〇シックなバー
悠「うわー。 オシャレな雰囲気の店だね」
トワ「俺の行きつけの店なんだ。 悠はこういう店は初めてか？」
悠「オレは普段、居酒屋チェーン店くらいしか 行かないから・・・」
悠「でも、こういう落ち着いた雰囲気の店も いいね！」
　　トワは店主と親しげに会話を交わしながら、メニューを見ることなく
　　適当に何品か料理をオーダーした。
トワ「後からパエリアも来るから」
悠「へぇー。結構豪華だね」
トワ「さっきの店では 全く食べられなかったからな。 悠、お前もそうだろ？」
悠「確かに・・・ 会話に夢中になっていたから、 あまり食べていないんだよね」
　　料理から漂ってくる
　　香ばしいガーリックの匂いに、
　　オレの食欲は刺激されっぱなしだった。
悠「このフレーバーワインも美味しいね。 何ていう銘柄なの？」
トワ「ああ。それはこの店の自家製だぞ。 赤ワインにオレンジやリンゴを漬けて、 フルーツの風味を馴染ませたもので、」
トワ「「サングリア」という名前だ」
悠「・・・っ！」
　　うわっ、危なっ・・・。
　　思わず吹き出しそうになったよ。
悠「「サングリア」って、 ギルマスの名前と同じじゃないか！」
トワ「知らなかったのか？」
トワ「サングリア、ブルームーン、 そしてラスティ・ネイル。 これらは全てカクテルの名前だぞ」
トワ「あの３人は元々リアル繋がりだから、 示し合わせてキャラ名を付けたんだろうな」

〇西洋の城

〇居酒屋の座敷席

〇シックなバー
悠「そ、そうだったんだ・・・」
悠「オレ、あまり飲まないし、 飲んでもビールかチューハイだから、 全く知らなかったよ」
トワ「青月さんのことが好きな割には、 名前の由来までは知らなかったのか」
悠「た、確かにオレは青月さんのことを あまり知らない」
悠「でも、毎日のように通話アプリで 話をしているし、 オフ会でも何度か顔を合わせている」
悠「だから十分親しい仲だと思っていたんだ。 少なくともオレは！」
トワ「・・・本気で彼女が好きで、 本気で彼女とＭＫ婚がしたかったんだな」
トワ「すまん、 俺があの時「結婚しても構わない」なんて 答えてしまったから、」
トワ「青月さんではなく、俺と結婚する羽目に なってしまったんだな」
悠「トワのせいじゃないよ。 だってあの時、オレは青月さんに フラれたんだから」
悠「今思えば、リアル彼氏がいるんだから、 全く脈はなかったわけだ」
悠「あーあ、 もっと早く彼女に告白していれば、 オレにも可能性があったのかな」
トワ「どうだろうな？ 青月さんの彼氏らしき相手って、 ヴィント氏だろ？」
トワ「悪いが、悠とはかなりタイプが 違うというか・・・」
悠「わ、分かってるよ！　そんなこと！」
悠「青月さんとの付き合いは長いものの、 オレは平凡で面白みもない男だ」
悠「それに比べて、ヴィントさんは 正統派の男前イケメンだし・・・」
悠「最初っから勝ち目なんて・・・ ううっ、自分で言ってて悲しくなってきた」
トワ「結局、悠は青月さんにプロポーズは したものの、 自分の気持ちは伝えていないんだな」
悠「うん。プロポーズといっても、 「特典が欲しいから結婚したい」なんて 言い方しちゃったから、」
悠「オレの気持ちは通じていないと思う・・・」
トワ「不幸中の幸いじゃないか。 これからも青月さんと仲良くしたいなら、 恋愛感情を見せるべきではないな」
悠「それって、青月さんのことは 諦めろってことだよね」
トワ「彼氏持ちの女性に 横恋慕しても仕方ないだろ？」
悠「・・・だよなぁ。 うん、オレも理性では分かってるんだけど」
トワ「いっそ新しい恋でも始めたらどうだ？」
悠「そうだね・・・」
トワ「俺とかどうだ？ 俺は元々悠が好きだし、大事にするよ」
悠（はい？　誰がオレが好きだって？）
トワ「好きだよ、悠」
悠「・・・・・・」
　　ちょ、ちょっと待ってっ！
　　何かオレ、今かなり混乱している
　　みたいなんだけどっ!?
　　オレたち２人とも男同士だよ！
　　しかも今日が初対面。
　　何でいきなり告白されてるわけ？
悠「あ、あの・・・ 何度も繰り返すけどさ、オレ、男だよ!?」
トワ「知ってる。前にも言っただろう？ 俺は悠の人柄が好きだから、 男でも女でも構わないって」
悠「も、もしかして・・・ トワってそういう趣味嗜好の人？」
トワ「う、うん・・・ まぁ、そういうことになるのかな」
　　どうしよう・・・
　　オレは別に同性愛とか、そういうのを
　　否定するつもりはないんだよ。
　　でも、自分が当事者なら話は別だ。
　　オレは普通に女の子が好きだし、
　　女の子と恋愛したいと思っている。
　　だから、トワの気持ちはありがたいけど、
　　受け入れがたい。
　　でも、トワと疎遠にはなりたくない・・・
トワ「ああ、断られても仕方ないと 思っているから、そんなに気にするな」
トワ「・・・ふふ、悠は本当に思ったことが 顔に出るタイプだな」