ジャージ姿で本気出す!(脚本)
〇店の休憩室
パパ「こちらP2・・・準備は出来ているか?」
ママ「こちらM2・・・もちろんよ」
パパ「長かったな・・・途方もなく長かった」
ママ「そうね、でもこの過酷な日々も全ては愛する娘のため・・・」
パパ「ああ、そう思えば何も苦しくはなかった」
ママ「あの子の笑顔のためなら・・・」
パパ「そう、あの子の幸せのためなら・・・」
ママ「私たちは何を犠牲にしても構わない」
パパ「俺たちはどんな苦労もいとわない」
ママ「さあ行きましょう」
パパ「俺たち家族の絆を守るために」
〇白い校舎
放送部「さあ今年も始まります!家族対抗二人三脚競争!」
放送部「各選手の入場です!」
パパ「サリアちゃーん!パパもママもがんばるぞー!絶対に一着になるからなー!」
ママ「サリアちゃーん!特訓の成果を見せるからねー!応援してねー!」
サリア「もう・・・声が大きい」
サリア「そもそも小学校の運動会に出るだけで、なんで1年もトレーニングするの?」
アンナ「あははは、サリアちゃんのパパママはいつも仲良しだね」
サリア「仲良しっていうか・・・こっちは恥ずかしいよ・・・」
〇白い校舎
ママ「あぁ・・・パパ、サリアちゃんが私たちを見て頬を赤らめてる」
パパ「きっと興奮しているんだろう、俺たちへの期待の表れさ」
ママ「・・・これは絶対に負けられないわ」
パパ「ああ、去年は最下位だったからな、今年はサリアちゃんにあんな恥ずかしい思いはさせんぞ」
放送部「選手の皆さんはスタートラインに立って、足をタオルで結んでください」
ママ「パパ、強めに縛ってね」
パパ「わかってる、去年はタオルが緩んだことも敗因だからな」
スターター「では位置について・・・」
パパ「スタートダッシュが肝心だ・・・」
ママ「ええ、この半年で磨いた爆速ダッシュを見せてあげましょう」
スターター「用意・・・」
ママ「・・・」
パパ「・・・」
放送部「スタートしました!」
パパ「はぁあ!」
ママ「やぁあああ!!」
放送部「ああっと!ここで愛重(あいかさ)夫妻が転倒!スタート10cmで転倒です!」
放送部「愛重夫妻いきなりのミス!二人が全く同じフォームでシンクロした見事な転倒です!」
放送部「さあ!はたしてココから挽回できるのか!」
アンナ「あははは!やっぱりサリアちゃんのパパママおもしろ~い!」
サリア「・・・」
〇白い校舎
パパ「くっ!何ということだ・・・」
ママ「ご、ごめんなさい、右足と左足を間違えてしまったわ・・・」
パパ「ママの不治の病「うっかり」が発動したか・・・」
パパ「しかし心配無用!」
パパ「こうなる事も想定済みだ!」
サリア「転ぶことを想定しないで、転ばない練習をしてよ・・・」
パパ「今こそ封印を解く時が来たか・・・」
放送部「おおっと?愛重パパがリストバンドを外し始めました!これはどういう意味だ!?」
パパ「ふぅ・・・久しぶりに腕が軽い」
アンナ「サリアちゃん、あれってなぁに?」
サリア「重りが入ってるんだって、片方1kgずつ・・・」
アンナ「ああ、腕を鍛えるときにつけるものだね」
アンナ「でも、それって二人三脚に関係あるの?」
サリア「・・・知らない」
ママ「そう、パパは封印を解いたのね・・・」
ママ「ならば私も!」
放送部「おおっと!今度は愛重ママが腰から何かを外したぞ!アレは何だ!?」
アンナ「サリアちゃん?」
サリア「なんかブルブルふるえるベルト・・・」
アンナ「ああ、ダイエットする時の」
アンナ「でも、それって・・・」
サリア「・・・知らない」
〇白い校舎
パパ「反撃開始だ!行くぞ!ママ!」
ママ「任せて!パパ!」
放送部「さあ何だか良く分かりませんがようやく愛重夫妻が再スタートしました!」
放送部「しかし先頭集団はすでに半周を終えようかというところ!」
放送部「果たしてどこまで差を縮められるでしょうか!」
パパ「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
ママ「なかなか・・・差が・・・縮まらないわね・・・」
パパ「・・・さすがサリアちゃんの通う学校、保護者もバケモノぞろいだな」
ママ「パパ、まさか弱音でも吐くつもり?」
パパ「ふっ・・・冗談じゃない」
パパ「サリアちゃんの目の前で諦める姿なんて見せられるものか!」
ママ「そう、そうれでこそパパよ」
放送部「さあレースも終盤!トップの佐藤夫妻は最終コーナーに入ります!」
パパ「とは言え、さすがに厳しいかもしれん」
ママ「でも私たちに負けは許されない」
パパ「ああ、ならばアレをだすしかない・・・」
ママ「アレ・・・ついに出してしまうのね・・・」
パパ「ああ・・・もうアレしかない」
ママ「でもアレは危険よ、もし万が一のことがあったら・・・」
パパ「それでも、俺はサリアちゃんの笑顔が見たいんだ」
ママ「パパ・・・」
パパ「泣くなママ、大丈夫だ」
パパ「ちゃんと明日は有休にしている」
パパ「だから筋肉痛など恐るにたらない」
ママ「私も、ちゃんとバンテ〇ンとサ〇ンパスは買ってあるわ」
ママ「セール品だけど」
パパ「さすがママは買い物上手だな」
パパ「それで充分さ」
ママ「そう、なら全てをパパに任せるわ」
パパ「ああ、任せておけ」
〇地球
パパ「母なる星、地球よ・・・」
パパ「アナタの大いなる愛を、今こそ我に与え給え・・・」
パパ「愛する妻を支えるために・・・」
パパ「そしてサリアちゃんに・・・」
パパ「我らの天使に笑顔を届けるために・・・」
パパ「俺に家族を守る力を与え給え!」
〇白い校舎
パパ「行くぞ!秘奥義!キャリー・デッド・ラン!」
放送部「さあトップの佐藤夫妻が最後の直線に入りました!このまま逃げ切れるか!」
放送部「あっと、ここで最後尾の愛重夫妻が猛追! 前を行く鈴木夫妻に迫ります!」
放送部「っと、これは!?」
〇白い校舎
パパ「おりゃあああああああ!」
放送部「何と愛重ママ、片足が浮いています! 片足を浮かせて愛重パパにしがみ付いています!」
放送部「これはママを担いだ愛重パパが1人で走っているようなものだ!」
アンナ「ほぇ~すっご~い・・・」
サリア「二人三脚だって言ってんのに・・・」
放送部「ルール上は良く分かりませんが面白いから良しとしましょう!」
放送部「さあ今年も白熱してまいりました!先頭と最後尾の差がみるみる縮まっているぞ!」
ママ「これもパパが重りをつけて腕力を鍛えたおかげね♪」
パパ「いいや、ママがダイエットを頑張ってくれたおかげさ!」
ママ「さあ、このまま行きましょう」
パパ「ああ、行こう」
ママ「一番に・・・」
パパ「サリアちゃんのもとへ!」
サリア「私じゃなくてゴールに向かってよ・・・」
放送部「さあ各組予断を許さない状況となってまいりました!」
放送部「果たして栄光のゴールテープを切るのはどの組か!」
〇白い校舎
パパ「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」
ママ「パパ!頑張って!もう少しよ!」
パパ「くそっ・・・持ってくれよ、俺の体!」
アンナ「サリアちゃんのパパつらそうだね・・・」
サリア「う、うん・・・」
サリア「・・・・・・」
放送部「さあ!ゴール前だ!続々と選手たちが押し寄せてきます!」
放送部「いったい今年はどの組が栄冠を勝ち取るのか!最後まで分かりません!」
ママ「パパ!」
パパ「うぉおおおおおお!」
放送部「さあ今先頭が・・・」
放送部「ゴーーーーーール!!!」
放送部「今年も大いに盛り上がりました家族対抗二人三脚競争!」
放送部「優勝は佐藤夫妻!2着前田夫妻!3着近藤夫妻!」
放送部「愛重夫妻は最後に鈴木夫妻を追い抜いて7着でゴールしました!」
放送部「最後は抜かされましたが80歳の鈴木夫妻も頑張りました!」
放送部「皆さん、選手全員に大きな拍手を!」
〇白い校舎
パパ「・・・」
ママ「・・・」
サリア「・・・」
パパ「ごめんよサリアちゃん、パパが遅いばっかりに・・・」
ママ「違うのサリアちゃん、ママがうっかり出す足を間違えたから・・・」
パパ「いや、パパが・・・」
ママ「いいえ、ママが・・・」
サリア「パパ、ママ」
サリア「(なでなで)」
パパ「サリアちゃん・・・」
ママ「・・・」
サリア「ありがとう、私のために頑張ってくれて」
パパ「う・・・う・・・」
ママ「サリアちゃ~ん!」
サリア「あははは・・・」
アンナ「ふふ・・・」
アンナ「やっぱり仲良しだ♪」
パパ「うぉおおお~ん!!」
ママ「ザディガぢゃ~ん!!」
サリア「・・・」
サリア「・・・いいかげん泣き止んでくれないかなぁ」
放送部「それでは、また来年を御楽しみに♪ さようなら〜」
シリアスなプロローグから息つく暇もなく手に汗握る夫妻の死闘っぷり、お見事でした!そしてラストの「サディガぢゃ~ん」の家族愛には全米が泣いた!来年の運動会にはどんな作戦で臨むのか、気になるようなどうでもいいような…。
面白かったです!
なんかすごい笑っちゃいました😆娘への愛の話でもあるのに、夫婦の絆と阿吽の呼吸がすごかったです!私のお腹も腹筋鍛わりました〜😂😂😂また来年まで練習頑張ってほしいです!