毒の華

碧野TOMATO

エピソード1(脚本)

毒の華

碧野TOMATO

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〇教会内
田中 咲希「神よ・・・ 私の罪を聞いてください」

〇白
田中 咲希「私は・・・物心が着くか着かないか位までは、幸せな人生を歩んでいた」
田中 咲希「若くて美人な母親に───・・・」
田中 咲希「優しくてカッコイイお父さん・・・」
田中 咲希「素敵な両親に囲まれ、私はとても幸せいっぱいな気持ちで満たされていた」
田中 咲希「アイツが生まれるまでは───・・・」

〇白
田中 優也「オギャー! オギャー! オギャー!」
田中 美麗「あらあら、優也。 お腹空いたのかしら? ほーら!」
田中 美麗「可愛いわ・・・優也、私の可愛い優也・・・!」
田中 咲希「お、お母さん・・・ 私もお腹空いちゃった」
田中 咲希「何かご飯・・・ないかな?」
田中 美麗「アンタは適当にお菓子でも食べておきな!」
田中 美麗「それから、そのフード! もっと深く被れないの?」
田中 咲希「ご、ごめんなさい! 許してください!!」
田中 咲希「男の子が欲しかったのか・・・ 弟が産まれてからは、母は私に冷たく当たるようになりました」
田中 咲希「今思えば・・・母はこう呼ばれるべき人間でした」
  ───毒親・・・
田中 咲希「けれど幼かった私は、愛されないのは自分のせいだと思い込んでいました」
田中 咲希「私がいい子じゃないから・・・」
田中 咲希「私が言うことを聞かないから」
田中 咲希「私がお利口さんなら」
田中 咲希「私がもっとお手伝いをすれば──!」
田中 咲希「私が、私が!」
田中 咲希「私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が!」
田中 美麗「うるさい! もっと静かにしろッ!」
田中 美麗「ほーら、優也ちゃん・・・ ミルクの時間ですよー」
田中 咲希「そっとしておけば良かったのに・・・」
田中 咲希「愛されたかった私は、母の気を引こうとより一層努力をしました」

〇おしゃれなキッチン
田中 咲希「あっ!」
田中 優也「あ、お姉ちゃんが皿を割ったー!」
田中 優也「ママー! お姉ちゃんがお皿割ったよー!」
田中 美麗「・・・」
田中 美麗「優也、怪我したら危ないから、あっちへ行きましょ?」
田中 優也「はーい!」
田中 美麗「──咲希、さっさと片付けなさいよ?」
田中 咲希「わ、分かりました・・・ ごめんなさい、お母さん」
田中 美麗「・・・」
田中 咲希「私が怪我をしても無関心」
田中 咲希「全ては弟──優也が中心」
田中 咲希「それでも私は・・・自分が鈍臭いから・・・」
田中 咲希「全部、わたしが悪いと責め続けていました」

〇学校脇の道
田中 咲希「・・・」
田中 優也「あ! 根暗野郎!」
田中 咲希「痛・・・!」
田中 優也「あははは! 邪魔だよ、邪魔―!」
田中 咲希「うぅ・・・っ、酷ぃ・・・」

〇教室
同級生「あ、バイキンが来たぞ!」
同級生「臭ェー! バイキン、バイキン! ちゃんと風呂に入っているのかー?」
同級生「もう、男子ったら! ダメだよ、そんなこと言っちゃ!」
同級生「先生に言いつけるからねー!」

〇白
田中 咲希「母親には虐げられ、父親も知らん顔」
田中 咲希「お風呂に入ることは許されても、子供の力じゃ上手く頭も洗えず、臭いが残っていたのかもしれない・・・」
田中 咲希「それとも何日も着た服が臭っていたのか・・・ 今となっては、どれが原因か分かりません」
田中 咲希「弟にも馬鹿にされ、同級生にもハブられ・・・」
田中 咲希「私の人生って、何なんだろうと考えるようになりました」
田中 咲希「そして私は・・・ 誰とも顔を合わせたくなくて、顔を隠すように生きるようになりました」
田中 咲希「そんな私に転機が訪れたのは・・・ 成人してから起きた、ある人との再会でした」

〇学校脇の道
犬童 スズ「あら・・・アンタ」
犬童 スズ「咲希ちゃん! 咲希ちゃんじゃないの?」
  だ、だれ・・・?
  こんな人、知らない・・・
田中 咲希「え、誰ですか・・・?」
犬童 スズ「だれって、アンタ! アンタのばあちゃんよ!」
田中 咲希「おばあちゃん・・・?」
  うそ・・・!
  だって私のおばあちゃんは・・・

〇白
  父方のおばあちゃんだけで、今も健在だ。
  母の方は、私達が生まれる前に亡くなったと聞いたけど・・・?

〇学校脇の道
犬童 スズ「見間違えるわけがないわー! だって、私とアンタ・・・」
犬童 スズ「こんなにそっくりなんだからね!」
犬童 スズ「アンタのかあさんの若い時にそっくりだよ!」
  そ、そんな・・・母さんに・・・?
犬童 スズ「そうそう、アンタの母さんに言っててくれ」
犬童 スズ「最近、父ちゃんが倒れちまってお金に困ってるんだ」
犬童 スズ「ちょっと・・・ 貸しておくれってね」

〇教会内
田中 咲希「まさに私にとって青天の霹靂でした」
田中 咲希「確かに父にも母にも似ていない顔・・・」
田中 咲希「弟の優也は父親に似て、端正な顔立ちでした」
田中 咲希「けれど、祖母を名乗る女性の発言で確信しました」
田中 咲希「母は整形をして、過去の自分を捨てたのだと・・・」
田中 咲希「けれど生まれた娘は、整形前の自分にそっくり・・・」
田中 咲希「だから母は、私の顔を隠すようにフードを被せ・・・冷たく当たるようになったのです」
田中 咲希「何て愚かな女なのだろう・・・」
田中 咲希「真実を知った私は、毒親だった母に恨みを抱くようになりました」
田中 咲希「家を出て、お金を貯めて、私自身も生まれ変わりたいと、整形をしました」
田中 咲希「・・・皮肉にも、私が理想とした顔は、整形後の母にそっくりな顔でした」
田中 咲希「殺したいほど憎んでいた母・・・」
田中 咲希「けれど、愛されたかった大好きな母・・・」
田中 咲希「なので私は、復讐の為に・・・母の整形前の写真を、ビラにしてばら撒いてあげました」
田中 咲希「父や弟、ご近所さんなどに知れ渡り・・・ 母はすっかり発狂してしまいました」
田中 咲希「まぁ、自業自得なんですけどね」
田中 咲希「整形したなら、子供なんか産まなければ良かったのに・・・」
田中 咲希「・・・いや、それでも弟が生まれるまでは、確かに愛してくれていたのです」
田中 咲希「比べる対象が出来てしまったから、私は見限られてしまったのです」
田中 咲希「・・・」
田中 咲希「今日は・・・自殺をした母のお葬式でした」
田中 咲希「元を言えば、私が自殺の原因なので、参列は出来ませんでした」
田中 咲希「なので、代わりに神様に・・・ 一言だけ言いたくて参りました」
田中 咲希「神よ・・・どうして どうして私を母そっくりの顔にしたのですか?」
田中 咲希「私も・・・母に愛されたかった・・・」
田中 咲希「・・・・・・」
田中 咲希「私は私のような子供を産みたくない・・・ なのでこれから先の人生、一人で生きていきます」
田中 咲希「お母さん・・・安らかにお眠り下さい」

〇黒
  ── E N D ...

コメント

  • 母と娘の容姿をめぐる虐待という共通点がある「イグアナの娘」という漫画を思い出しました。毒親の問題の場合、とりわけ母娘の確執が一番根深く闇が深いように感じます。親子という閉じられた世界の中では逃げ場がないのでどちらかの死まで続く戦いなのかも。咲希は復讐を果たせたけれど、スッキリとはいかない複雑な心境でしょうね。

  • 深いお話でした。毒親よくきかれるようになった言葉です。誰だって愛情あふれる中で過ごしたい。大人になり、人生豊かであるとよいですね。

  • 産まれてくる子は何も選べずに産まれてきますよね。
    それとどう向き合っていくか、中々難しいですね…。
    選べないからこそ人生は奥が深いのかもしれませんが。

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