エピソード1(脚本)
〇黒
人生において何よりも難しいことは、嘘をつかずに生きることだ。そして自分自身の嘘を信じないことだ。
──ドストエフスキー
〇学校の屋上
・・・でした・・・
リサ「えっ・・・?」
カナタ「入学した時からリサ先輩がずっと好きでした・・・」
リサ「・・・」
カナタ「・・・付き合ってもらえませんか?」
リサ「・・・」
──私は貴方と付き合えない
リサ「・・・ごめんなさい」
カナタ「・・・そ、そうですよね」
カナタ「僕なんかがリサ先輩に釣り合うわけないですよね・・・」
カナタ「突然呼び出してこんなこと言ってすいません・・・でした!」
リサ「・・・」
カナタ「も、もしこれから話す機会があれば・・・ 普通に・・・接してくれると嬉しいです」
普通に接することなんて
もう出来ない──
何故なら──
〇田舎の病院の病室
貴方は私の前からいなくなるのだから
〇アート
──告白と嘘──
〇黒
11月9日
──放課後
これがカナタくんが
一番最初にしてくれた告白
〇学校の屋上
カナタ「入学した時からリサ先輩のことが好きでした・・・」
カナタ「付き合ってもらえませんか・・・?」
リサ「1年の・・・」
カナタ「あっ・・・ごめんなさい・・・ 1年A組のカナタって言います・・・」
リサ「カナタ・・・くん」
リサ「私、恋愛とかよくわからなくて・・・」
リサ「だから・・・ごめんなさい・・・」
カナタ「そ、そうですよね・・・」
リサ「じ、じゃあ・・・また・・・」
カナタ「はい・・・」
〇黒
11月10日
──始業前
〇教室
オイ!聞いたか!?
1年のカナタって奴が
昨日トラックにはねられたらしいぞ!
リサ(・・・え?)
ニュースになってたよね
即死だったって
なんでも赤信号で横断歩道を渡ってたとか・・・
リサ(そんな・・・嘘・・・)
〇黒
11月10日
──放課後
〇学校の屋上
リサ(昨日・・・ここで・・・)
私が告白を断らなければ、
カナタ君はこんな結末にならなかったのかな・・・?
「私が告白を断らなかったらこうならなかった、そんな顔をしてるねぇ」
リサ「誰!?」
お婆さん「通りすがりのただの老いぼれだよ」
リサ(通りすがりって・・・ ここ屋上・・・)
お婆さん「お嬢ちゃん、ちょい手出してみや」
リサ「え?」
手を出すと、不思議な光が私の手を纏った
お婆さん「この光は今お嬢ちゃんに必要なものを教えてくれるはずさ」
リサ「それってどういう・・・」
〇黒
・・・でした・・・
〇学校の屋上
カナタ「入学した時からリサ先輩のことが好きでした!」
リサ「・・・えっ?」
カナタ「僕と付き合ってもらえませんか・・・?」
あれ・・・?
カナタ君が生きてる・・・?
リサ「・・・カナタ君・・・生きてたの?」
カナタ「・・・え?生きてます・・・よ?」
リサ「トラックに・・・」
カナタ「トラック・・・? どうしちゃったんですか?」
リサ「あ・・・いや・・・なんでも・・・ ちなみに今日って何日だったっけ?」
もしかして──
カナタ「11月9日ですが・・・」
リサ「そ、そうだったね 9日だったよね」
昨日に戻ってる!?
カナタ「あの・・・お付き合いはダメですか?」
どうして時間が戻ったの・・・?
リサ「あ・・・あぁ、お付き合い・・・」
お婆さん・・・
手に纏った光・・・
リサ「い、今は頭の整理が付かなくて・・・ ごめんなさい・・・」
私に必要なものを教えてくれるって・・・
私に必要なもの・・・?
カナタ「そうですよね・・・ 僕なんかがリサ先輩と釣り合わないですもんね」
リサ「あっ! ち、ちがっ、そういう意味じゃ・・・」
カナタ「突然呼び出してすいませんでした! また接することがあったら・・・普通に接してくれると嬉しいです!」
リサ「違うの!待って・・・!」
リサ「・・・」
〇黒
11月10日
──始業前
〇教室
オイ!聞いたか!?
1年のカナタって奴が
昨日トラックにはねられたらしいぞ!
リサ(私に必要なもの・・・ カナタ君を救うこと・・・?)
〇黒
それから私は何度も繰り返した
〇学校の屋上
カナタ「入学した時からリサ先輩のことが好きでした!」
リサ「・・・」
カナタ「付き合ってもらえませんか・・・?」
リサ「わ、私もカナタ君のことが好き・・・だったので・・・はい、宜しくお願いします」
カナタ「ほ、本当ですか!? ゆ、夢じゃないですよね!?」
リサ「夢・・・ではないです・・・ 現実です・・・」
カナタ「やったーー!!」
〇黒
私も好きって、偽って伝えても
〇教室
オイ!聞いたか!?
1年のカナタって奴が・・・
リサ(変わらない・・・)
〇学校の屋上
カナタ「リサ先輩のことが好きです! 付き合ってください!」
リサ「友達から・・・は、どうですか?」
カナタ「そ、そうですよね・・・」
カナタ「じゃあ友達から・・・宜しくお願いします・・・」
〇黒
友達からと、はぐらかしても
〇教室
オイ!聞いたか!?
1年のカナタって奴が・・・
リサ(また同じ・・・)
〇学校の屋上
カナタ「リサ先輩の・・・」
リサ「感じる・・・こ、混沌の者の気配・・・」
カナタ「え・・・?」
リサ「うう・・・ひ、左目の呪いが・・・ふ、封印が解け・・・る・・・」
カナタ「ど、どうしたんですか・・・?」
リサ「私から離れて! ・・・話の続きはまた後日・・・」
カナタ「は・・・はい・・・」
〇黒
痛い子になりきって、話を先延ばしにしても
〇教室
オイ!聞いたか!?・・・
〇黒
未来を変えることはできなかった
〇黒
まだわからんのかね
わからないよ
お嬢ちゃんはなんで後悔してたんだい?
告白を断って、罪悪感を感じたからかい?
じゃあ今ならどうすればよかったか、
正解がわかるかい?
・・・
嘘で塗り固めた自分で告白を受け止めるのが、果たして正しい答えかい?
・・・
本当は答えがわかってるんだろう?
・・・うん
お婆さん「もうこの力は不要だね」
〇墓石
私は貴方と付き合えない
後悔は先に立たない──
普通に接するなんてもう出来ない
過去は変えられないし、未来もわからない──
なぜなら貴方は私の前からいなくなるんだから
だからこそ『今』を大切に──
「あの時こう言っていたら」「あの時こうしていたら」と思うことがあってもそれが嘘ならば結果は同じということかな。人の生死に関しては嘘も方便とはいかないんですね。嘘の虚しさにリサが気が付いただけでも、カナタの死は無駄ではなかったのかもしれません。
運命は自らの意思や努力で変えられても、宿命というのはそうではないのだということを再認識させてくれるようなお話でした。自分にも人にも正直なことが結局は最良の結果を生むようなきがします。
凄く切ないお話でした。
心のどこかではカナタくんが助かるのでは?と思っていましたが、結末は変わらなかったのですね。
結末が変わらなかったからこそ、嘘や後悔が残らないようにしないとな、と思いました。