目覚め(脚本)
〇幻想空間
?「・・・ゥ・・・ァア・・・」
?「ダレ・・・ダ・・・」
?「ソコニ、ダレカ・・・イル・・・ノカ・・・」
〇宇宙船の部屋
〇近未来の通路
〇研究所の中枢
〇実験ルーム
〇幻想空間
既定の時間になりました。これよりスリープ状態を解除致します。システム起動。
?(なんだ・・・なにがおこっている・・・?)
覚醒処理を開始。しばらくお待ちください。
シスてむ、ぶるー。
各システムの動作確認の為、再起動。
エラーを検出。
このままでは対象に深刻な影響ガ及ぼされる可能性がありマス。
緊急停止を実行。
きゃんせるされました。システムの停止ハできません。処理のカウントダウンを開始しマス。
3、2、1・・・
おはようございます。貴方様のお目覚めが良いものでありますように────
〇屋敷の寝室
「グゥ・・・ア・・・アァ」
「躰ガ・・・喉ガ・・・灼ケル・・・」
「灼ケル・・・痛ミガ・・・節々二・・・裂ケテ・・・シマイ・・・ソウ・・・ダ」
「誰カ・・・イナイ・・・ノカ・・・」
チャプ・・・チャプ・・・
少女「・・・・・・・・・」
「キミ・・・ハ・・・」
少女「─────です」
少女「・・・丈夫ですから、余り動かないでください。傷が開いて・・・」
「君ハ・・・」
少女「安心してください。貴方を害するものはここにはいません」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
少女「──大丈夫、大丈夫ですからね。今はただ、安らかに・・・・・・お休みなさい」
〇宇宙船の部屋
────ドンドン
少女「おじちゃ~ん、寝てるの~?」
プシュー、ガシャン
女「あらあら、またこんなに散らかして・・・ちゃんと片付けしてるのかしら?」
少女「せっかく遊びに来たのに。 今日は一日中付き合ってもらうからね!」
女「あんまり困らせないであげてね。・・この子に付き合ってくれるのはいいけど、言いたいことがあったら遠慮なく言ってくださいよ?」
〇近未来の通路
少女「おじちゃんってさ、好きな人とか・・・いるの?」
少女「・・・・・・ふぅん、ならさ、あたしが大人になってもおじちゃんにお嫁さんがいなかったらさ、あたしとけっこんする?」
少女「・・・なんちゃって」
少女「ふがっ・・・なにすんのさ~! からかってないって。ほんとほんと・・じゃあ、約束しようよ。その時はあたしとけっこんするって」
少女「いっつもそうやってはぐらかしてなかったことにするじゃない。だから────」
少女「──だから口約束じゃなくて、ちゃんと紙を用意したから。これに書いてよね」
───サラサラ
少女「おじちゃん、約束だからね!」
〇研究所の中枢
女「不安で押しつぶされそうで・・・心配なの・・・」
女「正直に言うと私は反対よ・・・でも・・・」
女「そう・・・あなたのことを子供みたいに思っていたのに、随分と大きくなっていたのね・・・」
女「ふふ、ごめんなさいね。昔は雛鳥のようにあの人の後を付いて行ってたから・・・」
女「でも、どうかこれだけは覚えていて・・・あの人もあの子も同じ気持ちよ・・・あなたを愛しているわ・・・これからもずっと・・・」
〇実験ルーム
男「・・・体調はどうだ?薬は?飲んだな。よし、始めるぞ」
男「安心しろ。目覚めた時には真新しい世界がお前を待っているぞ」
男「そうとも・・・おまえは世界で唯一の・・・・・・」
男「ああ、よくなるさ・・・きっと、きっとな」
〇宇宙船の部屋
少女「どこにしようかな~」
少女「んー?この紙のほかん場所だよ・・・」
少女「・・・いいの?やった!」
少女「ふふっ、大切に扱ってよね。折れたりやぶれてたら許さないんだから!」
少女「おじちゃんが口約束じゃない初めての約束なんだもん・・・・・・」
・・・・・・やく・・・そく・・・
・・・やく、そく・・・・・・約束。
そうだ、いかなければ・・・
きっと、待っているはずだ・・・
〇雪洞
(きっと、きっとまだ・・・・・・ あの娘が・・・まってる・・・)
〇雪山の森の中
ザク・・・ザク・・・ザク・・・ザク・・・
「────ヘックシィ!」
「ズズズッ・・・はぁ・・・寒いっ・・・」
「・・・・・・」
周囲を見ると隙間なく木々が立ち並び、まるで包み込むようにどこまでも続いているようだ。
(そういえば・・・・・・)
「何処なんだ?ここは・・・」
ヒュー・・・ヒュー・・・
(そもそも、自分は何故こんなところに・・・)
必死にこれまでの記憶をなんとか思い出そうとする。
「・・・・・・駄目だ、全くもって思い出せん。自分は一体、何をして・・・」
歩き出そうとすると不意に痛みが走る。
足に目をやると────素足だ。
「────は?」
「・・・なんで」
「とういより、何なんだこの格好?」
(こんな寒い中、薄い上着だけ・・・だと?)
(しかも、シャツは着てないしパンツも履いていない・・・)
「素っ裸も同然・・・てことか・・・」
ビュー・・・ビュー・・・
(寒い・・・なんて次元じゃない。このままだと、比喩抜きで氷漬けになってしまう)
辺りを見渡すが、木々が生い茂るばかりで寒さをやわらげそうな場所は見当たらない。
(どうする?遭難しているのは一目瞭然。この場合、道なき道を進むか・・・無理に動こうとせずに助けが来るまで待つべきか・・・)
(だが、問題は・・・)
「はたして、自分を探している者がいるのか・・・だな・・・」
(自分がどうして此処にいたのかも分からない状況で救助を期待するなんてしない方がいい)
(・・・となると、危険は覚悟の上でこの場から動いた方がいいな。幸い、まだ明るい。暗くなる前に移動しよう)
(夜になれば視界が悪く、気温も更に下がる。うぅ・・・想像するだけで震えてきた)
凍える躰をさすりながら一歩前へと進もうとした瞬間────
ゾクッ────
突然のことにその場に突っ立ってしまう。嫌な予感を感じ冷汗が頬を伝った。
(な、何だ?・・・・・・今のは・・・)
言いようのない不安に駆られたが、落ち着こうと思考を巡らす。
ガサガサ・・・バッ!!
バサバサバサバサ・・・
「うぅわぁああ!?」
────グガァッ!グガァッ!
「・・・鳥・・・か・・・・・・まったく、驚かすなよな・・・フゥ・・・」
音の正体が鳥である事に気付き、ホッと息を吐いた。
鳥たちは何かに怯えるように鳴き喚いているようだ。
「・・・何なんだ?・・・・・・やけに騒がしいな・・・」
何やら様子のおかしい鳥たちを見上げていると息を吞んだ。
ゾクッ────
(またか・・・一体何だというんだ・・・)
得体の知れないナニカに睨まれているような気分になる。
吐き気を抑えながら視線を感じる方向を見る。すると、木々の間から大きな黒い物体を見つけた。
その物体は大きく、全体的に黒い毛に覆われ2つの赤い点を見つけた。それが目だとわかった瞬間、身体が勝手に動き、駆け出した。
(不味い!目が合った!!)
〇雪山の森の中
ザッザッザッザッ・・・
(あんな馬鹿でかい熊の様なものなんぞ現実にいるわけがないだろう!?)
(きっと、夢だッ!それか幻ッ!もしくは仮想空間ッ!)
息を切らしながら、けれどもペースを落とさず、一直線に走るのは愚行である為、気休めだが右へ左へジグザグになって走る。
(とにかく、逃げなければ!少しでもペースを落としてみろ、喰われてしまう!!)
「・・・ハァ・・・ハァ・・・クソッ!」
少しでも距離を取ろうと一心不乱になりながら足を動かし続ける。
ガルルルルルウゥゥウァァアッ!!
轟々と力強い獣の咆哮が鳴り響いた。その行為はまるで獲物を見つけ、狩るための宣言をしているかのように感じ取れた。
ズシリッ・・・と重い足音が真後ろに聴こえてきた。
───ブォォオンッ!!
「グァッ!!・・・ッ・・・ゥ・・・」
少し掠っただけで背中から激痛が走る。
決して振り向かず、涙が滲みながらも必死に走り続けた。
(このままでは・・・)
死の予感を振り払う為、何度目かの草木をかき分け、飛び出た光景に思わず顔を引き攣った。
〇雪山
その先に道はなく、あるのは憎らしいほどの絶景とも言える景色だった。まさに断崖絶壁。
「・・・冗談だろ?」
他の逃げ道を探そうにもすぐ近くに獣の息遣いが聞こえる。後ろを振り返ると・・・・・・
グルルルルゥ・・・グルルルルゥ・・・
まるで小さな山の様に大きな躰を四つの足でその巨体を支えていた。見知った熊の10倍・・・その倍の100倍かもしれない。
熊の様な化け物は口を大きく開け鋭い牙が前歯から奥歯まで見えており端から涎が溢れている。
向こうも学習したのか赤い瞳は此方を見ながらじわじわと近寄ってくる。それに気圧され、一歩後ずさる。
(ここで・・・・・・終わりなのか?)
ガゴッ────
「・・・・・・へっ?」
〇雪山
崖の先端が崩れたのだろう、躰は重力に従いゆっくりと下へと落下した。
「う、うわあぁぁぁぁああぁああっ!!」
地面との距離が縮んでいき、何とか受け身を取ろうと崖から生えた木々を即席のクッションにする。
(気休めだが、無いよりマシだろ!)
〇雪山の森の中
ドンッ────!!
ゴロゴロゴロ・・・・・・
「・・・グ・・・ウゥ・・・」
僅かに降り積もった雪に着地し、さらに下へと転がっていく。
ぶつかる度に傷が増える。
「・・・・・・ッ・・・」
強く躰を打ち付け、大きな衝撃に肺から空気が一気に抜け、全身からの痛みに耐えられず眠るように気を失った。
〇屋敷の寝室
「ここハ・・・どこダ・・・?」
「自分ハ・・・一体・・・」
ミシッ────
「グッ!?」
(躰ガ・・・裂ケ・・・)
ズキッズキッ・・・
「ッ・・・ゥ・・・」
(今度ハ・・・頭・・・割・・・レル・・・)
少女の声「目が覚めたんですね」
「・・・・・・」
少女「ひどい怪我をしているんです。 ですから、安静にしてくださいね」
チャプ・・・チャプ・・・
「こコは・・・・・・」
少女「・・・?」
「きミ・・・は・・・」
少女「えと、私はルウナと言います」
戸惑いながらも少女は自身の名前を口にした。
「る・・・ウな・・・」
ルウナ「はい。それで、ここは村長(むらおさ)のお家で・・・」
「・・・イ・・・え?」
ルウナ「覚えていますか? 雪山の麓で倒れていた貴方をムーさんがここまで運んできたんですよ」
(倒・・・レ・・・?)
ルウナ「ここに運ばれてきてもう五日は経っているんです」
ルウナ「その間ずっと目が覚めなくて・・・峠は越えたってリーアスさんが・・・」
ルウナ「でも、もしかしたら、もう目覚めないんじゃないかと・・・」
(・・・・・・誰ガ・・・もシや・・・)
「・・・自分・・・ガ・・・・・・?」
ルウナ「はい。 だから、本当に目が覚めて良かった・・・」
少女──ルウナはそう言って花が咲いたように満面の笑みを浮かべている。
(・・・・・・綺麗だ)
ルウナ「包帯の交換とそれから、お薬を塗りますので・・・その、失礼しますね」
ガサ・・・ゴソ・・・
ルウナ「これと、あとは・・・よし・・・」
ルウナ「まずは傷口を洗います。ですから、少し沁みますよ」
──ズキリッ
「ッゥ・・・」
ルウナ「お薬を塗りますので、もう少しだけそのままで・・・」
テキパキとルウナは薬を塗り、その上から包帯を巻いていく。
ルウナ「・・・終わりました。 もう、大丈夫ですからね」
「あ・・・リ・・・・・・」
ルウナ「どうしました?」
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主人公は宇宙船内でコールドスリープから覚めて雪山に放り出されたようなイメージですが、全てが謎のままですね。結婚の約束をした少女は何者なのか。果たして彼は今まで紡いできた記憶の糸を手繰り寄せることができるのか。気になることだらけです。
主人公のように何日も意識を失った経験はないですが、記述からとても興味深いことのように感じました。紡ぐという行為、人間の価値を高めてくれるものだと思います。