闇鍋ショートショート

セーイチ

墓場の二人(脚本)

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〇古書店
ナビゲーター「いらっしゃいませ」
ナビゲーター「闇鍋ショートショートへようこそ」
ナビゲーター「私は、ナビゲーターを務めさせて頂く者です」
ナビゲーター「名前はございませんので、ご自由にお呼びください」
ナビゲーター「この世界は、一人の創造主が好き勝手に短めのお話を投下する場所」
ナビゲーター「おトイレの落書きだと思って、気楽に気軽にお楽しみください」
ナビゲーター「少しでもお客様が喜んでいただけるお話があれば何よりです」
ナビゲーター「それでは早速参りましょう」

〇墓石
ナビゲーター「ここはとある墓地」
ナビゲーター「人気はないのに、なぜか話し声がします」
ナビゲーター「少し耳を傾けてみましょう」
あや「それで、どうする?」
さやか「やっぱり見た目から直すべきだと思う」
あや「見た目ねぇ・・・」
あや「この墓地に憑いてから100年・・・」
あや「私達も変わらなきゃいけないのかなぁ・・・」
ナビゲーター「彼女達は、この墓地の幽霊のようです」
ナビゲーター「今まで墓荒らしや墓石にイタズラをしようとする人々を怖がらせ、この墓地を護ってきました」
ナビゲーター「しかし、ここ最近は人間を脅しても怖がるようすがなく」
ナビゲーター「中には写真や動画を撮って、お金儲けにしようする者達も居るようです」
あや「見た目を直すのは良いけど、何をどう直せば良いの?」
さやか「まず、この火の玉だね」
さやか「今時、火の玉で怖がる人間は居ないよ」
あや「じゃあどうするの?」
さやか「LEDにしよう、急に昼間のように明るくなったらビックリするよ」
ナビゲーター「二人は墓地の隣にあるお寺へ向かうと、室内のLED電球を持ち出して墓地に設置しました」

〇墓石
あや「白装束もキレイすぎてインパクトが足りないかも?」
さやか「言えてる言えてる」
ナビゲーター「今度はお寺の倉庫からペンキを持ち出し、白装束に塗り始めます」
さやか「こうして赤く塗れば、血に濡れてるように見えるでしょ」
あや「良いね良いね♪」
さやか「って、あやは赤くなくない?」
あや「だって赤が足りなかったから・・・とりあえず近い色を塗ったんだけど・・・」
さやか「まっ良いか、遠目なら誤魔化せるでしょ」
あや「ついでに裾を短くして足を出そう、生足の方が恐そうじゃない?」
さやか「良いね、採用!」
ナビゲーター「彼女達はそう言って、着物の裾を切ってしまいました」
さやか「後はもっと怖い顔をした方が良いと思うの、こう目をガッと見開いて・・・」
あや「ガッとね」
ナビゲーター「二人は睨めっこをしながら怖い顔の研究をします」

〇墓石
あや「うらめしや~ってセリフも、もう怖くないよね」
さやか「お経でも唱えようか?」
あや「お経なんて知ってるの?」
さやか「なんとなくは・・・」
あや「良し、じゃあ次にお坊さんが来たら、頑張って覚えてみよう」
あや「ついでに木魚も借りてこよう」
さやか「うん、それで行こう」
ナビゲーター「こうして作戦会議を終えた二人は、墓地を守るため、新たな姿で人間達を怖がらせる事にしました」

〇黒
  ~数日後~

〇ファミリーレストランの店内
・・・「なぁなぁ聞いたか?町はずれの墓地の話」
・・・「聞いた聞いた、夜に墓地へ行くと突然スポットライトを浴びた二人組が現れるって話だろ?」
・・・「そうなんだ、しかも二人ともパッチリした瞳の可愛い女の子なんだって」
・・・「和服なんだけどミニスカートになっていて、可愛らしくアレンジされてるんだと」
・・・「声が小さくて聞こえ辛いんだけど、木魚を叩きながらラップを歌うらしい」
・・・「まるでアイドルみたいだって評判だぜ」
・・・「見に行ってみるか?」
・・・「そうだな、行ってみよう!!」
ナビゲーター「こうして努力の甲斐なく、二人が人間を怖がらせようとすればするほど人々は墓地に集まってきました」

〇墓石
あや「こ、これで良かったのかな?」
さやか「た、たぶん・・・」
・・・「あやちゃーん!こっちむいてー!」
・・・「さやかちゃーん!かわいー!」
あや「・・・」
さやか「・・・」
あや「や、やっぱり・・・」
さやか「なんかちがーう!」
ナビゲーター「そして今夜も、墓場では慎ましくも活気にあふれたライブが開催されるのでした」
ナビゲーター「因みに、人が集まる事で墓地は自然と監視され、墓荒らしや墓石へイタズラする人間はいなくなったそうです」
ナビゲーター「ケガの功名といったところでしょうか」
ナビゲーター「それでは、今回はお話はこの辺で」
ナビゲーター「少しでも楽しんで頂けましたら幸いです」
ナビゲーター「またのご来訪を心よりお待ちしております」

次のエピソード:お兄ちゃん

コメント

  • いやー、楽しいですね!
    一生懸命に考えれば考えるほど、おかしな方向に向かってしまう典型例ですね!展開もオチも大好きです。

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