エピソード1(脚本)
〇黒
ボクの両親には
秘密がある
幼い頃、偶然見た
両親の真の姿・・
それは一瞬の出来事だった
〇レトロ
悪党「覚悟しろ!」
〇空
ボクの両親は忍者だ
そして、その血を受け継いだボクは
日々、忍術修行に励んでいる!
〇黒
でも・・
〇空
日比カケル「お!いたいた」
日比カケル「マモル!」
日比カケル「おい、聞こえてるんだろ?」
日比マモル「静かにしてくれない?・・・父さん」
日比マモル「集中してるんだ」
日比カケル「なあ、マモル 今の忍者はそんな格好しないんだぞ」
日比マモル「そんなのボクの勝手だろ・・」
日比マモル「いい加減に認めてよ、父さん」
日比マモル「ボクも忍者になりたいんだ」
日比カケル「マモル・・」
日比カケル「何度も言うけど、最近の忍者の仕事なんて」
日比カケル「治安維持の為に、パトロールするだけだぞ」
日比カケル「キツイし、給料も大したことない」
日比カケル「お前は、堂々と日向を歩いてくれ」
日比カケル「忍者は、 お父さんと母さんだけで充分だろ」
日比カケル「しっかり勉強して、良い会社に就職するんだ」
「ねえ?何やってんの?」
日比シノブ「帰って晩御飯にするわよ」
日比マモル「・・・母さん」
日比マモル「ボクも忍者になるよ」
日比シノブ「はいはい 冗談はいいから、帰るわよ」
日比マモル「チッ!」
日比カケル「おい!マモル!」
日比カケル「母さんに舌打ちするとは、なんて奴だ!」
日比シノブ「お父さん、もういいから」
日比シノブ「早く帰りましょう」
〇黒
こう見ると、どこにでもいる平凡な夫婦だ
さすがは忍びのプロ
完璧なカモフラージュだ
〇空
日比カケル「ハッハッハッ!」
日比カケル「そんなの当たり前だろ!」
日比カケル「お前に見抜かれたら、三流だよ」
日比シノブ「フフッ」
日比シノブ「お父さんの言う通りね」
まったく・・
いつもこの調子だ
でもボクの記憶の中には
ハッキリと残る両親の姿がある
〇黒
〇黒
ボクは
あの時の
2人の姿が忘れられない
〇通学路
そして、これがボクの世を忍ぶ姿
一応、普通の高校2年生
でも最近、
ちょっと気になる事があるんだ
冨田マリ「マモル君」
幼なじみの様子が
どこかおかしい気がする
日比マモル「よう」
日比マモル「ねえ?最近、元気ないよね?」
冨田マリ「えっ・・」
冨田マリ「・・そんな事、ないけど・・」
日比マモル「本当に?」
日比マモル「ボクでよければ、相談してよ」
冨田マリ「えっ・・」
冨田マリ「えっと・・」
日比マモル「どうしたの?」
日比マモル「何でも聞くよ」
冨田マリ「じゃあ・・」
冨田マリ「あ、あの・・実は・・」
〇黒
日比マモル「ボクがスキ?」
〇通学路
日比マモル「ゴメン・・」
日比マモル「諦めて欲しい」
冨田マリ「え・・」
冨田マリ「私じゃ、ダメ?」
日比マモル「いや、ボクは誰とも付き合えないんだ」
冨田マリ「どうして?」
日比マモル「・・・なぜなら」
〇黒
日比マモル「修行したいんだ・・」
日比マモル「一流の忍者になる為に」
〇黒
冨田マリ「その言い訳はヒドくない?」
冨田マリ「はっきりスキじゃないって言ってよ!」
〇通学路
日比マモル「いや!そうじゃないよ」
冨田マリ「私、傷ついた」
〇一戸建て
はぁ・・・
気を取り直して
えっと、
ここがボクと両親が住む家
とても忍者が住んでるとは思えないな
完璧なカモフラージュだ
〇畳敷きの大広間
でも見てよ、この畳の部屋
いかにも、だよね
日比シノブ「わっ!ビックリした!」
日比シノブ「ただいま、ぐらい言いなさいよ」
日比マモル「ただいま」
日比マモル「甘いよ、母さん」
日比シノブ「なにが?」
日比マモル「ボクの気配に気がつかないなんてさ」
日比マモル「クノイチとして、勘が鈍ってるんじゃない?」
日比シノブ「また、そんな話して」
日比シノブ「ちゃんと勉強してるの?」
日比マモル「もちろん、日々、学んでるよ」
忍者としての生き方をね
日比マモル「フフッ」
日比シノブ「何なのよ、その笑いは」
〇公園のベンチ
前田ユミ「ヒドイね!」
前田ユミ「マモル君、そんな事言ったの?」
冨田マリ「うん・・」
前田ユミ「人をバカにしてるよ!」
前田ユミ「忍者だなんて」
前田ユミ「小学生じゃないんだよ!」
冨田マリ「・・でも」
冨田マリ「彼、悪い人じゃないから・・」
前田ユミ「マリは甘いよ!」
〇ゆるやかな坂道
前田ユミ「あんまり気にしないでね」
前田ユミ「元気出して」
冨田マリ「うん、ありがとう」
前田ユミ「じゃあね」
冨田マリ「うん、バイバイ」
冨田マリ「はあ・・」
冨田マリ「でも、やっぱり辛いな」
悪党2「こんばんは」
冨田マリ「えっ・・」
悪党2「こんな時間に1人で何してんの?」
冨田マリ「・・・何って、家に帰るんですけど」
悪党2「ちょっと時間ある?」
冨田マリ「いえ、急いでます!」
悪党2「ちょっとぐらい、いいっしょ?」
冨田マリ「あ、あの、こっちに来ないで下さい!」
悪党2「そんな事言わないでさ」
冨田マリ「お、大きな声出しますよ・・」
悪党2「無理っしょ、そんなに震えちゃって」
冨田マリ「・・・た、助けて」
冨田マリ「だ、誰か・・」
冨田マリ「あっ!」
冨田マリ「マモル君!」
冨田マリ「・・・のお父さん」
日比カケル「こんばんは!マリちゃん」
悪党2「なに?アンタ」
日比カケル「あ、私はこの近所に住んでる者です」
冨田マリ「こんばんは」
悪党2「チッ!」
冨田マリ「はぁ・・」
冨田マリ「あの・・助かりました!」
日比カケル「最近、この辺りも変なのが増えてるから 気をつけてね」
冨田マリ「・・・はい」
日比カケル「浮かない顔だけど、何かあったの?」
冨田マリ「え・・・」
冨田マリ「えっと、実は・・」
〇黒
2分16秒後
〇ゆるやかな坂道
日比カケル「マモルの奴がそんな事を」
日比カケル「すまない、マリちゃん」
日比カケル「私の育て方が悪かったんだ」
日比カケル「帰ったら鉄拳制裁を・・」
冨田マリ「やめて下さい!」
冨田マリ「そんな昭和の運動部みたいな事は」
日比カケル「・・そう?」
日比カケル「しかし、マモルが君を傷つけたのは紛れもない事実だ」
冨田マリ「マモル君は優しい男の子なんです」
冨田マリ「どうして、忍者なんて」
冨田マリ「バカげた事を言いだしたのか判らないけど」
日比カケル「バカげた・・」
冨田マリ「たぶん・・」
冨田マリ「私を傷つけない為の とっさのアドリブだと思います」
日比カケル「うーん・・しかし」
〇一戸建て
〇古めかしい和室
日比マモル「何?父さん、話って」
日比カケル「おい、マモル!」
日比カケル「お前、 マリちゃんの好意を無下にしたらしいな!」
日比マモル「・・・いや、違うよ」
日比カケル「何が違うんだ!」
日比カケル「説明してみなさい!」
日比マモル「あの、その前にCD止めてよ」
日比マモル「こんなハードな音楽をバックに 真面目な話出来ないでしょ?」
日比カケル「・・・」
日比カケル「説明してみなさい!」
日比マモル「あ・・」
日比マモル「無音だと逆に話しづらいから 何か軽いBGMかけてくれない?」
日比カケル「・・・ワガママな奴だな!」
「これでどうだ?」
日比マモル「いい感じだね」
日比マモル「・・・父さん」
日比マモル「ボク、 初めて他人にカミングアウトしたんだ」
日比マモル「忍者の修行に集中したい」
日比マモル「だからキミとは付き合えないって」
日比カケル「さっき聞いたよ」
日比カケル「もちろん信じてなかったぞ」
日比マモル「まあ、当然だよね」
日比マモル「彼女、怒ってたよ」
日比カケル「そうだろうな」
日比マモル「でも、これは」
日比マモル「命懸けで 彼女や街の人達を守るって宣言なんだ」
日比カケル「・・・命懸け?」
日比マモル「うん、命懸けで臨むつもりだよ」
〇レトロ
日比カケル(高校時代)「俺も忍者になります!」
師匠「そんな甘いもんじゃないぞ」
日比カケル(高校時代)「命懸けで臨みます!」
師匠「・・・命懸けじゃと?」
日比カケル(高校時代)「はい!」
〇古めかしい和室
日比カケル「命懸けだって?」
日比カケル「そこまで本気なんだな?」
日比マモル「うん」
日比マモル「父さんと母さんが認めてくれたらだけどね」
日比マモル「・・・」
日比マモル「え?」
日比マモル「なんで音楽変えたの?」
日比カケル「・・・」
日比マモル「ねえ、父さん?」
〇畳敷きの大広間
日比シノブ「仕方ないわね」
日比シノブ「見守ってあげましょうよ」
日比カケル「そうだな」
日比カケル「あの子の言葉を聞いて」
日比カケル「一瞬、昔の情熱が甦ったよ」
〇黒
〇一戸建て
日比カケル「マモル」
日比カケル「まずは 父さんの師匠に挨拶しに行くんだ」
日比マモル「師匠って、お爺ちゃんでしょ?」
日比カケル「そうだ」
〇電車の中
〇寂れた村
〇枯れ井戸
日比カメ吉「久しぶりじゃな、マモル!」
日比マモル「爺ちゃん、久しぶり!」
日比マモル「いや・・」
日比マモル「宜しくお願い致します、師匠」
日比カメ吉「うむ! 良い面構えじゃ、マモル!」
〇山並み
〇霧の立ち込める森
日比カメ吉「ほう・・」
日比カメ吉「1人で修行してたとは思えんな」
日比カメ吉「やはり、血は争えん」
〇古びた神社
日比カメ吉「よいかマモル!」
日比カメ吉「忍者も人間じゃ」
日比カメ吉「人の道を外れる輩もおる」
日比マモル「はい」
日比カメ吉「政治家に飼われ、裏の世界で暗躍する者」
日比カメ吉「はたまた、金に釣られて悪に手を染める者」
日比カメ吉「じゃが、ワシらは」
日比カメ吉「そんな奴らには絶対に染まらん!」
日比マモル「はい」
日比カメ吉「マモルよ、決して忘れるでないぞ!」
日比カメ吉「ワシらは慎ましく生きる人々の」
日比カメ吉「ささやかな幸せを守る為の影なんじゃ」
日比マモル「はい」
日比カメ吉「決して表に出ようと思うでないぞ」
日比カメ吉「影として生きてゆくのじゃ!」
日比マモル「はい!」
〇黒
〇一戸建て
〇一戸建て
〇一戸建て
〇住宅地の坂道
危ない男「ひっひっひ・・」
危ない男「ぐふぐふな美人、発見」
危ない男「力ずくで、ぐふぐふしちゃうよ!」
危ない男「・・・え?」
危ない男「買ったばかりのスーツが!」
危ない男「な、なんでー!」
危ない男「ぎゃー!」
〇学校脇の道
危ない男2「くくっ」
危ない男2「美味しそうな子猫ちゃん」
危ない男2「見っけた・・」
危ない男2「ん?」
危ない男2「急に視界くっきり」
危ない男2「あれ?グラサンどこだ?」
危ない男2「うおっ!」
危ない男2「なんだぁ!」
危ない男2「い、いきなり服が変わったぞ!!」
危ない男2「な、何でだよ!」
危ない男2「意味わかんねえし、怖ええよ!」
危ない男2「警告か!」
危ない男2「な、何かいるのか!」
危ない男2「この街、やベエな!」
日比シノブ「へえ・・」
日比シノブ「あの子、やるじゃない!」
日比カケル「さすがは俺達の子供だな!」
〇黒
〇通学路
冨田マリ「あ・・」
冨田マリ「マモル君・・」
日比マモル「やあ・・」
冨田マリ「ちょっと、久しぶりだね」
日比マモル「うん」
日比マモル「この前はゴメン」
冨田マリ「・・・いいの」
冨田マリ「私も急ぎすぎたから」
日比マモル「そう・・」
冨田マリ「ねえ?」
冨田マリ「私達、まだ友達だよね?」
日比マモル「もちろんだよ!」
日比マモル「当たり前じゃないか」
冨田マリ「良かったぁ」
冨田マリ「ふふっ」
冨田マリ「マモル君」
日比マモル「なに?」
冨田マリ「なんか、街の空気が綺麗な気がする」
日比マモル「・・そうか」
日比マモル「そう言ってもらえると嬉しいよ」
冨田マリ「え?何の話?」
日比マモル「あ、いや、何でもないよ」
冨田マリ「そう・・」
冨田マリ「偶然だけど、お話できて良かった」
冨田マリ「じゃあ、帰るね」
日比マモル「うん」
日比マモル「気をつけて」
冨田マリ「はい」
日比シノブ「ふふっ、いい娘さんね」
日比カケル「おい、マモル」
日比カケル「父さんと母さんの仲間になった記念だ」
日比マモル「え、時計?」
日比マモル「高そうだね!」
日比カケル「まあ、中古だけどな」
日比マモル「ありがとう!」
〇黒
〇ゆるやかな坂道
悪党2「こんばんは」
冨田マリ「えっ・・」
悪党2「こんな時間に1人で何してんの?」
冨田マリ「・・・何って、家に帰るんですけど」
悪党2「ちょっと時間ある?」
冨田マリ「いえ、急いでます!」
悪党2「ちょっとぐらい、いいっしょ?」
冨田マリ「あ、あの、こっちに来ないで下さい!」
悪党2「そんな事言わないでさ」
冨田マリ「お、大きな声出しますよ・・」
悪党2「無理っしょ、そんなに震えちゃって」
冨田マリ「・・・た、助けて」
冨田マリ「だ、誰か・・」
冨田マリ「あっ!」
冨田マリ「マモル君!」
冨田マリ「・・・のお父さん」
〇黒
ファミリータイム
劇終
ファミリータイム製作委員会.2023
修行を終えたマモルの忍術を楽しみにしてたら、まさかの忍法「はや着替えさせの術」だったとは。誰も傷つけることなく悪人を街から追い出す最適な方法(?)ですね。2分16秒後とかBGMとかカメ吉のセーターとか、小ネタも満載で楽しめました。
登場人物がBGMの存在に気付いている演出は斬新で良かったです。
忍者というなかなか難しいかもしれない設定の中でうまく様々な人間模様が描けていたと思います。