明石さんちのポチ

久望 蜜

「わん!」と鳴くペット(脚本)

明石さんちのポチ

久望 蜜

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〇研究装置
「実験動物が逃亡!」
「危険生物だ、逃げろ!」
博士「私の最高傑作を逃がすとは・・・」
博士「何としてでも、捕まえなさい!」

〇昔ながらの一軒家

〇古風な和室(小物無し)
明石ルナ「ヒマリ!」
明石ルナ「お姉ちゃんに隠していることがあるでしょ!」
明石ヒマリ「な、何のこと?」
明石ルナ「庭から犬の鳴き声がした」
明石ルナ「説明してごらん?」
明石ヒマリ「お姉ちゃん、こわい・・・」
明石ルナ「白状なさい!」
明石ヒマリ「はい・・・」

〇アパートの中庭
明石ヒマリ「ポチ!」
明石ヒマリ「おいで!」
ポチ「わん!」
明石ルナ「は!?」
明石ルナ「何、コイツ!?」
明石ヒマリ「何って、ポチだよ?」
ポチ「わん!」
明石ルナ「てっきり、犬かと思っていたら・・・」
明石ヒマリ「え? 犬でしょ?」
明石ルナ「いやいや、どこが!?」
明石ヒマリ「だって、『わん』って鳴くよ?」
明石ルナ「なら、犬か・・・」
明石ルナ「とは、ならんでしょ! さすがに!」
明石ヒマリ「ブルドッグに似てない?」
明石ルナ「ブルドッグに謝れ」
明石ルナ「どこからどう見ても、見た目に犬要素がないでしょうが!」
明石ルナ「拾った場所に、戻してきなさい!」
明石ヒマリ「え!」
明石ヒマリ「そんなのヤダ! かわいそうだよ!」
ポチ「わん!」
明石ルナ「あのね。動物を飼うのは、すごく大変なの」
明石ルナ「うちには母さんがいないし、」
明石ルナ「お姉ちゃんだって、大学が忙しいんだから」
明石ルナ「アンタだけで、育てられないでしょ」
明石ヒマリ「ちゃんと面倒をみるもん!」
明石ルナ「それだけじゃない」
明石ルナ「動物を育てるには、お金だってかかるのよ?」
明石ルナ「うちにそんなお金は──」
明石ヒマリ「ポチ?」
ポチ「わん!」
明石ルナ「え!?」
明石ルナ「どうしたの、このお金!?」
ポチ「わん!」
明石ヒマリ「ポチの生活費だって」
明石ヒマリ「『こちらで、アッシを置いてください』って」
明石ルナ「そんな長いことを喋っていたの!?」
明石ルナ(でも、これだけあれば欲しかったブランドの服やバッグが買い放題・・・)
明石ルナ(ウヘヘ・・・)
明石ヒマリ「お姉ちゃん?」
明石ルナ「そこまでされちゃ、しょうがないわね」
明石ルナ「ポチを飼ってもいいわよ」
明石ルナ「父さんは出張中だから、バレないだろうし」
明石ヒマリ「本当!?」
明石ヒマリ「ありがとう、お姉ちゃん!」
ポチ「わん!」
明石ルナ(つまり、このお金は全部私のもの・・・!)

〇古いアパートの居間
明石ルナ「で、コイツは何を食べるの?」
明石ヒマリ「何でも食べるよ!」
明石ルナ「いや、さすがに何でもではないでしょ」
明石ルナ「アレルギーとかあるかもしれないし」
明石ルナ(犬はネギやチョコで中毒が起きるらしいけど)
ポチ「わん!」
明石ルナ(鳴き声だけで、コイツは犬じゃないしな)
明石ルナ(いや、そもそも、この生物に苦手なものなんてあるのか?)
明石ルナ「・・・やっぱりアレルギーとかなさそう」
ポチ「わん!」
明石ルナ「今までは、何を食べたの?」
明石ヒマリ「トマトやキュウリ・・・」
明石ルナ「家庭菜園の収穫物が減っていると思ったら、アンタか」
明石ヒマリ「ごめんなさい・・・」
明石ルナ「とりあえず、犬でも大丈夫そうなジャガイモと、」
明石ルナ「ニンジンでもあげようか」
明石ヒマリ「ポチ、食べていいよ!」
ポチ「わん!」
明石ルナ「・・・何、今の」
明石ヒマリ「え? ・・・食事だけど?」
明石ルナ「いやいや、あんなのブラックホールじゃん!」
明石ルナ「ヘタすると、アンタまで食べられるよ!」
明石ヒマリ「そんなことないもん!」
ポチ「わん!」
明石ルナ「怖いんだよ、顔があ!!」
明石ルナ「人を喰ってそうな見た目して、」
明石ルナ「何を信じられるっていうのよ」
ポチ「わん!」
明石ヒマリ「『姐御のおっしゃることは、尤もでやんす』」
明石ヒマリ「『でも、アッシはお嬢に命を助けていただきやした』」
明石ルナ「何で仁侠口調?」
ポチ「わん!」

〇住宅街の公園
ヒマリ「『あの雨の日』」
ヒマリ「『食べものがなく力尽きようとしていたアッシを、お嬢は拾ってくださいやした』」

〇古いアパートの居間
明石ヒマリ「『そのお嬢をとって喰うなど──』」
明石ヒマリ「って、お姉ちゃん!?  何で泣いているの!?」
明石ルナ「なんていい話・・・」
明石ルナ「ポチ、疑ってごめんなさい」
明石ヒマリ(お姉ちゃんは何だかんだいっても、わたしに甘いな)
ポチ「わん!」
明石ルナ「あとは散歩だけど、目立ちすぎるわね」
明石ルナ(そもそも、屋外で排泄していい部類か? これは・・・)
明石ルナ「あれ、ポチは?」

〇部屋の扉

〇清潔なトイレ
ポチ「わん!」

〇部屋の扉
明石ルナ「うわ!」
明石ルナ「今までずっと、家のトイレを使っていたの?」
明石ヒマリ「うん」
明石ルナ「何も知らないで、こんなのと鉢合わせしたら、怖いじゃないの!」
明石ヒマリ「あはは、ごめんなさい・・・」
明石ルナ「まあ家で用をたせるなら、わざわざ外に連れていくこともないか」
明石ルナ「散歩はしなくていいわね」
明石ヒマリ「ダメだよ! お散歩しなくちゃ!」
明石ヒマリ「運動不足になっちゃう!」
明石ルナ「えー・・・」
明石ルナ「でも、庭で飼っているし、大丈夫じゃない?」
ポチ「わん!」
明石ヒマリ「足りないって」
明石ヒマリ「『以前なら、飛んでいる鳥を五秒で仕留めたのに、今は一分もかかりやす』って」
明石ルナ「充分じゃねえか!」
明石ルナ「というか、鳥を食べていたの?」
明石ルナ「もう一匹立ちできるじゃないの」
明石ヒマリ「そんな! 飼っていいって、いったのに!」
明石ヒマリ「お姉ちゃんのウソつき!」
明石ルナ「わ、わかったから、泣かないでよ」
明石ルナ「飼っていいからさ」
明石ヒマリ「やったあ!」
ポチ「わん!」
明石ルナ(コイツ、わざと泣いたのか?)
明石ヒマリ「じゃあ、お散歩へ行こう!」
明石ルナ「待て。夜にこっそり行こう」

〇昔ながらの一軒家
明石ルナ「いい? この辺りには最近、変質者が出るわ」
明石ルナ「だから、充分注意して」
明石ヒマリ「はい!」
明石ルナ「あと、ポチを絶対人に見られてはダメよ」
明石ヒマリ「はい!」
明石ルナ「人を見かけたら、とにかく逃げるわよ!」
ポチ「わん!」
明石ルナ「よし、出発!」
明石ヒマリ「おー!」

〇通学路
明石ヒマリ「誰もいないね」
明石ヒマリ「ポチをちょっと走らせてもいい?」
明石ルナ「いいわよ。静かにね」
ポチ「わん!」
明石ルナ「って、速っ!」

〇ゆるやかな坂道
ポチ「わん!」
明石ルナ「ま、待って・・・ハアハア」
明石ルナ「ゼエ・・・もう充分運動したから、帰るわよ」
明石ルナ「結局、不審者なんか出なかったわね」
明石ルナ「あー、ビビって損した」
明石ヒマリ「お姉ちゃん、あれ!」
明石ヒマリ「電柱の後ろに、人がいるよ!」
明石ルナ「フラグの回収早っ!」
変質者「ハア・・・ハア・・・」
変質者「へへ・・・お嬢ちゃんたち、おじさんと──」
ポチ「わん!」
変質者「ひえ、バケモノ!」
明石ルナ「い、今の変質者よね」
明石ヒマリ「こわかった」
ポチ「わん!」
明石ルナ「ポチのおかげで、助かったわ」
明石ヒマリ「ありがとう、ポチ」
ポチ「わん!」

〇ゆるやかな坂道
???「ご覧になって!」
???「おお! あれはまさしく、逃げた実験動物!」
???「とうとう見つけましたわ!」
???「博士がうるさかったからな」
???「けれど、一般人が一緒にいますわ」
???「見られてしまったからには、仕方がない」
???「あの二人は始末するしかないな」

〇黒
  翌日

〇古いアパートの居間
明石ヒマリ「お姉ちゃん、ポチと公園へ行きたい!」
明石ルナ「はあ!?」
明石ルナ「何いっているの!」
明石ルナ「連れていけるわけないでしょ」
明石ヒマリ「え〜」
明石ヒマリ「他のお友だちは、公園でペットと遊んでいるよ!」
明石ルナ「それは、犬の話でしょ?」
明石ルナ「ポチは、犬じゃないんだから!」
明石ルナ「人目についたら、もう飼えなくなるよ!」
明石ヒマリ「そんなのヤダぁ」
ポチ「わん!」
明石ルナ「泣けばいいってもんじゃないのよ」
明石ルナ「そんなバケモノ、人に知られるわけにはいかないんだから」
明石ヒマリ「ポチは、バケモノじゃないもん!」
ポチ「わん!」
明石ルナ「コラ、どこへ行くの!?」

〇住宅街の公園
明石ヒマリ「お姉ちゃんのわからずや!」
ミオン「ごきげんよう、お嬢さん」
明石ヒマリ「誰?」
ミオン「お姉さんが呼んでいますわ」
テルオ「俺たちと一緒に、来てくれるか?」
明石ヒマリ「わかった!」

〇住宅街の公園
ポチ「わん!」
  クンクン。
ポチ「わん!」
明石ルナ「ちょっと待ちなさいよ、ポチ!」

〇荒廃したショッピングモール

〇廃ビルのフロア
ミオン「ふふ、よく寝ていますわね」
テルオ「この子どもで、アイツを誘きだせば・・・」
ミオン「実験動物には、どうやって連絡しますの?」
テルオ「何いっているんだ、それはお前の仕事だろ」
ミオン「何いっていますの、アナタの仕事でしょう?」
「・・・・・・」
ミオン「はあ!? 信じられませんわ!」
ミオン「連絡先もわからないのに、誘拐したんですの!?」
テルオ「それはこっちのセリフだ、ボケ!」
テルオ「これじゃ、また博士にどやされ──」
ミオン「何ですの!?」
ポチ「わん!」
ミオン「ふふ、来ましたわね」
ミオン「ジュスティーヌ!」
明石ルナ「そんな名前だったのか、ポチ!?」
明石ルナ「というか、メスなの!?」
ポチ「わん!」
テルオ「さあ危険生物、こちらへ来い!」
テルオ「それと、研究資金をどこへやった!?」
明石ルナ「研究資金?」
テルオ「研究施設からもち逃げした大金だ」
テルオ「おい危険生物、その金をどうした!?」
ポチ「わん!」
テルオ「何をいっているのかわからねえな」
ミオン「それより今は、実験動物を連れかえるほうが先ですわ」
ミオン「さっさと渡しなさいな」
ミオン「そうすれば、この子どもを返してあげますわ」
明石ルナ「黙れ、コスプレ・コンビ!」
「コ、コスプレ!?」
ミオン「違いますわ! この服は、特殊な繊維で──」
明石ルナ「どうせ、私らをただで帰すつもりはないんだろ?」
ミオン「バレていましたか」
ミオン「ジュスティーヌは、私たちの組織が秘密裏につくった生物兵器」
テルオ「知られたからには、生かしておけない!」
明石ルナ「そういうことなら、ポチ!」
明石ルナ「思う存分、やっちまえ!」
ポチ「わん!」
明石ルナ「こら、肝心なところでオドオドするな!」
ミオン「来ないなら、こちらから行きますわ!」
ミオン「ふふ、この眠り薬を塗った矢で──」
明石ルナ「うちの大事な家族に、手を出すんじゃねえ!」
ミオン「木刀!?」
明石ルナ「元ヤン舐めんなあ!」
「ひいっ」
明石ルナ「え、もう逃げちゃった?」
明石ヒマリ「さすが、お姉ちゃん! こわい!」
明石ルナ「ヒマリ、無事!?」
明石ヒマリ「うん!」
ポチ「わん!」
明石ヒマリ「え、『これ以上、お嬢に迷惑はかけられやせん。アッシは出ていきやす』?」
明石ヒマリ「そんな!」
明石ヒマリ「お姉ちゃんだって、ポチを『大事な家族』って認めたんだよ?」
明石ルナ「あれは言葉のあやというか」
明石ルナ「でも、アンタも明石家の一員なんだから、迷惑とか考えなくていいの!」
明石ヒマリ「そうだよ、ポチ」
明石ルナ「ほら、家へ帰るわよ」
ポチ「わん!」

〇黒

〇研究装置
博士「私は諦めない」
博士「次こそ、とり戻す」
博士「待っていなさい、最高傑作!」

コメント

  • ポチ・・・いや、ジュスティーヌ・・・ポチ・・・!!!!!!!!なんかすごく後半可愛く見えてきました!!😂✨

    そして、面白かったですー!!!!✨😍

    ポチはどんな能力を持っているのか気になりますね・・・
    そしてどんな感じで仲を深めていくのかも・・・
    面白かったです!!✨ありがとうございました✨😊

  • 斬新で、良い感じにコメディで面白かったです!
    突っ込みどころ多数!
    ポチがかわいい?ですね。

  • やばい、情報量が多すぎてツッコミが追い付かないよ。

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