消耗品少女

りるか

本音と建前と美少女(脚本)

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りるか

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〇空
「私はお前らの消耗品じゃねーっ!!!」

〇教室
  遡ること10時間前
百瀬波奈(今日はアンテナショップに行ってイカの塩辛でも買って帰ろうかな)
姫乃「ねーハナ」
百瀬波奈「なーに姫?」
姫乃「これをみて!」
百瀬波奈「アイドルオーディション?」
姫乃「そう!良かったらこれに応募してみない!?」
百瀬波奈「はっ!?何で!?」
姫乃「ハナなら余裕で受かるって!学校でも『高嶺の花、百瀬波奈』とか呼ばれてるし!」
百瀬波奈(いつの間にそんなダッセーキャッチフレーズ付けられてたの!?)
姫乃「ね、お願い」
姫乃「それでそれで、いつかイケメン俳優とお近づきになれたらサインとか」
百瀬波奈(あー・・・それが目的か。イケメンはみんな顔同じに見えちゃうんだよなぁ)
百瀬波奈「悪いけど有名になりたくないし興味ないの。他を当たって」
姫乃「そ、そっか。わかった」
百瀬波奈(おっ、案外あっさり引いてくれてよかった)
姫乃「じゃあSNSでインフルエンサーに」
百瀬波奈「ならないっ!」

〇渋谷のスクランブル交差点
百瀬波奈(はーっ。やっと学校終わった)
百瀬波奈(何で姫は急にあんなこと言ってきたんだろう)
百瀬波奈(てか明らかに私をダシにしてたよね?)
百瀬波奈(ダメダメ!気持ちを入れ替えよう!)
百瀬波奈「今日は特別にたこわさも買っちゃおっかな」
スカウトマン「あーっちょっと良いかな?」
百瀬波奈「エイヒレもありだな」
スカウトマン「そ、そこのエイヒレの君!」
百瀬波奈「えっ、もしかして私?」
スカウトマン「そうそう。今ちょっと良いかな?」
百瀬波奈「はぁ」
百瀬波奈(道に迷ったのかな?)
スカウトマン「君、芸能界に興味ない?」
百瀬波奈「は?」
スカウトマン「すぐにピンときたよ。その美貌は色々な人に見て貰わないと世界の損失だ」
百瀬波奈「いや、別に」
スカウトマン「それにもうキャラ設定も閃いたんだ!」
百瀬波奈「えっ」
スカウトマン「好きなおやつはマカロンとキャンディ」
百瀬波奈(おかきとチー鱈ですが)
スカウトマン「趣味は料理と手芸!」
百瀬波奈(昼寝と散歩です)
スカウトマン「特技はみんなのハートを掴むこと!!」
百瀬波奈(釣った魚を捌くことです)
スカウトマン「ねっ!?君ならすぐに売れるし、このままじゃ勿体無いよ」
百瀬波奈(偽りの自分を好きになって貰っても嬉しくないし)
百瀬波奈(勿体無いかどうかはあなたが決めることじゃない!)
百瀬波奈「──失礼します」
スカウトマン「あっ」

〇公園のベンチ
百瀬波奈「はぁっ」
百瀬波奈(今日は何だか嫌な1日だなぁ)
百瀬波奈(でもとりあえず塩辛買ったし、悪くならない内に帰ろう)
ナンパ男1「ねーねー」
百瀬波奈「わっ」
ナンパ男2「可愛いね。今ヒマ?良かったら近くのカフェ行かない?」
ナンパ男1「超バズってる所あって〜男だけだと行きにくいんだよね〜」
百瀬波奈(もしかしてナンパ!?最悪!塩辛が悪くなるから早く帰りたいんだけど!?)
ナンパ男2「勿論奢るしさ」
百瀬波奈「け、結構です!用事があるのでそれじゃ」
ナンパ男1「えーつれないなー」
ナンパ男2「じゃあ近くまで送るよ!こんな可愛い子1人とか危ないじゃん?」
百瀬波奈(お前の方が危険だよ)
百瀬波奈「いや、結構です。駅すぐそこなんで」
ナンパ男1「遠慮しないで!」
百瀬波奈「してないです」
百瀬波奈(何で、どいつもこいつも私の言葉を聞いてくれないんだろう)
百瀬波奈(本当の私を、見てくれないんだろう)
ナンパ男2「てか、ぶっちゃけ目の保養?みたいな」
ナンパ男1「それっ!隣を歩いてくれるだけでいいからさ!」
百瀬波奈(何だそれ。結局見た目だけか?)
百瀬波奈「あぁ、そっか」
百瀬波奈(こいつらは私のこと)

〇空
「私はお前らの消耗品じゃねーっ!!!」

〇公園のベンチ
百瀬波奈(何で私が誰かのために犠牲にならないといけないの!?)
百瀬波奈(やれアイドルだ、やれ芸能人だの知ったこっちゃない)
百瀬波奈(サイン欲しいからとか、誰かのためとか、そこに私の意思はないじゃない!)
百瀬波奈「本当の私は、塩辛食べてゲームしながらスウェットで1日を過ごす女よ」
ナンパ男1「し、塩辛・・・?」
百瀬波奈(みんな私を無意識に消耗してるの)
百瀬波奈(上部しか見てない。私と言う存在は消耗され続けてるのに)
百瀬波奈「うぅっ」
百瀬波奈「もう布団に篭りたいので帰ります!!」
「いっちゃった」

〇住宅街の道
百瀬波奈(急に泣いちゃったし、明らかにいらんこと言って去ったからあの人たち困惑してたな)
百瀬波奈(はぁ・・・今日はため息ばっかり。私はこれからも消耗され続ける人生なのかな)
蘭「おねえさん大丈夫?」
百瀬波奈「えっ」
百瀬波奈(ビックリした・・・ここら辺の子かしら)
蘭「お姉さん可愛いね」
百瀬波奈「あ、ありがとう」
百瀬波奈(今それちょった地雷ワードだけど)
百瀬波奈「えっと、あなたも素敵よ。そのうさぎのお友だちも」
蘭「ありがと!」
蘭「この子はワン太郎っていうの!」
百瀬波奈(うさぎなのに!?)
蘭「みんな「うさぎなのに!?」って言うの」
百瀬波奈「うっ」
蘭「名前の由来もちゃんと聞かないでそんなこと言うんだよ」
蘭「この子は死んだワン太郎の代わりにママが買ってくれた子なの。だから名前はそのまま」
蘭「本当のことを知ると、みんなちゃんと分かってくれるんだよ」
蘭「だから、ちゃんと伝えることにしてるの」
百瀬波奈「・・・そうだったんだ」
百瀬波奈(私も、先入観ですぐに決めつけちゃったな。伝えるのって大切だよね)
百瀬波奈(──あれ)

〇教室

〇渋谷のスクランブル交差点

〇公園のベンチ

〇住宅街の道
百瀬波奈(私、今まで自分の気持ちをちゃんと伝えたことあった?)
百瀬波奈(全部心の声ばかりで、口には出してなかったんじゃないの?)
百瀬波奈(言葉にしないと、相手に伝わるはずがない)
百瀬波奈「自分を消耗してたのは、私も同じだったのね」
蘭「ん?」
百瀬波奈「ううん、何でもないの。大切なことを教えてくれてありがとう」
蘭「よくわからないけど、どういたしまして」
百瀬波奈「またね!」
蘭「ばいばーい!」

〇住宅街の道
蘭「これで良かったの?」
姫乃「えぇ、ありがとう蘭」
姫乃「あんな酷い話をしたら本音で話してくれると思ったのだけど」
姫乃「失敗しちゃったわ。人の気持ちを聞くのは難しいわね」
姫乃「あなたまで巻き込んでごめんなさい」
蘭「本当だよ、全く。不器用にも程がある」
蘭「明日は、ちゃんとお姉ちゃんが頑張るんだよ」
姫乃「えぇ、勿論よ」

〇教室
  翌日
百瀬波奈(あっ)
百瀬波奈(よし。ちゃんと伝えよう。私は誰かのために人生を消費したくないって)
百瀬波奈(私は、私の好きな人生を生きたいって)
姫乃(もしも本音が聞けたら、その時はちゃんと受け入れよう)
姫乃(どんなハナも、私の憧れのハナだよって)
百瀬波奈「姫、あのね!」
姫乃「ハナ、あのね!」

〇教室

〇ラーメン屋のカウンター

〇空
「いただきます!」
  終

コメント

  • 波奈さんの本音も、姫乃さんの不器用さも、とても理解ができて心に入ってきますね。優しいラストに笑顔になってしまいました。
    波奈さんの食の好み、最高ですねw 私の好物でもあるのですが、美少女のチョイスと思ったら笑ってしまいます

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