聖夜の苦悩

鍵谷端哉

読切(脚本)

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〇道玄坂
孝雄(クリスマス。世間ではサンタクロースからプレゼントを貰える日だ。どんなプレゼントを貰えるか、子供たちはウキウキだろう)
孝雄(しかし俺は全くの逆である。サンタクロースにプレゼントをあげないとならないのだ・・・)
  通りはクリスマス一色。どこからかクリスマスソングが聞こえてくる。
孝雄「・・・ついに来てしまったか」
孝雄「うおっ! 寒いっ!」
カップル 女「きゃー、風が冷たい。温めてー」
カップル 男「ほら、手を出せ」
カップル 女「手、暖かいー」
孝雄(くそ・・・。リア充めが)
カップル 女「あ、見て。通りでクリスマスケーキ売ってるよ。買ってく?」
カップル 男「いや、予約してるだろ」
カップル 女「あ、そっか」
孝雄(ここだ。あの道を通らずに遠回りして帰ればいいだけ。今年こそは負のループから外れてみせる!)
カップル 女「うわー。サンタのコスプレしてるよ」
カップル 男「おおー。生足・・・」
カップル 男「って、いてて!」
カップル 女「どこ見てるのよ!」
カップル 男「いや、寒そうだなーって思っただけだよ」
孝雄「・・・・・・」
カップル 女「ホントにぃ?」
カップル 男「ホントホント。サンタコスはお前のが見れれば満足だし」
カップル 女「やだー、エッチ」
カップル 男「それにしても、仕事とはいえ、この寒い中、あの格好はキツイだろうな」
カップル 女「あれだけやっても、全然、売れてなさそうだよ。可哀そー」
カップル 男「もう少し声掛けすればいいのにな」
孝雄「・・・・・・」
カップル 男「買っていってやるか?」
カップル 女「でも、帰ってピザ頼んであるよ。食べきれなくない?」
カップル 男「それもそうだな。じゃあ、さっさと帰るぞ」
孝雄「・・・・・・」

〇おしゃれな通り
孝雄(ここを通らなければいいだけなんだ。ただ、それだけなのに・・・)
孝雄「くそっ!」
満里奈「メリークリスマス!」
孝雄(来た! 無視だ! 無視しろ!)
満里奈「今年も来てくれたんですねー。ありがとーございます!」
孝雄「ははは・・・。帰り道なんで・・・」
満里奈「毎年、買ってくれてありがとうございます! ホント、助かってるんですよ」
孝雄「・・・どのくらい残ってるの?」
満里奈「ケーキが1つに、チキンが2つです・・・」
孝雄「・・・じゃ、じゃあ。それ貰うよ」
満里奈「ええっ! いいんですか!?」
孝雄「うん。ケーキ買ってないし、お腹も減ってるしね」
満里奈「ありがとうございます!」
孝雄「・・・っ」
満里奈「あの・・・いつも、この量を買っていきますけど・・・彼女さんいるんですか?」
孝雄(うっ! 痛いところを・・・)
孝雄「いや、いないよ。二日に分けて食べるんだ」
満里奈「・・・そうですか。・・・それなら」
崇文「満里奈。どうだ、売れ行きは?」
満里奈「ひゃっ! ちょっと! 急に声かけないでくださいよ! ビックリしたじゃないですか!」
崇文「おっ! 全部売れたみたいだな。偉い偉い」
満里奈「・・・・・・」
孝雄(顔を赤らめてる。・・・きっと、この人が彼氏なんだな)
満里奈「もう、バカ!」
崇文「な、なんだよ、急に」
孝雄「・・・それじゃ、失礼します」
満里奈「あっ!」

〇道玄坂
孝雄「ううー! くそー! 結局、今年もサンタのために買い物しちまった!」
孝雄(こうして、俺は毎年、あの子の・・・サンタの笑顔に釣られて、プレゼントという意味を込めて売れ残りを買ってあげているのだった)

〇コンビニの店内
  ――5時間前
満里奈「それじゃ、店長、行ってきます」
崇文「・・・満里奈。無理しなくていいんだぞ。さすがに寒いだろ、その恰好」
満里奈「・・・この格好の方が売れるんで」
崇文「けど、風邪ひかれても・・・」
満里奈「いいったら、いいんです!」
満里奈(一年に一回のチャンス。やっぱり、可愛い恰好を見て欲しい。そして、今年こそは・・・)

〇おしゃれな通り
満里奈「メリークリスマス! ケーキとチキンはいかがですか?」
客「あ、ケーキ、一つください」
満里奈「ありがとうございます!」
満里奈「ありがとうございましたー!」
満里奈「うう・・・ヤバい。今年は思ったより、売れるなぁ。ちょっと、声掛け抑えよっと」
満里奈「・・・そろそろかな」
孝雄「・・・・・・」
満里奈(来たっ!)
満里奈「メリークリスマス! 今年も来てくれたんですね。ありがとーございます」
孝雄「ははは・・・。帰り道なんで・・・」
満里奈「毎年、買ってくれてありがとうございます! ホント、助かってるんですよ」
孝雄「・・・どのくらい残ってるの?」
満里奈「ケーキが1つに、チキンが2つです・・・」
孝雄「・・・じゃ、じゃあ。それ貰うよ」
満里奈「ええっ! いいんですか!?」
満里奈(・・・やっぱり、優しい)
孝雄「うん。ケーキ買ってないし、お腹も減ってるしね」
満里奈「ありがとうございます!」
孝雄「・・・っ」
満里奈(よし、今年こそちゃんと聞くぞ)
満里奈「あの・・・いつも、この量を買っていきますけど・・・彼女さんいるんですか?」
孝雄「いや、いないよ。二日に分けて食べるんだ」
満里奈(やったー! いないんだ!)
満里奈「・・・そうですか。・・・それなら」
崇文「満里奈。どうだ、売れ行きは?」
満里奈「ひゃっ! ちょっと! 急に声かけないでくださいよ! ビックリしたじゃないですか!」
崇文「おっ! 全部売れたみたいだな。偉い偉い」
満里奈(あー、もう! せっかく勇気出して告白しようと思ってたのにぃ!)
満里奈「もう、バカ!」
崇文「な、なんだよ、急に」
孝雄「・・・それじゃ、失礼します」
満里奈「あっ!」
満里奈(結局、今年もあの人に告白できなかった。毎年、困っている私のためにケーキとチキンを買ってくれる、あの人に・・・)
満里奈(でも、来年こそは絶対に、あの人に告白してみせるんだから!)
  終わり

コメント

  • すれ違いがもどかしい……!
    お互いの気持ちに気付いた時が楽しみです。

  • お互いの視点から読めるとすごく思いが伝わってきていいですね!
    しかし来年のクリスマス…来年のクリスマス…って早くしないとどんどん歳とっちゃうよー!って少し心配にはなりました笑

  • 両片思い!
    かわいいですね😆

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