忍者とは申せ存外に日常茶飯のこと

もと

否、「にんにん」とは言わぬぞ。(脚本)

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〇東京全景

〇川沿いの公園

〇マンション前の大通り

〇おしゃれなリビング
  おはよー、コテツ。
虎鉄「ケンヂ殿、おはようござ・・・ん?」
  別に無理しなくてもよくね?
  呼び捨てでもいいし。
虎鉄「否、郷に入っては郷に従うぞ それに世話になっている身の上で 呼び捨てるなど出来ぬ」
  がんばれー。
虎鉄「応!」
虎鉄「さあ朝食を作っておいたぞ」
  へい、いただきます。
  なんか料理上手いよね。
虎鉄「修行の中でも拙者は年長の部類でな 年下の手本としてよく作っていた」
ユメ「おはようコテツ君、 今日も(顔の良い)忍者だね!」
虎鉄「おはようございます、ユメ殿 今日も明日も忍びでござるよ」
  「どの」?
虎鉄「おおそうか! ユメ・・・さん、おはようございます」
ユメ「(イケボの)コテツ君に呼ばれるなら 何でもいいよ?」
  姉ちゃんキモい、コテツ困らせんなよ
ユメ「あ?」
ユメ「ガキは黙っとれボケ」
母さん「おはよー!」
虎鉄「おはようご・・・母上殿?!」
虎鉄「なんと、くノ一であらせられるか?!」
母さん「やだコスプレよ 私カタチから入るタイプだから ポチったのが昨日届いてたのー」
虎鉄「なぜだか心強いでござる」
母さん「わ、美味しそう」
虎鉄「その、ぽちって頂いた粟や麦も 良き具合に炊けたでござるよ、どうぞ」
母さん「コテツ君は良い主夫になるねー いただきます!」
ユメ「(馴れ馴れしすぎる)ママったらもう! (でも主夫設定最高)いただきまーす」
  ・・・怖ッ。
父さん「あの、行ってきます? パパね、父上が仕事行きますよー?」
虎鉄「父上殿、行ってらっしゃいませ」
父さん「・・・良い子だなあ」

〇アーケード商店街
虎鉄「大根とサンマか 魚は鮮度が命ぞ、買ゑたら早や退却だ」
お肉屋さん「あらコテツちゃん、お使い?」
虎鉄「おお肉屋の婆様、こんにちは!」
お肉屋さん「ハイこんにちは 今日はウチに寄らんの?」
虎鉄「申し訳ない、本日は肉の買い物は無き故 また寄らせてもらいます」
お肉屋さん「ハイハイ、変なのに絡まれないようにね 気をつけるんだよ」
虎鉄「はい、かたじけな・・・否! ありがとうござります!」
お肉屋さん「えっへっへ、可愛いねえ」
わらべ「あ!」
わらべ「風船が・・・」
虎鉄「童よ泣くな、取ってやろう 婆様、荷物をお頼み候!」
お肉屋さん「あいよ!」
わらべ「飛んだ?!」
お肉屋さん「初めてかい? 忍者だよ 最近引っ越してきたって」
わらべ「忍者?」
わらべ「パルクールかな? クライミングの選手とか?」
わらべ「わ、落ちた?! 生きてる?!」
虎鉄「手を離さぬようにな」
わらべ「う、うん、ありがとう」
虎鉄「さて・・・婆様、ありがとう」
お肉屋さん「あいよ! またね!」
虎鉄「ふむ」
虎鉄「『ふうせん』とな? 一人で浮いておったぞ? なんとも面妖な玩具よ・・・」

〇高架下
ムキムキ「お?」
モヒモヒ「コスプレか?」
ムキムキ「よう、忍者か? ニンニン?」
モヒモヒ「ニンニンしようぜ! まず通行料・・・」
ムキムキ「ん?」
ムキムキ「脱がされた?!」
モヒモヒ「たたんであるぜアニキ?!」
「・・・」
ムキムキ「・・・意味分かんねえと怖えーもんだな メシ食って帰ろうぜ」
モヒモヒ「・・・うっす」
虎鉄「押忍!」

〇おしゃれなリビング
母さん「お帰りなさーい!」
虎鉄「只今戻り・・・ええと、ただいま」
母さん「いいのよー、言葉なんて適当で! お使いありがと!」
虎鉄「いやいや・・・」
母さん「あ、制服が出来たみたい! パパがお仕事帰りに受け取ってくれるって」
母さん「明日から学校ね!」
虎鉄「何から何まで世話になり申し訳ない、 この御恩は必ず・・・」
母さん「んもー、他人行儀なんだからー!」
母さん「せっかくタイムスリップして来たんだから 気にしないで楽しみなさいよ!」
虎鉄「かたじけっ・・・ありがとう、母上!」

〇簡素な一人部屋
虎鉄「『学校』、この時代の寺子屋と聞いたが はてさて・・・」
虎鉄「・・・」
虎鉄「兄弟弟子達にも見せてやりとう思う この安泰な世の中を」
虎鉄「衣食住だけならず勉学まで与えたもう この家を・・・」
虎鉄「・・・」
虎鉄「・・・えゑい落ち着かん」

〇おしゃれなリビング
  ただいま、コテツは?
母さん「お帰りなさーい! お部屋にいると思うけど!」
  友達と約束してきた、行ってくる。
母さん「変な事させないでよ?!」
  は、はい。気をつけます。
母さん「よろしい、行ってらっしゃーい!」

〇簡素な一人部屋
  コテツー、遊びに行こー・・・ん?
  ・・・上か?

〇古民家の蔵
  ・・・あ、やっぱり。
虎鉄「おおケンヂ君、お勤めご苦労様でござった お帰りなさい」
  せっかく部屋あるのに
  なんで屋根裏なんだよ?
虎鉄「ハハ、どうも日に照らされた部屋は 性に合わず申し訳ない」
  何してんの?
虎鉄「ユメ殿から『ワーク』を頂戴してな この時代の勉強でござるよ」
虎鉄「中途で学校に参戦する故 迷惑をかけとう無いのでござる」
  ・・・ごめん、遊ぶ約束してきちゃった。
虎鉄「ん? 拙者もか? いやいやそれは構わんぞ、 共に遊ぶのもこの時代の学びと聞いた」
虎鉄「行こうぞ、本日は何だ? やきう、さっかー、げゑむか?」
  内緒! 行くぞ!

〇神社の出店
虎鉄「祭りか?!」
イチ「そうです、この神社の小祭ですよ」
虎鉄「賑やかだな!」
ナオ「コテツ、射的やってよ! ぜってー上手いでしょ?!」
虎鉄「これは・・・お任せあれ!」
  ふふっ。

〇神社の出店
虎鉄「全部取れたぞ、山分けだ」
イチ「さすがです」
ナオ「俺これ欲しい、タイヤついてる犬」
虎鉄「それは何が楽しいのだ?」
イチ「では私はクマさんのヌイグルミを」
虎鉄「この時代はクマをかたどった物が多いな 守り神か何かなのだろうか」
  僕その金髪ネーチャンのトランプ。
虎鉄「それは何だ?」
イチ「教えてあげましょうか?」
ナオ「あ、うちでやる? ワタアメ買って行こうよ、 帰りはリムジンで送るから!」
  よし行こ!
  タコヤキとかコテツが食べた事ない物も
  いっぱい買ってトランプやろ!

〇おしゃれなリビング

〇おしゃれなリビング

〇おしゃれなリビング
母さん「似合うじゃなーい!」
ユメ「(全部)イイ!」
  頭巾は?
「このままでイイの!」
虎鉄「ハハ・・・ふむ」

〇白い校舎
  僕らの教室は二階ね。
虎鉄「押忍!」
ユメ「私は三階だけど(私に会いに) いつでも来ていいからね?」
虎鉄「御意!」
虎鉄「ケンヂ君、先に討ち入るぞ!」
ユメ「え?! 待って一緒に!」
  おおスゴい、本当に壁走れるんだ。
ナオ「おはよー コテツが入ったの、あれ職員室じゃね?」
  制服着ろよ、オボッチャマめ。
イチ「早く追わないとまた迷子になりますね おはようございます」
  よしコテツ回収、手伝ってー。
イチ「いいですよ」
ナオ「面白そうじゃん」

〇学校の屋上
  コテツ大丈夫? 疲れたっしょ?
虎鉄「いやいや 皆が忍びを知ろうとしてくれている 応えるしかあるまい」
ナオ「だからって出たり消えたりしなくても イイんじゃね?」
イチ「そうですよ みんなが思う忍者とコテツ君は 違うのですから」
虎鉄「いやいや、いやいや 郷に入っては郷に従え、でござるよ」
虎鉄「それに、もしや筋の良い御仁に 巡り会えるやも知れん」
  え、忍者探してんの?
  会えたらどうすんの?
虎鉄「忍びの里でも作ろうぞ この時代には必要無かろうが、 才を埋もれさせたままよりは・・・」
ナオ「それイイね? 温泉とかある山に『忍びの里』っつって 観光客呼んでさ?」
ナオ「忍者屋敷作ろうよ、すっごいヤツ 土地っつーか村ひとつ買ってさ、 ホテルとか旅館も建てちゃおっか」
イチ「面白そうですね」
  止めて差し上げて?
ナオ「イイじゃん、ね? コテツ?」
虎鉄「うむ! 何だろうな、良かろう!」
  ああもう、ホントに『忍びの里』とか
  作っちゃうよ
  このオボッチャマは・・・
イチ「フフッ」
同じクラスのおなご達「あ、いたコテツくん! 一緒にお昼ご飯食べよー!」
イチ「見つかってしまいましたね」
虎鉄「元より隠れてもおらぬ わざわざ見付けてくれたのなら お供す・・・」
ナオ「ダーメ! いま大事なハナシしてんの」
同じクラスのおなご達「えー?!」
ナオ「半径5メートルに入って来ないで」
虎鉄「なにゆえ?」
イチ「ナオは女の子が苦手です 今までお金と顔で苦労しているのですよ」
  アレだよ、アレ
  ムダに寄って来る女子には裏があんの
  金持ちとか忍者とかイケメンと
  付き合えたら自慢出来るー、とかさ?
虎鉄「・・・自慢、とな?」
同じクラスのおなご達「超ムカツクー! なにアイツ最低!」
ナオ「うっせーよ」
イチ「まあ、この顔ぶれでいるとモテません コテツ君も覚悟して下さい」
  「この顔ぶれ」って俺も入ってる?
イチ「もちろん」

〇白い校舎

〇おしゃれなリビング

〇おしゃれなリビング
母さん「美味しかったー、ごちそうさま!」
イチ「うん、ご馳走さまでした」
  ホントにオムライス作るの初めて?
  いや初めてだろうな、スゲエな。
虎鉄「お粗末様でござった」
虎鉄「イチど、の、イチ君の教ゑが 達者でござったのでな」
イチ「一人暮らしですからね イヤでも覚えちゃいました」
虎鉄「イチ君の母上は遠くに居られるのか?」
イチ「近くにいるみたいですが遠いのですよ たまに帰って来て最低限の生活費を 置いていくので文句はありません」
虎鉄「・・・ふむ」
イチ「フフッ では後片付けを・・・」
虎鉄「拙者がやり申す」
イチ「そう? じゃ遅くなると悪いので帰りますね」
虎鉄「送って行こうぞ」
母さん「本当にいつでもおいでよ?」

コメント

  • それにしても虎鉄くんの現代生活への順応力の高さときたらすごいですね。お母さんのコスプレへの影響力も半端ない。かくなるうえは、忍びの者としての実践力も見てみたいでござる。

  • 虎鉄くんを許容するこの優しい世界は何とも気持ちがいいですね。そしてその中に放り込まれる小ネタの数々、楽しすぎます。久々に見ましたよ、”ゑ”

  • 最後の格好に全てを持ってかれました笑
    忍者って実際に見た事がないので割と伝説っぽい存在で認知されていますが、実際のところどうだったのでしょうね。
    コテツくんのような良い子ばかりではなかったとは思いますが。

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