1話(脚本)
〇学食
大学に入り俺も20歳。
特にやりたいことが見つからずこの年になってしまった、いつも通りお気に入りの席に座る。
龍二「おーい、光輝!!」
大学の食堂で昼食を食べていると後ろから声をかけられた。
振り返ってみるとそこには高校からの友人である龍二がいた。
彼は高校の時からイケメンでありモテるのだが彼女を作ったことは一度もないらしい。
架間光輝「どうしたんだ?」
龍二「今日の夜空いてるか?ちょっと飲み会があるんだけど人数が合わなくてな・・・」
・・・俺は少し考えたが特に予定はなかったので了承することにした。
架間光輝「ああ、いいぞ」
龍二「そうか!じゃあ夜18時に駅前集合な!」
そういうと龍二は自分の食事を持ってどこかに行ってしまった。
あいつが飲みに誘うなんて本当に変わったな。
恐らく彼女も作り大学を満喫しているのだろう。
授業が終わったあと約束の時間まではまだ余裕があったので近くの本屋に立ち寄ることにした。
〇本屋
そこで適当に本を立ち読みし時間を潰していたら携帯に通知が来た。
母親からだった
『今日は夜勤だからいつも通り夕飯作っておいたからね』
いつも通りの連絡だ。母さんはこの近くの病院で看護師として働いているため夜勤などはよくあり、その度に夕食を作ってくれる。
俺は飲み会ではそんなに食べないでいるつもりなので、母の作った夕飯は無理なく食べられる想定だ。
ちなみに父さんはいない、小さい頃に事故で亡くなったそうだ。写真でしか見たことはないが優しそうな人だった記憶はある
そんなことを考えていたら時間が近づいてきていたので急いで待ち合わせ場所に向かった。
〇開けた交差点
待ち合わせ場所に向かう通り道
俺はいつもより早く歩きながら向かう。
そんな中、向かいの歩道にランドセルを背負った少女が歩いている姿が見えた。
少女はそのまま歩き、赤信号のため横断歩道の手前に止まった。
そして青信号になった後、横断歩道を渡る。
その姿に俺は礼儀正しい子だなと思った。
その時、横断歩道の奥からライトも付けず走るトラックの姿が見えた。
そのトラックは少女のことが見えていないのか止まる気配のないスピードで少女に近づいていく。
架間光輝「(おいおいマジかよ!)」
俺は急いで少女の元まで走る。
少女も近づいてくるトラックに気づいた様子で
トラックの方を向く。
しかし恐怖心からかその場から動けないでいた。
架間光輝「(間に合うか!?)」
トラックと俺、このまま走り続ければ若干俺の方が少女の元に早く着きそうだ。
架間光輝「(間に合え!!!!)」
直ぐ側からトラックの走る音が聞こえ、自分も恐怖に駆られるが必死に少女に手を伸ばす
必死に伸ばした手は少女の肩に触れ、走った勢いのまま少女を押す
少女が驚いた表情のままこちらを向く
〇開けた交差点
架間光輝「(間に合っ・・・)」
浮遊しているような感覚、頭の先から爪先まで伝わる衝撃・・・けれど不思議と痛みは感じない。
自分が今どこにいるのか分からない・・・
地面に横たわっているのか?目を開けて確認しようにも動かない。
『────』
遠くから誰かの声がする
架間光輝「(俺は確か・・・)」
・・・そうだ、少女を助けようとしたんだ。
段々声が聞こえるようになった
少女が何かを叫んでいるのか?
もう一度目を開けようとしてみる。
少しぼやけているが少女の姿を確認できた。
少女は泣き叫んでいるがどこにも怪我などは無い様に見える・・・
架間光輝「(良かった、助けられたみたいだな・・・)」
自分の体がどうなっているかは確認できないが、何となく分かるのは恐らく自分は助からないだろうと何故だかそう感じた。
・・・・・・・・・・・・
架間光輝「(俺が死んだらお母さんひとりぼっちになっちゃうな・・・)」
就職先が決まって、働いて、初任給はお母さんの為に使おうとは考えてたんだけどそれはもう無理そうだ。
架間光輝「(母さん・・・ごめんね。)」
少女の叫ぶ声も徐々に遠くなる。
目も開けられない、意識が遠のいていくのを
感じる。
架間光輝「(ご・・・ね、ほん・・・め・。)」
〇幻想空間
・・・フワフワと浮遊しているような感覚。
初めて感じるはずが、なぜか居心地が良いと感じてしまう。
『──ぃ、──ぃか?』
微かに声が聞こえる、自分は今どこにいるのだろう?
アトス(神)「大丈夫か?おーい?」
はっきりと聞こえた声に俺は目を開ける。
目を開けるとそこには今まで見たこともない景色が広がっていた。一面真っ白だが宇宙にいるかのような無重力感。
そんな中、目の前に真っ黒で人のような姿をした人から声が聞こえる。
架間光輝「・・・え?・・・あの、ここは?」
アトス(神)「『お!良かった目を覚ましたな、ここはまぁそっちで言う天国に近い所だな。』」
架間光輝「天国に近い所?」
天国ということは、あの事故でやはり自分は死んだのだろう。
アトス(神)「『そうだな、あの事故で死んで今ここにいるって感じだ。あっそうそう俺はアトスだよろしく。』」
随分フランクな感じで話しかけてくる人に少し戸惑う。声に出していない事に回答してくる事に少し恐怖を感じる。
アトス(神)「『怖がらせるつもりはないんだ、ごめんな。 俺はまぁ君が住んでいた世界の管理を任されている。君の世界で言う・・・あれだ』」
架間光輝「あれって?」
アトス(神)「『なんだっけなー、あれだ神様だ!』」
神様という言葉に俺は耳を疑った。
架間光輝「えっ!? 神様・・・?」
アトス(神)「『そうそう、まぁそんなに畏まらなくて大丈夫だよ。』」
架間光輝「は・・・はぁ」
俺は戸惑いを隠せないでいた。
アトス(神)「『まぁあんまり長時間この空間にはいられないから端的に説明するぞ?』」
架間光輝「えっ、あっはい!」
アトス(神)「『まず君は死んでここにいる。けれど本来あの場所で死ぬことは無かったんだ。こちら側の不手際だ本当にすまない!』」
そう言うと神様は頭を下げる。
架間光輝「えっと・・・あの場所で死ぬはずなかったとは?」
アトス(神)「『本来であれば君は普通に就職し、ちゃんと母親を大切にし結婚までする未来があったんだが』」
アトス(神)「『こちら側の不手際であのような結果になってしまった。だから私は君をここに呼んだんだ、新しい人生をプレゼントしようとね。』」
架間光輝「・・・新しい人生?」
アトス(神)「『そう!要は別の世界で一からやり直すってことさ。』」
その言葉に俺は驚きを隠せないでいた。
架間光輝「一からやり直せるんですか?」
アトス(神)「『正確には前の世界の記憶を持ったままやり直す感じかな。あっそれと今の姿のまま転生することになるね。』」
また赤ん坊からスタートは色々くるものがあるしな・・・今の姿のままの方がありがたいか。
架間光輝「分かりました」
アトス(神)「『随分と落ち着いてて良い子だねー。後こちらの不手際だから特典もつけるよ!』」
架間光輝「特典ですか?」
アトス(神)「『そう!君がこれからいく世界は今までの世界と違って魔法や騎士とかいるからね。』」
アトス(神)「『上手くやっていけるように神からのプレゼントだと思ってくれれば良いさ。特典は3つまで付けるよ!』」
魔法や騎士という事はRPGゲームのような世界なのだろうかと疑問に思う。
アトス(神)「『そうそう、そのイメージで大体合ってるよ!』」
と言うことは前いた世界とは危険度が明らかに違うんだろうなと光輝は考える。
アトス(神)「『確かに比べると危険さはこれから行く世界の方が危険だね、だからちゃんと考えてほしいな、魔法とかも使えるからね!』」
架間光輝「魔法か・・・」
あまりゲームをやってきていないからかイメージが湧きにくい。
アトス(神)「『例えばいくら魔法を使っても疲れない体とか、光速で動けるとか、怪我や毒では死なない体とか色々出来るよ!』」
架間光輝「・・・・・・・・・」
架間光輝「あの、質問いいですか?」
アトス(神)「『ん?何だい?』」
架間光輝「俺が死んでから、お母さんはどうしてますか?」
予想外の質問だったのか少し間が空く・・・
アトス(神)「『・・・君の母親は君が死んだとわかった日泣き叫んだ。その後は・・・ただただ一生懸命働いているよ』」
神からの返答に光輝は考えるように目を瞑る。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
架間光輝「あの、特典は俺以外の人に付けれますか?」
アトス(神)「『えっ?・・・あぁ付けれないことは無いけど。』」
架間光輝「それなら・・・母さんがいる世界、母さんの時を戻してあげてください」
アトス(神)「『えっと、君の母親を要はタイムスリップさせる感じでいいかな?』」
架間光輝「はい、後父さんを死なないように、事故に遭わないように出来ますか?」
アトス(神)「『それも一応出来るけど・・・』」
後一つ何にするか光輝は迷う・・・
アトス(神)「『えっと、ごめんね考えている時に本当に特典は今言った2つは確定で良いの?』」
架間光輝「え、あっはい」
アトス(神)「『それにこの2つを叶えても君がまた生まれる訳ではないよ、君は違う世界に転生だからね。』」
架間光輝「大丈夫です、自分は新しく始められるのであれば特に何も。どうせなら傷ついたお母さんの方を助けたいですし」
アトス(神)「『・・・君は優しいんだね』」
架間光輝「そんな事ないですよ、お母さんより先に死んでるんですから」
アトス(神)「『・・・なるほどね』」
後一つが中々思い浮かばないのか光輝は考え込むように唸る。
アトス(神)「『・・・優しい君にサービス!』」
架間光輝「えっ?」
アトス(神)「『このままだと君、どうせお母さんやお父さんの事で特典使いそうだし勝手にこっちが決めちゃうね!』」
架間光輝「・・・はぁ、別に構いませんが」
残り一つの特典が思い浮かばなかったので丁度いいと光輝は考える。
アトス(神)「『まず魔法、魔力が減らない体にしてあげるね、後は身体能力をこれから行く世界で困らない程度に強化してあげる!後は・・・』」
架間光輝「えっと、残り1つのはずでは?」
アトス(神)「『だからサービスだって!気にしない気にしない』」
架間光輝「はぁ・・・」
増えるのならありがたい事だと思い,
黙って耳を傾ける。
アトス(神)「『残り1つは・・・そうだ!君にとって何か選択しなければいけない時、その選択が正解か間違いか判る能力にしよう!』」
架間光輝「えっと・・・正解か間違いか判るの能力ですか?」
アトス(神)「『そう!例えば道に迷って東西南北どちらに進めば良いか分からない時に使うと進むべき方向が分かるとか』」
アトス(神)「『魔物と戦って勝てるかもその能力で判断出来るね!』」
便利そうな能力だと光輝は思った。
アトス(神)「『魔力を使用する能力なんだけど君は減らないから使いたい放題だね!』」
架間光輝「・・・そんな便利な能力貰っちゃっていいんですか?」
アトス(神)「『全然良いさ!』」
架間光輝「あの・・・ありがとうございます」
アトス(神)「『こっちの不手際だしね、それと君がこれから行く世界は僕の管理していない世界だから詳しい事情は分からないんだけど』」
アトス(神)「『なるべく安全な場所に転生出来る様に頼んでおいたからね!』」
架間光輝「それはありがたいです」
確かにいきなり魔物とかに襲われたらひとたまりもないからな。
アトス(神)「『こんな感じかな?何か聞きたいこととかある?』」
架間光輝「・・・いいえ、本当にありがとうございます」
アトス(神)「『それじゃぁそろそろ出発かな』」
自分の体が徐々に消えていき、光の粒のようになっていく。
アトス(神)「『君の第二の人生に幸あれ』」
驚く暇もなく光輝の体は粒状になり消えていった・・・
〇黒
・・・・・・こっちだ!救援を!
・・・申し訳ございません、まだ開発・・・
『・・・どうせ出来ないのなら必ず・・・』
子供達にはあんまり見せた・・・
何故、こちらに・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・勇者でも・・・
心優しい子ですねぇ。
私なら欲張って色々な能力に飛びついてしまいそうです。
確かに残された人のことも考えてしまいそうですが…。