エピソード1(脚本)
〇高級マンションの一室
その日は突然訪れた
平咲希「でええー!!!マジ?」
お父さん「なにをそんなに驚いているんだ?お父さんは、本気だよ」
平咲希「「お父さん、漫才師になるんだ」って聞かされたら誰だって驚くでしょ!」
お父さん「お父さん、エンジニアはもう辞めたんだ。次探さないといけないだろ」
平咲希「そりゃそうだけど、漫才師って・・・お母さんは、いいの?」
お母さん「お父さんらしくていいじゃない。フフフ」
平咲希「でた。母による父の全肯定」
お母さん「いままで頑張ってくれたんだもん。応援してあげたいじゃない」
平咲希「夫婦のッ―プラトンに娘勝てず。散る」
お父さん「分かってくれたか。ありがとう!」
平咲希「っていうか相方どうすんのよ。漫才でしょ?まさか、お母さんが・・・?」
お母さん「まーさかー。お母さんができるわけないでしょ」
お父さん「心配ご無用。その点はもう考えてある!」
ダダーン!
平咲希「ヒッ!!なにこれ?」
お父さん「お父さんの相方。Mr.パートナーだ」
Mr.パートナー相方「はじめまして」
平咲希「うわ、しゃべった」
お父さん「Mr.パートナーには、最新のAIが搭載されているんだ!」
お父さん「お父さんの思考回路もバッチリインプットしてある。つまり」
平咲希「息ピッタリってわけね・・・」
お父さん「そうだ」
お母さん「お父さん、天才!!」
平咲希「そんな優秀なロボットつくれるんなら、エンジニアやってたほうが・・・」
お父さん「なーに言ってんだ、エンジニアは、50歳定年説って言ってな。50を境にほかの道に進む人が多いんだ」
Mr.パートナー相方「お嬢様、とてもおキレイですね。スタイルのバランスもとてもよいです」
平咲希(いまどきのロボットって、お世辞もいうの?)
平咲希「ど、どうも・・・」
お父さん「と、いうわけでお父さん今日から漫才師だから。応援よろしく!!」
お父さん「コンビ名は「AI&Daddy」だ!!」
お母さん「お父さん、ファイト!!」
〇中庭のステージ
Mr.パートナー相方「疲れてしもうて、座ってしまったんや」
お父さん「なんでやねん。お前ロボットやろ!?」
Mr.パートナー相方「そしたら電池が切れてたんや」
お父さん「電池って、君ロボットじゃないんやから」
Mr.パートナー相方「オレは、ロボットやねーん!」
平咲希「お父さん!ダダ滑りだったじゃない! 誰1人笑ってなかったわよ!」
お母さん「お母さんは、とっても面白かったわよ。お腹痛いわ♡」
平咲希「素人漫才大会に出るからって応援に来てみれば!!ロボットとの会話だってうまくいってなかったじゃない!!」
お父さん「う~ん、確かにうまくかみ合ってないところがあったかもな。まだまだ、改良の余地があるってことだな。フムフム」
お母さん「お父さんは、いつでも前向きねえ」
平咲希「でた、積年夫婦の鉄壁のデイフェンス」
平咲希「とにかく!こんな漫才やってるようならもう見に来ないからね!」
お父さん「まあ、年末までにはなんとかカタチになるようにしよう」
平咲希「年末?ってまさか!」
お父さん「うん。そのまさかだよ」
平咲希「「アレ」にでるつもりなの!?」
お父さん「そうだよ。新人漫才師の登竜門だからね」
平咲希「はあ、もうなんというか。娘は、陰から応援させてもらいますよ」
お母さん「お父さん、「アレ」は放送は年末だけど、収録はもっと前だから早めに準備しないといけないわね」
お父さん「おお!そうだった。さっそく家に帰って調整しよう!」
平咲希(その前に、予選があるんじゃ・・・)
〇女性の部屋
「はい」
「入るわよ」
「どうぞ」
お母さん「今日はありがとうね」
平咲希「いまさら感。別にお礼なんか」
お母さん「お父さん、とっても嬉しかったみたい」
平咲希「ねえ」
お母さん「なに?」
平咲希「お母さんは、ホントにいいの?」
お母さん「お父さんのこと?」
平咲希「そうよ」
お母さん「もちろん。いままで、散々働いてくれたじゃない。好きなことさせてあげたいわ」
平咲希「そりゃ、そうだけどさ」
平咲希「名の知れたエンジニアだったわけでしょ」
お母さん「そうよ。本も出してるし、講演会にも引っ張りだこだったわ。テレビにもでたのよ」
平咲希「それが、いきなり漫才師なんて」
お母さん「あの人が漫才師になりたいって言ったのは今回は、初めてじゃないのよ」
平咲希「え!?」
平咲希「前にも?いつ?」
お母さん「結婚して、3年目くらいだった頃よ」
平咲希「それって・・・」
お母さん「そう。ちょうど、アナタを妊娠したとき」
平咲希「なにそれ!?初耳なんだけど」
お母さん「お父さん、その頃にはエンジニアとして一線で活躍していたわ、でも、昔からの夢である漫才師を諦めきれなかったの」
お母さん「それで、ある日突然「漫才師になります!」って」
平咲希「周りはどうしたの?」
お母さん「もちろん大反対よ」
平咲希「そりゃ、そうよね。お母さんは?」
お母さん「一度きりの自分の人生なんだからやりたいことやりなさい!!って」
お母さん「そしたら、お父さん大泣き!!」
お母さん「一大決心して、退職届を出そうってときにアナタを授かったのよ」
平咲希「それで、エンジニアを辞められなくなったの?」
お母さん「エンジニアのほうが安定してるからね」
平咲希「漫才師を諦めたのって私のせい?」
お母さん「なに言ってるの。アナタのお陰で、こんなに楽しい生活が送れてるんじゃない。お父さんも私もとってもアナタは宝ものよ」
平咲希「でも・・・」
お母さん「「自分の夢なんかよりも、娘だ!!」ってお父さん言ってたわ」
平咲希「うう、私、私・・・なんかゴメンナサイ」
お母さん「なに謝ってんのよ。今お父さんが欲しいのは、応援よ!!」
平咲希「うう・・・分かった。私もできる限り協力する」
こうして、親子3人とロボット1人?の漫才猛特訓が始まった。
〇高級マンションの一室
お父さん「ロボットはええなー」
Mr.パートナー相方「なんでやねん。それと、ロボットやなくてAIや」
お父さん「表情がないから、なに考えてるか分からへんがな」
Mr.パートナー相方「君は、最新のAIをなめてるな」
お父さん「ほう、感情が表現できるっちゅうんかいな」
Mr.パートナー相方「当たりまえやろ。感情を表現するのは、顔だけじゃないっちゅうこっちゃ」
お父さん「ほな、やってみーや」
Mr.パートナー相方「よっしゃ!イイもんみせたろ」
Mr.パートナー相方「まず「焦り」」
お父さん「ほう」
Mr.パートナー相方「つづいて、「ひらめき」」
お父さん「想定内や」
Mr.パートナー相方「怒り」
お父さん「プログラミング通りや」
Mr.パートナー相方「最後に、「怒り」×2」
お父さん「そんなん、あったかいな?」
お父さん「ヒーっ!!」
Mr.パートナー相方「どや?」
お父さん「そりゃ、すごい!プログラミングにはなかったで!!」
Mr.パートナー相方「AIはな、自己学習するんやで!!まだまだあるでー」
お父さん「分かった。分かった。堪忍や!オレがナメとった!」
Mr.パートナー相方「じゃあ、ここで表情当てクイズや」
お父さん「突然なんやねん」
Mr.パートナー相方「オレの表情当ててみい。いくで」
「・・・」
お父さん「アカン。分からん。降参や!!答えを教えてくれ!!」
Mr.パートナー相方「答えは・・・」
Mr.パートナー相方「はよ、顔作れや!!」
お父さん「ひえーそっちも降参や!!」
〇高級マンションの一室
お父さん「どうだった!?」
平咲希「まあ、だいぶ良くなったんじゃないかな」
お父さん「改良と特訓を重ねたからな」
お母さん「私は、大爆笑!!優勝間違いなしね!!」
お父さん「まあ、まずは明日の予選を突破しないといけないからな」
お母さん「予選なんて余裕で突破するわよ」
平咲希(娘、入る余地なし・・・)
〇高級マンションの一室
1週間後・・・
お母さん「ん?なにかしら?」
お母さん「あらまあ!」
お母さん「やったわ!予選突破よ!」
平咲希「どうしたの?そんなに大きな声だして?」
お母さん「突破したのよ!」
平咲希「予選、、、突破したの?」
お母さん「そう!お父さんは、やっぱり凄い人だわ!」
Mr.パートナー相方「ここまでは、計算通りです」
平咲希「いきなり登場・・・」
Mr.パートナー相方「一時は、どうなるかと思いましたが、なんとか間に合いました」
平咲希(なんか、だんだん人間に接近?)
Mr.パートナー相方「ハイ。私は、時間を追うごとに、人間、具体的にはアナタのお父様に近づいていきます」
平咲希「私の考えていることが分かるの?」
Mr.パートナー相方「はい。私は、お父様をベースに作られています。家族の考えていることは、かなりの可能性で分かります」
平咲希「最終的には、お父さんになる可能性大?」
Mr.パートナー相方「全く同じにはなりませんが、99.9999・・・%。つまり限りなくお父様に近づくことになります」
お母さん「お父さんが、2人なんて面白いわね」
お母さん「予選突破のことを早くお父さんに知らせなくっちゃ!!」
Mr.パートナー相方「決勝の収録日まで時間がありません。「ネタ」に磨きをかけます」
お母さん「録画予約しなくっちゃ!!」
平咲希(これが、ドリームズカムトゥルー?)
〇コンサート会場
「アレ」の決勝戦
司会者「さあー!!いよいよ決勝戦出場10組のすべての漫才が終了しました。どれも実力者揃いのハイレベルな戦いでしたね!!」
司会者②「これから審査員の方たちに得点を発表してもらいます。最高得点を獲得した1組が、栄冠を手にいれます」
司会者「それでは、審査員の方々準備はいいですか? 行きますよ!」
司会者「発表します。優勝は、「AI&Daddy」です!!」
司会者②「おめでとうございます!!!!」
お父さん「やったーー!!」
お父さん「やったぞ!」
お父さん「咲希!光希子!お父さんやったぞ!夢をあきらめるな!!遅すぎることなんかないんだ!」
〇高級マンションの一室
お母さん「やだ、お父さんテレビで名前なんか叫んじゃって」
平咲希「フフフ。まあいいじゃい。良い思い出になったでしょ。お父さんおめでとう」
Mr.パートナー相方「どうもありがとう」
平咲希「これからもよろしくね!!」
End
お父さんの思考パターンで作ったAIだから、腹話術の人形でもやってることは同じことなんじゃないの?というツッコミはさておいて、家庭内でも「病気にならないお父さん」として機能しそうなところがちょっと怖かったです。
実際にAIの力が人間を超え始めてる可能性も現段階でもありますし、近い将来ありそうですね…。
しかしどんどんお父さんに近づいて本物がわからなくなる…怖いですねぇ。
近未来、本当にAIによる漫才が業界を席捲するかもしれませんね。と考える一方で、とっても優しいハートフルな物語に心温かくなりました。