生徒会空中庭園百合百合人形緊縛師(脚本)
〇ファンタジーの学園
百合埼縄華「ごきげんよう」
女生徒「キャーッ お姉様ー!」
女生徒「会長殿ー!!」
女生徒「あ~ん! 見て! 縄華さまが微笑みかけた花壇の花たちが満開になりましたわ〜!!」
百合埼縄華「わたくしは百合崎縄華」
百合埼縄華「この全寮制超お嬢様立百合崎女子学院を亡き祖母にかわり、運営していますの」
女生徒「会長っていつ見ても素敵ね〜」
女生徒「口説きたいけど完璧すぎて隙がないよ〜」
百合埼縄華「ふふふ、わたくしにも悩みのひとつやふたつありますのよ?」
高槻千早「・・・・・・」
百合埼縄華「おや」
百合埼縄華「祖母からもらったブレスレットが反応しています」
百合埼縄華「2-B高槻千早 人形指数192 教育が必要ですね」
〇屋敷の書斎
百合埼縄華「この学園の平和は私が守ります」
かいちょうおかかえ御手紙配達係まりあ「まりあ参上!」
百合埼縄華「まりあさん、2-Bの高槻さんのお部屋に招待状を届けていただけますか」
かいちょうおかかえ御手紙配達係まりあ「かしこまりましたー! つつしんでおうけします!」
かいちょうおかかえ御手紙配達係まりあ「あの、かいちょうさま!」
百合埼縄華「なんでしょう」
かいちょうおかかえ御手紙配達係まりあ「こんど、まりあもお茶会にしょうたいしてね!」
百合埼縄華「ええ、もちろんです」
かいちょうおかかえ御手紙配達係まりあ「わーいたのしみ! では、ばびゅーんと行ってきます!」
〇部屋の扉
高槻千早「今日も百合崎会長の弱みを握れなかった・・・」
高槻千早「容姿端麗文武両道完璧すぎて存在が嫌味すぎる 学院ごとぶっ壊してやりたいわ」
高槻千早「ムカつく」
高槻千早「会長さえいなければわたしは一位なのに」
高槻千早「わたしはいつも一番でなければならない。 誰よりも強くなければならない」
高槻千早「そうでなければ生きている意味がない」
高槻千早(今ごろ私の親はため息をついているだろうか)
高槻千早「ん? 扉に手紙が挟まってる・・・」
高槻千早「百合の紋章・・・ 会長から?! どういうこと?」
──わたくしの秘密、知りたいですか?──
高槻千早(便箋から眩むような百合の香りがする)
──来てくれなきゃ『がっかり』ですよ──
高槻千早「・・・?!」
高槻千早「がっかり・・・」
──会長室でお待ちしています──
高槻千早「罠よ こんなの 無視すればいい」
──わたくしの秘密、知りたいですか?──
高槻千早「・・・・・・」
高槻千早「いや、ここでビビってどうするの 受けて立つわ!」
〇華やかな裏庭
噂好きの女生徒「この学院の七不思議をご存知?」
噂好きの女生徒「123456(略)7つ目・・・会長から『招待状』をもらった生徒は・・・」
噂好きの女生徒「生徒は? なんですの? 早く教えてくださらない?」
〇屋敷の書斎
百合埼縄華「ご足労いただきありがとうございます 高槻さん」
高槻千早「なんなんですか あの手紙」
百合埼縄華「ただ、あなたの記憶と感情にアクセスしやすいように、言葉と匂いをしたためただけです。 なんの種も仕掛けもありませんよ」
高槻千早「ムカムカしてしょうがないんですけど!」
百合埼縄華「わかりました すぐに楽にしましょう」
百合埼縄華「こちらへおいでください」
百合埼縄華「ほら、私の机のそばに・・・」
百合埼縄華「こちらへ こちらへ」
高槻千早「勝手に足がうご」
高槻千早「キャーッッ」
〇雲と星
高槻千早「何これ・・・? 百合のハンモック?」
高槻千早「百合の香りで力が抜けて動けない・・・」
百合埼縄華「大丈夫 そのままじっとしていてください」
高槻千早「この状況のどこが大丈夫なんですの?!」
高槻千早「なぜ会長は百合のハンモックをまるで水の上を歩くかのようにスルスル進むのかしら?!」
高槻千早「いやあばけもの」
百合埼縄華「ばけものなんて・・・わたくしはただの人形緊縛師。人形になったものを解き放つ使命を祖母より受け継ぎし者」
高槻千早「ばけものより怪しい肩書ですわ! 解き放つのに縛るんですの??」
百合埼縄華「陰極まって陽となる。縛極まって解となる。固まった思考ループによって人形になったものには、軽い刺激が効くんですの」
高槻千早「何言ってるのこのひと それに私のことを人形扱いするなんて!無礼者!」
百合埼縄華「あなたの過去の癒えていない記憶が、あなた本来の輝きを曇らせています。とても勿体ないことです」
高槻千早(ものすごく逃げ出したいのに眠たくて足が動かない)
高槻千早「うるさい・・・!こうやって人を恥ずかしめて愉しんでいるだけでしょう」
百合埼縄華「そういうところもあります ふふ」
高槻千早「?!?!」
百合埼縄華「そう・・・わたくしにだって人に言えない下劣なところがあるんです」
百合埼縄華「わたくしを愉しませてくださいませんか高槻お嬢様お願いですお願いですお願いですお願いです」
高槻千早「ふええええ・・・・・・」
百合埼縄華「もう一度問いましょう 私の秘密を知りたいですか?」
高槻千早「会長ばかり私の秘密を知っているなんて不公平だわ」
高槻千早「教えなさい」
百合の蔓を手繰り寄せ
ひとあみ、ふたあみ、かけて行く
高槻千早(蔓が服の上を這っていくのが心地よい・・・)
高槻千早「いやだこんなこと思うなんて」
高槻千早「離して!! もういいわ」
百合埼縄華「美しいですね」
高槻千早「?!」
百合埼縄華「その気高き美しさもトラウマがもたらしたギフトなのかもしれませんが、過剰な気高さは自身を蝕むのです」
高槻千早「はあ・・・もういいわ 続けて頂戴」
もっともっと
百合埼縄華「右の脹脛に緊張の反応があります ここにがっかりされたトラウマが記憶されています」
高槻千早「そこ・・・もっと強く締めて・・・」
百合埼縄華「ふふふふふ」
溶けそう
高槻千早「会長・・・やめ、ゆるして・・・」
百合埼縄華「もうおしまいですか」
百合埼縄華「施術は済んだのでよしとしましょう」
高槻千早「うっ・・・うっ」
高槻千早(嗚咽するごとに蔓が絡みついて苦しいような、安心するような・・・)
百合埼縄華「おや、泣いているのですか いいんですよ これまでたくさん我慢してきたのでしょう」
高槻千早「見ないで・・・」
百合埼縄華「凝視します」
高槻千早「ムカつく」
百合埼縄華「元気になりましたね」
高槻千早「会長は責任をとって今晩は私を一人にしないべきよ」
百合埼縄華「そうですね、私の部屋においで。 冷蔵庫にケーキもあります」
高槻千早「こんな夜に食べたら・・・」
百合埼縄華「我慢するストレスで太るんですよ」
高槻千早「知らなかった」
〇華やかな裏庭
噂好きの女生徒「ご存知かしら? 会長の育てた百合が咲き誇る空中庭園の美しさ!」
噂好きの女生徒「そんな秘密の花園に わたくしも招待されたいですわ〜!」
「ですわ〜!」
「縛極まって解となる」というかっこいいセリフの後に「我慢するストレスで太る」とか主婦雑誌みたいなことを言い出す会長さん、いいですね。人形指数とか人形緊縛師とか、人形マニアにはたまらないであろう用語の数々も堪能しました。
緊縛師というと芸術家のように感じてしまいますが、やはり彼女達の間にも、縛る縛られる各々の側の興奮というか高揚というか、そんなものをしっかり感じ取れました。
誰しも秘密や隠したいことはありますよね。
それぞれ色々秘密にも種類があると思いますが、それを誰に打ち明けられるのかも、選ぶ必要がありそうですね!