読切(脚本)
〇教室
今坂遼「それって脅し?」
本条ゆりな(汚い物でも見る目で、私を見ないで〜💦)
本条ゆりな「そう思うならそれでもいいけど、とにかく協力して欲しいの」
今坂遼「断ったら?」
本条ゆりな(だからそんな目で見るの、やめて〜!)
本条ゆりな「今坂の秘密をばらす、だけ」
〇教室
今坂遼の秘密を、私は知っている。
最近の中学生のいじめは巧妙になっている。
クラスで目立つ女子の梨華は、突然同じグループの舞のことが気に入らなくなった。
無視や陰口、更に大人には分からないようにSNSで暗号的な書き込みが始まった。
舞が不登校になるまで、そう時間はかからなかった。
そりゃ酷いと思ったよ。
だけど、私を含めクラスのみんな、何もしなかった。
だって明日は我が身だもん。
〇まっすぐの廊下
でもある日、偶然見てしまった。
全校集会で誰もいない教室で、
今坂が、梨華の鞄からスマホを取り出して、
何かしていた。
私は咄嗟に隠れた。
数日間は何も起こらず。
それは嵐の前の静けさだっただけ。
〇SNSの画面
匿名のSNSの裏アカで、梨華が実は外国でプチ整形をしていた事が拡散。
整形前の写真も、もちろん拡散。
梨華の奴、二重テープを貼る女子をめちゃくちゃディスっていたくせに!
あらゆる芸能事務所の入所テストに、落ちまくり。
アイドルやらない?って、プロダクションから何回も声掛けられたって、自慢していたくせに!
〇大きな木のある校舎
そんなこんなで、梨華が転校していくのに、そんなに時間はかからなかった。
舞は今、元気に学校に来ている。
〇教室
今坂は終始、関係ないって顔で本ばかり読んでいた。
でも絶対、今坂が何かしたに決まってる。
今坂は、学年一成績が良い。
いつも1人で行動している。
いつも堂々としている。
私には無理。
1人でいるなんて・・・
あいつ、みじめって思われたらイヤ。
人の目がどうしても気になっちゃう。
今坂遼「で、本条は俺に何を協力して欲しいわけ?」
私、本条ゆりな。
最近、突然お母さんと弟が出来た。
私のお母さんは、
私が小さい時に亡くなった。
だから突然やって来たお母さんは、
お父さんの再婚相手、弟はその人の連れ子ってこと。
今坂遼「その新しい弟って、いくつ?」
本条ゆりな「5年生、でも可愛くないの。 話しかけても暗いしさ。 弟なんて全然欲しくなかったし、邪魔なだけ」
今坂遼「ふーん」
本条ゆりな(何?その意味ありげな目、ムカつく!)
今坂遼「それで?」
本条ゆりな「あっそれでね、その新しい弟が、夜中にこっそり家を抜け出しているのに気付いたの」
本条ゆりな「友達もいないのに、どこ行ってるんだろうって思って、こっそり後をつけたら、」
本条ゆりな(あれ?もしかして、今坂ちょっと興味持ちだした?)
〇L字キッチン
その日、弟がソワソワしていたから、
今夜抜け出す気だなって、すぐ分かった。
本条ゆりな「キッチンの窓から外に出て行ったの」
私は気付かれないように、尾行した。
〇住宅街の公園
本条ゆりな「うちの近くの、小さい公園に着いたら、 そこにね」
本条ゆりな「白い布のテントみたいな物があって、」
今坂遼「テント?」
本条ゆりな「うん、テントの中が淡く光っていて、 象とかライオンとか、いろんな動物の影が映ってて」
本条ゆりな「立体感もあって、めっちゃ綺麗で」
〇月夜
本条ゆりな「空中ブランコとか、あとピエロの影も」
本条ゆりな「そうそう、思わず空を見上げたらね、 三日月で、テントの光と三日月が、 それが、まるで・・・」
今坂遼「夜のサーカス?」
胸がドキンと鳴った。
本条ゆりな「そう、夜のサーカス」
〇住宅街の公園
弟、泰一はお父さんにこっそり会っていた。
泰一のお父さん、養育費も払えないから、
泰一に会わせてもらえなくて、
だからこっそり・・・。
〇教室
今坂遼「シルエットアート?」
本条ゆりな「そう、でもここ何年も仕事が無いんだって」
〇幻想
本条ゆりな「お父さん、すごいね!」
泰一「お父さんのシルエットアート、見たの?」
本条ゆりな「うん、すごく綺麗だった」
泰一「お父さん、アーティストなんだ!」
〇教室
今坂遼「仕事を見つける?」
本条ゆりな「そう、それもこっちで」
今坂遼「まあ田舎より、こっちで探す方が、 仕事はあるかもしれないけど」
本条ゆりな「でしょ? 泰一のお父さんが、シルエットアートで有名になったら、お母さんもお父さんも2人が会うのを反対出来ないと思うんだ」
今坂は思案顔になった。
今坂遼「子供に人気が出れば、 必然的に大人がビジネスにする」
本条ゆりな「えっ?」
今坂遼「まずは、うちの学校の文化祭で、展示会をしよう」
本条ゆりな「えっ?学校で?」
今坂遼「同時に、ネット配信やSNSで、 広告スポンサーを獲得する」
本条ゆりな「スポンサー・・・?」
今坂遼「そうすれば自然に、仕事に繋がる」
本条ゆりな「でも文化祭って来月だよ、 どうやって先生に頼むの?」
今坂遼「校長に直接頼む」
本条ゆりな「校長先生!?️」
〇サイバー空間
今坂が微笑むのを見て、
私は背筋が寒くなった。
今坂遼「校長の秘密、知ってるから、俺」
本条ゆりな「秘密?」
今坂遼「この時代、 どれだけ多くの情報を掴んでいるかどうかで、世の中で生き残れるかが決まる」
今更だけど、今坂怖い。
本条ゆりな「あの〜校長先生の秘密って、何?」
今坂遼「本条は知らない方がいい、人間不信になるよ」
どういうこと〜?怖すぎる💦
〇教室
本条ゆりな「でも、もし文化祭で、お父さんの展示会出来ることになったら、喜ぶだろうなあ、泰一!」
今坂遼「案外いいとこあるね、本条」
キャー、照れる!
でも、
本当は、
私の秘密を、弟は知っている。
〇女の子の一人部屋
本条ゆりな「仕事を見つけてって言われても・・・ そんなの無理だよ」
泰一が泣き止んだ。
泰一「僕、お姉ちゃんの秘密知ってる」
本条ゆりな「!!」
泰一「遼は、私を強く抱きしめた」
私は完全にフリーズ状態。
泰一「そして何度も何度も、激しくキスをした」
〇ハート
私の妄想小説を読まれた・・・。
”秘密”や”裏工作”といった、表には出せない後ろ暗いものが作品の底にあり、通じて重ための空気感ですね。そこでのゆりなちゃんの心優しき想いが対照的に清々しいもので、心地よく思えますね。そしてラストの彼女の”秘密”、作中の重い空気感を吹っ飛ばしてくれましたね!w
みんなが皆秘密を握っていたなんて、、、笑確かにこの情報社会では人よりより多くの情報を持っている事は強みにはなるななんて感心してしまいました笑
情報をなるべく多く持つこと、他人の秘密を握ること、上手く生き抜いていくための術ですね。このお話では、その術が有効利用されていてとてもよかったです。