「かみさま」のお願い

宮田そら

「かみさま」の願い(脚本)

「かみさま」のお願い

宮田そら

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〇田舎の病院の病室
  いいんですね?
  ええ。この子は本当に頑張りましたから
  ・・・分かりました

〇学校の屋上
  僕は何かに躓いて転んだ
???「いたた」
  誰かが近づいてくる
???「あら、おはよう やっと起きたのね」
かみさま?「私は神様 よろしくね」
???「え?」
  この人は・・・変な人だ!
かみさま?「何よ おかしなことでも言った?」
???「かみさま?」
かみさま?「ええ。神様」
  こいつはやばい
かみさま?「ちょっと!」
  彼女は僕の腕を掴んだ
かみさま?「どうして逃げるの!」
???「明らかに怪しい!!」
かみさま?「どこが?」
  気が付いていない?
  
  これは”本物”だ
かみさま?「ああ。私が神様だってこと?」
  やっと気が付いたようだ
かみさま?「だって本当のことだもん 神様が神様だって言って何が悪いの?」
かみさま?「ちょっとなんで逃げるのよ!!」
???「怖い!!」
かみさま?「ふーん まだ私のこと疑ってるんだ」
かみさま?「だったら見せてあげるわよ」
???「え?」
  その瞬間、目の前が真っ白になった

〇空
???「何なんだー!!」
  僕の身体は”空”にあった
かみさま?「何って空を飛んでるのよ」
  彼女は平然とした顔でそう言った
???「空!?」
かみさま?「神様らしいことを見せようって思って すごいでしょ?」
  僕は頭がパンクしそうだった
  
  本当に彼女は神様?
  いや、違う!
  
  これは・・・夢だ!!
かみさま?「何よ。その感じ まだ信じてないの?」
かみさま?「まあ、いいわ 貴方が信じなくても私は私の仕事を果たすだけ」
かみさま?「そろそろ着くわ」
???「着くってどこに?」
かみさま?「地上よ さあ! かっこよく着地するわよ!」
???「ぎゃあああああ!!」
  気が付けば地面はもう”そこ”にあった

〇大きな木のある校舎
???「あれ?」
  僕は確実に地面に激突したはずだった
  それなのに傷の一つも見当たらない
かみさま?「・・・無事着地出来たみたいね」
  隣を見る
  
  そこには仰向けに倒れ込んでる彼女の姿があった
???「かっこよく・・・?」
  彼女は勢いよく立ち上がった
かみさま?「うるさいわね!! ちょっとミスったのよ! ちょっとだけ!!」
???「・・・」
かみさま?「何よー!! 別にいいでしょー! 神も飛べばなんちゃらよー!!」
  僕は口をつぐんだ
かみさま?「もー!!」
???「チャイム?」
  僕は視線を上にあげた
  身体が拒否を始める
かみさま?「貴方の学校でしょ? 貴方の通っている学校」
???「なんで知ってるの?」
かみさま?「だって神様ですもの」
???「どうして・・・ここに?」
かみさま?「どうして? それは貴方が一番分かっているでしょう?」
  もしも彼女がわざとここに連れてきたというのなら
  
  最低だ
???「やっぱり君は”やばい”人だったんだな」
かみさま?「ここには私達以外誰もいない 少し歩いてみましょうよ」
???「・・・」
かみさま?「何してんのー!」
  僕は下を向きながら彼女のあとを追った

〇学校の廊下
かみさま?「いいわね、学校」
???「どうしてここに連れて来たんだ」
かみさま?「またそれ?」
???「分からないから聞いてるんだ」
かみさま?「簡単よ。ここは貴方が自殺するきっかけそのものですもの」
???「!!」
かみさま?「本当は分かっているのでしょう? ここは夢じゃない。夢は生者が見るもの」
かみさま?「貴方は確かに学校の屋上から身を投げ出したのだから。いじめが原因で、ね」
???「知ってるなら・・・どうしてここに連れて来たんだ」
かみさま?「貴方の眼で見なきゃいけないものがあるからよ」
???「!! なんだよそれ!」
???「君が神様なら この苦痛の日々から その残像から」
???「僕を救ってくれないのかよ!!」
かみさま?「救う?  辛かった現実から? 生きることから?」
かみさま?「ふざけないで!!」
???「!!」
かみさま?「死ぬことが救い? 逃げて逃げて・・・そうしたら何か特別なものが迎えにくるのだと勝手に思ってるだけでしょ!」
???「なんだよ!  ここで逃げ場のなかった僕は・・・」
???「じゃあどうすればよかったんだよ!」
かみさま?「戦うのよ」
???「必死にやったんだ! 戦って戦って戦って! その結果がこれなんだ!」
???「僕をもう・・・許してくれよ」
かみさま?「許さない。貴方は生きなきゃいけない 生きれなかった者たちの分まで」
???「生きれなかった人達・・・? そんなの他人事だ! 僕になんの関係があるんだよ!」
かみさま?「あるわよ。だって・・・」
かみさま?「だって・・・羨ましいもの」
かみさま?「私だって・・・私だって・・・学校に行きたかった!!」
かみさま?「友達と遊んで・・・恋愛をして・・・悩んで苦しんで・・・それでいて生きたんだって思いたかった!!」
???「君は・・・」
???「ちょっと待って!!」

〇学校の屋上
???「はあはあ」
  彼女はただ漠然と町を見下ろしていた
かみさま?「屋上からの景色って綺麗」
???「・・・」
かみさま?「ねえ」
かみさま?「もう一回ここから飛べる?」
???「え?」
かみさま?「今度は空に向かって飛ぶの」
かみさま?「それで貴方は生き返るわ」
???「!!」
???「そんな必要ないよ」
かみさま?「だめ」
かみさま?「お願い。私の分まで生きて そして、おじいちゃんになったらここでお話をしようよ」
???「なんでそんなの僕に頼むんだ」
かみさま?「私の見てこなかった世界がどんなだったのか知りたいの。ただそれだけ」
かみさま?「貴方が初めてなの 私の世界に入り込んだのは だから、貴方にしか出来ないのよ」
???「そんなの」
かみさま?「私の我儘よ だから最後は貴方が決めて」
  無責任だ
  勝手に押し付けて
  屋上からの景色
  一度見たはずだったのに
  
  それは、綺麗だった
???「わかったよ」
  誰かの願い。それは他人事で
  どうでもいいもののはずだけど
  叶えてあげたいって思うことは素敵だと感じた
???「君のために生きる 僕のためじゃなく君の為に」
かみさま?「そう」
かみさま?「ありがとう」
  生きたかったのは彼女なのに
  
  彼女はありがとうと言った
かみさま?「しばらくはここに来ないことね いい?」
???「わかったよ」
かみさま?「それじゃあ行きなよ」
  僕は彼女に背を向ける
  後ろから泣き声が聞こえた
  僕は唇をきゅっと噛みしめて
  
  走り出した
かみさま?「じゃあね」

〇病室(椅子無し)
  ここは・・・?
  え? 
  先生! 先生!
  僕だけが残された病室
  聞こえる心電図の音
  僕にはそれが彼女の足音に聞こえた

コメント

  • きっと、いっときの衝動で自殺してしまう人もいるでしょうね。そうした人たちにはこの主人公のように、あの世とこの世の狭間で「かみさま」に出会って生死を選択できる猶予=臨死体験が与えられたらいいのにと思いました。

  • 闘って傷ついて立ち直れなっかたら?何を選ぶんだろう。頑張ってというのは酷のような気がする。
    だけど生きていれば何とかなる…簡単に答えは出せない。

  • 私はどちらかというと無理して戦わなくてもいいって思ってしまう人です。
    神様のように、後悔が残る方法だけは、絶対にならぬと思いますが!

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