ちちちちッチ!(一家に四人のお父さん)

根本桃安(ねもとぴぁ)

パパと親父とダディと父上(脚本)

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〇おしゃれなリビングダイニング
  私は四文字 秋冨(よもじ あきと)
  39歳。この家の父親──
秋冨(あきと)(なのだが⋯)
秋冨(あきと)「おくつろぎのところ失礼。どちら様でしたかな?」
夏臣(なつおみ)「四文字 夏臣(なつおみ)33才 我が家の『親父』さ」
磨冬(まふゆ)「四文字 磨冬(まふゆ)27才 同じく『父上』だ」
秋冨(あきと)「二人ともうちのお父さんだってェ!?」
秋冨(あきと)「ハハッ、お宅をお間違えのようだ」
???「ただ~いま~」
春香(はるか)「や~、うっかり日曜登校しちゃったよ」
秋冨(あきと)「君は⋯息子さんかい?!」
春香(はるか)「はぇ?」
春香(はるか)「四文字 春香(はるか) うちの『パパ』じゃ~ん」
秋冨(あきと)「パ⋯? ポ?」
春香(はるか)「さ~てはダディ、昨晩飲んでたな~?」
磨冬(まふゆ)「らしいな。ほれ」
秋冨(あきと)「クッサ!」
秋冨(あきと)「これは⋯?」
磨冬(まふゆ)「俺様特製の酔い覚ましだ」
磨冬(まふゆ)「口内炎と引き換えに一発で現実に戻れる」
秋冨(あきと)「口内炎⋯地味に嫌だね」
磨冬(まふゆ)「いいから飲めや!オラッ!」
秋冨(あきと)「アッ、やめ⋯クサッ!」
秋冨(あきと)「ゴクン!」

〇時計
秋冨(あきと)「我らは父~♪私秋冨~♪」
秋冨(あきと)「ダンディー目指すダディです♪」
「一家に4人 父です♪」
「チーチー チッチッチッ チチチ♪」
秋冨(あきと)「チーチー チッチチ⋯」

〇おしゃれなリビングダイニング
秋冨(あきと)「ハァ──ッ!」
秋冨(あきと)「みんな、うちのお父さんじゃ──ん!!」
「そう言ってるじゃ──ん!!」
磨冬(まふゆ)「次忘れたら酒がゲロ味になる薬飲ますからな」
秋冨(あきと)「しゅん⋯」
皆子(みなこ)「ちょっと円未里(えみり)と出掛けてくるね。夕方帰るわ」
春香(はるか)「今日はどちらまで?」
円未里(えみり)「発表会のドレスを買いに♪あとでお姫様ごっこしよ♪」
春香(はるか)「僕王子ね?」
円未里(えみり)「ダ~メ!」
円未里(えみり)「パパルカも一緒にお姫様しよ♪」
春香(はるか)「りょ、ですわ♪」
夏臣(嫁仕様)「皆子さんも好きなもの買っておいで」
  説明しよう!嫁命の夏臣は嫁の前では『ハンサム夏臣』に自動変身するのだッ!!
皆子(みなこ)「おみ君ありがと~!」
磨冬(まふゆ)「無駄遣い煽るなよ、家事手伝いが」
夏臣(嫁仕様)「専業主夫じゃ!節約しとるわ!ニートは黙っとれ!」
磨冬(まふゆ)「ニートだぁ?俺様は崇高な目的のために日々研究を──」
夏臣(嫁仕様)「⋯母を捨てた父への復讐、だったな」
夏臣(嫁仕様)「早く見つかるといいな、下衆父(ゲスっち)」
磨冬(まふゆ)「さっさと葬って、ママンが待つフランスに帰りたい⋯」
秋冨(あきと)「気をつけて行っておいで」
皆子(みなこ)「あ、はい」
秋冨(あきと)「⋯⋯」
秋冨(あきと)「私⋯本当にこの家のお父さんなのかな?」
春香(はるか)「な~に言ってるのさ、ダディ?」
春香(はるか)(出ていかないでよ?僕の『多夫多妻多子ドリーム』はまだ始まったばかりなんだから)
磨冬(まふゆ)「懐かない妻子なんか気にすんなって しょせん形だけの関係だ」
磨冬(まふゆ)(出てくなよ?お前は貴重なATMであり、実験体なんだ)
夏臣(なつおみ)「ダディがそう思うのも仕方ない 異常だよ、一家に四人の父親なんて」
「親父!?」
夏臣(なつおみ)「常々思っていた」
  軽薄ナンパ高校生に
  マザコン・マッドサイエンティスト
  そして空気
夏臣(なつおみ)「まともな父親は俺だけだ」
夏臣(なつおみ)「俺以外、解散ッ!」
「断固反対!表に出ろォ──ッ!!」

〇広い公園
磨冬(まふゆ)「勝者が正義!父親らしくキャッチボールで勝負だ!」
春香(はるか)「長く続いた方の勝ちね 僕らが勝てば家庭継続。君らなら解散だ」
夏臣(なつおみ)「望むところだ! 皆子さんの真の夫に俺はなるッ!」
夏臣(なつおみ)「ダディも今解放してやるからな」
秋冨(あきと)「はぁ⋯」
秋冨(あきと)(これが私の望んだこと⋯なのか?)
秋冨(あきと)(いや、私は無用の父。私の意見などどうでもいい⋯)
秋冨(あきと)「ときに親父さん、その格好でやるのかい?」
夏臣(なつおみ)「皆子さんいないと変身できないからね。でもこの姿で十分さ!」
夏臣(なつおみ)「ラブパワーで勝利を掴むッ!」
秋冨(あきと)「いや、鍋つかみ⋯」
夏臣(なつおみ)「ミトンだよ!失礼な!主夫は手が命なの!」
夏臣(なつおみ)「誰かさんが会社からミットを借りてくりゃな」
秋冨(あきと)「買いましょうよ?」
秋冨(あきと)(皆子さん以外には締まり屋なんだからな~)
春香(はるか)「じゃ、始めるよ!」
  プレイボールッ!!
春香(はるか)「行っくよ~?」
磨冬(まふゆ)「応!」
「ヒソヒソ⋯」
「かっこよ~♥️眼福~♥️」
春香(はるか)「ニコッ」
磨冬(まふゆ)「とっとと投げろや!」
夏臣(なつおみ)(お、父上が焦れてる!この勝負もらったな)
秋冨(あきと)「行きますよ、親父さん」
夏臣(なつおみ)「落ち着いていこう!」
秋冨(あきと)「それっ!」
夏臣(なつおみ)「ひょっ!?」

〇水玉2
夏臣(なつおみ)「ボールが増えた⋯だとッ!? あ⋯あり得ない!あり得──」
夏臣(なつおみ)「そういえば、さっき⋯」
磨冬(まふゆ)「水分補給しとけ、倒れるぞ」
  いや、あり得ねぇわッ!!
夏臣(なつおみ)「クッ!油断した!まさかヤツの薬が匂わないとは⋯!!」
夏臣(なつおみ)「落ち着けッ!やられたのは視覚だけ」
夏臣(なつおみ)「研ぎ澄ませ、感覚を──!」

〇白
夏臣(なつおみ)「感じとれ!ボールに染み付いた皆子さんの気配をッ!」
夏臣(なつおみ)「⋯」
夏臣(なつおみ)「キタ──ッ!皆子さんの香り!」
夏臣(嫁仕様)「つかまえた♥️」
夏臣(嫁仕様)「受けとれ、ダディ!」

〇広い公園
秋冨(あきと)「オーライ オーラ⋯」
秋冨(あきと)「イっ!?」

〇カラフル
秋冨(あきと)「う⋯うわぁああ──!?」

〇広い公園
夏臣(なつおみ)「野郎ッ!ダディにまで──!」
秋冨(あきと)「はわわ⋯ボールがいっぱい⋯」
夏臣(なつおみ)「ダディ──ッ!!」

〇ソーダ
秋冨(あきと)「⋯」
秋冨(あきと)「おや、この声はキセキレイかな?」
???「ごめんください」

〇電気屋
???「あの⋯」
  この記憶は⋯半年間?忘れていた⋯あの日は忘年会だったっけ
  終電を逃して戻った店内に、見知らぬ子供がいたんだ
秋冨(あきと)「はて?迷子かな?お名前は?」
???「いえ、これを」
秋冨(あきと)「ご返却ですか。失礼しました。少々お待ちを」
秋冨(あきと)(DVDなんて取り扱ってたかな?タイトルも書かれてない⋯)
秋冨(あきと)(見てみますか)

〇坑道
  それは引退した三銃士達が、王の双子の弟を救うために奮闘する活劇だった
秋冨(あきと)(洋画かぁ 邦画の方が好みなんだが⋯(松竹さんとか))
秋冨(あきと)(とは言え⋯)
秋冨(あきと)(なかなかどうして⋯)
秋冨(あきと)「善ッッ!」
秋冨(あきと)「なんと素晴らしき父性愛ッ!!『父』の映画だ!これはッ!」
  私は取り憑かれたように映画をリプレイし続けた
秋冨(あきと)「はぁ⋯たまらん!私もこんな『父親』になりたいッ!」
秋冨(あきと)「⋯なぁんて!冴えないオジサンが何言ってんだか!」
秋冨(あきと)「でも⋯尊敬されたい 私はいるのに、いないも同然だ⋯」
「ワン・フォー・オール! オール・フォー・ワン!」
秋冨(あきと)「⋯」
「ワン・フォー・オール! オール・フォー・ワン!」

〇電気屋
秋冨(あきと)「⋯ワン、フォー、オール オール、フォー、ワン⋯」
秋冨(あきと)「一人では成せないことも、仲間となら──!」
???「その通り!冴えてるじゃん」
秋冨(あきと)「へぁ!?」
???「貴方の夢を叶えてあげる」
???「メ~リ~ク~リ~!!🎄」
  そんなこんなで──

〇空
  フォー・ファーザーズになってたんだよなぁ

〇公園の入り口
秋冨(あきと)(それはさておき⋯)
秋冨(あきと)「倒れたまま放置とかツラっ!」
秋冨(あきと)「どうだっていいよね、私なんて!謎にニワカごしらえされた家族だし!」
秋冨(あきと)「嗚呼⋯空よ、私の心は空っぽだ 私を夕焼けに溶かしておくれ⋯」
「おーい!ダディー!」
秋冨(あきと)「パパ、さん⋯?」
春香(はるか)「遅くなってごめんね 救急車の番号忘れちゃって」
春香(はるか)「助けを呼んできたよ!」
パパ春ファン1「保健委員の私に任せて!」
パパ春ファン2「老い先短いこの命、パパ春ちゃんのお友達にあげようね」
パパ春ファン3「ニョンミャ~ン(良い獣医紹介したげる)」
「パパ春ちゃんの役に立つのは私だぁ──ッ!!」
春香(はるか)「仲良くして!皆が怪我しちゃうよ!」
秋冨(あきと)「私はこの通り、無事ですので!」
夏臣(なつおみ)「俺のお陰でな」
秋冨(あきと)「親父さんッ!?」
秋冨(あきと)「クッションになってくれたのかい!地面が心地よかったワケだ!」
夏臣(なつおみ)「あんな提案しちまったけどよォ」
夏臣(なつおみ)「家族が欠けたら、なんだかんだ悲しむと思うんだ、皆子さん」
夏臣(なつおみ)「嫁の笑顔は俺が守る!」
夏臣(なつおみ)「てコトで、部外者は帰ってくださーい」
パパ春ファン1「泥がついたわ!」
パパ春ファン3「ミャニョー!(セクハラよ!)」
パパ春ファン2「パパ春ちゃん、またね♥️」
秋冨(あきと)「すまなかったね、二人とも。 早く帰ろう。空腹の父上は手が付けられん」
春香(はるか)「あ、父上なら──」

〇木の上
  上でショゲてるよ
磨冬(まふゆ)「どうしよう、ママン⋯ダディを殺してしまった⋯」
磨冬(まふゆ)「シクシク⋯」
秋冨「安定の情緒不安定ッ!」
秋冨「お~い、父上~!下りておいで~!」
磨冬(まふゆ)「ダディ!?無事だったのか!?」
磨冬(まふゆ)「フハッ!キャッチに失敗したよなぁ?貴様らの敗けだ!フハハハッ!」
秋冨「はいはい、それでいいから、帰りますよ~」

〇一戸建て

〇おしゃれなリビングダイニング
磨冬(まふゆ)「なぁ、ダディ、それ」
秋冨(あきと)「ん?」
磨冬(まふゆ)「魚の皮。食わないなら寄越せ」
秋冨(あきと)「おねだりかい」
秋冨(あきと)「仕方のない父上ですねぇ」
秋冨(あきと)「でもあっげな~い♪花嫁ヴェールだもの♪今宵はビールと嬉し香ばしマリア~ジュ♪」
磨冬(まふゆ)「また飲んでやがる!」
磨冬(まふゆ)「チッ!」
磨冬(まふゆ)「完成にはほど遠いが⋯」
円未里(えみり)「父上、私のあげるよ♪」
磨冬(まふゆ)「ガ⋯ガキに施されるほど飢えてねぇし!」
円未里(えみり)「コホンッ」
円未里(えみり)「マフユは『クーデター』からヨモジ王国を守ったと聞きましたよ」
円未里(えみり)「これはエミ姫からのご褒美なのです!」
磨冬(まふゆ)「⋯どうも」
  ド天然無差別たらしボーイに
  愛妻家すぎる熱血トランスフォーマー
  甘えん坊な拗らせ科学者と
  そして私、しがない中年サラリーマン
  『四者四様』な父親達の歪な共同生活で、理想の家族とは程遠いけど⋯
秋冨(あきと)(みんなとなら──)

〇地図
  次回予告(仮)

〇様々な蝶
  予告①
  パパのストーカーは幽霊!?
  怖がりダディの大ピンチ!

〇ポップ2
  予告②
  親父がコミケで嫁を布教!?
  守れ!家族のプライバシー!

〇不気味
  予告③
  ダディがレンタルしてきた謎の物体!
  その正体は!?

〇keep out
  予告④
  磨冬の復讐相手は円未里の先生!?
  六者面談で尋問だ!

〇地図
  乞うご期待!

コメント

  • 父の字の成り立ちは絶対そうじゃないはず…
    妻子はいったいどこから来た?誰の子??
    身寄りのいないシンママを父たちが一緒に暮らそうと提案したのかな〜と妄想。
    とても面白くて頭がカオスになりました〜😇👾

    77人目読者との事で、記念に書き込みました🥰

  • 読みにうかがうのがかなり遅くなってしまいました~!💦
    ん?ん~?どういうこと!?と、なりながらも楽しませていただきました。
    秋富ダディのセリフ『松竹さんとか』にクスリとしました😊
    予告の内容も楽しそうでした♪

  • 読む前から「どういうこと??」となってましたが、深く考えたらいけないやつでした!w
    謎の人物が出てくるあたり裏はありそうですが、これはもう楽しんだが勝ちですね!😆
    仮面の男のイケオジたち良かったですよね😍
    ダディが目指しているのはアトス?
    あの頃の洋画は面白かったけど、最近は圧倒的に邦画ですよね。松竹さんとか!(チラッチラッ

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