読切(脚本)
それは遥か大昔の事・・・・・・
〇宇宙空間
時間も空間も何も無かったこの世界に宇宙が誕生した・・・・・・
その偉業を果たしたのは、それぞれが創造と破壊を司る二柱の神々・・・・・・
後にこの宇宙を無数の生命体で満たす奇跡の第一歩である・・・・・・
〇宇宙空間
「神様!?神様ーーーーッ!!!!」
天使「シン(神)様はいずこーーーーッ!!!」
「うるさいなぁ・・・聞こえてるってば」
シン「今ブラックホールがめっちゃ大きくなってるから見逃せないんだよね。ちょっと待ってくれよ」
天使「そういきませんぞ、シン!」
天使「創造神様がシン様をお呼びでございます!」
シン「父上が?そういやここ10億年ほど顔見てないな」
天使「今すぐ創造神様の元に向かうようとのお達しです!」
シン「めんどくせー。俺は趣味のブラックホール観察で忙しいからまた今度ってお前が父上に言っといてくんない?」
天使「何をおっしゃいますか!創造神様のお言葉は絶対にございます!」
天使「仮にもいずれはこの宇宙全てを統べるお方がだらしない!」
シン「あーわかったわかった。行くよ行くって」
「その必要は無いぞよ」
創造神「我の方から来てやったぞよ」
天使「そ、創造神様!」
シン「父上!?」
創造神「役目ご苦労であった、天使よ。しばし下がっておるがよい」
天使「はっ!労いのお言葉、ありがたき幸せ!」
創造神「そして久しぶりだな。我が息子シンよ」
シン「お久しぶりです父上」
創造神「さて、前置きは程々にしておくとしようか。なにせ時間が無いぞよ」
シン「父上がここまで急かすとは珍しいですね。如何なる事態でしょうか?」
創造神「・・・お前の母親が戻ってくるぞよ」
シン「破壊神の母上が!?俺が産まれた時以来顔を見ていませんが・・・」
創造神「そうだ。お前の母親は破壊と混沌を司る破壊神・・・」
創造神「一時はこの世界を包んでいた「無」を破壊し、創造と秩序を司る我と共に宇宙とお主を産み出した」
創造神「だが、破壊を宿命づけられている性ゆえかのう。ただ漠然と生命を創造していく平穏な日々が我慢できず・・・」
創造神「新たな破壊を求めて遠くへと旅立っていってしまったのだ」
シン「その母上が何故今になって戻ってきたのです?」
創造神「「お主」だぞよ、シン」
シン「お、俺ぇ?」
創造神「破壊神は破壊を司る故に何も生み出せぬ。それは同族の存在も例外ではないのだ。よって破壊神は常に孤高・・・」
創造神「だが、それは永遠の孤独・・・すなわち変化とは真逆の「停滞」を意味する」
創造神「その自己矛盾を打ち砕かんがために、お主を同じ破壊の権化に仕立あげようとしているのだ」
創造神「我と彼奴の力が半分に混ざった、彼奴唯一の被造物・・・」
創造神「破壊と秩序両方の力を併せ持つお主をな」
シン「俺にそんな大層な力があるとは思えませんが・・・」
創造神「今はな。未熟故に破壊と秩序の力がぶつかり合って打ち消しあい、「停滞」を体現する性分になってしまったようだぞよ」
創造神「本当は力が目覚めるまで時間をかけるつもりだったが、あいにく破壊神が戻ってきたせいでそうもいかなくなってしまった」
創造神「このままでは荒ぶる神と化した破壊神によって、宇宙は完膚なきまで破壊し尽くされてしまうだろう」
創造神「そこでだ!シンよ!父として、創造神としてお主の成長を見込んで命じる!」
創造神「今こそ破壊と秩序の調和を司る神に昇華し、破壊神を止めてみせよ!」
創造神「この宇宙に調和をもたらすのだぞよ!」
シン「え?いやですよ。めんどくさい。全力拒否ります」
創造神「直球だな!」
シン「そもそも父上が止めれば良いではないですか。夫婦なんですし」
創造神「いや、その・・・彼奴は昔から気が強くて苦手というか・・・」
シン「あー・・・ようするに尻に敷かれてる奥さんと久々に顔を合わせるのが怖いって事ですね」
シン「最初からそう言ってくださいよヘタレ」
創造神「ちがああああああああうっ!!!表裏一対の破壊と秩序が一箇所に集まるのは宇宙的に良くない事なの!」
シン「はいはい。母上は俺がなんとかしますんで、父上はさっさとどっかに行っといてくださいよ」
創造神「お主は〜!一度父親に対する態度というものを・・・」
「ヨロレイヒー!私の可愛い息子のシンちゃーん!!」
創造神「やっべ!破壊神だ!では後は任せるぞよ!」
天使「横で聞き耳を立てておりましたが・・・大丈夫なのでしょうか?」
シン「わかんねーなー。俺も母上とは殆ど合った事無いし」
破壊神「やっほー!シンちゃん元気してたー?ママが会いに来てあげましたよー!」
シン「お久しぶりです、母上」
破壊神「あら大きくなったわねー!昔はあんなに小さかったのにー」
シン「あいにく我々は神ですので、産まれた時点で姿形はずっと同じままですよ」
破壊神「あれれー?そうだっけー?ママって常に混沌を思い求めてるからそんな昔の些細な事覚えてないのー」
シン「じゃあ何故過去の思い出話を・・・」
破壊神「そんな事よりー」
破壊神「ママがここに来た理由はわかるかなー?」
シン「・・・はい、父上から聞いております」
破壊神「ふーん、私がこの銀河まで来た途端にこそこそ逃げ出したみたいだけど、あのヘタレ」
シン「父上・・・母上からもヘタレ扱いなのか・・・」
破壊神「まっ、いいかー。話が早く済んで助かるし」
破壊神「さっ!行こうか!」
シン「ど、どこにです?」
破壊神「決まってるじゃん!」
破壊神「この宇宙を破壊と混沌で満たし尽くしちゃうんだよお!」
破壊神「手始めに〜この銀河を跡形も無く消滅させちゃおうかな〜♪」
シン「ま、待ってください母上!それはいくらなんでもやりすぎです!」
シン「既にこの銀河だけでも無数の惑星とそこに住まう生命で溢れています!彼らの命を無意味に奪うなど神といえど!」
破壊神「シンちゃん若いなー。考えが甘々だよー」
破壊神「確かに宇宙に生命は溢れた。でも、美しくないんだよねー」
シン「う、美しくない?」
「ちょっと待ったー!」
天使「黙って聞いていれば!いくら破壊神様とはいえ、創造神様が作り出したこの銀河の破壊など許され・・・」
破壊神「邪魔」
天使「あーれー!」
シン「天使ーーーーー!?」
破壊神「いえーい!飛んだ飛んだ!3億光年くらい先まで飛んじゃったかな?」
破壊神「・・・私わかるんだよねー。今はあいつら生命体って小さい微生物だけど、いずれ足が生えて宇宙に飛び出すんだと思うの」
破壊神「そしたらさ。せっかく神が作ったこの宇宙が生命体に荒らされた汚い世界になるじゃん」
破壊神「そうなったら、ダーリンめちゃ悲しむよ。こんな世界望んで無かったって。あいつヘタレな上に繊細だし」
シン「母上・・・まさか父上のために?」
破壊神「ははっ!臭い事言っちゃったわ。破壊神にこんなの似合わないのにね!」
破壊神「グダグダと話をするのは終わりっ!さあ!一緒にこの宇宙を破壊しようよ!」
シン「母上・・・その前に破壊すべきものがあります」
破壊神「なあに?」
シン「母上!あなた自身です!」
破壊神「・・・なんですって?」
シン「その頑なな母上の心と一緒に・・・母上を破壊さえていただきます!」
シン「俺に眠る「破壊」の力で!!」
破壊神「な、なに!?なんなの!?」
シン「母上!あなたは悲しい人だ!破壊しか知らず、破壊しか行えず、ずっと唯一の破壊神として孤独に生きてきた!」
シン「そのあなたを破壊できる唯一の存在!あなたの血を受け継ぐ、あなた唯一の被造物である、俺があなたに「破壊」をもたらす!」
シン「破壊神よ!破壊されろ!」
破壊神「はは・・・そうだよね。この宇宙を滅ぼすなんて間違ってるよね」
破壊神「でも、ママは破壊神だからこんな生き方しかできないの」
破壊神「さよならシンちゃん。母親らしい事してあげられなくてごめん」
シン「まだだ!」
破壊神「なにこの暖かい光?」
シン「これは俺の「創造」の力!」
シン「破壊された破壊神に新たなる創造の時を!」
破壊神「すごい!これが「調和」を司るシンちゃんの力・・・・・・」
破壊神「でも駄目だよ。足りない」
シン「くっ!俺の力はまだ未熟すぎるのか・・・・・・」
創造神「我も力を貸すぞよ」
シン「父上!?」
破壊神「ダーリン!?」
創造神「寂しい思いをさせて済まなかった、破壊神よ。我がもっとお主の葛藤に気を使っておけば・・・」
破壊神「ううん!私こそごめんね!勝手にいなくなったりして!」
創造神「シンよ!我の創造の力をお主に託す!お主は破壊神の創造に集中するのだぞよ!」
シン「は、はい!」
シン「うおおおおおおおおおおおっ!!!」
〇宇宙空間
〇カラフルな宇宙空間
これはとある創世神話の一節・・・・・・
夜空には時折とある親子が笑い合う姿が映るのだという・・・・・・
「おーい」
天使「だれか迎えに来てくださいよー」
3億光年くらい飛ばされた天使さん、ラストで「おーい」って、「宇宙の中心で愛を叫ぶ」みたいになっててかわいそう。でもシンが観察してたブラックホールに吸い込まれなくてよかった〜。
ブラックホール観測、ロマンがあって良いですね✨
Twitterでは、とある観測局が音を録音する事に成功したとかなんとか…!
『無』を破壊して『生命』を生み出す……奥深いです。
もはや概念を壊すレベルなのでしょう。
まるで教訓のようにも感じました! 面白いです👍
宇宙と創造神と破壊神…。
言葉通りカオスな状況ですね笑
お互いの力を持っていたら本当にチート級です…。
まぁ中身は破壊神に似なくてよかったのかも?