第二話:君からのメール(脚本)
〇団地のベランダ
拓海「花穂!?」
あの日から一切連絡がなかった彼女からの一通のメール
今すぐにでもメールを見たいはずなのに、手が動かなかった
拓海(怖い)
空港から病院へ荷物を取りに行ったとき
彼女は最長2年、海外で治療を受けるということを看護師の人に言われていた
でも見ないといけない
真実を受け入れなければいけない
一つの希望を願い俺はメールを開いた
〇幻想
花穂「拓海へ」
花穂「久しぶり!」
花穂「元気にしてるかな?」
花穂「ちゃんと私のこと覚えてる?」
花穂「まぁ覚えている前提で話すんだけど・・・」
花穂「これを君が読んでいるってことは私はもうこの世にいないことになります」
花穂「本題に入る前に先に謝らないといけないね」
花穂「あのときは何も言わずに行っちゃってごめんなさい」
花穂「もう会うこともできないし直接君の顔を見て言えないけど言わせてほしいな・・・」
花穂「今まで私のためにいろんなお願いを聞いてくれて、色んな話を聞かせてくれてありがとう!」
花穂「愛してるよ」
花穂「本当はもっと沢山伝えたいことはあるはずなんだけど、こういうときに限って言葉が出てこないや」
花穂「最後なのに短くてごめんね」
花穂「じゃあ最後にお願いがあります」
花穂「私はもうこの世にいません」
花穂「そんな私のことはもう忘れてください」
花穂「もう過去を変えることはできません」
花穂「いつまでも私のことを思い続けないでください」
花穂「もう私のことで涙を流して悲しまないでほしいです」
花穂「君は君の人生を自由に生きて幸せになってください」
花穂「趣味を見つけて熱中するのも」
花穂「なにかのために一生懸命になるのも」
花穂「もちろん新しい恋を見つけても良いです」
花穂「私のために使ってくれた時間を」
花穂「次は君自身のために使ってください」
花穂「長い時間を生きて人生を楽しんでください」
花穂「それでこっちに来たとき、またあのときのように話を聞かせてください」
花穂「これが私からの最後のお願いです」
花穂「幸せになってください」
花穂「花穂より」
花穂「じゃあね拓海」
花穂「元気でね」
〇団地のベランダ
拓海「ずるいよ君は」
拓海「サヨナラさえ言わせてくれなかったのに」
拓海「君だけこんなふうに言葉を残して行っちゃうなんて」
拓海「ずるいよ・・・・・・」
俺は泣き崩れた
胸が張り裂けそうに痛かった
もう彼女とは会えない
本当は2年経ったときから薄々気づいていた
もう彼女はいなくなってしまったのではないかと
でも信じたくなかった
心のどこかで彼女は生きているのではないかと信じていた
でもそれは叶わぬ願いだった
拓海(最後にもう一度だけ会いたかった)
拓海(話した・・か・・った・・・)
拓海「あ・・・」
ふとあることが頭によぎった
最後に彼女と話せることができる方法が
俺は部屋に戻り、あるものを探した
クローゼットを開け荷物をまとめていた大きな段ボールを取り出す
拓海(あの箱!あれはどこにある!)
一つの箱、沢山の思い出の品が詰まっている箱
また彼女と話せるかはわからない
でも可能性があるならあの箱の中にあると思った
拓海「あった・・・!」
〇駅前ロータリー(駅名無し)
1週間後
俺は花穂からのメールが届いた翌日ある人に電話をした
彼女と最も親しく
そして俺と花穂を一番近くで見守ってくれた人
拓海「お久しぶりです・・・祥子さん」
祥子さん「久しぶりね、拓海くん」
この人は波並祥子さん
彼女・・・花穂の母親だ
祥子さん「3年ぶりぐらいかしら?」
祥子さん「ずいぶん立派になって・・・」
拓海「ありがとうございます・・・」
祥子さん「それに連絡もらえて嬉しかったわ」
拓海「いえ、こちらこそお願いを聞いてくださりありがとうございます」
祥子さん「そういえば、私の連絡先よく覚えていたわね」
拓海「えっと・・・実はついこの間まで忘れていて」
祥子さん「え?」
祥子さん「じゃあどうやって私の連絡先を?」
拓海「これです」
祥子さん「手帳?」
拓海「高校生のときに使っていた手帳なんですが実はここに・・・・・・」
3年前、花穂の身にもしものことがあったときのために連絡先を花穂に書いてもらっていた
まさか初めて連絡するのがこんなお願いをするためになるなんて思いもしなかった
祥子さん「そうだったのね・・・」
拓海「はい・・・」
祥子さん「・・・・・・」
拓海「・・・・・・」
祥子さん「ここでずっと話しててもあれだし」
祥子さん「そろそろ行きましょうか」
拓海「あ、そうですね・・・」
〇墓石
祥子さん「ここよ・・・」
祥子さん「あの子がいるのは」
拓海「ここに花穂が・・・」
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第一話からは、いろんな物語の展開が想像できましたが、こうあってほしくない展開だったのですね。努めて感情を整理しようとする主人公の姿に心打たれますね。