執行のシルバーバレット

悠々とマイペース

依頼執行(脚本)

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〇怪しげな酒場
  ・・・ガヤガヤ・・・ワイワイ・・・
  賑やかな酒場は、ガラの悪い人相の男達でいっぱいだ。
  そんないつもと変わらない光景を目にし、奥に進む。
  バーテンダーの真ん中に位置するおっさんより、右手側の丸椅子に座り、テーブルにうなだれるようにしている青年に声を掛ける。
???「よう、水でも奢ろうか?」
???「要らねぇよ。それより、聞いてくれよ~」
  鼻水を垂らしながら、服の袖を掴んで顔を擦り付けてくる。
  はっきり言って汚い。
???「どうせ、いつものフラれた話だろ? それよりもオヤジ、上借りるぞ」
  バーテンダーのおっさん・・・もとい、オヤジは、拭いているコップを起き、指でまだ顔を擦り続けているヤツと上を交互に指す。
オヤジ「上なら空いてるが、その前にそこのバカも連れて行け。邪魔でしょうがねぇ」
???「だ、そうだ。行くぞ」
  鬱陶しいが、襟を掴んで無理やり二階へと続く階段を昇る。
???「また、泣き虫ボウヤが保護者に連れて行かれるぞ~」
???「あらー、うぇんうぇん。またフラれたよぉ~」
  階段下ではいつもの如く酔っ払った男達がゲラゲラ笑いながら煽り散らかしていた。

〇古民家の蔵
???「それで、わざわざオレを連れ出した理由を聞きたいのだが?」
  ふてくされながらその場に座り込む青年に、嘆息を付きつつ、懐にしまっていた少しくしゃくしゃになっている紙を手渡す。
???「はぁ~。どこから嗅ぎ付けたかしらんが、仕事か?」
???「ああ。その紙にも書いてある通り、依頼人は殺された保安官の嫁さんからだ」
???「ふーん。恐喝を上に報告しようとしたら銃殺ねぇ・・・」
???「正義感による死・・・だが、問題はその先だ」
???「なになに、銃殺の原因は、シルバーバレットによるもの・・・へぇ~」
  先ほどまで酒場で見せていた弱々しい表情から一変し、不適に笑うのにはいつもの事ながらゾッとする。
???「まぁ、正義感ある奴なんざこの世界で生きていけないのは当然だ。 だが、シルバーバレットの評判を下げる訳にはいかないな」
???「引き受ける、ということでいいのか?」
???「それで、依頼料は?」
???「正直、敵討ちの金額にしてはかなり安い。 彼女の限界まで積まれたが、どうする?」
???「敵討ちに安いも高いもない。 執行を始めようか、相棒?」
  依頼の紙をバラバラに破り捨て、青年は立ち上がる。

〇中世の街並み
  この国では、一部を除いて銃の所持が禁止されている。
  その一部は、主に治安維持のための”保安官”だけだ。
保安官「おい、そこの2人。 真夜中にどこに行くつもりだ?」
  依頼されていた保安官の部署付近だが、騒ぎを起こすのは、まずい。
???「保安官さん。これから女性と会う約束があるんで、ちょいとこれで目を瞑っては貰えないかね?」
  金をちらつかせ、渡した素振りを見せてからの肘打ちからの膝蹴りの二連技のいつもの手口だ。
  声を出す事も出来ずに倒れ込む。
???「悪いな。 あんたは、強盗と揉み合って死んだ事になる」
  倒れ込んだ保安官の首の骨をねじるように折り、紙幣を軽くばらまく。
相棒「依頼された部署は、最低あと3人居るはずだ。この時間なら下らない賭け事でもしているだろうな」
???「命を賭けた賭け事を教えてやるか」

〇暖炉のある小屋
保安官A「あー、くそっ! また、負けた!」
  予想通り、賭け事をして楽しんでいる3人が酒を片手に話していた。
保安官B「へへっ、これでオレの儲けな」
チョビ髭の保安官「しっかし、アイツは遅いな。 何をやっているんだが・・・」
  どうやら先ほど倒した奴の事を思っているらしい。
  それに、あのチョビ髭の保安官だけバッチの色が他の保安官と違う。
相棒(銀色のバッチ・・・確か、部署のトップのバッチだったか・・・)
???「注意を引き付けてチョビ髭以外を連れ出せ。 ミスっても何とかする」
  いつもの無茶振りだが、相棒らしく注意を引き付ける役目を果たすため、頷いて答える。
保安官A「ん? なんだ、ありゃあ?」
保安官B「どうした? おっ! コインが落ちてるじゃあねぇか!」
  1人が立ち上がり、コインの方に釣られて行くが、その先に待っていたのは・・・
相棒「よいせっとぉ!」
  手を伸ばした保安官の腕を掴み上げ、そのまま勢い良く背負い投げを食らわす。
保安官B「んがっ!?」
  気絶したのを確認し、少し奥へ身体を引きずる。
チョビ髭の保安官「確認急げ!! 周囲の警戒は俺がする」
  予想通り、階級が下の奴を見に行かせる。
  チョビ髭の保安官は、賭け事をしていたテーブルを蹴り上げて盾にでもしているようだ。

〇黒
  月すら雲で隠れて暗い外に出て倒れている保安官を見つけるとすぐに駆け寄る。
保安官B「おい、大丈夫か!?」
  背後ががら空きの所を首元に腕を回して締める。
保安官B「グッ・・・うっ・・・ぎ、ざまは!?」
  締め上げているというに話そうとするが、答える事はない。
  次第に弱まって行き、突然人形のように保安官の力が抜け落ちた。
  後1人だけだが、それはもう問題ないだろう。
  あのチョビ髭は、他の保安官のように気絶したまま楽に逝ける事はない。

〇暖炉のある小屋

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コメント

  • 背景のみで進行する物語なのに、情景がありありと浮かんでくるのは作者さんの筆力の賜物ですね。主人公の決めゼリフがかっこいいけど、最後のシーンでそれに対する謎の人物の意味深なセリフ、続きが気になります。

  • 西部風の雰囲気が強く伝わってきますね。キャラクタービジュアルや人物描写といった要素が無くても伝わってくる、味がありますね。

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