女王の謁見室

星名 泉花

女王の謁見室(脚本)

女王の謁見室

星名 泉花

今すぐ読む

女王の謁見室
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇鏡のある廊下
  この学校には『女王の謁見室』があるらしい
  噂の真相は不明
  鍵を見つけたものだけが
  『女王』に会うことが出来る
海野 音葉「本当にあった」
海野 音葉「開いた!?」

〇謁見の間
海野 音葉「ここは・・・」
愛の女王「ようこそ」
愛の女王「女王の謁見室へ」
海野 音葉「女王・・・本当に女王様!?」
愛の女王「さぁ、聞かせてくれ。 君が私に話したいことを」
海野 音葉「あたしは・・・」
愛の女王「鍵は現れるべきところに現れる。 君は私を求めていたはずだ。 私は君の話を聞く。畏まる必要はない」
愛の女王「さぁ、聞かせておくれ」
海野 音葉「・・・助けて」
海野 音葉「あの子を助けて!!!!!!」
愛の女王「詳しく話したまえ」
海野 音葉「あ・・・」
海野 音葉「私は以前、その子にいじめられていました」
海野 音葉「バカにされて、なにも上手くいかなくて 散々否定されました」
海野 音葉「それでも家族に心配かけたくなかった。 私は笑って学校に通い続けました」
海野 音葉「ずっと我慢してました。 でも平気な顔していい子でいるのに 疲れてました」
海野 音葉「生きる希望なんてなかった。 そもそも生きることに疲れてたし、ハッキリ言ってしまえば生まれたくなかったと思うくらい」
海野 音葉「何度も自分を終わらせようと考えました」
海野 音葉「ただただ終わりを考えて、 あまつさえこの命を通じて 世間に裁かれることさえ望みました」
海野 音葉「憎くて憎くて・・・ でもそれ以上に疲れてました。 眠りたい。消えたいと願い続けました」
海野 音葉「でも・・・何も出来なかった」
愛の女王「そこまで君は追い詰められたというのに、 なぜ他人を助けることを求める?」
海野 音葉「・・・ハッキリ言えば『人の人生狂わせたやつが幸せとなれると思うな。地獄を味わえ』くらいの毒を吐きたいです」
海野 音葉「でも同時に痛いとさえ思ったんです」
愛の女王「詳しく」
海野 音葉「いじめは止まりました」
海野 音葉「私からあの子にターゲットが移ったんです」
愛の女王「いい気味ではないか。 君を痛みつけたんだ。痛みを返してやればいい」
海野 音葉「それでは足りない。 終わらないと気づいたんです」
海野 音葉「泣いてる。私は今も泣いてるんです!!」
海野 音葉「でもあの子も泣いている!! 痛くて苦しくて、 吐き出せずに泣いてるんです!!!!!!」
愛の女王「助けて君はどうしたい? まさか友達にでもなって傷の舐め合いでもするのかい?」
海野 音葉「・・・いいえ」
海野 音葉「これは私の復讐です」
海野 音葉「私という優しい人間を傷つけた罪を 永遠に刻み込んでやるんです!!!!!!」
愛の女王「いじめられた人間がいじめた人間を助ける」
愛の女王「”哀れんで情けをかけてやる” ”可哀想なお前を 優しい優しい私が助けてあげる”」
愛の女王「ふっ・・・」
愛の女王「アハハハハハハ!!!! なんと愉快!! なんと残酷な!!!!!!」
愛の女王「いいだろう、許諾する」
愛の女王「私は『愛の女王』」
愛の女王「お前の生き様が気に入った。 そんなお前を私が心から愛してやろう」
愛の女王「お前はこれから心優しき『善人』だ。 その慈悲の下に全てを愛してやれ」

〇おしゃれな教室
  そらは様パパ活現場目撃情報w
  パパ活とかマwww
  やばw
  キモっ 引くわ笑
雨宮 そらは「・・・」
愛の女王「なんでまだ学校来てんの?」
愛の女王「泣いてるの? これで拭きなよ」
愛の女王「痛い? 痛いよねぇ?」
愛の女王「お前はそれをあの子にやったんだよ?」
愛の女王「孤独に泣いてトイレでおにぎり食べたこと。 SNSに変な画像を流され、匿名の中傷を受けたこと」
愛の女王「誰も助けてくれない。 みんなクスクス笑ってる。 みんなが見下してきて、尊厳を壊される」
愛の女王「虐められた人間は一生その傷を抱えていく」
愛の女王「箱庭を出た後も その傷が原因で終わらない地獄を生きるんだ」
愛の女王「でも私は愛してやる」
愛の女王「お前を産み、お前をこうしたのも全て」
愛の女王「人間なのだから」
愛の女王「次は何をしようか?」
「やめてっ!!!!!!」
海野 音葉「もう・・・やめて」
愛の女王「なぜ? お前は深く傷ついた。 この者の弱さがお前に癒えぬ傷を与えた」
愛の女王「いじめは心を殺す。 単語一つに括るなど生ぬるい」
海野 音葉「・・・辛かった」
海野 音葉「死にたくて消えたくてたまらなかった!!」
海野 音葉「でもわかったの」
海野 音葉「この人はこうならざるを得なかった」
海野 音葉「この人がいじめをするに至るまで 誰もこの人を助けなかった。 誰もこの人を本当に愛してはいなかった」
愛の女王「私を止めるか? ”愛を知る心優しき人”よ」
海野 音葉「止めます」
海野 音葉「この手は誰かを愛するためにあるのだから」
雨宮 そらは「あ・・・あぁ・・・」
雨宮 そらは「ごめん・・・なさい・・・」
海野 音葉「もういいよ」
海野 音葉「もう誰も傷つけないで。 他の人のことも、私のことも・・・」
海野 音葉「あなた自身のことも──」
雨宮 そらは「──っ・・・」
愛の女王「満足か?」
海野 音葉「はい」
愛の女王「お前がまた私を必要とした時、 その鍵はお前の前に現れるだろう」
愛の女王「その必要がないことを、願っているよ」

〇謁見の間
愛の女王「さて」
愛の女王「また増えてしまったな」
愛の女王「私は『愛の女王』」
愛の女王「愛おしき我が箱庭の民よ」
愛の女王「私は全ての人間を愛している」
愛の女王「なぜならば私は『女王』なのだから」
愛の女王「おや?」
愛の女王「ようこそ」
愛の女王「女王の謁見室へ」
  終

コメント

  • 学内で生じる様々な人間関係のトラブルについて、時に厳しく、時に愛情深く、生徒たちの悩みを解決へと導く謎の女王。設定がミステリアスで独特の世界観がありますね。そもそもこの女王はどこから来て何のために学校という場所に謁見室を設けたのか・・・。彼女自身の謎について語られるエピソードも見てみたいなあ。

  • 短編集のような感じで見やすかったです。本当の復讐とは...。とても考えさせられました。確かにいじめてた人から助けられたら最大級の復讐かもしれませんね笑

  • 凄く面白かったです!
    女王様というキャラクターが凄く味を出していて!
    助けるという名の復讐も、ある意味凄く怖い復讐なのかな、って感じます。

成分キーワード

ページTOPへ