高くない?(脚本)
〇西洋風の受付
~マケーコクの街、その宿屋~
勇者ハチ「すみません」
アルティ「はい、いらっしゃいませ」
アルティ「マケーコクの宿屋へようこそ!」
アルティ「宿代は一人800ユールです お泊りになりますか?」
勇者ハチ「いいえ」
アルティ「・・・・・・本当にお泊りになりませんか?」
勇者ハチ「はい」
アルティ「・・・・・・わかりました。 またのお越しをお待ちしております」
勇者ハチ「・・・・・・」
アルティ「・・・・・・」
アルティ「・・・・・・」
アルティ「ちょちょちょちょちょ!」
アルティ「ちょっと待って!!」
勇者ハチ「・・・・・・なんすか」
アルティ「え、泊まらないの?」
勇者ハチ「はい」
アルティ「・・・・・・何で?」
勇者ハチ「宿代、高いから」
アルティ「高い?」
勇者ハチ「一人800ユールって、俺達四人パーティだから合計3200ユールもかかるのよ」
勇者ハチ「高いから泊まらない」
「じゃあね」
アルティ「ちょちょちょちょちょ!!」
アルティ「待て! こら待て! 待ってって!」
勇者ハチ「なんすかしつこいな」
アルティ「そんな状態で何処行くのよ」
勇者ハチ「そんな状態?」
アルティ「後ろの仲間、血だらけじゃん!」
アルティ「全員ステータス真っ赤じゃん!」
アルティ「足の小指をぶつけたら死ぬレベルで ボロボロじゃんかー!」
勇者ハチ「この辺の敵、強いから」
アルティ「そりゃ魔王城のすぐ近くだからね」
アルティ「それにしてはあんただけ元気じゃない?」
勇者ハチ「街に入る時に僧侶の回復魔法で 全快にしたからな」
アルティ「あと僧侶さんの格好がおかしい!」
勇者ハチ「彼女の趣味だ」
アルティ「好きで着てんのかよ! 絶対お前の趣味だと思ったわ!」
勇者ハチ「失敬な」
アルティ「で、何で街に入る時に回復してんのよ」
アルティ「街の中に敵はいないよ?」
勇者ハチ「勇者が傷だらけだと格好がつかないだろ」
勇者ハチ「街の人に不安を与えてはいけない」
アルティ「仲間血だらけで勇者だけ綺麗な方が よっぽど不安を煽られるよ!」
アルティ「皆にも回復魔法をかけてあげれば?」
勇者ハチ「もう街の中だ。敵はいない」
勇者ハチ「よって回復魔法を使う必要が無い」
アルティ「人の心とか無いんか!」
アルティ「悪いこと言わないから うちの宿に泊まっていきなって」
アルティ「一晩泊まれば全回復だから! ね!」
勇者ハチ「いや、でも高いし」
アルティ「お前そればっかりだな!」
アルティ「ちなみに所持金はいくらなの?」
勇者ハチ「58,0000ユール」
アルティ「余裕で泊まれるじゃん!」
勇者ハチ「でもフォルタプリーの街なら 一人4ユールで泊まれるし」
勇者ハチ「おたくの宿代、あそこの200倍よ?」
勇者ハチ「もうちょっと勉強しなよ」
アルティ「余計なお世話だよ!」
アルティ「あんな国王お膝元の治安のいい街と」
アルティ「魔王城の眼前に構えてる この街を一緒にすんな!」
アルティ「え、ちょっと待って」
アルティ「もしかして今からフォルタプリーまで行く気?」
勇者ハチ「魔法使いの瞬間移動で行くから平気」
アルティ「あんだけボロボロの人をまだ働かせる気!?」
勇者ハチ「いけるよな」
魔法使い(サシカ)「・・・・・・」
勇者ハチ「いけるよな?(静かに剣を抜く)」
魔法使い(サシカ)「・・・・・・(かろうじて親指を立てる)」
勇者ハチ「いけるって」
アルティ「あんた本当に勇者か!?」
アルティ「悪いこと言わないから うちに泊まっていきなよー」
アルティ「魔王と戦う前に仲間に刺されるよ?」
勇者ハチ「俺には精霊の加護がついているから平気だ」
勇者ハチ「魔王を倒すまで決して死ぬことは無い」
アルティ「仲間に加護は?」
勇者ハチ「無い」
アルティ「死んじゃうじゃん!」
勇者ハチ「皆、俺より20以上レベル高いから大丈夫だろ」
アルティ「レベルの問題じゃないから!」
アルティ「それにしても何でそんなに レベル差がついてるのよ?」
勇者ハチ「皆に戦闘頑張ってもらってたら いつの間にかこんなことに」
アルティ「どこまで救いがないんだお前は!」
アルティ「精霊さん、絶対加護を与える相手を 間違えただろー」
アルティ「もうホント、頼むからうちに泊まって!」
アルティ「君の仲間のためにさ」
勇者ハチ「でも高いし」
アルティ「譲らないなー 頑なに譲らないなー」
勇者ハチ「おたくもな こんだけ言われたら普通値引かない?」
アルティ「値引かない」
アルティ「見るに見かねて値引くとか、無い」
アルティ「魔王城の目の前で商売しているエルフ舐めんな」
勇者ハチ「怖い怖い」
勇者ハチ「でも何でエルフが宿屋やってんの?」
勇者ハチ「あんたも見るからにそうだけど 潜在魔法力は人間の比じゃないでしょ」
勇者ハチ「もっといい商売があるんじゃない?」
アルティ「初対面でカウンター越しに 踏み込んだ話するのやめてくれない?」
アルティ「あっ、それを聞きたかったら うちに泊まってよ!」
アルティ「そしたら話してあげる」
勇者ハチ「高いからやだ」
アルティ「お前本当にぶれないな!」
アルティ「もういいよ!」
アルティ「仲間が可哀想だからとっとと フォルタプリーでも何処でも行きな!」
勇者ハチ「ところでおたく面白いな」
勇者ハチ「連絡先交換しない?」
アルティ「出てけ!」
その後、勇者は魔王を討伐した
だが魔王と相打ちになりその命を散らした
個人的には魔王を倒して
加護が切れたところを
仲間に刺されたんだろうなと思っている
多分、フォルタプリーの宿屋も
同じことを思っている
アルティ「さて、今日も真面目に働きますか!」
勇者の懐事情に鋭く切り込んだ衝撃の問題作!なのか?ある意味魔王との戦いよりも見応えがある手に汗握る熾烈なバトルでしたね。ケチとパワハラのコンボは身を滅ぼすという教訓にもなりました。
勇者外道だなぁ~と思いましたが、勇者の回復以外は僕もドラ○エで経験済みでした😋
キャラクター紹介での仲間の設定も面白かったです!
見事なまでのクズ勇者さんですねw アルティさんと互いにブレないやりとりが楽しいです!
パーティの他3人目線でのサイドストーリーも見てみたくなります!