ようこそ僕の村へ

白井涼子

エピソード1(脚本)

ようこそ僕の村へ

白井涼子

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〇黒
  ようこそ僕の村へ

〇農村

〇田舎の役場

〇古い施設の廊下

〇役所のオフィス
桃井太郎「・・・・・・」
佐々木「暇だね〜、桃井君」
桃井太郎「暇ですねー、課長」
佐々木「先週の観光客、何人だっけ?」
桃井太郎「四捨五入すると、十人です」
佐々木「四捨五入するのー。 四捨の方じゃないよねー、五入の方だよねー」
  桃井の後ろからスマホを覗き込む佐々木。
佐々木「華麗な人だね」
桃井太郎「ちょ、見ないでくださいよ!」
佐々木「良いじゃない、ちょっとくらいー」
桃井太郎「え〜、でも!」
佐々木「だって見えちゃうよー、そんな堂々とー、仕事中にー」
桃井太郎「・・・・・・」
  スマホの画面を消す桃井。
佐々木「彼女とか?」
桃井太郎「そんな、違いま——」
佐々木「あーーーー!」
佐々木「あれは、もしかして」
桃井太郎「転出でしょうね。3丁目タバコ屋の若夫婦。先週、店閉めましたからね」
佐々木「まずいよ、貴重な若者プラス子供、3人とも出て行っちゃったら・・・」
桃井太郎「今月に入って3組目。今までは準限界集落だったのが、限界集落突入ですね」
「・・・・・・」
佐々木「そんなことになったら、隣の街に吸収合併されるかも、って前に村長が・・・」
桃井太郎「合併されたらだめなんですかー?」
佐々木「えー、名前無くなっちゃうよ。地図から消えちゃうよ!」
桃井太郎「・・・・・・」
佐々木「あれ、あんまり驚いてない?」
佐々木「ダメダメ。そんなのこの村で生まれ育った爺さん婆さんたちが認めないよ!」
桃井太郎「うーん、でもメリットもありますよね。税収入のアップとか」
佐々木「職員、減らされちゃうかもよ? リストラだよ! 減らすとしたらこっちからだよ!」
桃井太郎「!」
佐々木「まずいよねー、仕事無くなったら、桃井君がいつも見てる携帯代も払えないよねー」
桃井太郎「それは困ります!」
佐々木「でしょー。桃井君、転職に有利なスキル持ってないよねー。何もないよねー」
桃井太郎「課長・・・頑張りましょう! 頑固、合併を阻止しましょう!」
  手を取り頷き合う、桃井と佐々木。

〇広い畳部屋
桃井太郎(観光課として出来ることって何だろう・・・)
桃井繁蔵「おーおー良いケツしとるのー」
  桃井繁蔵(ももいしげぞう)が、テレビを見ながらニヤケ顔をする。
桃井繁蔵「しかし、わしゃもうちっと色気のある方がええのー。女は30からか、のー、太郎」
桃井太郎「もう、こんなくだらないのばっかみないでよ。ニュースに変えるよ」
桃井繁蔵「お前が早く可愛いお嫁ちゃんをもらってくれんから、テレビで我慢しとるんじゃろが」
桃井太郎「僕のお嫁さんを、変な目で見ないでよ」
桃井繁蔵「ふん、まだ彼女もおらんくせに」
桃井繁蔵「そういえば、タバコ屋のせがれ、出て行ったみたいだな。なぜ止めん?」
桃井太郎「何で僕が?」
桃井繁蔵「お前も役所勤めだろ」
桃井太郎「僕は観光課、人を呼ぶ方。出て行くのを止めるのは、僕の仕事じゃないよ」
桃井繁蔵「村に人がいなければ、呼ぶもんも呼べんじゃろ」
桃井太郎「・・・・・・」

〇木造の一人部屋
桃井太郎「・・・・・・」
  『村おこしアイデア集』
  『観光客誘致ハウツー』
  『おらが村の軌跡』
桃井太郎「一体どうすれば・・・」
  ブー・・・ブー・・・
桃井太郎「!」
桃井太郎(ふふ。僕もリリーさん位、色気がある方が・・・)
桃井太郎(それにしても、仕事の合間もこんなステキな店でランチなんて、おしゃれだなぁ)
桃井太郎「あーっ、メッセージ来た!」
  『ルミト君こんばんわ。今日のお店は当たりでした。いつか一緒に行きたいなっ♡』
桃井太郎(いつか一緒に行きたいな、だなんて)
桃井太郎(僕もリリーさんと行きたいですー。こんなおしゃれな店に二人で。ふふふっ)
桃井太郎(って駄目、駄目。僕とリリーさんは、絶対会えないんだから・・・)
  スマホでSNSのマイページを開く桃井。
桃井太郎(クールでカッコいい、フィンランド育ちでハーフのイケメン・ルミト君・・・)
桃井太郎「何で、こんなややこしい設定にしちゃったんだろ・・・」
桃井太郎「これじゃ、一生会えないよ・・・」
桃井太郎「って、今はこんなこと考えてる場合じゃなかった!」
桃井太郎「どうやって村の過疎化を阻止するか! ・・・読まなきゃ、考えなきゃ! !」

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