クレーム、クレーム。

はじめアキラ

クレーム、クレーム。(脚本)

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〇マンションのオートロック
岡本久美「・・・というわけなんですの。聴いてます、管理人さん?」
下田幸一(管理人)「は、はあ。・・・えっと、つまり岡本さんの自宅の上・・・305号室の方が夜中に騒ぐのをどうにかしてほしい、と」
岡本久美「ええそうです。真下のあたしの部屋まで、五月蠅い音が一晩中響くんですよ。安眠妨害ったらありゃしないわ」
岡本久美「こういうことは、管理人さんの口から住人の方に言って下さるんですよね?」
下田幸一(管理人)「ま、まあ一応、仕事ですので・・・」
岡本久美「お金貰ってんでしょ。だったらその分仕事してくださいよ! あたしは本当に困ってるんだから!」
下田幸一(管理人)「わ、わかりました・・・」
下田幸一(管理人)(はあ、もう・・・ついてない。ついてない。 あんなクレームばあさんが住んでるなんて・・・)

〇マンションのオートロック
岡本久美「ねえねえ管理人さん?このマンション、ペット禁止だったわよね?」
下田幸一(管理人)「え?あ、はいそうですね。それが何か?」
岡本久美「103号室の前を通ったら、犬の鳴き声が聞こえてきたの!あれはこっそり犬を飼ってるに違いないわ。注意してちょうだい!」
下田幸一(管理人)「は、はあ。わかりました・・・」

〇マンションの共用階段
岡本久美「あら管理人さん、丁度良いところに」
下田幸一(管理人)「は、はあ。どうしたんです?岡本さん、こんな時間に」
岡本久美「204号室の赤ん坊がうるさくってしょうがないの!親に静かにして頂戴ってクレーム言いにいくところなのよ。貴方も来て頂戴!」
下田幸一(管理人)「あ、いやでも・・・赤ちゃんの夜泣きは・・・」
岡本久美「迷惑だって伝えるためにガンガンにラジオかけてやってんのに、気づかないばかりかもっと泣かせるのよ!本当に五月蠅いったら!」
下田幸一(管理人)(いや、そりゃ逆効果だろ・・・)
岡本久美「何?あたしに何か文句でもあるわけ?」
下田幸一(管理人)「・・・ナイデス」

〇マンションのオートロック
下田幸一(管理人)(・・・ああいう人だもんなあ。 旦那さんがなくなってから、ちょっとおかしくなってるんだっけ、あの人)
下田幸一(管理人)(103号室は、前の家で犬を飼ってたけど今は亡くなってしまってもう飼ってないって言ってた)
下田幸一(管理人)(204号室のご夫婦には赤ん坊なんかいないって言うし・・・)
下田幸一(管理人)(そもそも、隣の家でわんわん響くほど複数の赤ん坊の声がするなら、別の家からもクレームが来るはずなのにそれもないし)
下田幸一(管理人)(絶対ボケちゃってるだろ、あのばーさん。俺も、そこそこいい年だから人のこと言えないけど・・・)
下田幸一(管理人)(でも一応言ってはおかないと、仕事してないとか言われそうだし、また絡まれそうだし・・・はあ、面倒くさい)
下田幸一(管理人)「305号室か。・・・あそこ、普通の大人しそうなご一家だったと思うんだけどな」

〇マンションの共用廊下
下田幸一(管理人)「ここか」
「はーい?」
下田幸一(管理人)「あーすみません。管理人の下田です。 305号室の、御木本さんですよね?ちょっとお時間よろしいですか?」
「あら、管理人さん。いつもお世話になっております。 ちょっとお待ちくださいね」
御木本舞子(母)「こんにちは管理人さん。えっと、どうしました?」
下田幸一(管理人)「あ、はい、その・・・つかぬことをお伺いしますが、御木本さんのお宅って三人家族でらっしゃいましたよね?」
御木本舞子(母)「ええ。私に夫、高校生の娘の三人ですわ。 それがなにか?」
下田幸一(管理人)「じ、実は最近、夜中に騒ぐ声が聞こえるというお話がありまして。 どうにも、小さな男の子の声が複数聞こえると」
下田幸一(管理人)「いかんせん最近近所では子供がいなくなる事件も起きてますし・・・敏感になられている方もいるようで」
御木本舞子(母)「ああ。確かに。神隠しだなんて言われてますわね。 娘にも気を付けるように言っているところですわ」
御木本舞子(母)「ただ、夜中に騒ぐというのはなんのことだか。 うちには小さな子供はおりませんし・・・」
下田幸一(管理人)「あ、いえごめんなさい!このお宅が必ずしも騒いでるとかけしてそういうことではなく!何かお心当たりがあればというだけで!」
下田幸一(管理人)(そりゃそうだよな。この家から、男の子の声とかするはずないよな・・・)
下田幸一(管理人)(やっぱりあのばあさんの妄想か)
御木本優介(父)「舞子、どうした?」
御木本舞子(母)「あ、あなた。いえ、今管理人さんが・・・」
下田幸一(管理人)「す、すみません旦那さん!もう用件はすみましたので、お暇します!」
御木本優介(父)「あれ、そうなんですか?いつもお世話になってるので、たまにはお話でもと思ったんですが」
御木本優介(父)「この間は駐車場の件、ありがとうございました! いやあ、うち、車停めるのへたくそだから、場所移動して貰えて助かりましたよ」
下田幸一(管理人)「い、いえいえ。とんでもないです。私は仕事をしたまでですから!」
御木本舞子(母)「いつも丁寧にありがとうございますわ、管理人さん。また何かありましたら、遠慮なくいらしてくださいね」
下田幸一(管理人)「は、はい」
下田幸一(管理人)「・・・・・・」
下田幸一(管理人)(うーん・・・あのお宅に小さな男の子の声? それも複数?ありえないよなあ。しかも)

〇マンションのオートロック
岡本久美「あの家、隠し子でもいるんじゃないですの?しかも相当我儘に育ててるんですわ」
岡本久美「どったんばったん暴れるような音がするわ、ぎゃあぎゃあと喚くような声を出すわ、迷惑ったらありゃしない」

〇マンションの共用廊下
下田幸一(管理人)(そんなわけないのに。あのばあさん、いい加減病院にでも入ってくれないかね。 迷惑なのはこっちだよ・・・)

〇ダイニング
  ・・・・・・。
  ・・・・・・・・・・・・。
御木本優香(娘)「お母さん、お父さん、管理人さん行ったー?」
御木本優介(父)「行ったみたいだな」
御木本舞子(母)「そうね」
御木本優香(娘)「今の、五月蠅いってクレーム入ったんでしょ? やっぱまずかったんだって、夜中にあんだけやらかすの」
御木本優香(娘)「そりゃああたしもさ、あんまりにも美味しそうな子でちょっとテンション上がっちゃったけどさあ」
御木本優介(父)「まったくだ。人の事言えないだろ優香。俺は言ったぞ、眠らせてからにしようって」
御木本優香(娘)「だってさあ!睡眠薬とか使うと肉の味がマズくなるんだもーん!」
御木本優香(娘)「それに、せっかくの可愛い男の子だよ?もっと悲鳴楽しみたいじゃん!」
御木本舞子(母)「それで人間におかしいと思われたら本末転倒でしょう? 何のために手間暇かけてこんな姿に変身してると思ってるの」
御木本舞子(母)「ただでさえ、最近この近辺で神隠しが起きてるって騒がれてるのに」
御木本優香(娘)「人間って意味わかんないよねえ。腐るほど人数いるのに、何で子供が一人二人いなくなったくらいで大騒ぎするかなあ」
御木本優介(父)「そこはまあ、そういうものだと諦めるしかない」
御木本優介(父)「というか、今気づいたんだが。そもそも昨夜はちゃんと結界を貼って音が漏れないようにしていたはずだよな?」
御木本優介(父)「それがクレームになったということは・・・どうやらこのマンションには霊感の強い人間が住んでいるようだ」
御木本優介(父)「引っ越しを考えた方が良いかもしれんな。せっかく、この一家を殺して成り代わって、快適なマンションに住めたのに残念だが」
御木本舞子(母)「まあ、仕方ないわね。今捕まえてる獲物を食べたら、撤収しましょうか」
御木本舞子(母)「また似たような家族を見つけて食って成り代わればいいわ」
御木本優香(娘)「そーだね!じゃあ」
少年A「ひっ・・・」
少年B「や、やだっ・・・」
御木本優香(娘)「あーんもう、心配しないで?」
御木本優香(娘)「すぐに昨日バラバラにしたお友達と・・・同じところに送ってあげるから!」

〇血しぶき

コメント

  • 内容が全然違うのに映画の「クレイマークレイマー」みたいなタイトルに笑ってしまった。はじめさんのホラー、毎回趣向やカラクリが凝っていて楽しみです。今回も日常に潜む狂気の世界を堪能させていただきました。

  • おばあさん、痴呆でも入っているのかかと思っていたら、おー怖。
    近所付き合いもなく、隣は何をする人ぞ…の時代。考えたらゾッとしました。

  • これぞ極上のホラーですね!このストーリー展開はたまりませんね!しかも老婦人のセリフを丁寧に読み返してみると……。加えて、恐怖シーンの描写ったら💦

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