ママの秘密は××××

白川

ママの秘密は××××(脚本)

ママの秘密は××××

白川

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ママの秘密は××××
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〇教室
かえで「はぁ・・・」
冴子「やっと授業終わったんだから、 もっと陽気な顔しなさいよ」
かえで「うーん・・・だってさぁ」
  かえでの憂鬱の原因は、
  一週間後に迫った「公開授業」だった
かえで「来週の公開授業、うちの親が来たいって 言ってるんだもん」
冴子「あ、うちも来るって言ってる」
同級生A「うちも。マジウザイよね」
冴子「そういえば、かえでの親って会ったことないけど、どんな人?」
かえで「普通のサラリーマンだよ」
冴子「そうなんだ。ママは?」
かえで「ママも・・・、普通のママ」
同級生A「なにそれ! 逆に気になる! 会ってみたいな」
かえで「え、いや・・・」
同級生A「今から家に行っていい?」
かえで「ダメ!」
冴子「かえで?」
かえで「・・・えと、家には誰も呼ばないことにしてるの。ごめんね」
冴子「・・・」

〇教室
  そして公開授業の当日
  教室のすぐ横の廊下に、
  保護者が集まり始めていた
同級生A「意外に来るんだね」
同級生B「パパが多くない?」
同級生A「そりゃ女子校だもん。 のぞいてみたいんでしょ」
同級生B「ははーん。パパたちもオトコってわけね」
  そこへ一人の女性があらわれた
  服もメイクも派手ではなかったが、
  はっきりとした目鼻立ちで
  特別な存在感をただよわせる
冴子「かえでに手振ってない? ってもしかして」
かえで「・・・」
  その時、同級生の父親が
  おもむろに話しかけた
同級生の父A「失礼ですが、吉岡恵美さんですか?」
恵美「え、ええ。今は澤村恵美といいます。 澤村かえでの母です」
同級生の父A「やっぱり! ファンだったんですよ!」
  廊下がにわかに騒がしくなった
同級生の父B「CD持ってましたよ!」
同級生の父A「ライブ行ったことあります!」
同級生の父B「一緒に写真、いいですか?」
  その様子は教室にもすぐ伝わった
同級生A「澤村さんのママだって!」
かえで「・・・」
同級生B「アイドルだった・・・ってこと?」
かえで「・・・」
冴子「かえで、そうなの?」
かえで「まぁ、ね」
同級生A「吉岡恵美っていうんだって。 検索に出るかな?」
かえで「!!!」
  同級生たちは一斉にスマホをいじりだした
  そして彼女たちは
  17年ほど昔のネットニュースの記事を
  見ることになる

〇コンサート会場
  『吉岡は結婚を機に芸能界を引退する』
  『なお吉岡は第一子を妊娠しており、春頃に出産を予定している』

〇教室
同級生A「これって、できちゃった結婚ってこと?」
同級生B「ほんとだ。チャラいアイドルだったのかな」
同級生A「ね。恥ずかしくないのかな」
かえで「・・・」
冴子「かえで!」

〇女子トイレ
  冴子はかえでを追いかけた
  トイレの個室に駆け込んだかえでは
  カギをかけて閉じこもってしまう
冴子「待って!」
かえで「知られたくなかった・・・ こうなるってわかってたから」
冴子「ママがアイドルだったって、すごいじゃん」
かえで「全然すごくなんかない。 それにネットで見たことある・・・」
かえで「ママのファンだった人が、 デキ婚のニュースでアンチになって イヤなこと書き込んでたんだ」
かえで「つい昨日までファンだった人がだよ!? 妊娠して結婚しただけで、ママのことを 大キライになっちゃった・・・」
冴子「そんなの見なければいいのに」
かえで「やっぱり受け入れてもらえないんだよ。 できちゃった結婚は」
  その時、トイレに誰かがやってきた
  かえでのママだ
  ママは唇の前に人差し指を立てた
冴子「・・・」
  気づかないかえでは
  そのまましゃべり続ける
かえで「ママのことを裏切り者って言う人もいた」
かえで「そんなこと聞いてたら、私が生まれることも望まれてなかったのかなって・・・ 怖くなっちゃう」
かえで「だから・・・ ママのことは秘密にしておきたかったの」
恵美「そうだったの」
かえで「え!? ママ!?」
恵美「かえで・・・イヤな思いさせてごめんね」
恵美「たしかに私の結婚を否定するファンがいて 反対するスタッフもいた。でも・・・ みんなが否定していたわけじゃないの」
恵美「かえでができたから、結婚に踏み切れた。 かえでだけは私の結婚に賛成してくれた気がして、頼もしかったんだよ」
かえで「ママ・・・」
恵美「だから妊娠は秘密にして引退してもよかったんだけど、あえて発表したの」
恵美「この感謝を、いつかかえでに伝えようと思ってね」
恵美「順番はちょっと間違っちゃったけど、 生まれてくれてありがとう」
  ガチャリ
かえで「ごめんなさい・・・ ママの気持ちも知らないで・・・」
恵美「かえで!」
かえで「ママ!」
  そこへ授業開始のチャイムが鳴った
冴子「授業始まっちゃう。かえで、行こ」
かえで「うん。 ママも一緒に行こう」
恵美「はいはい」

〇豪華な部屋
  数日後
  冴子はかえでの自宅に招かれていた
冴子「シャンデリアに暖炉に・・・」
冴子「普通のサラリーマンって、あれも嘘でしょ」
かえで「ちょっとお給料がいいみたいだね。 外資系で」
冴子「なるほどね。 ま、アイドルを落とすぐらいだもんね」
恵美「冴子ちゃん、いらっしゃい。 ゆっくりしていってね」
冴子「お邪魔してます」
かえで「それでね、事務所をどこにしようかなって 相談なんだけど」
冴子「え? 事務所って・・・まさか」
恵美「芸能界に興味持っちゃったみたいなの」
冴子「ええ!?」
かえで「ママがいた世界を見てみたいなって」
冴子「そういうことね」
冴子「いいんじゃない? 応援する」
かえで「よく考えたら私、生まれる前からネットニュースに出ちゃってるからね」
かえで「半分デビューしてるようなもんなのよ」
冴子「それはよくわからないけどね・・・」
かえで「でも恥ずかしいから、 本格的なデビューはまだみんなには秘密ね」

コメント

  • なんかとても微笑ましい話でした。テレビの世界の人って、なんだか別世界の人って感じがするけど、実際は一人の人で、一般の人と何ら変わらない人が多いんだろうなあと思います。

  • アイドルだって普通の女の子で、普通に恋をして結婚しますよね。当たり前のことですが、芸能人への過熱報道で皆そのことを忘れてしまっているのかもしれませんね。優しい素敵な物語でした。

  • なんて可愛らしい家族なんだ!
    アンチの声が多いと自分の生まれた意味って…と落ち込んでしまいますよね。デキ婚という名前もその後の子供の気持ちを全く考えていないネーミングなんだと改めて気が付かされました!

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