母のいない朝食(脚本)
〇住宅地の坂道
高台にある、一軒家。
庭には、大きな桜の木が植えられている。
〇昔ながらの一軒家
表札に、『春野』という文字。
これから繰り広げられるのは、
春野家に起こった“不思議な物語”だ。
始まりは、ある春の日――
母が例年通り、庭の木の新葉で、
桜餅を作った翌日のことだった。
〇一階の廊下
『ジリリリリリリ・・・・・・』
家中の、目覚まし時計が一斉に鳴り響く。
〇一階の廊下
兄「おい、もうこんな時間じゃないか! どうして起こしてくれなかったんだ!?」
〇一階の廊下
妹「頼むよ、母さん! 今日は1限から講義があるって言っただろ?!」
〇一階の廊下
父「最悪~! 髪の毛、巻く時間無いっぽいんだけど!!」
〇一階の廊下
ドタドタと、怒りながら、
階段を降りていく家族たち――
が、母の姿はどこにもない。
〇おしゃれなリビングダイニング
父「・・・・・・そっか、まだ・・・・・・」
〇おしゃれなリビングダイニング
妹「・・・・・・ったく、 ほんと、どこ行っちゃったんだよ」
〇おしゃれなリビングダイニング
兄「・・・・・・仕方ないやつだな」
〇おしゃれなリビングダイニング
家中探しても、
どこにも、その姿は見つからない。
妹が、母のスマホに
電話をかけてみるも・・・・・・
『ブブブブブッツ』
キッチン台の上で、
マナーモードが鳴り響くだけ。
顔を見合わせる三人。
〇おしゃれなリビングダイニング
「「「・・・・・・」」」
無言のまま、がっくりと
うなだれるしかない・・・・・・。
――そう、もうおわかりかと思うが、
数日前、母が
行方をくらましたのと 時を同じくして、
なぜだか、三人の中身が
入れ替わってしまっったのだ。
――理由は、わかっていない。
〇おしゃれなリビングダイニング
兄「ったく、お前がロクにバイトもしないで、 飲み会の金ばっかりせびっているから、 いなくなったんじゃないか?」
妹「るせーな。・・・・・・親父なんて、 何も事情を知らねぇくせに」
兄「なんだ、その口の聞き方は!?」
妹「親父こそ、 やましいことでもあるんじゃないのか?」
兄「なっ―― そんなもの、あるわけ(ないだろう・・・)」
父「あーもう、二人とも朝からうるさい! てか、みんな、時間ヤバくない?」
〇おしゃれなリビングダイニング
言われて、部屋の時計を見上げる二人。
すでに家を出る時間が迫っていた。
慌てて、ガサゴソと準備をし始める。
〇一軒家の庭
――と、その時。
窓を叩く音がして、振り返る。
犬「ワンッ! ワンワンッ!」
お腹を空かせた愛犬が、
懇願するように 部屋の中を見つめている。
妹「あ~、すっかり忘れてた!!」
父「帰ったらたくさんご飯あげるから、 今は ごめんねっ!」
申し訳なさそうに謝って、
カーテンをしめる。
〇おしゃれなリビングダイニング
そんな自分の手元を見つめて、
愕然とする妹。
父「うぅっ、この皺だらけの手・・・・・・ 慣れない・・・・・・」
父「それに、そこはかとなく体から出てる 加齢臭がやばい・・・・・・涙」
兄「まさか、そんなわけ──」
兄「(いや 確かに、 他人になって嗅いでみると、 変なにおいがするような・・・・・・)」
妹「ウケる、言われてやんの(笑)」
父「お兄ちゃんも、 たまに同じ匂いするからね!!!!!」
妹「えっ・・・(ガーン・・・)」
〇おしゃれなリビングダイニング
重たい空気を変えようとして、
両手を高く掲げる父。
兄「私は、先日までの腰の痛さが吹き飛んで、 カラダが 妙にシャキッとしているよ。 ほら、見てみろ」
ラジオ体操のような仕草をする父を、
うんざり顔で眺める子どもたち。
妹「でもまぁ、俺も、 この生活には、結構満足かも・・・」
妹「(毎日、 若い女子高生たちに囲まれてるしな)」
父「・・・・・・顔に出てるよ、感情が。 まじできもいんですけど」
ごまかすようにして、
天井を仰ぎ見る兄。
〇おしゃれなリビングダイニング
妹「あ! そうそう。 今日の1限、 単位に必須の試験なんだ。 親父、とにかく受けに入ってくれよ!」
妹「俺よりも偏差値が高い大学出てるんだし、 楽勝だろ?」
兄「ん? ・・・あぁ。 (お前と違って文系だが―― まぁ何とかなるだろう)」
疑いの眼で、父を見つめる兄。
〇おしゃれなリビングダイニング
兄「そうだ! 私も、朝一番で 大切な会議があるんだった・・・・・・」
兄「くれぐれも、 部長に粗相のないように頼むぞ!」
父「えっ。絶対に無理なんだけど!?」
兄「大丈夫、遠隔でちゃんと サポートするから」
父「ムリムリムリムリ!!!!!」
断固として、首を横に振る妹に、
父が 小さくため息を吐いて言う。
兄「・・・お前が頑張ってくれないと、 この家のローンが払えなくなって、 全員路頭に迷うことになるぞ!」
父「今、それ言うのズルいよ~(涙)」
〇おしゃれなリビングダイニング
妹「頑張れ~!! (俺じゃなくて、よかった。ホッ)」
妹「それじゃ、 俺はこのまま、お前の学校に行くから~」
父「ハッ? 何言ってんの。 ちゃんとお化粧して、 髪も アイロンしてよ!!」
妹「やだよ、めんどくせぇ」
父「あ~そう。 お兄ちゃんがそういう態度なら、 私にも考えがあるからねっ!!」
妹「な、なんだよ・・・」
父「お兄ちゃんの部屋のクローゼットの 奥の方にある、秘密の・・・・・・」
妹「わぁぁぁぁぁ! ・・・わ、わかったから。ストップ。 (どうして知ってるんだ・・・)」
父「わかれば、よろしい」
〇おしゃれなリビングダイニング
その時、部屋の鳩時計が、
朝8時を告げて 鳴り響く──
兄「そうしたら、今日もそれぞれ、 注意事項をチャットで送り合うことにしよう」
妹「わかった」
父「了解~」
兄「原因がわかるまで。何としてでも、 バレないように、この生活を続けるんだ!!」
〇一階の廊下
頷き合い、三人は歩きながら、
それぞれに
スマホのグループチャットを確認する。
そのグループ名は――
『諸事情により「家族」入れ替わりました』
〇昔ながらの一軒家
この不思議な“入れ替わり”によって、
彼らは、これまで知ることのなかった
家族の本音を嫌でも知ることになる・・・・・・。
〇一軒家の庭
三人の出ていった家の庭では、
桜の木の下、犬が心配そうに鳴いていた――。
お母さんが犬と入れ替わったとして、中身が犬のお母さんの体今どこに??それが一番気になって気になって仕方ありません。四つん這いで近所を走り回ってなきゃいいんだけど・・・。
3者の入れ替わりって、やっぱり場がわちゃわちゃして楽しくなりますよね。年齢、性別を超えての入れ替わり、お話がどんどん広がりそうな感じですね。
家族の入れ替わりは中々新しいですね!
それぞれの事情や生活がありますからね…
それが崩れないようにしないとですが、近くにいても外ではどんな振る舞いをしてるかなんて、わからないものですよね…。