エピソード5 異世界嫁姑戦争(脚本)
〇洋館の玄関ホール
ジョディ・フローレンス「ヒース?」
ヒース・フローレンス「も もう我慢できない」
ヒース・フローレンス「これ以上アンジェリカを虐めるようなら 僕だって考えがあるからね!!」
アンジェリカ・ロウリー「ヒース様 どうかご心配なさらず」
ヒース・フローレンス「何かあれば僕に言うんだよ いいね?」
ヒース・フローレンス「母上も い、いいですねっ?」
ジョディ・フローレンス「フフ・・・あの愚かさが、すべて芝居だと?」
ジョディ・フローレンス「馬脚を現したわねこの泥棒猫! その虚言、死罪に値するわ」
アンジェリカ・ロウリー「旅一座に加わっておりました折 私とクリントは芝居の真価と出会いました」
ジョディ・フローレンス「?」
〇英国風の図書館
さる公演にて 私とクリントが二人きりの場面となると咳をしたり 台詞をトチってしまう失態が頻発することがありました
ですが その時こそが、私たち二人が一座に加わった期間唯一にして、多大な賛辞を送られた公演となったのです
〇洋館の玄関ホール
ジョディ・フローレンス「それが、どうかして?」
アンジェリカ・ロウリー「『芝居は、それが芝居として見られている限り、すべては芝居である』」
アンジェリカ・ロウリー「王妃から謀反の企てを悟られない、最善の方法がございます」
ジョディ・フローレンス「──」
アンジェリカ・ロウリー「・・・」
アンジェリカ・ロウリー「もうそろそろ──潮時かしらね」
ジョディ・フローレンス「!?」
〇広い和室
古手川冴香「もうそろそろ──潮時かしらね」
〇洋館の玄関ホール
ジョディ・フローレンス「何を・・・言って」
アンジェリカ・ロウリー「お忘れですか? 本来の毒味役まで引き離して 私にたくさんお茶やお酒を注がせてくれたこと」
ジョディ・フローレンス「私に 何を飲ませたと言うの?」
アンジェリカ・ロウリー「心当たりがおありで?」
アンジェリカ・ロウリー「もういいでしょう 私ですよ 思えばあなただけは」
アンジェリカ・ロウリー「私自身も気づかずにいた この胸の裡に巣くう野心を見抜かれていた」
アンジェリカ・ロウリー「例え生まれ変わって姿形が変わろうとも 私の魂にあなたは気づけた筈です」
ジョディ・フローレンス「──」
アンジェリカ・ロウリー「私は『日本』で、あなたに『徐福』秘伝の毒薬で殺された、『優介』の嫁。ほんのいっとき、あなたの家族だった」
アンジェリカ・ロウリー「私は、『倉木杏』です!!」
ジョディ・フローレンス「・・・一体 何の話を」
アンジェリカ・ロウリー「『芝居は、それが芝居として見られている限り、すべては芝居である』」
アンジェリカ・ロウリー「私にはもう あなたが何をおっしゃられようと、大女優が被った仮面しか見えません」
アンジェリカ・ロウリー「私が放った、今世に於いては理解不能な筈の言葉の数々に、あなたはどう反応すべきか躊躇した」
ジョディ・フローレンス「く・・・」
アンジェリカ・ロウリー「その躊躇こそが、理解している証ではございませんこと?」
ジョディ・フローレンス「──」
アンジェリカ・ロウリー「──」
ジョディ・フローレンス「くくく・・・フッ」
〇広い和室
古手川冴香「あははははははっ」
〇洋館の玄関ホール
アンジェリカ・ロウリー「!?」
ジョディ・フローレンス「愉快・・・愉快ね」
アンジェリカ・ロウリー「可哀想に 恐らく何某かの秘術で保っているのでしょう、その若さ 表情は、前世のお義母さまの方はうんと豊かでした」
ジョディ・フローレンス「いいわ!! 妄言を続けなさい あの子が──ヒースが、私やあなたをも上回る演技力をいかに身につけ、何を企んでいると?」
アンジェリカ・ロウリー「いいえ、何も 今の彼はありのまま 純朴で、心優しい王子様です」
ジョディ・フローレンス「?」
アンジェリカ・ロウリー「『芝居がそうと暴かれない為には、最初から芝居をしなければいい』のです」
ジョディ・フローレンス「一体なにを言って──」
ジョディ・フローレンス「──そう そういう魔術があるのね」
アンジェリカ・ロウリー「魔術というよりは、それに類する何か 彼は国外の者たちに、有力な貴族諸侯の弱体化工作 そして王妃の暗殺を命じました」
アンジェリカ・ロウリー「同時に、強力な魔術師の力を借りて、自身に『暗示』をかけたのです」
アンジェリカ・ロウリー「『王妃が死ぬその時まで、自分は無知で従順な王子で在り続ける』、と」
アンジェリカ・ロウリー「愚かで憎めない『ヒース王子』のキャラクターが国中に浸透するまで、長い月日をかけて」
ジョディ・フローレンス「あの子がこの私を 母を殺そうとする理由は何?」
アンジェリカ・ロウリー「母を、殺されたからです」
ジョディ・フローレンス「──」
アンジェリカ・ロウリー「問い質した者の話 そして私の持てる事実を繋ぎ合わせた推測となりますが、恐らく──」
アンジェリカ・ロウリー「ヒース様の生みの母は、亡き先王が密かに設けておられた妾にございました」
アンジェリカ・ロウリー「王妃様との間には嫡子がおられず、もし妾が身ごもり王が心変わりをすれば、王妃様は容易にその座を奪われてしまう」
アンジェリカ・ロウリー「申し上げにくい事ではございますが」
ジョディ・フローレンス「・・・続けなさい」
アンジェリカ・ロウリー「王妃は『不妊症』であられた この世界ではまだ医学的根拠のない、『そういう体質』があるとあなたは知っていたのです」
アンジェリカ・ロウリー「そこで王の妾をマークし、妊娠の兆候を見留めたら即座に監禁 子を成すまで隔離した」
ジョディ・フローレンス「・・・知ったような」
アンジェリカ・ロウリー「王妃は『懐妊した、安静に過ごしたい』と先王に申し入れ、別邸に住まわれました 同時期、妊娠した妾の世話を任せれたのが──」
アンジェリカ・ロウリー「私の父、リアム・ブルーム」
〇草原の道
〇洋館の玄関ホール
ジョディ・フローレンス「あなたわかっているの? 先王の王座を預かり受ける身である私に向かって どんな疑惑を投げかけているのか」
アンジェリカ・ロウリー「ですが、すべてが繋がりました 父リアムは、その秘密を抱えた為にヒースの実母共々殺害された」
アンジェリカ・ロウリー「私が、二度目の人生にして初めて手に入れた、唯一の肉親までをもあなたは!!」
アンジェリカ・ロウリー「どうして? どうしてそのようにしか生きられないのですか、お義母さま」
アンジェリカ・ロウリー「前世での記憶など忘れて生きていられたのに 結局私は」
アンジェリカ・ロウリー「あなたへの復讐に突き動かされて生きるしかなくなったじゃないっ!!」
ジョディ・フローレンス「だから──」
ジョディ・フローレンス「だからだからだから」
ジョディ・フローレンス「そうやって自分ばかりが不幸だと 自分ばかりが孤独だとひけらかすのをやめなさいと言っているの、」
古手川冴香「杏!!」
ジョディ・フローレンス「私こそ ”『徐福』においても” グリーンヒルド公国においても 真に親愛なる家族と呼べる者など ヒースの他に一人も──」
アンジェリカ・ロウリー「『徐福』に於いて、も?」
ジョディ・フローレンス「ハッ」
アンジェリカ・ロウリー「フフフ・・・」
アンジェリカ・ロウリー「アハハハハ!!」
アンジェリカ・ロウリー「かかりましたわね、やはりあるんだわ、私には 名女優の素質が」
アンジェリカ・ロウリー「あなたがいびって楽しんでた倉木杏は もうここにはいないのですよ 古手川冴香、お義母さま」
ジョディ・フローレンス「──何故、黙ってやり過ごし、私を暗殺させなかったのです」
アンジェリカ・ロウリー「最初から、私の目的は生きたままあなたを苦しめる事でした ジワジワと真綿で首をしめるように」
アンジェリカ・ロウリー「それに、あなたを殺害した後、ヒースに起こる変質が想定できなかった為です 私が用済みになる可能性も大いにある」
ジョディ・フローレンス「なるほど あなたは私に復讐したいのに、私を殺す事だけが出来ないのね」
アンジェリカ・ロウリー「ムッ 今はまだ、です」
ジョディ・フローレンス「ざまあないわね・・・・・・杏」
杏
アンジェリカ・ロウリー「ああ いやらしくねちっこいその陰湿な響き まさしくお義母さまの、それ」
アンジェリカ・ロウリー「ああ ああ これからいびれる相手がいるというのは 楽しいなあ」
ジョディ・フローレンス「それでどうしてあなたは この期に及んでもまだ、自分の身は安全だと高を括っているのかしらね」
アンジェリカ・ロウリー「え?」
ジョディ・フローレンス「有意義な情報を感謝するわ それでは二度目の眠りに就きなさい 今度こそ、永久の眠りであるように」
アンジェリカ・ロウリー「! 触れた物質が、人型の兵士に ?」
アンジェリカ・ロウリー「そうか」
ジョディ・フローレンス「自分だけが特別だと思って? 何故ろくな護衛も置かずに私が安穏と生きているのか 推測するならまずそこだったわね」
アンジェリカ・ロウリー「くっ!! この部屋に草花は──? あった」
アンジェリカ・ロウリー「紅のアルケミー!!」
ジョディ・フローレンス「今、確信に変わった 恐らく、前世で得た私たちの何かが、この世界に於ける錬金術に働く神経系と相似している」
ジョディ・フローレンス「そしてあなたさえ殺せば──この世界に於いて名実ともに私が最強の女って訳ね!!」
アンジェリカ・ロウリー「くっ──!!」
アンジェリカ・ロウリー「ローズ・ブラッド!」
──瞬間 気になった
〇畳敷きの大広間
お義母さまは 前世でいつ頃亡くなったのだろう
〇洋館の玄関ホール
ジョディ・フローレンス「二度も、殺されてたまるもんですかっ!!」
ああ やはりこの人も、前世のカルマを繰り返している で、あるならば
お義母さま あなたを殺したのは
〇広い和室
古手川優介「いいんだ、母さん 杏を僕のものにしたまま眠らせてくれた事は感謝してる」
古手川優介「次は、僕があなたから自由になる番だ」
そんな・・・優・・・介
〇洋館の玄関ホール
ジョディ・フローレンス「結局、いつだって私を裏切る 夫もっ、息子もっ」
ああ もしかしたらこの人と私は──
互いにとって「唯一の味方」に、なれたかも知れない人だったんだ
〇広い和室
〇洋館の玄関ホール
アンジェリカ・ロウリー「けど、あなたはそうしなかった!!!」
ジョディ・フローレンス「よくも──」
アンジェリカ・ロウリー「よくも私を──っ!!」
〇洋館の廊下
カイゼル「すごい すごいぞ、何を争っているのかは知らんが、この二人を組ませれば──」
〇城の会議室
ヒース・フローレンス「はわわ・・・?」
〇城の客室
クリント「ヤバいぞアンジェ この国のフロウ産出量の実態は想像以上だ いずれ間違いなく、世界大戦の火種となりうる」
クリント「まだだ、今はまだ──王妃を殺すな!!」
〇洋館の玄関ホール
ジョディ・フローレンス「死になさいっ!! 泥棒猫っ!!」
アンジェリカ・ロウリー「うっせえクソババアっ」
アンジェリカ・ロウリー「今度こそっ」
〇屋敷の門
古手川冴香「どうしたの? あの子の嫁になるのなら、私の娘ってことじゃない いいのよ、好きに呼びなさい」
倉木杏「あ・・・それじゃ あの」
倉木杏「おかあ さん」
〇洋館の玄関ホール
アンジェリカ・ロウリー「今度こそ ぶっ殺す!」
息子が王子説を提唱したい()
とても 続きが楽しみです!!!!!
お互いに殺意マックスの嫁姑、良いですね☺️
本当は愛し合えたかも知れない、というのもたまらないです。
やはりお義母さまは息子にやられていましたね。異世界に来た理由がわかりました。
そのうち息子も出てくるのかな。なんだか可哀想な話ですね。夫も義理の母にも愛されず、孤独。異世界にきても親が殺される。
愛がどこかで得られればいいなと思います。