少女、廃品回収アイ・ドール

星名 泉花

少女、廃品回収アイ・ドール(脚本)

少女、廃品回収アイ・ドール

星名 泉花

今すぐ読む

少女、廃品回収アイ・ドール
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇近未来の通路
アイ・ドール「ドール製造所の機能停止完了」
アイ・ドール「これよりドールの回収を行う」
「はじめまして、ご主人様。 まずは基本情報を登録いたします。 お名前、生年月日──・・・」
アイ・ドール「廃品回収者の権限を行使。 ドールの機能停止を命ず」
「権限認証。 ドールの機能を停止します」

〇近未来の通路
  機能停止確認
  廃品回収車を派遣。到着まで残3分

〇大きい研究施設
アイ・ドール「ふむ」
アイ・ドール「任務完了。これより帰還する」

〇研究所の中
アイ・ドール「ただいま帰還した」
フィニス・ヴァニタス「おかえり、アイ」
アイ・ドール「これでドール製造所はあと一つだ」
アイ・ドール「完璧な任務遂行だ。褒めてくれ!」
フィニス・ヴァニタス「ん・・・アイはいい子」
アイ・ドール「うむ!」
アイ・ドール「して、これが完了したら この島から出るんだよな!」
アイ・ドール「なぁ、博士。 島の外の話を聞かせてくれ!」
フィニス・ヴァニタス「いいよ。少し話そうか」

〇海辺
フィニス・ヴァニタス「海の向こうには たくさんの人間が暮らしているんだ」

〇海辺

〇雪山

〇ピラミッド

〇火山の噴火

〇研究所の中
アイ・ドール「山ならわかるぞ! 雪が降ると真っ白に染まる。 だが火を噴くのは見たことがない」
アイ・ドール「ピラミッドは人間が作ったんだろ?」
フィニス・ヴァニタス「アイは物知りだね」
アイ・ドール「褒めてくれ!」
フィニス・ヴァニタス「次で最後だ。 ドールもそこにしかいないだろう」
アイ・ドール「任せてくれ。 私が全てのドールを廃品回収する」
アイ・ドール「私が博士の願いを叶えてやる」
フィニス・ヴァニタス「ありがとう、アイ」
アイ・ドール「大好きだぞ博士!」
フィニス・ヴァニタス「僕も大好きだ」

〇研究所の中枢
アイ・ドール「さて、ここが最後だ」
アイ・ドール「まだドールの生体反応がある」

〇研究所の中枢
アイ・ドール「ふむ」
アイ・ドール「お前はなんだ?」
マナ・ドール「はじめまして、アイ。 僕はマナって言うんだ」
アイ・ドール「感情プログラムが生きてる ドールを見るのははじめてだ」
アイ・ドール「お前が最後のドールだ。 悪いが機能を停止してもらうぞ」
マナ・ドール「もちろん。 僕はその時をずっと待っていた」
アイ・ドール「ならば」
マナ・ドール「でも焦る必要もない。 機能停止の前に君とお話がしたい」
アイ・ドール「ふむ・・・」
アイ・ドール「いいだろう。 私を褒めてくれるなら話そうではないか」
マナ・ドール「アイはいい子だね」
アイ・ドール「ふむ。 博士とは少し違うが悪くない」
アイ・ドール「して話とはなんだ?」
マナ・ドール「君はいつ作られたの?」
アイ・ドール「2144年12月24日だ」
マナ・ドール「僕より70歳も若いんだね」
アイ・ドール「お前はドール大量製造期の末期の型か? 今まで同年代のドールを 回収してきたがみんな機能がイカれてたぞ?」
マナ・ドール「僕は最後に作られたドールだ。 博士の手によって」
アイ・ドール「おぉ、博士が製造者なのか。 だから不思議な感じがしたのだろうか」
アイ・ドール「なぜお前はイカれてない? 70年もの間、何をしていたんだ?」
マナ・ドール「ドールの廃品回収を見届けて、 世界をリセットするためだ」
アイ・ドール「なぜそんなことをする?」
マナ・ドール「博士がそう願ったから。 博士は終止符を打てない。 だから僕が終わらせるんだ」
アイ・ドール「ふむ」
アイ・ドール「なぜ博士がそんなことを願う? 私は廃品回収が終わったら 博士と島を出る約束をしているんだ」
マナ・ドール「島を出て何をするんだい?」
アイ・ドール「旅をするんだ! 世界には色んな景色、色んな人間がいる。 それを博士と観に行くんだ!」
マナ・ドール「島の外に人間はいないよ。 世界はここ以外に大地もない」
アイ・ドール「考えてみたがわからん」
アイ・ドール「博士が教えてくれたんだ。 そして約束したんだ」
マナ・ドール「博士の意図はわからないけど、 僕は終止符を打たなきゃいけない。 ドールの廃品回収はほとんど終わった。 あとは僕の仕事だ」
マナ・ドール「君は廃品回収したドールがどうなるかは 知っているのかい?」
アイ・ドール「知らん! 機能停止したドールは廃品回収車が回収する」
マナ・ドール「僕も考えてみた」
マナ・ドール「君を廃品回収所に案内する」
アイ・ドール「ふむ・・・」
アイ・ドール「そろそろお前の機能を停めたいところだが 廃品回収所は見たことがない!」
アイ・ドール「見る価値があると判断した。 よってついていくことにする!」
アイ・ドール「褒めてくれ!」
マナ・ドール「ん。いい子」
マナ・ドール「じゃあ行こうか」

〇荒野
マナ・ドール「ここにドールたちが埋められている」
アイ・ドール「ほぉ」

〇らせん階段

〇謎の施設の中枢
マナ・ドール「これは”罪の滅炎”」
マナ・ドール「大地に埋めたドールをエネルギーとし 世界に終止符を打つ」
アイ・ドール「滅んだ先は?」
マナ・ドール「何万年後かにまた新しい文明が生まれるだろう」
アイ・ドール「ふむ」
アイ・ドール「博士はなぜ終止符を打つ?」
「世界の罪」
フィニス・ヴァニタス「そして僕の罪だ」
アイ・ドール「博士」
マナ・ドール「久しぶり、博士。 僕たちを除く全てのドールが機能を停止したよ」
フィニス・ヴァニタス「やっと終わるのか」
アイ・ドール「博士。なぜ世界は滅んだ? なぜ私に世界を教えた?」
フィニス・ヴァニタス「僕がドールを作り、世界は欲に溢れた」
フィニス・ヴァニタス「人間が何もしなくても 全てが完結する世界を生み出してしまった」
フィニス・ヴァニタス「人間は欲に溺れた。 そんな人類の世界に天罰が下った」

〇海底都市
フィニス・ヴァニタス「大洪水が世界をのみこんだ」

〇山奥の研究所
フィニス・ヴァニタス「島で生き残ったものは皆狂った」
フィニス・ヴァニタス「それでも生存本能はあった。 ドールは欲のはけ口となった」
フィニス・ヴァニタス「そして人はいなくなった」
フィニス・ヴァニタス「身体をドール化させていた僕を残して」

〇謎の施設の中枢
フィニス・ヴァニタス「人間の生存本能は恐ろしいものだ。 ドール化していても 僕は自ら終わることが出来なかった」
フィニス・ヴァニタス「僕はマナにたった一つの命令をした」
フィニス・ヴァニタス「最後のドールとして作った友にこの装置を守り、時がきたら終止符を打つよう命じた」
アイ・ドール「ならばマナより後に生まれた私はなんだ?」
フィニス・ヴァニタス「僕の欲だ」
フィニス・ヴァニタス「孤独だった。誰かの温もりが欲しかった」
フィニス・ヴァニタス「──愛されたかった」
アイ・ドール「ふむ」
アイ・ドール「私はなぜ廃品回収を?」
フィニス・ヴァニタス「僕の欲のために生み出した。 君への罪悪感からその役割を与えた」
アイ・ドール「私に世界を教えたのは?」
フィニス・ヴァニタス「夢を見たかった」
フィニス・ヴァニタス「愛する者との幸せな夢を」
アイ・ドール「ふむ」
アイ・ドール「私は博士が好きだ。 博士の願いを叶えるのが私だ」
アイ・ドール「博士が終わりを望むならそうしよう。 私が博士を許す。 なぜなら愛してるからだ」
フィニス・ヴァニタス「アイ・・・」
フィニス・ヴァニタス「・・・ありがとう」
アイ・ドール「もっと褒めてくれ!」
フィニス・ヴァニタス「ん。いい子・・・」
マナ・ドール「なら僕は役割を果たすね」
マナ・ドール「僕が役割を終えたら 僕の機能を停止して、アイ」
アイ・ドール「いいが理解に苦しむ」
マナ・ドール「・・・僕もね、少し壊れてるから」
マナ・ドール「世界の終焉なんて見たくないんだ」
アイ・ドール「ふむ」
アイ・ドール「わかった」
マナ・ドール「ありがとう、アイ」
マナ・ドール「さよなら、世界」

〇白

〇白
アイ・ドール「博士」
アイ・ドール「愛してるぞ」
  終

コメント

  • アイという名前はAI(人工知能)とかけているのかな?ハイテクなのにドールというところに博士のセンチメンタルな美学を感じます。自然な死を迎えることができないというのはある意味悲劇ですね。アイと博士は愛情でつながっているけれどマナの存在が切ない。

  • 大好物でした❤
    妄想が捗るお話ですね。このストーリーの裏にどちゃくそてんこ盛りの色んな設定があるのだと思うと……🤤

    博士は完全な世界を作ってしまった。でも誰からも愛される事はなく、見せかけだけの愛にうんざりしていた。だからアイを作った。本当の愛を知りたかったのは博士の方? ……みたいな? 笑
    たぶんエモいっす❤(使い方がわからない)

  • 不思議で切ないストーリーでした。壮大なテーマを扱っているのに、静かに(けれど明るく?)進んでいく感じがよかったです。アイの博士愛がとても伝わってきました。

コメントをもっと見る(4件)

成分キーワード

ページTOPへ