ヤンキー女子、家族に背中を押されてデートに行く(脚本)
〇荒れた公衆トイレ
「鬼兄弟」
不良ばかりの「ささくれ中学校」で、上級生関係なく、先生にも恐れられた不良中の不良。
そんな鬼兄弟の妹、焼島火狩。
〇まっすぐの廊下
高校一年生にして、生まれて初めて────。
篠田水木「好きです、僕と付き合ってください!」
告白された。
〇まっすぐの廊下
篠田水木「あの、すみません!焼島火狩(やきしまかがり)さんですよね?」
篠田水木「え?」
「うわっ!?危なっ!?」
焼島火狩「アん?最近入ってきた転校生じゃねえか」
焼島火狩「アタシが売られた喧嘩を全部買うって噂でも聞きつけてやってきたのか?」
焼島火狩「喧嘩なら買ってやるぜ、転校生相手でもな」
篠田水木「あ、えっと用っていうのはそういうことじゃなくて」
焼島火狩「あ?男でアタシに喧嘩以外で用があるヤツなんて......」
篠田水木「好きです。 僕と付き合ってください」
焼島火狩「は?」
焼島火狩「......」
焼島火狩「突き合う?付き合う?な、なんで私とお前が!?」
焼島火狩「お前と接点なんかねえし、好きとか意味わかんねえよ!」
篠田水木「......」
篠田水木「じゃあ、せめて日曜日僕と映画に行ってもらえませんか?」
焼島火狩「待て、なんでそうなる?」
篠田水木「僕、絶対火狩さんのこと諦めませんから」
篠田水木「それじゃ」
焼島火狩「はあ?なんだアイツ」
〇散らかった部屋
「火狩が告られたーーーー!?」
焼島兄「しかも、デートに誘われただと!?」
焼島兄「二つ返事でOKしろバカヤロウ!!」
焼島兄(火狩に告白.....?罰ゲームに違いない)
焼島兄「ぼ、僕もデート一緒に行ってあげるよ」
焼島火狩「はぁ?」
焼島兄「お前みたいなメスゴリラをもらってくれる人間様だぞ!!!」
焼島火狩「ブチ殺されてぇか?」
焼島兄(本当に罰ゲームだったら、お兄ちゃんが池の底に相手の男を沈めてやる)
焼島兄「全部僕に任せて」
焼島火狩「何するつもりなんだよ」
〇散らかった部屋
「その話、聞かせてもらったーーー!」
「親父!!」
「母さん!!」
焼島父「行きなさい!折角デートに誘ってもらったんだから!」
焼島母(わくわく)
焼島父「金銭面はお父さんに任せなさい!」
焼島父(火狩を好きな男だと?どんな男なのか気になる.....肉食系熊ライオンみたいな男だろうか)
焼島母「やっと火狩を女にできる時がきたようね」
焼島兄(どんな男なんだ、火狩に告白だなんて)
焼島兄(久々に血を見ることになりそうだな)
焼島火狩「わーったよ!行くよ!」
焼島火狩「行くけどよ!絶対ついてくんじゃねえぞ!!」
焼島火狩「わかったな!」
〇地球
日曜日
〇渋谷駅前
焼島火狩「......ま、待たせたな」
篠田水木「全然待ってないよ! 集合時間の30分以上前だし!」
焼島火狩「......」
篠田水木「早速行こう!」
〇街中の道路
焼島兄「ザ!普通!!」
焼島兄(周りにアイツの仲間がいて、「本当に来た、クスクス」とか言って笑ってるんじゃないか?)
焼島母「優しそうな子じゃない」
焼島父「本当だね、よかった」
【全員集合していた】
〇街中の道路
焼島火狩「......」
篠田水木「......」
篠田水木「あの!火狩さん!」
焼島火狩「わ!なんだよ!」
篠田水木「私服もすごく可愛い、火狩さん」
篠田水木「どうしても諦められなくてデートに誘ってよかった」
焼島火狩「可愛い!?アタシが?」
篠田水木「火狩さんの貴重な休日に、僕に付き合ってくれてありがとう!」
〇荒れた公衆トイレ
「化け物!!」
「鬼!!」
〇映画館のロビー
焼島火狩「......」
篠田水木「火狩さん、何か見たいのある?」
焼島火狩「あっ、あぁ、えっと」
焼島火狩(母さんに女の子らしくしろって言われたしな)
焼島火狩「じゃあ、泣ける恋愛映画って書いてある、これで」
篠田水木「わかった、じゃあチケット買ってくるよ」
〇映画館の座席
焼島火狩「ぐー、ぐー」
篠田水木「火狩さん?」
焼島火狩「ぐー、ぐー」
〇街中の道路
焼島火狩「悪かった、爆睡した」
焼島火狩「実はこういうの、苦手でな」
篠田水木「いいよ、全然 火狩さんのことが知れてよかった」
焼島火狩(次は挽回しないと......)
焼島火狩(もっと女の子らしく......)
焼島火狩(ってあれ)
焼島火狩(アタシ......なんで?)
〇街中の道路
おばあちゃん「ひったくりーーー!!」
ひったくり犯「どけ!ガキ共!!」
篠田水木「うわっ!!」
焼島火狩「篠田!!」
篠田水木「いたた......今の......」
焼島火狩「引ったくりだ!許せねえ!」
焼島火狩「てめぇ!待ちやがれ!」
篠田水木「ちょっと!火狩さん!?追いかけるの!?」
焼島火狩「あぁ、アタシはあぁいうヤツが大嫌いなんだ!」
〇街中の道路
焼島火狩「待ちやがれ!!!」
ひったくり犯「うわっ!?何だこいつ!?」
ひったくり犯「すごい速さで追いついてきやがった!?」
焼島火狩「バッグ返せ!」
ひったくり犯「離せ!!!離さねえと刺すぞ!!」
焼島火狩「卑怯者が!!やってみろ!!」
ひったくり犯「なんだ!?なんか飛んできた!?」
ひったくり犯「じゃがいも......!?」
篠田水木「やめろ!!やめろ!」
篠田水木「火狩さんに手を出したら許さないからな!!」
焼島火狩「何でお前......」
ひったくり犯「じゃがいもを無数に投げつけてくんな!コントロールすげえし!!」
ひったくり犯「テメェからやってやるぞ!!」
ちょっと待ったーーー!!
焼島兄「テメェ、俺の妹の彼氏に手を出そうとするなんていい度胸じゃねえか!?」
焼島兄「僕の家族に手を出したら許さないよ」
焼島母「どいてなさい」
焼島母「武器は揃ってるわ、よかった何かあった時のためにトランク持ってきて」
焼島母「母さんが蜂の巣にしてやるわ」
焼島母「うちの大事な娘と彼氏に危ない刃物を向けたんだもの、穴ぼこにされても文句言えねえよなぁ!?」
焼島父「すみません!あの、今ひったくりの方が危なくて!いや、すみません!早くきてください!」
焼島父「母さーーん!抑えて抑えて!」
〇地球
それから元極道の焼島母を何とか抑え込みつつ、場の熱はおさまった。
〇開けた交差点
篠田水木「よかったね、みんな無事で」
焼島火狩「......」
篠田水木「火狩さん?」
焼島火狩「んなことよりあの時なんで追いかけてきたんだよ!」
篠田水木「え!?」
焼島火狩「アタシは喧嘩慣れしてるし!刃物なんて普通に喧嘩で向けられてきてるし!」
焼島火狩「お前に守ってもらえなくても!!」
篠田水木「......」
篠田水木「火狩さんは、覚えてないよね」
焼島火狩「え?」
篠田水木「中学の時、僕と火狩さんは一度会ったことがあるんだ」
〇ビルの裏
一年前。
ヤンキー「修学旅行生だから結構持ってるぜ」
ヤンキー「ちょっとナイフで脅したらすぐ財布出しやがった」
ヤンキー「本当にコイツチンチンついてんのかァ!?」
篠田水木「ぼ、暴力はやめてください!」
ヤンキー「真面目な委員長タイプか!こーいうヤツが一番嫌いなんだよな!」
焼島火狩「おい」
焼島火狩「ダセエことしてんじゃねえぞ」
ヤンキー「て、テメェは鬼兄弟の妹......!」
焼島火狩「アタシはテメェらみたいなヤツが一番嫌いなんだよ」
ヤンキー「うぎゃあああ!!」
ヤンキー「クソッ!!」
焼島火狩「真面目に生きてるヤツに汚ねえ手出してんじゃねえぞ」
焼島火狩「チッ」
焼島火狩「じゃあな、もう財布取られんなよ」
篠田水木「あ、あの」
焼島火狩「あ?」
篠田水木「ご、ごめんなさい!ほんとは僕が君を守らないといけないのに!」
篠田水木「あ、財布、女の子一人に取り返してもらって、僕......」
篠田水木「あ、怪我してる!大丈夫?血が出てる!」
焼島火狩「あのなぁ、このキズは前の喧嘩でついたキズ」
焼島火狩「どうってことねえよ、ピーピー泣くなよ」
火狩さんは、そう言って僕の頭を撫でてくれた。
焼島火狩「こんくらい平気だっつーの、アタシ強いから」
焼島火狩「面白いヤツ」
僕はこの日この瞬間から、彼女に恋をした。
〇開けた交差点
篠田水木「好きな人を守りたいと思うのは当然だよ」
篠田水木「僕は火狩さんに怪我してほしくないんだ」
〇教室
数ヶ月前。
篠田水木「僕の名前は、篠田水木......」
焼島火狩「ぐー、ぐー」
篠田水木「......」
先生「篠田さん?」
篠田水木「い、いえ、なんでもないです」
僕は、あの時運命だと思ったんだ。
〇開けた交差点
篠田水木「火狩さんが恐れられてるのも聞いたよ」
篠田水木「でも僕はね、強い君も含めて好きなんだ」
焼島火狩「......」
篠田水木「あ、火狩さん!」
篠田水木「行っちゃった......」
〇地球
次の日
〇学校の校舎
〇階段の踊り場
篠田水木「......」
〇学校の昇降口
篠田水木「火狩さん......」
篠田水木「嫌われちゃったかな」
篠田水木「今日一日、避けられてたし」
篠田水木「なんだこれ、下駄箱に手紙?」
篠田水木「火狩さんからだ!」
篠田水木「またデートしてもいいよ......って」
篠田水木「あ、火狩さん!」
焼島火狩「あっ」
篠田水木「あ、待ってよ!火狩さん!」
〇学校の校舎
篠田水木「一緒に帰ろう!」
焼島火狩「そ、そんなに嬉しそうに走ってくるな!」
ヤンキーが恋愛に関しては奥手で相手からグイグイ来られるとオタオタしちゃうのは結構あるあるですよね。元極道で強そうなお母さんと優しそうなお父さん、火狩と水木も将来そんな夫婦になりそう。それにしても、じゃがいもで戦う人初めて見ました。そのシーンでは笑わせてもらいました!
あぁ〜いいですね。
青春って感じで!
しかし、家族が全員過保護!
唯一まともなのがお父さんだけか…笑
一番まともそうだったお母さんが豹変したのは笑ってしまいました笑