あなたの『もしも』に備えます!

銀次郎

あなたの『もしも』に備えます!(脚本)

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〇立ち飲み屋
戸野倉真澄「うーん、わかんないなぁ‥」
沢登陽「ですから、これは『もしも』の時に備えるアプリなんですよ」
もしもちゃん「もしもちゃんにお任せ!!」
戸野倉真澄「何?しゃべんの?」
沢登陽「起動中は音声が出て、定期的にこんな事言うみたいです」
戸野倉真澄「うるさくないか?」
沢登陽「まー、音声切っちゃえばいいんですけど、つい可愛くて‥」
戸野倉真澄「まあ可愛いけど‥アプリかぁ」
沢登陽「そっか、課長、まだガラケーか」
戸野倉真澄「うちの娘にもスマホに変えろって言われるんだけどさー‥あれなの?スマホってアプリが無いと動かないの?」
沢登陽「そんな事は無いんですが、アプリがあると、もっといろんな事ができるんですよ」
戸野倉真澄「いろんな事‥」
沢登陽「うーん、なんて説明すれば‥あっ、例えると、スマホは本体が課長、アプリは部下みたいなもんですよ」
戸野倉真澄「どういうこと?」
沢登陽「例えば、もし、うちの課に課長1人しかいなかったらどうです?」
戸野倉真澄「どうって‥まあ、俺が忙しいよね 仕事も手が回んないし」
沢登陽「ですよね?1人じゃ出来る事も限られちゃいます‥でも、部下がたくさんいたら?」
戸野倉真澄「たくさんいたら‥まあ、色々やらせられるな」
沢登陽「そう!部下がたくさんいると、色んな事が出来るようになる、アプリもそういうものですよ」
もしもちゃん「もしもちゃんにお任せ!!」
戸野倉真澄「‥可愛い」
沢登陽「わかってくれました?」
戸野倉真澄「えっ?‥あー、なんとなく‥」
沢登陽「まあ、うちの課には、部下は僕しかいませんけど」
戸野倉真澄「なぁ、どうしてうちの課はみんな辞めちゃうんだろうな?」
沢登陽「何ででしょうね」
戸野倉真澄「お前は辞めないでね」
沢登陽「それは何とも‥」
戸野倉真澄「頼むよー、そしたら俺は課長じゃなくて、ただの課になっちゃうよ、『課』って呼ばれるらしいの、俺」
沢登陽「ただの『課』って‥誰が呼ぶんですか?そんな失礼な?」
戸野倉真澄「うちの部長」
沢登陽「本気の話じゃないですか?」
戸野倉真澄「そうなの、これ以上辞める奴がでたら、お前はただの『課』だからなって」
沢登陽「それはお気の毒に‥」
戸野倉真澄「『課』は嫌だな‥なんか虫っぽいし」
沢登陽「課長!だったら課長こそ、このアプリが必要かもしれませんよ?」
戸野倉真澄「俺が?」
沢登陽「そうです、この『もしもちゃん』が!」
もしもちゃん「もしもちゃんにお任せ!!」
戸野倉真澄「‥いや、とりあえずお前が辞めないで くれればそれでいいんだけど」
沢登陽「何を小さい事言ってるんですか課長!」
戸野倉真澄「小さいってなんだよ!」
沢登陽「備えるんですよ!これで!」
戸野倉真澄「何で急に興奮すんだよ!何にだよ?」
沢登陽「課長の『もしも』にですよ!」
もしもちゃん「もしもちゃんにお任せ!!」
戸野倉真澄「ちょいちょいうるせぇな、このアプリ! いや、だってこれ何が出来んだよ?」
沢登陽「それは『もしも』の備えですよ!そのためのアプリですから」
戸野倉真澄「備えるって‥保険みたいなもの?」
沢登陽「違うんですよ、保険はお金じゃないですか?これは『もしも』なんですよ」
戸野倉真澄「『もしも』って‥じゃあ、実際なにが起こんのよ?例えば?」
沢登陽「例えばですか‥じゃあ、いま、砂漠にいるとしますね」
戸野倉真澄「砂漠?」
沢登陽「そう、砂漠にいると思って下さい」
戸野倉真澄「砂漠って、どうやって砂漠に来たんだよ?」
沢登陽「例えば盗賊に誘拐されてとか」
戸野倉真澄「盗賊に誘拐されるほうがよっぽど『もしも』じゃないか」
沢登陽「じゃあ、乗ってた飛行機から落ちて、落ちた場所が砂漠だったとか」
戸野倉真澄「だから、そのほうがよっぽど『もしも』だって」
沢登陽「まあ、とにかく砂漠にいるとして‥そんな時に起こるわけですよ」
戸野倉真澄「何が?」
もしもちゃん「もしもちゃんにお任せ!!」
戸野倉真澄「なー、これ音止めてくんない?」
沢登陽「気になりますね、オフにしておきますよ」
戸野倉真澄「で、何がおこるのよ?」
沢登陽「例えば、水が無いとか」
戸野倉真澄「あー水筒も無いとかか」
沢登陽「そう、あっても空なわけです」
戸野倉真澄「自販機も無いしな」
沢登陽「砂漠ですからね」
戸野倉真澄「ピンチだ」
沢登陽「ピンチです」
戸野倉真澄「で?」
沢登陽「そんなときにこれ!」
戸野倉真澄「『もしもちゃん』?」
沢登陽「そう、これが発動するんです!」
戸野倉真澄「発動?」
沢登陽「『もしもちゃん』発動!」
戸野倉真澄「って言うの?」
沢登陽「らしいです」
戸野倉真澄「へー」
沢登陽「わかりましたか?」
戸野倉真澄「まあ、何となく‥えっ、これで終わり?」
沢登陽「はい」
戸野倉真澄「いやいや、結局なにが起こんのよ?」
沢登陽「何とは?」
戸野倉真澄「いや、だから、『もしもちゃん』発動! で、何が起こんのよ?」
沢登陽「それは、それぞれです」
戸野倉真澄「それぞれ?」
沢登陽「だから、ちょうどいい事が起こるんですよ、例えばさっきの砂漠だと」
戸野倉真澄「自販機見つかるとか?」
沢登陽「砂漠で水が無くて、自販機見つかる程度でいいんですか?」
戸野倉真澄「まあ、砂漠で自販機はな‥そもそも電源が無いしな」
沢登陽「そうですよ、もっとイメージを膨らませて」
戸野倉真澄「じゃあ、コンビニ?」
沢登陽「違いますよ、近所じゃないんだから 例えば救助のヘリが来るとか」
戸野倉真澄「あー」
沢登陽「オアシスが見つかるとか」
戸野倉真澄「オアシスなー、砂漠っぽい」
沢登陽「でしょー、こういう事ですよ」
戸野倉真澄「なるほどねー‥なぁ、その『もしもちゃん』は、いつでも発動すんの?」
沢登陽「はい、登録済んでますから」
戸野倉真澄「ふーん‥なあ、ちょっと貸して‥あっ!」
戸野倉真澄「あっ!ごめん!お前のジョッキ倒した!」
沢登陽「あらら‥あっ、店員さーん、すいませーん、おしぼりもらえます?」
戸野倉真澄「ごめんごめん、俺のおしぼりで拭くわ」
戸野倉真澄「おい、なんか光ってる」
沢登陽「えっ?」
もしもちゃん「もしもちゃん、発動!!」
戸野倉真澄「あっ、言ってる」
沢登陽「本当だ、言ってる」
飲み屋の店員「大丈夫っすか?おしぼりと、よかったらこちらも」
沢登陽「中ジョッキ‥? あれ?頼んでないけど?」
飲み屋の店員「何か、だいぶ残ってこぼしてたんで、サービスっす!」
沢登陽「あー、ありがとう‥」
戸野倉真澄「なんかすいません」
沢登陽「‥‥」
戸野倉真澄「これ‥『もしもちゃん』の効果かね?」
沢登陽「ですかね‥」
戸野倉真澄「俺は‥いらないかな、それ」
沢登陽「そうですか‥」
戸野倉真澄「ちなみにさ、このアプリって金払ってんの?」
沢登陽「払ってます」
戸野倉真澄「いくら?」
沢登陽「4万」
戸野倉真澄「高っ!」
沢登陽「‥‥」
戸野倉真澄「‥ここ、奢ってやるよ」
沢登陽「‥はい」
もしもちゃん「ご利用、ありがとうございました!!」
  おしまい

コメント

  • 「もしもちゃん」のジェネリックで「まさかくん」とか「万が一太郎」とかが5千円くらいなら契約す…しないか。「課」だけになりそうな時、もしもちゃんならどうしてくれるのか気になりますね。

  • もしもちゃんもかわいいですが、2人のなんともゆるーい会話がよかったです。楽しい作品でした。

  • もしもちゃんにお任せ!っていうワードが頭から離れなくなりました笑
    少し高いですが、備えあれば憂いなし!
    高いととるか安いと取るかはその人次第ですね!

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