錬金ドール(脚本)
〇西洋の街並み
エリク「そこをどいてくれないか?」
街人「へっ」
街人「フェリキス人が歩いてんじゃねえよ 堂々とよお」
街人「異国人が!」
エリク「・・・痛たっ」
エリク「・・・やっと解放された」
戦争が終わっても、
異国人の僕は未だ敵扱いだ
エリク「ん?」
エリク「・・・人形?」
エリク「捨てられたのか」
エリク「まるで僕みたいだね」
エリク「うちに来るかい?」
そう
ローズアリア「は・・・イ」
エリク(喋った!?)
人形である彼女以外は
〇草原
〇廃倉庫
『錬金ドールの店』
〇鍛冶屋
エリク「いらっしゃい」
エリク「ご注文は何ですか?ご婦人」
主人を亡くしてね
遺品整理にここの錬金術がいいと聞いたの
エリク「ああ、最近よく頂く注文ですよ」
エリク「故人の遺品から、新しいモノを錬成する」
エリク「皆さん、喜ばれてますよ」
(・・・ふん)
(錬金術?)
(どうせインチキのくせに)
(卑しい赤髪のフェリキス人は詐欺師ばかりだものね)
エリク「どうしました?」
なんでもないわ。これが遺品ね
エリク「金時計と古酒。ふむ、希少品だ」
(ケチな旦那の数少ない遺品よ)
(愛の言葉なんて一つもくれなかった男だったわ)
彼の、私への気持ちを表現したモノを
作ってちょうだい
エリク「お任せください!」
(もし、いかにも素敵なモノをだしてきたら)
(インチキだって告発してやるわ)
エリク「さあ、ローズアリア。仕事だよ」
・・・
(・・・人形?)
エリク「優しい夢を錬成しておくれ」
「モノに宿った記憶の煌めきを抽出し」
「繋ぎあわせ」
エリク「新たなモノを創りだす」
〇飛空戦艦
エリク「おお」
エリク「ボトルシップか」
エリク「素敵じゃないか」
エリク「さあ、奥さん、どうぞ」
・・・
・・・そんな筈は
エリク「どうしました?」
どうして、
あなたたちがこれが作れるの。だってこれは
エリク(・・・泣いてる)
エリク「・・・そうですか」
エリク「これは、新婚旅行で乗った船だったんですね」
エリク「旦那さんに愛されてたんですね」
〇ポリゴン
エリク「評判になった店には次々と客が訪れた」
〇ツタの絡まった倉庫
〇結婚式場の廊下
エリク「街の人たちは随分と優しくなった」
エリク「もう暴漢に絡まれることもない」
エリク「彼女と会ってから良いことばかり」
ローズアリア「エリク」
ローズアリア「幸せデスか?」
エリク「もちろん。君は?」
だけど一つ
困ったことがあった
〇荒れた小屋
ローズアリア「ローズアリアは」
ローズアリア「何デモできマス!」
ローズアリア「お掃除もカンタン!」
〇怪しげな酒場
エリク「あ、ありがとう。いつも完璧だね」
ローズアリア「まだマダできマス」
ローズアリア「なんデモできマス」
ローズアリア「捨てナイデください」
エリク「だから、捨てたりしないって」
彼女の創造主である錬金術師は、
ドールの試作を繰り返しては壊していたらしい
だから、僕の役に立とうといつも必死なのだ
エリク(せっかく独りじゃなくなったのに)
エリク(どこか遠い)
エリク「いいかい?」
エリク「僕は、もう君を家族だと思ってるんだよ」
〇ヨーロッパの街並み
女の子「パパーママー」
ローズアリア「・・・」
ローズアリア「かぞく、ゴッコ・・・」
エリク「え」
ローズアリア「エリクは『家族ごっこ』がシタイのデスね?」
〇可愛らしいホテルの一室
これが、ごっこ遊びというのなら
エリク「はい、プレゼント」
ローズアリア「まあ、お人形ヲ」
ローズアリア「・・・私(人形)に?」
エリク「人形だと思うかい?」
エリク「僕たちの娘だよ」
エリク「名前はアンジェリカ。可愛いだろ?」
ローズアリア「・・・」
エリク「僕の父は異国人でね この国で僕は異端の人間なんだ」
エリク「ずっと一人だった」
エリク「君と会えて嬉しいんだ」
ローズアリア「・・・」
〇可愛らしいホテルの一室
エリク(昨夜の彼女、ずっと喋らなかったな)
エリク「はあ」
〇鍛冶屋
ローズアリア「おはヨウございマス」
エリク「おはよう。昨日はごめん、その──」
ローズアリア「赤チャンに、服を作リマした」
ローズアリア「ほら似アウ、可愛い、とっても可愛いデス!」
エリク「あ、ああ」
エリク(こんなに楽しそうな顔、初めてだ!)
エリク「本当だね!」
ローズアリア「あ、ア、起きてしまいマシた」
エリク「ご、ごめん」
エリク(蓄音機?)
ローズアリア「お外ニ、行きマショウ」
エリク「乳母車まで作ったのかい!?」
ローズアリア「錬金ママですカラ!」
〇草原
ローズアリア(どうして人形(私)に、こんなに良ク?)
ローズアリア(エリク・・・本当に私ヲ?)
〇鍛冶屋
エリク「は」
エリク(居眠りしながら、寄りかかってきた)
エリク(こんなに緩々になるなんて)
エリク(家族になれるまで、あと一歩かな)
エリク「手紙・・・役所から・・・?」
それは聖堂の建築のため、
労働力を求める令状だった
早い話が、異国人を的にした強制労働
十数年は解放されない
〇可愛らしいホテルの一室
エリク「・・・君を連れていけない」
ローズアリア「え」
エリク「荒くれ者たちの集う場所だ」
エリク「高価な人形と見て、君を襲うかもしれない」
ローズアリア「私ハ、大丈夫デス」
エリク「駄目だ」
エリク「大丈夫。君を引き受けてくれる人は絶対いるから・・・」
ローズアリア「嫌デス。捨てナイデください!」
エリク「・・・っ」
エリク「捨てるわけじゃないんだよ──」
エリク「く・・・」
エリク「僕と出会ったのは、間違いだったね」
ローズアリア「え・・・」
エリク「フェリキス人なんかに拾われなければ、 こんな思いなんかしなかったってことだよ」
椅子にぶつかった拍子に
アンジェリカは暖炉に──
ローズアリア「きゃ──あア、あああ、赤ちゃんガ!」
エリク「・・・・・・」
エリク「・・・すまない」
エリク「本当に僕はいらない人間だ」
その夜
エリク「ん?」
エリク「!?」
エリク(手足が拘束されている!?)
エリク(な、何を!?)
ローズアリア「赤チャン・・・」
エリク(え)
ローズアリア「エリク」
ローズアリア「さようナラです!」
「──!!──!?──!!──ッ」
「────!!────!!」
〇月夜
〇中東の街
エリク
幸せデ ──
〇ヨーロッパの街並み
次の日の朝
エリク「ローズアリア!」
エリク「一体どこに」
町長「ああ、エリクさん」
町長「聖堂建築だけど、中止になったそうだよ」
エリク「え」
エリク「良かった・・・けど、どうして」
町長「ああ、急に反対派が多くなったという噂だ」
〇鍛冶屋
エリク「ロ・・・」
エリク「誰だ。君は」
アンジェリカ「私、アンジェリカ」
エリク「は?」
アンジェリカ「焼けた人形から記憶を抽出して、 ママが錬成してくれたの」
エリク「え?」
エリク「人形から人間を錬成!?」
アンジェリカ「そう!」
でも、人間を作るのには膨大な記憶量が必要だったから
ママは、国の人たちから少しずつ記憶を抜いたの
異国人との戦争にまつわる悲しい記憶を
〇鍛冶屋
エリク「ま」
エリク「まさか、強制労働が中止になったのは」
アンジェリカ「そう、みんなが憎しみを忘れたからだよ!」
エリク「・・・」
アンジェリカ「パパ?」
エリク「ローズアリア・・・」
〇草原
彼女は丘の上で眠るように横たわっていた
エリク「ローズアリア!」
エリク「探したよ。さあ、帰ろう」
エリク「ローズアリア?」
大きな力を奮い、眠ってしまった彼女を
僕たちは二人で待つことにした
本当の家族になった僕たちで
凄く素敵なお話でした!!涙が出てます!!(´;ω;`)
ハッピーエンドで良かったです!!(´;ω;`)
とても世界観がしっかりしていて、ひきこまれました!!!!!素敵なお話ありがとうございました!!!!!
素敵なお話でした。
皆がシアワセに過ごしてほしいです
途中ハラハラしましたが、温かい素敵なラストで良かったです😭
最初は少し不気味に感じていた人形が、どんどん可愛くいじらしく見えて、物語の力を感じました。