吸血鬼の女王と聖女と血が流れる樹

海せん餅

誕生日(脚本)

吸血鬼の女王と聖女と血が流れる樹

海せん餅

今すぐ読む

吸血鬼の女王と聖女と血が流れる樹
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇古い洋館
クラミラ「人と吸血鬼は決して交わらない、共存する事はないと言われてきた〜♪」
クラミラ「だが」
クラミラ「私はこの呪いに打ち克った」
ハクベリィ「お母様、機嫌がいいね」
ペンタス「樹を譲り渡した村からさっきお礼に何かを貰ったからじゃないかなぁ」
ハクベリィ「ふ〜ん」
「そして私は宿敵だった人間の聖女と結ばれた」
ペンタス「あと、そういえば」
ハクベリィ「なに?」
ペンタス「いよいよ今日、苗木を町に運ぶからかも」
ペンタス「あちこちに足を運んで、ようやく人血樹を育てる場所と人を用意してくれる町を見つけたって喜んでいたから」
「性別の壁も打ち破り子を二人授かれた〜♪」
ハクベリィ「あんな大声出して、魔物が寄って来なきゃいいけど」

〇城の会議室
クラミラ「思えば様々な事があった」
クラミラ「結婚を申し込んだとき」

〇荒廃した教会
デンベルヴォルグ「結婚なんて・・・種族も性別も違うのに」

〇城の会議室
デンベルヴォルグ「え?」

〇荒廃した教会
デンベルヴォルグ「はっ?初対面で何言ってんだ」

〇城の会議室
クラミラ「それでも諦めずに告白し続けたら熱意が伝わって」

〇大聖堂
クラミラ「私なら人と吸血鬼が共存する世界にできる」
デンベルヴォルグ「はい、結婚します」

〇城の会議室
デンベルヴォルグ「伝わってきましたよ執念は」

〇大聖堂
デンベルヴォルグ「またお前か・・・」
デンベルヴォルグ「本当にそうなったら結婚してやる」

〇城の会議室
クラミラ「と、とにかく数々の努力の末に私は──」

〇華やかな広場
クラミラ「遂に出来たぞ!人血樹!」

〇城の会議室
デンベルヴォルグ「実際に作ったのは」

〇大聖堂
デンベルヴォルグ「本当に出来たのか!?」
お金の為に協力した学者「お静かに・・・吸血鬼に協力している事がバレますよ」
研究の為に協力した学者「バレたっていいじゃないの。樹液が血の代わりになるのよ」
研究の為に協力した学者「女王サマを紹介してくれてありがとね。お陰でしたかった研究が思う存分出来た」
研究の為に協力した学者「それじゃ」
お金の為に協力した学者「それでは」
人間と吸血鬼の共存の為に協力した学者「・・・まだ出来たばかりで十分な量は」

〇城の会議室
クラミラ「研究予算の折衝には骨が折れた・・・」
ハクベリィ「強引に進めてそのせいで女王じゃなくなったんでしょ」
クラミラ「人との共存を願う者達からは支持されて──」

〇謁見の間
クラミラを支持する吸血鬼「何で人間の為に生き方を変えなければいけないんだ、と言う者も居りますが大丈夫ですよ」
クラミラに賛同する吸血鬼「争いを望む者など居りませんから生産量と味と価格の問題を解決すればきっと変わります」

〇城の会議室
ハクベリィ「少数派でしょ」
クラミラ「今日は一段と当たりが強いな」
デンベルヴォルグ「・・・」

〇謁見の間
クラミラを支持する吸血鬼「我々は大丈夫です」
クラミラに賛同する吸血鬼「宜しくお願い致します聖女様」
デンベルヴォルグ「・・・行くぞ」
デンベルヴォルグ「私なら人と吸血鬼が共存する世界にできるんじゃなかったのか?国が割れたぐらいで諦めるのか?」

〇城の会議室
デンベルヴォルグ「約束を忘れず果たしてくれるのは嬉しいですけど今日ぐらいは・・・」
クラミラ「私が約束を忘れる訳が──」
ハクベリィ「私の誕生日の事は忘れてるよね!」
ペンタス「まぁまぁ、落ち着いて」
ペンタス「母様そろそろ樹を運ぶ時間だよ」
クラミラ「あ、あぁ」
クラミラ「留守番頼む・・・」
ハクベリィ「・・・・・・」

〇荷馬車の中
ペンタス「母様、約束を守るのも大事ですがもう少し家族の事も考えて下さい」
クラミラ「ちゃ、ちゃんと考えているぞ・・・」
クラミラ(まぁ・・・娘の誕生日が近いと知った相手が用意してくれたものだが)
ペンタス(コレを貰ったから機嫌が良かったのか)
クラミラ「結局、渡せなかったが・・・」
ペンタス「誕生日ちゃんと覚えていたんですね」
クラミラ「当たり前だ・・・」
ペンタス「でも、高価な宝石よりも手作りのお菓子の方が喜ぶと思いますよ」
クラミラ「今日は大事な用事が・・・」
ペンタス「樹の事は誰かに任せて、たまには休んでは?」
クラミラ「もう既に賛同してくれている人間や吸血鬼達がアレコレしてくれているのに」
クラミラ「私が休む訳には・・・」
ペンタス「・・・さて、馬車に樹を積み込んだし行きましょうか」

〇草原の道

〇巨大な城門
町長「ようこそお越し下さいました」
クラミラ「この度は私どもの計画にご賛同頂きありがとうございます」
町長「大丈夫ですか!?」
クラミラ「大丈夫ですよ。お気になさらないでください」
ペンタス「母様血が!」
クラミラ「心配してくれてありがとう。でも大した事ないから」
町人「ははッ!これでおじゃんだな!」
町長「お前か!石を投げたのは!!」
町人「なんで吸血鬼の為に樹を植えなきゃいけないんだ!!俺は認めないからな!!」
クラミラ「もしよろしければご事情を聞かせ願えますか」

〇古い洋館
ハクベリィ「いつも樹の事ばっかり」
ハクベリィ「お母様は寂しくないの?」
デンベルヴォルグ「あなたが居るから寂しくないわよ」
デンベルヴォルグ「それと、人と吸血鬼が仲良く暮らせるようになってほしいと私も思ってるから・・・」
デンベルヴォルグ「それに、そうなれば家族揃って色んな所に行けるわよ」
デンベルヴォルグ(そうならなければ、この子達は──でも)
デンベルヴォルグ「誕生日ぐらい皆一緒に祝いたかったわね」
ハクベリィ「樹が大事なのは分かるけど──」

〇森の中

〇古い洋館
ハクベリィ「本当に魔物が寄って来た?」
デンベルヴォルグ「見てくるからここで待っててね」
デンベルヴォルグ「誰ですか。何か御用ですか?道に迷いましたか?」
???「チッ!なんで人間の為に生き方変えなきゃいけねーんだよ!」
デンベルヴォルグ(逃げたか。ただの嫌がらせか・・・)
デンベルヴォルグ「大丈夫?怪我はない?」
ハクベリィ「お母様が飛んできた炎を叩き切ってくれたから大丈夫!」
ハクベリィ「前から思ってたけど、どうしてお母様は凄く強いの?」
デンベルヴォルグ「それは・・・人間を守る為に吸血鬼を狩る聖女だったから・・・」
ハクベリィ「それで今度はどんな魔物が出たの?」
デンベルヴォルグ「え、えっと・・・熊、みたいな・・・感じ」
デンベルヴォルグ(・・・気づいた? 何の不安もなく誰かを恨まず生きてほしい・・・)
デンベルヴォルグ「すぐに逃げたからよく分からなかったわ」
ハクベリィ「いつも魔物殺さないけど良いの?また襲われるよ?」
デンベルヴォルグ「魔物は殺すと増えるのよ・・・」
???「陛下!」

〇ヨーロッパの街並み

〇西洋の街並み

〇中東の街

〇巨大な城門
クラミラ「そのような事が・・・」
クラミラ「誠に申し訳ございません」
クラミラ「治療費にお使い頂けますでしょうか」
町人「・・・」
クラミラ「私にも家族がおりますので大切な人を傷つけられた怒り・・・痛いほど分かります」
クラミラ「二度とそのような事が起こらない世界にする為に栽培をお許し頂けないでしょうか?」
クラミラ(傷つけ傷つけられるのは私達の代で終わらせる。子供達の未来の為に)
町人「・・・お前が謝るんじゃなくてコレを」
町人「落とした奴を連れてきて謝らせろよ」

〇草原の道

〇荷馬車の中
クラミラ(息子に人の町を見せられると思ったんだが・・・見せたくないものを見せてしまった)
ペンタス「・・・延期にして良かったんですか?」
ペンタス「町長はやる気でしたし無視しても──」
クラミラ「目指しているのは人と吸血鬼が仲良く暮らす世界だから」
クラミラ「納得していない人を無視しても溝が深まるだけだ・・・」
クラミラ(・・・他にも恨んでいる人が居たら息子にも危害が及びかねない。それに──)
クラミラ(やっぱり、誕生日ぐらいは・・・)
クラミラ「それより大した怪我ではないからやはり馬車は──」
ペンタス「馬車の事は気にせずに休んでいてください」
クラミラ「帰りは私の番なのに・・・すまない」
ペンタス「謝らないで下さい。馬は好きですし、それに母様のせいではないのですから」
クラミラ(プレゼントは・・・お菓子を焼くか)
クラミラ(お菓子で喜んでくれるか心配だが・・・)
ペンタス「帰ったらお菓子を焼いてあげるんでしょう?ならそれまで休んでてください」
クラミラ「あぁ。ありがとう」

〇古い洋館
ペンタス「娘の誕生日ぐらい休んでもいいでしょう。明日から襲った犯人を探せばいいんですよ」
クラミラ(・・・落とし主には心当たりが──)

〇城の会議室
デンベルヴォルグ「帰りは明日の筈では」
ハクベリィ「・・・もしかして私の為に──」
クラミラを崇拝する吸血鬼「陛下!!ご無沙汰しております!!」
クラミラ「久しいな・・・用件は何だ?」
クラミラを崇拝する吸血鬼「覚えていて下さったとは!」
ハクベリィ「それはね、樹液を分けてほしいんだって!」
クラミラ「十分な数の人血樹を残して行った筈・・・」
クラミラ「病虫害か?それとも誰かに──」
クラミラを崇拝する吸血鬼「い、いえ我々の考えに賛同する者が増えたのです。樹液の生産量以上に」
クラミラ「そうか、それなら人血樹も樹液も余る程あるから好きなだけ持って行くといい」
クラミラを崇拝する吸血鬼「流石です陛下!!では一万本程頂ければ」
クラミラ「そんなには無い!」
クラミラ「い、いや順調に増やしてきて余裕が出てきたがその数は・・・」
ハクベリィ「あれ、お母様」
ハクベリィ「怪我してる!」
ペンタス「恋人を吸血鬼に襲われた人に石を投げつけられてね」
ペンタス「その吸血鬼がコレを」
ペンタス「落としたらしいんだけど・・・」
クラミラを崇拝する吸血鬼「ご心配、ご迷惑をおかけして誠に申し訳ございません!!」
クラミラを崇拝する吸血鬼「実は──」
クラミラ「大体察しがついたから詳しい話なら明日被害者の下へ連れて行く時に聞いてやる」
クラミラ「だから今日は帰ってくれ。今日が誕生日の大切な娘の為に菓子を焼くから」

〇城の会議室

〇巨大な城門
  翌日
クラミラを崇拝する吸血鬼「これまで当人に説明し許可を貰ってから健康を害さない程度の血を頂いてきましたが血が手に入らず。空腹に耐えきれずッ・・・!」
クラミラを崇拝する吸血鬼「お詫びとして置いていった物です」
クラミラを崇拝する吸血鬼「今後は人を襲うことなく生きていきます! 大切な人を傷つけてしまい申し訳ありませんでした」
町人「・・・どうする?」
町人の恋人「もう襲わないんですね?」
クラミラを崇拝する吸血鬼「はい!!勿論です!!」
町人の恋人「なら許してあげます」
町人の恋人「それと樹を植えて下さい。私の様な人を出さない為にも」

〇古い洋館
クラミラ「じゃあ行ってくる」
ハクベリィ「お母様いってらっしゃい!」
  fin

コメント

  • 吸血鬼と人間が共存するために開発された人血樹という発想が素晴らしいですね。コンセプトは完璧だけれど、現実問題として生産量と味と価格の問題が発生するのもリアリティがあって面白い。女王と聖女の夫婦、街の人々に完全な共存の平和が訪れる日が来るのか、続きが気になります。

ページTOPへ