偽物とロジーナ

ソフト太郎

Zeolite(脚本)

偽物とロジーナ

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〇川沿いの公園
  大日本連合国
  東京にて
?「・・・」
  惨めだ

〇オフィスビル前の道
  みじめだ

〇温泉街

〇黒背景
  ミジメダ

〇古書店
?「...店長...戻りました」
  ...
?「良かった...まだ帰って来てない...」
?「え...何?」
???「痛ったぁ...」
?「ちょっと!」
?「何やってるんですか!?」
???「悪い...」
???「て!」
???「お前やっと帰ってきた」
???「ずっと待ってたんだよ」
?「僕ですか?」
???「そう、ちょっと聞きたいことがあってね」
???「少し時間良いかな?」
?「...いいですけど」
?「その前にこの散らかった本どうにかしてください」
???「oh......」

〇古書店
???「まさか古本屋を片ずけるのに一時間半もかかるなんて...」
?「...それは自業自得ですから」
?「...はい、どうぞ」
???「...あぁ..ありがとう」
???「そういや自己紹介がまだだったな」
銃灯 月夜「俺は銃灯 月夜(じゅうとう つきや)」
銃灯 月夜「お前は?」
?「...」
?「...ないです」
銃灯 月夜「...ない?」
?「はい、捨て子なので...」
銃灯 月夜「...それは困るな〜」
?「え?」
銃灯 月夜「名前ないと色々不便だろ」
銃灯 月夜「俺がつけてやる!」
銃灯 月夜「そうだな...」
?「いや...結構です」
銃灯 月夜「別塚 葵(わかつか あおい)はどうだ!」
?「..わかつか...あおい...って!」
?「なんで今日初めてあった人に名前付けられなきゃ行けないんですか!?」
銃灯 月夜「えー...いい名前だと思ったのに...」
?「...そんな事より早く要件を話して下さい」
銃灯 月夜「...それもそうだな」
?(...なんか不思議な人だな)
?(雰囲気が一瞬で変わるというか...どこか掴みどころがない...)
銃灯 月夜「お前〈偽体〉は解るか?」
?「ぎたい...って確か戦争の時に生まれた人間の亜種の様なものでしたよね?」
銃灯 月夜「正確には少し違う」
銃灯 月夜「偽体はある科学者が作った薬から生まれた」
銃灯 月夜「...死んだ兵を生き返らせる薬からな」
?「...生き返らせる薬..」
銃灯 月夜「...まぁ...それも少し違うか..」
?「?」
銃灯 月夜「いや、気にしなくていい」
銃灯 月夜「...まぁ偽体を知ってるなら〈特殊偽体〉も知ってるよな?」
?「...はい」
?「特殊偽体は偽体の失敗作から生まれた凶暴性の高い偽体を指す言葉の筈です」
?「そしてその特殊偽体からどんどん伝染してって今ではそれ専用の対策本部も設置されるレベルまでに至った」
銃灯 月夜「...」
銃灯 月夜「...なんで嘘をつく?」
銃灯 月夜「お前〈知ってる〉側だろ」
銃灯 月夜「...特殊偽体は失敗作なんかじゃない」
銃灯 月夜「本当は意図的に作られて...」
銃灯 月夜「...そしてそれを自由に操作する事の出来る奴らが居るってこと」
銃灯 月夜「俺はそれを今日聞きに来た」
?「根拠は?」
銃灯 月夜「...最近ここ周辺の特殊偽体討伐数異が常なまでに増えてる」
銃灯 月夜「そして全て本人からの報告はなし」
銃灯 月夜「これはお前だろ?」
銃灯 月夜「...誰がこの特殊偽体達を操っつているか探るために」
?「...」
?「...もう十分話はしましたよね」
?「帰って下さい...あともう少しで店長が帰ってきてしまうと思うので」
銃灯 月夜「...ここの店長ってそんなに怖いの」
?「怖いというよりかは...」
?「悪魔...って言った方がいいかもしれない...」
銃灯 月夜「...そうか」
銃灯 月夜「...分かった..帰る」
銃灯 月夜「だけどその前に一つだけ」
?「...何ですか」
  今晩だけは感情に流されるな
銃灯 月夜「...それじゃぁ」
?「...感情に流されるな」

〇木造の一人部屋
?「...昼間の人..なんだったんだろう」
?「...感情的になるな...か」
?「店長の悲鳴!?」
?「書店からだ!」

〇古書店
?「店長!」
?(...早く助けないと)
?(...助ける?)

〇黒背景
  なんで?
  なんで助けるの?
  いつも殴ってきて
  弱い者を嘲笑い
  そして

〇古書店
お「お前はなぜ生きる」
お「名前も友達も仲間も家族も居ないのになぜ生きる」
お「何者かに成りたいのか?」
お「お前はなれない」
お「0から1は生まれない」
お「0に何を掛けた所で0にしか成らない」
お「何者でもないお前が何者かになろうなんて図々しい真似をするな」

〇古書店

〇黒背景
  僕にあんな言葉をかけた
  あの言葉がずっと自分の中で重い鉛のように僕を動けないようにする
  あの言葉が...
  自分のどこかをドス黒くしていく
  〈operation〉

〇古書店
?「えっ!」
?(昼間の...)
銃灯 月夜「...寒い中ずっと外で張ってた甲斐があったわ」
銃灯 月夜「お前大丈夫か?」
?「...」
?「あの...その...これは...」
銃灯 月夜「...別に怒っちゃいないよ」
銃灯 月夜「...店長はお前にとってずっと恨みの対象でしかなかったんだから」
?「...」
銃灯 月夜「でも」
銃灯 月夜「...お前、昼間言ってたよな?」
銃灯 月夜「店長は悪魔だと...」
銃灯 月夜「だけど...」
銃灯 月夜「その悪魔を助けないとお前も同じ悪魔と一緒になるんだよ」
銃灯 月夜「1度黒くなると」
銃灯 月夜「どんな色を混ぜても黒にしか成らない」
銃灯 月夜「1度黒くなったらもう戻れないんだ」
銃灯 月夜「...ここまで言えばもう何をすればいいか分かるな?」
?「...うん」
?(店長...私は0かもしれない..)
?(0は0でしかなくて何にも成れないかもしれない)
?(...でも色だったらどうだろうか)
?(私はきっと真っ白だ)
?(何色でもない)
?(だからどの色にも成れる)
?(...きっと..人生は捉え方なのだろう)
?(捉え方次第で世界は90度にも180度にも変わるだろう)
?(...だから)
?(僕は)
?(自分自身を憐れまない)
  〈Disassembly〉
?「たお...した...」
銃灯 月夜「...凄かったぞ」
?「...」
?「...店長は大丈夫ですか?」
銃灯 月夜「あぁ...応急処置は済ませたし救急車も呼んだ」
?「...」
?「昼間の質問の回答をしましょう」
?「僕は貴方の言った通り真実に薄々感ずいてました」
?「...だから..ずっとそれが真実だと証明したかった」
?「...でも..怖かったんです」
?「...自分には出来ないんじゃないかって」
?「僕は捨て子です」
?「記憶も名前も友達も仲間も家族もないです」
?「何も持っていない」
?「...何者でもないんです」
?「...」
銃灯 月夜「何者でもない...か..」
銃灯 月夜「俺と一緒だな!」
?「え!」
銃灯 月夜「実は俺偽体なんだ!」
?「うそっ!」
?「...でもそれが何者でもないことと何が関係あるの」
銃灯 月夜「...それは」
銃灯 月夜「偽体は本当は生き返った人間じゃないからだ」
銃灯 月夜「偽体は死体と薬」
銃灯 月夜「そして」
銃灯 月夜「〈物〉が交わる事で生まれるものなんだ」
銃灯 月夜「...そして」
銃灯 月夜「偽体に成ると」
銃灯 月夜「その肉体の主導権は交わった〈物〉に渡る」
銃灯 月夜「肉体は交わった物の能力を使える代わりに」
銃灯 月夜「肉体の記憶は失われる」
銃灯 月夜「...だから」
銃灯 月夜「偽体は人間でもない、ものでもない」
銃灯 月夜「...何者でもないんだ」
銃灯 月夜「...初めて聞いただろ? あんまりこの事実は知られてないからな」
?「...そう..なんだ」
銃灯 月夜「...なぁ」
銃灯 月夜「少しだけ俺の下らない推測を聞いてくれないか?」
?「推測?」
銃灯 月夜「あぁ、頼むよ」
?「...分かった」
銃灯 月夜「ありがとう」
銃灯 月夜「実はさ」
銃灯 月夜「俺、お前偽体だと思ってるんだよね」
?「...僕が?」
銃灯 月夜「そう」
銃灯 月夜「でも普通の偽体じゃないと思ってる」
銃灯 月夜「普通の偽体なら、自分の能力がなんなのか感覚的に分かるんだ」
銃灯 月夜「ちなみに俺は銃の能力」
銃灯 月夜「でも...お前自分の能力が何か分かってないだろ」
?「...うん」
銃灯 月夜「やっぱりな」
銃灯 月夜「...そのことを踏まえて俺が考えるに..」
銃灯 月夜「〈半偽体〉だ」
?「...半偽体」
銃灯 月夜「半偽体はかなり珍しくてな」
銃灯 月夜「完全に死んでいない状態で偽体に成った者のことだ」
?「...僕はその半偽体何ですか?」
銃灯 月夜「あぁ、恐らくな」
?「...そうか」
?「...良かった..僕..ちゃんと記憶がないのは理由があったんだ..」
?「良かった...良かった..」
銃灯 月夜「...お前はこれからどうしたい?」
?「えっ?」
銃灯 月夜「お前は何者かに成りたいか?」
?「...うん」
銃灯 月夜「そうか...なら...」
銃灯 月夜「うちに...「 ロジーナ」に来ないか?」
?「ロジーナ?」
銃灯 月夜「あぁ、ロジーナは俺と合わせて5人で構成してる対特殊偽体専門の防衛会社だよ」
?「...対特殊偽体専門」
銃灯 月夜「...そうだ」
?「...でも僕なんかが..何者かに成りたいなんて理由で働いたら迷惑じゃないですか?」
銃灯 月夜「安心しろ!」
銃灯 月夜「俺含め全員偽体だ☆」
?「全員!」
銃灯 月夜「そうだ!」
銃灯 月夜「それになんと言っても」
銃灯 月夜「引きこもり、ナルシスト、ツンデレ、バカの選り取りみどりだ!」
?「なんか凄い!?」
銃灯 月夜「だから」
銃灯 月夜「お前が来ても全然迷惑じゃない」
銃灯 月夜「逆に」
銃灯 月夜「アイツらも家族が増えたら嬉しいと思うぞ」
?「...本当ですか?」
?「...私は...そこにいて..家族になっていいんですか?」
銃灯 月夜「うん!」
?「それなら...」
?「僕、働きたいです!家族になりたいです!」
銃灯 月夜「...決まりだな!」
?「...はい!」
?「...それと」
?「...名前 別塚 葵 にして良いですか?」
銃灯 月夜「...勿論だとも!」

〇入り組んだ路地裏
?「...ごめんなさい..失敗した」
?「偽体が簡単に負けちゃった」
?「いくらなんでも分解する能力は強すぎる」
?「うん...うん...分かった」
?「また後で」

〇黒背景
  お父さん

コメント

  • アイデンティティを喪失した生ける屍のようだった彼は月夜に名前と目的を与えられて、白からいろんな色に変化していくんでしょうね。偽体の作る擬似家族ロジーナで半偽体の葵がどんな活躍をしていくか楽しみです。

  • 偽体として生まれ育つことの切なさ寂しさを、彼との出会いを通してともに分かち合う仲間を得ることができたなら素敵ですね。そこに偽りの理解なんて存在しないでしょうから。

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