星の箱庭の三兄弟。(脚本)
〇埋立地
〇荒廃した遊園地
〇村に続くトンネル
なんて言うかさー・・・
現実世界って、何にも無いんだね。
だから言ったでしょう?
何もないは間違いだぞ?ほら、こんなに自然が戻ってきてる。
でもさ、人間はここで遊んだりは出来ないんでしょ?
そうだね。気候変動や環境破壊・・・地上が人の住める場所じゃ無くなって久しい。
人間は地下に作った安全な施設の中、か。ありんこみたいだね。
対して変わらないんじゃない?
・・・人間が生身で数時間も居られない地上で、せっせと働いてるのはロボットだけよ。
おっと、時間切れみたいだね。
うん。父さんや母さん、兄さんの世界が見られて良かったよ。
知ることは大切だものね。
さあ、そろそろ帰ろうか。
箱庭の世界にー・・・
〇電脳空間
アーカイブとの同期解除中ー・・・暫くお待ちくださいー・・・
記憶の再生を終了いたします。
またのご利用をお待ちしております、お忘れものの無きよう気を付けてお帰りくださいー・・・
〇未来の都会
メタバース『星の箱庭』へようこそ!
本日の天気は晴れ、所により花弁が舞うでしょう。
最新ニュース!
喫茶アンリでは、こし餡バタートーストにお好きな飲み物がついて今だけ100コイン~・・・
ユウジ「うん、じゃあ噴水公園でね」
ユウジ「さて、と」
ギョジンアバターの人「海鮮丼が安いようまいよ~」
鳥アバターの人「どけどけ~!!ツバメ便のお通りだぁ~!!」
亜人アバターの人「はぁー?限定アバター即売り切れ!?マジあり得ないんだけど!!?」
亜人アバターの人「この日の為にコインためてたのに~!!」
ユウジ「・・・」
ユウジ「今日も平和だなぁ~」
「な~にが、平和だな~よ!」
ユウジ「あれ、リリ。どうかした?」
リリ「どうかした?じゃないわよ!今日は一緒に帰ろうって言ったでしょ!」
ユウジ「そうだっけ?ごめんごめん」
リリ「めがめがクレープ奢ってくれるなら許す。公園、行くんでしょ?」
ユウジ「うん。今日は兄弟と会うんだ」
リリ「あ、ゴメン。邪魔しちゃ悪いよね?」
ユウジ「別に構わないよ?」
ユウジ「むしろ女の子がいた方が兄さんは喜ぶかも?」
リリ「そういう事ならご一緒しちゃおうかな?ユウジの家族に興味もあるし」
ユウジ「自慢の兄さんだよ。弟も居るけどね。まぁ、見た目は弟じゃないけど」
リリ「アバター変更すれば、何にでもなれるもんね!」
リリ「私も成人したら、もっと可愛いアバターに着せかえるんだ~!」
ユウジ「リリは充分可愛いのに?」
リリ「充分以上になりたいのよ!乙女心が分からないんだから!」
ユウジ「まぁ、男だからね」
リリ「そういう事じゃ無いんだけど・・・ま、いっか」
〇池袋西口公園
リリ「ストロベリーマスカルポーネ生クリーム増し増しでお願いします!!」
ユウジ「僕は珈琲プリンにトリプルチーズ・・・それにきな粉と黒蜜のソースで」
リリ「・・・ユウジって食の好み変わってるよね・・・」
ユウジ「そう?父さんと母さんの好物のMIXなんだけど・・・」
リリ「何で足しちゃったのよ・・・ご両親もびっくりでしょソレ?」
「はいよ、お待ち!美味しく食べれますように!」
リリ「ありがとうございます~!」
リリ「それで・・・モグモグ・・・ユウジのご兄弟は来てるの?」
ユウジ「えーっと・・・あそこで囲まれてるのがそうだね」
モブ子①「ユウイチさまー!!」
モブ子②「新作のアバター買いました!!」
モブ子③「先日の猫耳モードは再販しないんですか!?私、あれがどーしてもほしくて・・・!」
ユウイチ「何時もありがとう、子猫ちゃん達。再販かバージョン違いはそのうちかな」
ユウイチ「これからも、うちのSHOPをよろしくね」
ユウイチ「おっ、待ち人が来たみたいだ。またね、子猫ちゃん達」
ユウイチ「よっ、久しぶりだなユウジ!そっちの可愛いお嬢さんは彼女かな?」
リリ「え!?あっ、いや私は・・・」
ユウジ「久しぶり、兄さん。彼女はクラスメイトのリリだよ」
リリ「クラスメイト・・・」
ユウイチ「お前は相変わらず乙女心に鈍感だな・・・」
ユウジ「そんな事は無いつもりだけど・・・」
リリ「お兄さんが正しいです!もっと言ってやってください!」
ユウイチ「アハハっ、リリちゃんも苦労してるみたいだね」
ユウイチ「うちのユウジは手強いと思うけど・・・これからもよろしくね?」
リリ「は、はい・・・!」
ユウジ「兄さん、リリまで足らし込まないでくれる?」
ユウイチ「ハハッ、心配しなくていいよ!」
リリ「あれ?ママからだ」
リリ「じゃあ、私はこれで失礼します!会えて嬉しかったです、お兄さん!」
ユウイチ「こちらこそ嬉しかったよ、またねリリちゃん」
リリ「ユウジも、また明日ね!」
ユウジ「うん。またね、リリ」
ユウイチ「・・・リリちゃんいい子だなぁ。成人したらぜひうちのアバターを着て欲しい」
ユウジ「リリには兄さんのアバターは百年早いよ・・・」
ユウイチ「なんだ、過保護か?」
ユウジ「リリは、僕と同じAIチルドレンだからね」
ユウイチ「同じ、ねぇ」
ユウイチ「リアルの人間だとかAIチルドレンだとか・・・俺はそんなの関係ないと思うけどね」
ユウジ「・・・兄さんがそう言ってくれるから、僕は何時も幸せだよ」
ユウイチ「やめな、気持ち悪い」
ユウジ「あはは、照れてる」
ユウイチ「おっ、リアルの人間でもなきゃAIチルドレンでもないのが来たぞ」
ユウジ「そういう言い方やめなよ・・・僕達の大切な弟でしょ?」
ユウイチ「弟ってか、今日のアバターは妹だけどな!」
ユウイチ「・・・まぁ、作ったの俺なんだけど」
U3「・・・」
U3「・・・見つけた」
ユウイチ「よう、U3!そのアバターはどうだ?」
U3「良好だよ、ユウイチ兄さん。とっても好評だ」
ユウイチ「それは何よりだ。お前のそっけなさもクールビューティーな美少女アバターで緩和されてるだろ?」
U3「不思議なことに、色々な事がスムーズに行っているよ」
U3「全く・・・何にでもなれる世界だと言うのに、理解不能だね」
ユウイチ「まぁ、中身がおっさんな奴らなんか、可愛いアバター着てりゃどーにかなるってもんよ!」
ユウイチ「とは言え、人外アバターで上手くいってる奴らもいるから中身も大事なんだろうなとは思うけどな?」
U3「だからユウイチ兄さんは結婚できないんだね」
ユウイチ「っさい!娘ならいるわ!!」
ユウジ「AIクローンのね。ユウナちゃん元気かい?」
ユウイチ「ん?ユウナの事は、お前の方が詳しいんじゃないのか?」
ユウジ「学校でたまに会うけど・・・」
ユウジ「大体、女の子を口説いてるね・・・」
U3「流石ユウイチ兄さんのクローンだね・・・」
ユウイチ「ハハッ!順調に俺に似てて嬉しいぞ!」
ユウイチ「ユウナには、俺の趣味嗜好、技術、知識・・・全部を教えてあるからな」
ユウイチ「俺に何かあっても、ユウナが常に素晴らしいアバターを皆に提供してくれるだろう!」
U3「ユウイチ兄さんも年だからね・・・」
ユウイチ「年の事は言うな!少なくともここでは若くて格好いいお兄さんだ!!」
U3「現実でもそのつもりで、ぎっくり腰されるのが困るんだよ・・・」
ユウジ「兄さん何してんの!?」
ユウイチ「いや、まだまだ若いやつには負けられないって思っただけで・・・」
ユウイチ「心配しなくても、俺はまだまだ元気だよ!」
ユウジ「元気で居てくれなきゃ困るよ。ねぇ、U3?」
U3「そうだよ。僕達三人が仲良くやってくのが、父さんや母さんの願いなんだから」
ユウジ「そうそう。親孝行はしないとね!」
ユウイチ「気を付けますよ。ったく、二人とも誰に似たんだか・・・」
ユウジ「うーん、母さんかな?」
U3「僕は父さんだと思うよ」
ユウイチ「どっちでも構わないが・・・」
ユウイチ「ん?なんだ?」
U3「・・・ごめん、兄さん。仕事だ」
ユウジ「違法アバターだね?」
ユウイチ「大丈夫なのか?」
U3「その為に、僕が内側にも居るんだよ」
ユウジ「U3、僕も行くよ」
ユウイチ「俺だけ何にも出来なくてもどかしいが・・・」
ユウイチ「終わったら改めて、飯でも食おうな!」
「いってきます!」
ユウイチ「おう、行ってこい!」
〇VR施設のロビー
違法アバター「フシュウゥゥ・・・」
U3「居た」
ユウジ「皆さん落ち着いて!こちらから避難してください!」
U3「違法アバター、他者への攻撃プログラムを検出・・・」
ユウジ「どうして、こんな事を・・・」
U3「栄える都市を自分が支配したいと願う愚者は、何処にでもいるものさ」
U3「まぁ、そんなことは許さないけどね」
ユウジ「そうだね。U3、頼むよ」
U3「違法アバターの排除開始・・・プログラム『有事』を起動ー・・・」
違法アバター「ガッ!?」
ユウジ「君みたいな無法者はこの世界には不要だよ」
ユウジ「さようなら」
BAN!!
U3「『有事』の機能、凍結ー・・・任務完了」
ユウジ「お疲れ、U3」
U3「ユウジ兄さんもね」
ユウジ「兄さんからだ。喫茶アンリに居るって」
U3「心配してるだろうし、行こうか」
ユウジ「そうだね」
〇未来の都会
人間、AI、ロボット・・・異なる境遇の僕達は
其々のやり方で、両親の残してくれた世界を守り、生きる人達を見守っている。
これは、現実とメタバースが複雑に絡み合う時代の・・・
とある三兄弟の物語だ。
AIやらロボットやら人間がメタバースの中で共存して社会を作り上げている世界。生身の肉体は誰でどこにあるのかちょっと混乱しちゃいました。いずれは映画のマトリクス(古い)のように人間も肉体はカプセル内で培養して脳内で全て完結する世界(箱庭)が実現するのかもですね。
今はまだ想像することが出来なくても、未来にはありそうなお話で楽しく読みました。生きるもの全てが共存。戦争も飢餓もない世界が理想です。
近い将来、現実世界もこんなカタチになる可能性はありますよね。最近よく聞くメタバースはあまり詳しくはありませんが…。
近未来的なお話で、興味津々に読ませて頂きました!