそく よりも
はるかに あるいてるのは たしかだ。
それでも がんばって これたのは・・・
めがみさまを たすけたい。
つぎの ようせいに あいたい。
もくひょうが あってこそ
だったのかも しれない。
いつもの ぼくは どうだった だろう?
きょうは どんな しっぱい するか。
あしたも どんな しっぱい するか。
あした なんて こなきゃ いいのに。
もくひょう なんて・・・
なんにも なかった ように おもう。
そっか・・・
もくひょうが あって はじめて、
なにを するべきか きまるんだ。
いま はじめて きづいた。
ねえ、ウィンちゃん。
ぼく、「もくひょう」の たいせつさに
きづいたのって
たった いま なんだけど・・・
それで ぼくが ゆうしゃ らしいって
ことに なるとは おもえないんだ。
ウィンディア「えっ・・・。 ゆうしゃさま なにか かんちがい して ないかな~」
ウィンディア「ゆうしゃさまの 「ゆう」はね、 「ゆうき」の 「ゆう」 だよ」
ウィンディア「この ゆうき って、 なにに つかう ものだと おもう~?」
ゆうきの つかいかた・・・。
つよい あいてに たちむかう、
バカに した あいてに おこる・・・
そんな かんじ かなあ?
ウィンディア「ううん ちがうよ! ゆうきって いうのはね、」
ウィンディア「「じぶんを かえる」 ことに つかうんだよ!」
ウィンディア「そして それが できる にんげんを 「ゆうしゃ」って よぶんだよ~!」
じぶんを かえるのに
ゆうきを つかう・・・?
ウィンディア「じぶんを かえるって いうのは ものすごい ゆうきが ひつようだよ!」
ウィンディア「だって これまで じぶんが してきた こと、 いちど ぜんぶ すてるって ことだよ!」
ウィンディア「いままでの じぶんを ポーンと おしげも なく すてる・・・ できる にんげんは そう いないよ!」
なんとなく わかる・・・
きが するけど・・・
ぼくに そんな こと できるかな。
ウィンディア「ええっ。 なに いってるの ゆうしゃさま!」
ウィンディア「この せかいに きてから、 ゆうしゃさま どれだけ かわったか わかって ないの!?」
そ、そんなに かわったかな?
じぶんでは わからないよ
ウィンちゃん。
ウィンディア「キャハハハ~☆ミ むいしきの うちに それだけ じぶんを かえられるんだね!」
ウィンディア「やっぱり ゆうしゃさまは ゆうしゃさま だよ!! すごい すごーい!!」
ウィンディア「じゃあ そろそろ ウィンも もんしょうの なかで ねんね するねー」
ウィンディア「じぶんを どんどん かえて、 きっと いつか この せかいを たすけてね! やくそくだよ~☆ミ」
ウィンディア「おえかき して くれて ありがとう! ゆうしゃの おにいちゃん だーいすき!! キャハハハ~!!!」
ウィンちゃんは そういうと、
つむじかぜと もんしょうを のこして
すがたを けした。
もくひょう って・・・ すごく
たいせつな もの なんだね。
もくひょうが たのしく いきる
ための みちしるべに なるんだね。
まいにち つまらない なんて
おもって いたけど・・・
もくひょうが なにも
なかった から なのかな。
けど、いまは・・・
ただ まえに すすもう。
めがみさまを たすける ために。
そして。
マージャンの せかいを
たすける ために。
とは いえ・・・。
ここまでの みんな、
まだ だれも おしえて くれない。
ぼくが マージャンの せかいを
たすける ためには、
ぐたいてきに なにを すれば・・・?
ぼくは かぜの もんしょうと
ウィンちゃんに わたしわすれた
えを ポケットに しまって
ふたたび あるきだした。
めがみさまを たすける。
マージャンの せかいを たすける。
ふたつの もくひょうを かかえて。