主従リリカル(脚本)
〇要塞の廊下
アリサ「・・・・・・」
〇黒
〇貴族の部屋
アリサ「お嬢様、早く起きてくださいまし」
オリヴィア「んっ、もうすこし・・・・・・」
アリサ「また夜更かしなされたんですか?」
オリヴィア「らって~、むにゃ・・・・・・」
アリサ「勉強もほどほどにしてください」
アリサ「お嬢様、ハーブティーでございます」
オリヴィア「ん、ありがと いただくわ」
オリヴィア「良い香り ラベンダーね」
アリサ「はい、本日は魔法の実技テストと聞き及んでおります」
アリサ「ですので、お嬢様がリラックスした状態で臨めるように──」
オリヴィア「・・・・・・」
アリサ「お口に合いませんでしたか?」
オリヴィア「そんなことないわ 貴女の淹れるお茶はいつだって美味しいもの」
オリヴィア「それはそうと・・・・・・アリサ 今日は大人しくしていなさい」
アリサ「は、はあ・・・・・・」
オリヴィア「それじゃあ、行ってくるわ 送迎は爺やに頼むから」
〇華やかな寮
オリヴィア「ねえ爺や 今日のアリサ、少し変じゃないかしら?」
爺や「左様ですか? 私めには普段通りに感じられましたが」
オリヴィア「そ、なら良いわ 今日も送ってくれてありがと 帰りも頼むわ」
爺や「お待ちしております」
〇華やかな寮
〇車内
爺や「今日もしっかりと励まれましたか?」
オリヴィア「べつに、いつも通りよ スペンサー家の名に恥じぬ振る舞いをしてきたもの」
爺や「それは何よりでございます きっとお父上様もお喜びになります」
オリヴィア「・・・・・・」
オリヴィア「あの人は別に──」
オリヴィア「いえ、なんでもないわ 忘れてちょうだい」
〇洋館の玄関ホール
オリヴィア「帰ったわよ、アリサー!」
オリヴィア(あれ、いつもなら出迎えてくれるのに)
オリヴィア「アリサー?」
アリサ「お、お嬢様!? お帰りなさいませ!」
アリサ「申し訳ございません お出迎えが遅く――きゃっ!?」
オリヴィア「アリサ――っ!?」
オリヴィア「”包み込め微風、寄り添うように” (ゲイル・ブロウ>>>アンダンテ)」
〇豪華なベッドルーム
アリサ「ん、あれ?」
オリヴィア「目覚めたかしら」
オリヴィア「ふふ、いつもとは立場が逆ね」
アリサ「お嬢様!?」
アリサ「すみません、今すぐ――っ!」
オリヴィア「無茶しないの! 階段で足首を痛めたんだからっ」
オリヴィア「それに──」
アリサ「ち、近いですお嬢様っ!」
オリヴィア「ん、熱ありそうね いつもより息も荒いし」
アリサ「うっ、気づいてらっしゃったのですか」
オリヴィア「だって、アリサ」
オリヴィア「今朝はラベンダーティーを淹れてくれたでしょう?」
アリサ「はい、お嬢様のテストが上手くいくように」
オリヴィア「それよ、それ」
アリサ「へ?」
オリヴィア「だって、実技来週だもん」
アリサ「あっ」
オリヴィア「ふふ、いつものアリサならあんな間違い起こさないわ」
オリヴィア「だから安静にしてなさいって言ったのに」
オリヴィア「その様子だといつも通り働いてたみたいね」
アリサ「・・・・・・」
オリヴィア「決めた! 今日は私がアリサの看病をしてあげるわ!」
アリサ「お嬢様にそんな!」
オリヴィア「気にしないの! これも貴族の務めってやつよ」
オリヴィア「そうね~ポリッジでも作ろうかしら」
アリサ「作れるんですか・・・・・・?」
オリヴィア「馬鹿にしないでよね」
オリヴィア「ポリッジくらい簡単に作れるわ 見てなさい!」
〇黒
オリヴィア「よーし」
オリヴィア「アリサのために頑張っちゃうぞっ!」
オリヴィア「えーっと」
オリヴィア「まずお米を洗えばいいのよね?」
〇豪華なベッドルーム
オリヴィア「アリサできたわよ!」
オリヴィア「あ~んしてあげるから起きてー」
アリサ「その、少し恥ずかしいですね」
オリヴィア「いいから。ほら、あ~んっ! ちゃんと治さないと」
アリサ「うぐっ」
オリヴィア「わかった! アリサはふーふーしてほしいんだね♪」
アリサ「あまり、からかわないでください」
アリサ「では、お言葉に甘えて」
オリヴィア「素直でよろしい」
アリサ「はむ――けほ、けほっ!?」
オリヴィア「ちょ、大丈夫っ!? 熱かったかしら?」
オリヴィア「やっぱり、ふーふーしてから──」
アリサ「いえ、そういう問題では・・・・・・ お嬢様、粥に香りづけでもしましたか?」
オリヴィア「そんなことしないわよ」
オリヴィア「料理はレシピ通り 忠実に再現するものでしょ?」
オリヴィア「素人がオリジナリティだそうと アレンジすれば失敗するって 本にも書いてあったわ」
アリサ「オッシャルトオリデゴザイマス」
オリヴィア「なんでカタコトなのよ・・・・・・」
オリヴィア「ほんとに書いてあるとおりに作ったわ」
オリヴィア「うそじゃないもん! ほんとのほんとよ?」
アリサ「ふふ、べつに怒ってませんよ ちょっとした仕返し、です」
オリヴィア「やるわね、アリサ」
アリサ「お嬢様のメイドですから」
アリサ「でも不思議です なぜ柑橘系の香りがしたのでしょう?」
オリヴィア「そんなはずないわ」
オリヴィア「だってアリサの故郷の味に合わせて お米と梅しか使ってないもの!」
オリヴィア「ヌメリを取るためにしっかり洗って──」
アリサ「洗剤、使ったりしませんでした?」
オリヴィア「・・・・・・」
オリヴィア「・・・・・・てへっ」
アリサ「使ったんですね・・・・・・ 米は水で研ぐだけで十分ですよ」
アリサ「また一つ勉強になりましたね」
オリヴィア「ごめんなさい」
アリサ「お気になさらず」
アリサ「それよりお嬢様が私のために手料理を振る舞ってくれたことが嬉しいんです」
アリサ「心が満たされました」
オリヴィア「よかった・・・・・・」
〇豪華なベッドルーム
アリサ「お嬢様? あまり近づくと風邪を移してしまいます」
オリヴィア「だいじょうぶ、このまま居させて」
アリサ「どうされました? 今日は随分甘えん坊ですね」
オリヴィア「わたしね、魔法を勉強しててよかった」
オリヴィア「アリサが階段から落ちそうになって でも魔法のおかげでアリサを守れた」
オリヴィア「誰も傷つけない 誰かを守るための魔法なら これからも学んでいきたい」
オリヴィア「あとね」
オリヴィア「二人のときはオリーって呼んで?」
アリサ「――っ!」
アリサ「そんな、私はお嬢様のお世話係で」
オリヴィア「むっ、違うでしょ! アリサはわたしの親友なんだからっ!!」
アリサ「親友・・・・・・」
アリサ「そうですね、ではオ──」
オリヴィア「すやすや~」
アリサ「魔法を使って疲れてしまったのでしょうか ふふ、可愛らしい寝顔です」
アリサ「私はオリーのメイドで、親友──」
アリサ「それでも、オリーのことを誰よりもお慕いしておりますよ」
アリサ「なんて 絶対オリーには聞かせられないけど」
アリサ「おやすみ、オリー」
〇要塞の廊下
〇黒
〇貴族の部屋
アリサ「お嬢様、早く起きてくださいまし」
オリヴィア「んっ、もうすこし・・・・・・」
オリヴィア「ずずっ!」
オリヴィア「ふえ~ん、アリサー風邪引いた~!」
アリサ「まったく オリーは私がいないとダメなんですから」
魔法が使えるのに料理は苦手なオリヴィアのキャラクターが可愛いですね。それにしても、故郷の食材が米と梅干しってアリサって日本人なの?一気に親近感が増しました。
メイドを従えているお嬢様って一般的にわがままだったり意地悪だったりするイメージが強いのですが、オリーは本当に正真正銘のお嬢様だってことが伝わり、読み心地がよかったです。
なんだろう…すごくニヤニヤしながら読んでいました。
とても良い関係で、羨ましくもありました!
見ている人は見ているものですよね。その人がいつもと違う!ということも分かる人にはわかりますよね!