彼女の秘密(脚本)
〇綺麗なダイニング
森崎守「・・・」
リビングで一人神妙な顔で座っている少年がいた。
彼の名前は森崎守(もりさきまもる)。
彼の両親は事故で行方不明・・・それ以来、姉と二人で暮らしている。
?「ふふん・ふ・ふん・ふふ~ん♪」
鼻歌を口ずさみながら夕ご飯の用意をしている少女──
彼女こそ、守の姉の森崎サキ(もりさきさき)だ。
森崎守「あのさ・・・姉ちゃん」
森崎サキ「うん、マモルどうしたの? 怖い顔して?」
森崎守「・・・」
森崎守「姉ちゃんってさ、実はロボットでしょ?」
森崎サキ「え、ええええええっ!?」
がっしゃーん!!
サキの持っていたお皿が床に落ちて砕け散った。
森崎サキ「な、なななななな、何のことかしら!?」
森崎守「・・・その動揺の仕方は完全に図星でしょ」
森崎サキ「ち、ちがうって!!!」
森崎サキ「そんな小説やマンガじゃあるまいし!」
森崎守「うーん、本当・・・?」
森崎サキ「あ、当たり前でしょ・・・!」
森崎サキ「ど、どうしてそんなことを思ったの・・・?」
森崎守「いや・・・むしろ今まで気づかなかった僕がおかしかったんだよ・・・」
森崎サキ「え?」
ダッ
守はリビングを飛び出したが、すぐに戻ってきた。
森崎守「ほら、これを見てよ!」
守が持ってきたのは一冊のアルバムだった。
森崎サキ「あら、懐かしい~」
森崎サキ「昔からマモルはかわいいわねぇ~」
森崎守「いや、僕じゃなくてさ!」
森崎守「写ってる姉ちゃんを見てよ!」
森崎サキ「へ? 私?」
守は写真を指差す。
これは去年の冬の写真
これは僕が幼稚園の時の写真
これは僕が赤ちゃんの時の写真
森崎守「どうして、姉ちゃんだけ見た目が変わらないのさ!?」
森崎サキ「あ、あー、それは気のせいよ、気のせい」
森崎守「気のせいですませられる問題じゃないよ!」
森崎サキ「ほら、あとは画像加工とか?」
森崎サキ「最近の自撮り写真じゃ女の子はみんなやってることだよ?」
森崎守「さらっと女子の闇を暴露しないでよ!」
森崎守「それに、これは加工とかそんなレベルじゃないでしょ!」
森崎守「どう考えても姉ちゃんはー―」
と、次の瞬間だった。
がっしゃーん!!
森崎守「は・・・?」
──突然の出来事だった
一台の大型トラックが家の壁を突き抜けてリビングに突っ込んできたのだ。
トラックは守へ──いや、彼の目の前にいたサキに襲い掛かった。
森崎守「ね、姉ちゃん、危な―ー」
ドンッ
森崎守「え?」
守はその光景に目を疑った。
何故ならサキはトラックに突っ込まれたというのに、その場から微動だにしなかったからだ。
森崎サキ「っていうかさー、何でロボットなのよ!?」
森崎サキ「こんなか弱い女の子にそんなこと言うのはお姉ちゃん感心しないなぁー・・・」
森崎守「い、いや、全然説得力ないよ、姉ちゃん・・・」
サキはトラックに突っ込まれたことを全く気にかけていない。
むしろ、突っ込んだトラックの方がひしゃげている。
運転席には人がいないので、おそらく暴走したトラックが突っ込んできたのだろう。
森崎守「いや、いったい体重何キロあるんだよ・・・」
森崎サキ「ん、何か言った?」
森崎守「う、ううん!? 何も!?」
サキから殺気を感じて守は黙った。
森崎サキ「ほらほら、危ないからちゃっちゃと出た出た。片づけたらまた呼ぶからー」
森崎サキ「まったく・・・せっかくのご飯が冷めちゃうじゃない・・・」
森崎守「あ、気にするのそこなんだ・・・」
森崎守「んー、何かもやもやするけど分かったよ・・・」
守はサキに言われた通りにリビングを出ようとした──その時、
ぎゅっ
森崎守「え?」
守は足を止めた。
何故なら突然、サキが守を後ろから抱きしめたからだ。
森崎サキ「・・・ごめんね、心配かけて」
森崎サキ「マモルだって不安だよね、私なんかと一緒にいるって」
森崎サキ「だけど、安心して」
森崎サキ「お姉ちゃんが絶対に不自由させないからね」
森崎守「・・・・・・」
森崎守「・・・そんなんじゃないよ、姉ちゃん」
森崎守「姉ちゃんは悪くないよ」
森崎守「僕だって姉ちゃんを助けたいって思ってるし」
森崎守「だって僕たち・・・」
森崎守「か、家族じゃんか・・・」
森崎サキ「・・・う、うん、そうだね!」
そう上機嫌に答えると、サキは守をぱっと離した。
森崎サキ「嬉しいなー。じゃ、ご飯作り直すからまた呼ぶね♪」
森崎守「う、うん、分かったよ・・・」
守は少しの気恥ずかしさもあって急いでリビングを出て行った。
森崎サキ「・・・」
森崎サキ「ふぅ、危ない危ない・・・」
森崎サキ「危うく正体がバレる所だったわ・・・」
森崎サキ「まさか『パパ』があんなにも鋭いなんてねっ・・・!」
そう言うと、サキは壁から突き出ていたトラックに渾身の蹴りを入れた。
ズガーン
けたたましい音と共に大型トラックは吹き飛び空の彼方まで吹っ飛んでいった。
森崎サキ「まさか、こんなにもいろんな組織から狙われるなんてね・・・」
森崎サキ「まあ、パパはそれだけ凄いってことだけど・・・」
そう、森崎サキはアンドロイドである。
それも彼女の弟──森崎守に作られ未来から来た戦闘型アンドロイドなのだ。
森崎守──彼は将来天才的発明家となり、大きな偉業を達成する男である。
それ故、多くの未来の組織から命を狙われることになる。
サキは守を助けるべく未来からやってきたのだった。
森崎サキ「・・・」
ふと、サキは自分の手を見てにやりと笑った。
森崎サキ「やっぱり小さい頃のパパ、ちっちゃくてかわいいー!」
森崎サキ「ちょっと生意気なところとか最高ね!」
森崎サキ──彼女には秘密がある。
それは彼女が未来から来た戦闘型アンドロイドということ──
・・・そして、
ファザコンかつショタコンの困ったアンドロイドであること──
森崎サキ「パパ、ぜーったい守ってあげるからね!」
森崎サキ「私とパパの二人だけの生活は誰にも邪魔されないんだから!」
こうして、一人と一体の波乱に満ちた生活は続く──
オチがすごいと思いました。
未来で弟くんが作ったアンドロイドとか、弟くんどれだけすごいんだろう?
弟であって、パパでもある彼を大好きみたいなので、なんだか幸せそうです。
お姉ちゃんがまさかのAI!すごい設定ですね、自分の兄弟もそうだったら私どうする!?とか想像しながら読ませて頂きました。近未来に起こりうる!?かもしれない現実ですよね。
テンポの良い楽しい作品でした。当初は姉のサキが、ロボットか否かが焦点となっているのに、実は、、、という展開に見事に裏切られました。